2027年(令和9年)に新制度育成就労が施行されるのにあわせて、特定技能制度も内容が変更となる箇所があります。
認定を受けるための基準が厳格化されるだけでなく、登録支援機関はより中立性・独立性が求められるようになるため、改正法の内容に合わせ適切な対応が求められます。
この記事では新制度育成就労の施行および特定技能に関する法律の改正に伴い、登録支援機関に求められる新たな役割や対応について解説します。
目次
従来の登録支援機関の役割

新制度「育成就労」が始まることで、これまで受入企業のサポートを行ってきた登録支援機関は新しい役割を担うことになる可能性が考えられます。
以下ではまず、従来の登録支援機関の役割について簡単に解説します。
従来の役割の概要
日本の企業が特定技能として外国人を雇用する場合、支援計画の作成や外国人材の入国・出国に関する手続きなどさまざまな手続きをしなければなりません。
また、外国人にトラブルなく慣れない日本での生活に慣れてもらうために、受入企業には特に特定技能1号の外国人に対しては住宅の確保や相談・苦情への対応など、支援業務が義務付けられています。
登録支援機関は受入機関からの支援業務を受託するなどし、特定技能外国人を雇用する上でのサポートを行う機関です。
特定技能外国人に対する支援は受入機関が独自に行うこともできます。しかし全てを自社で行うためには相応の体制を整えなければなりません。
受入機関は支援業務を外部の登録支援機関に委託することで、特定技能外国人関連業務の負担を軽減することができます。
登録支援機関になるための従来の条件
登録支援機関になるためには以下の条件を満たしている必要があります。
- 機関の運営が適切に行われている(労働法令違反がない、出入国に関する法令違反がないなど)
- 外国人を支援する体制が整っている(外国人が理解できる言語で支援を実施できる、経営が安定しているなど)
こうした条件に加えて、登録支援機関は外国人材に対する支援を適切に実施し、出入国在留管理庁への各種届出を適切に行う義務があり、怠った場合は登録を取り消される恐れもあります。
新制度育成就労は何が違う?特定技能との関係
2027年に施行される予定の新制度「育成就労」は、従来の技能実習制度が抱えていた課題を解決するために創設された制度です。
従来の技能実習制度よりも特定技能との関係性が強くなります。
制度の目的
育成就労は人材の育成と人手不足の解消を目的として作られた制度です。
従来の技能実習制度は国際貢献を目的とした制度であるため、人手不足解消を目的として活用することは本来認められていませんでした。
今回の制度見直しによって、受入企業が外国人材によって人材を確保することができるようになるだけでなく、日本で働く外国人も日本でのキャリア形成が容易になることが期待できます。
特定技能1号の前身として位置付けられている在留資格
育成就労として日本に入国した外国人は、3年間の就労を通して特定技能1号取得水準の技術と日本語能力を身につけることを目指します。仮に育成就労期間中に技能試験等に合格できなかった場合は、再受験のため最長1年間在留期間を延長することが可能です。
外国人が育成就労の在留資格を取得するためには、日本語能力試験(JLPT)をN5以上の水準で合格するか、それに相当する日本語講習の受講が求められます。
技能水準については基本的に要件は設けられていません。
受入れ業種分野は特定技能1号に準ずる
育成就労での受入れ業種分野は、特定技能1号に準ずるものとされています。
従来の技能実習制度では、特定技能制度とは異なる業種分野が設けられていたため、技能実習を修了したとしても在留資格を特定技能1号へと移行させるハードルが高いことが指摘されていました。
受入れ業種分野を共通させることで、育成就労から特定技能1号へとスムーズに在留資格を移行させることができるようになります。
技能実習生とは異なり転籍・転職が可能になる
育成就労では一定の条件を満たすことで外国人本人の意向による転籍・転職が認められます。
育成就労における本人の意向による転籍・転職条件としては、
- 同一の機関での育成就労開始から1年〜2年超就労するなど一定期間を超えていること。
- 技能検定試験基礎級、および一定水準以上の日本語能力に係る試験に合格していること。
- 転籍が適切であると認められる一定の要件を満たしていること。
があげられます。
具体的な期間や技能水準・日本語能力水準の設定は、人材育成等の観点を踏まえた上で各産業分野で設定されます。
また、現在特定技能制度では、
- 同一の業務区分内での転職
- 試験によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間での転職
のいずれかの場合が認められています。
育成就労では日本での就労期間や就労を通して習得した技術・日本語能力等の水準が重視されるのに対し、特定技能は取得した在留資格で定められた業務区分が転職時には関係してきます。
新制度下での支援内容と登録支援機関の役割の具体的な変更点

技能実習を始めとする従来の外国人雇用に関する制度が抱えていた課題を解決するために、育成就労は作られた制度です。
そのため、これまで特定技能外国人の雇用をサポートしてきた登録支援機関の役割も、制度施行の前と後とで変化が生じます。
新制度下での役割はどう変わる?
外国人材の人権を保護すると同時に、日本国内の労働力確保を目的とした育成就労制度下では、登録支援機関には従来の特定技能・受入機関双方に対するサポートに加え、より高い水準での中立性の維持や費用等の透明化が求められます。
支援業務の委託先が登録支援機関に限定される
従来は受入機関は、登録支援機関以外にも支援業務を委託することが可能でしたが、改正法の下では委託先が登録支援機関のみに限定されます。
これまで登録支援機関としての登録を受けていない機関に支援業務を委託していた受入企業の場合、改正法の施行後は委託先を登録支援機関に変更するか、自社で支援業務を行う必要があります。
なお、制度移行の経過措置として改正法が施行されるタイミングで登録支援機関以外に支援業務を委託している場合は、支援対象となっている特定技能1号の外国人が、改正法の施行後最初に在留期間の更新申請を行うまでの間は、引き続きこれまでの委託先に支援業務を委託しても問題ありません。
在留期間の更新申請をするタイミングで、委託先を登録支援機関に切り替える必要があります。
現在支援機関としての登録を受けていない、支援業務を受託している機関は、改正法の施行に合わせて適切な対応が求められます。
登録要件の厳格化
育成就労制度下では、これまでよりも登録支援機関になるための登録要件が厳格化されることになります。
例えば職員の配置体制、財政基盤、相談対応体制等の基準が今よりも厳しくなります。
また、現在も受入機関や登録支援機関には特定技能外国人の雇用や支援状態に関する各種届出が義務付けられていますが、改正法の施行後は届出の内容が一部変更となります。
支援実績・委託費等の開示の義務付け
新制度の下では、受入機関は支援実績や委託費等の開示が義務付けられることになります。
支援業務委託先となる登録支援機関は、受入機関に課せられた義務に対し、適切な対応が求められます。
特定技能外国人に対するキャリア形成の支援実施
日本で働く特定技能外国人のキャリア形成支援も、受入機関は新制度下では実施が求められます。
また、これまでも特定技能外国人の転籍・転職は認められていましたが、事実上不可能であるという課題がありました。
日本で働く外国人のキャリア形成を促すためにも、改正法施行後は特定技能外国人が転籍しやすい仕組み作りが進められます。
自治体の共生
日本で働く外国人と、外国人の活動・居住地域に住む日本人の双方が快適に生活できるよう、支援計画は地方公共団体が実施する共生社会の実現のための施策を踏まえたものである必要があります。
支援計画は特定技能1号の外国人が活動する事業所の所在地及び居住地が属する市町村が実施する共生社会実現のための施策を確認した上で作成されなければなりません。また、在留書申請の際に地方出入国在留管理局に提出する必要があります。
実際に支援計画を作成するのは受入機関ですが、支援計画作成をサポートする登録支援機関は適切に対応する必要があります。
新制度の施行にあわせて求められる対応

育成就労制度が施行されると同時に、特定技能制度も従来とは異なる対応が求められることになります。
ただし、法律を改正し、施行する政府は移行期間を十分に確保するとともに、関係各機関に対し丁寧な事前広報を行うものとされています。
制度の移行に際して現行制度の利用者等に不当な不利益が生じないよう配慮するため、必要な経過措置も十分に設けられるでしょう。
スムーズに制度が移行できるよう、制度の移行に際して従来の届出や手続き内容に大幅な変更を加えるのではなく、煩雑な手続きが生じないよう配慮もなされるものと想定されます。
ただし、定期届出の頻度と届出内容および必要書類の書式が変更されることはあるため、届出を行う際に出入国管理庁のホームページ等はチェックしましょう。
新制度育成就労はいつ始まる?
新制度育成就労は2027年(令和9年)6月までの施行を予定しています。
同時に技能実習制度は廃止され、特定技能制度も一部内容が変更されます。
まとめ
育成就労制度がスタートするのに伴い、特定技能制度も内容の変更点が生じます。支援内容にもいくつか変更点があり、これまで受入機関から支援業務を受託していた登録支援機関も対応が求められることが考えられます。
さらに登録支援機関は従来よりも認定基準が厳格化され、中立性・独立性が求められます。
登録支援機関は新制度・改正法の施行にスムーズに対応できるよう体制を整えましょう。