宿泊業業界で特定技能外国人を採用する方法

宿泊業業界で特定技能外国人を採用する方法

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特定技能「宿泊」とは

特定技能「宿泊」とは

2019年4月新設の「特定技能」により、外国人の就労制度に変革が起こりました。
特に宿泊業界では、人手不足解決のメインの1つとなっています。
即戦力となる外国人人材が、ホテルや旅館などのフロントを担当したり、宿泊施設での食事の準備や配膳、施設内の接客ができるようになったためです。
本記事では、コロナの終息後に人手の需要が爆発的に高まる宿泊業界で、即戦力となる特定技能「宿泊」について解説いたします。

宿泊業界の現状

宿泊業界の現状

宿泊業界の現状について、簡単に解説します。

人手不足

ホテル・旅館などの宿泊業界は、慢性的な人手不足に悩まされています。
少子高齢化により、どの業界でも人手不足が叫ばれてはいます。しかし、宿泊業界は特に顕著です。
日本商工会議所の調べでは、約8割の宿泊業の企業が人手不足に悩まされており、これはほかの業界に比べて突出しています。
例えばインターネットショッピングなどで、人手不足に拍車がかかる運輸業や、若者離れが続く建設業などを抑えて、この宿泊業界の人手不足は最も深刻です。
宿泊業分野での有効求人倍率は6倍以上という異常値をつけており、なかでも飲食物給仕係の不足が深刻です。飲食物給仕係に限ると、有効求人倍率は7倍を超えています。
満室にならないようにしている宿泊施設も多くある現状です。

改善の見込みがない

人手不足はますます深刻化すると考えられています。
2030年には8万5千人の人材不足に陥ると予測されています。
賃金も面において宿泊業界は全産業の平均に比べて低水準であり、また朝が早かったり夜勤があったりする勤務形態なため、今後も若者の人気が集めにくい業界であるためです。
またサービス業全体の人気低迷のほか、インバウンド客数の増加も見込まれており、訪日客数は、2012年からコロナ前の2019年の間に約3.8倍にもなりました。
国が政策によりますます増加させる考えを表明しており、アジア各国の成長も続くため、今後ますます訪日客は増加すると予測されています。
このこと自体は喜ばしいことですが、訪日客の増加によって、人手不足に拍車がかかり、長時間労働に繋がっているという意見もあります。

特定技能「宿泊」はこのような深刻な人手不足解消のために、新設されました。

特定技能「宿泊」で従事できる業務

特定技能「宿泊」で従事できる業務

特定技能「宿泊」では、宿泊施設にかかわる幅広い業務に従事できます。
例えば宿泊施設のフロント、また宿泊プランに関する企画・広報、さらに接客や宿泊施設での料理の下処理や配膳などに従事できます。
具体的には、以下のA~Dの業務になります。

フロント業務

ホテルや旅館の受付業務に従事できます。
チェックインやチェックアウト、また周辺の観光地の案内や、ホテルのツアーの手配などにも従事可能です。

企画・広報業務

企画では、キャンペーンや特別な宿泊プランの提案ができます。
広報業務では館内の案内チラシを作成したり、ホームページやSNSで情報発信をしたりすることができます。

接客業務

館内の案内をしたり、問い合わせの対応をしたりすることができます。

レストランサービス業務

こちらでは料理の下ごしらえ(野菜を切る、刺身を盛り付けるなど)や、料理の配膳や片付けなどを行うことができます。このレストランサービス業務こそ、宿泊業界で最も人手が不足しているため、特に需要が大きい業務になります。

関連業務

関連業務として、ベッドメイキングや掃除などの単純労働も行うことができます。
これら単純労働にも従事できるところが特定技能「宿泊」の強みです。
ホテルで外国人人材が就労するためのビザに「技術・人文知識・国際業務」がありますが、こちらではベッドメイキングや掃除、また配膳などの単純労働を行うことができません。
単純労働も含む幅広い業務に従事できるところが特定技能「宿泊」の強みの1つです。

ただ注意点があります。
ベッドメイキング業務に従事はできますが、あくまで「関連業務として」であり、これをメインにすることはできません。
また旅館やホテルでの仕事は可能ですが、ペンションやキャンプ場、民宿などの簡易宿泊所、また下宿などでの仕事は「接待」という扱いになってしまいます。ですので、それら施設では以上の業務に従事することができません。

雇用形態・報酬※

フルタイムの直接雇用のみ許可されています。
農業などの一部業種では派遣雇用が認められていますが(農閑期があるため)、宿泊業界では直接雇用以外認められていません。

また報酬は日本人と同額を支払う必要があります。
能力で差をつけることは問題ありません。ですが「外国人である」ことを理由に低賃金にすることは許されません。

雇用期間※

在留期間は通算5年です。
「通算」ですので2年働き、1年間帰国するなら、日本に再入国後3年働くことができます。

受け入れ人数※

技能実習の場合と違って、特定技能では介護と建築以外では、会社ごとの受け入れ人数は決まっていません。

雇用するためにかかる費用※

特定技能外国人の雇用のためには、雇用前・雇用後でそれぞれ費用がかかります。

雇用前にかかる費用※

  • 送り出し機関への手数料:20~40万円
    海外から呼び寄せる場合にはこれくらいかかり、呼び寄せる国によって金額が前後します。
  • 人材紹介会社への手数料:30〜90万円
    年収の10〜30%がかかります。上記金額は年収300万円の場合の金額です。
  • 在留資格申請の委託費:10~20万円

雇用後にかかる費用※

  • 登録支援機関への支援委託費:年間24~36万円
    一人当たり月2~3万円の計算です。
  • 在留資格更新申請に関する委託費:5万円〜15万円

特定技能1号「宿泊」の取得方法

特定技能1号「宿泊」の取得方法

特定技能「宿泊」の取得方法について解説いたします。

「特定技能評価試験」に合格する

在留資格「特定技能」を取得する方法は2つあります。
1つ目は特定技能評価試験及び日本語試験にパスすることです。
「特定技能」の対象14業種が、それぞれの専門分野で試験を実施しています。
「宿泊」の場合は一般社団法人 宿泊業技能試験センターが実施する「宿泊業技能 測定試験」にパスしなければなりません。

「宿泊」分野特定技能評価試験

宿泊分野の技能測定試験は、下記の5つの分野に分かれています。

  • 「フロント業務」
  • 「広報・企画業務」
  • 「接客業務」
  • 「レストランサービス業務」
  • 「安全衛生その他基礎知識」

特定技能評価試験は日本国内でも、国外でも開催されています。
合格率は毎年だいたい40%ほどです。

過去の問題を一般社団法人 宿泊業技能試験センターのホームページから見ることができます。

日本語試験※

日本語能力を測る試験には以下の2種類あります。

  • 国際交流基金日本語基礎テスト
  • 日本語能力試験

難易度はほぼ同じでどちらかに合格すれば大丈夫です。

国際交流基金日本語基礎テストでは、日本語での日常会話の力を測定します。日本で日常生活を送るうえで問題ないレベルの日本語が話せるかをチェックされます。

日本語能力試験には、レベルは5段階あります。最も易しいN5は日本語の基礎、N1では高いレベルの日本語力が問われます。この日本語能力試験を選んだ場合には、N4に合格することが必要です。N4では、日本語で日常会話がある程度できること、簡単な日本語の文章だったら読めることができるかをチェックされます。

これらの試験は年2回のペースで開催されています。

技能実習2号を良好に修了※

2つ目の方法は、技能実習2号からの移行です。
技能実習とは日本の技術を海外の人材に教える研修制度で、技能実習生であるなら無試験で移行が可能です。

「良好に修了」について、少し解説します。
これは技能実習を2年10ヵ月以上で修了し、技能検定3級に合格していることを指します。もしくは、技能検定3級相当の技能実習評価試験の実技試験に合格している場合も「良好に修了」扱いになります。
また技能実習生に関する評価調書の書面がある場合にも「良好に修了」扱いになります。

ただ宿泊分野では、2020年に技能実習2号が開始されたため、移行は今年2023年からとなっています。

特定技能外国人を受け入れるには※

宿泊分野で、特定技能外国人を受け入れる方法を解説いたします。
以下3つの条件を満たす必要があります。

受け入れ体制を整える※

まず、受け入れ態勢を整える必要があります。
具体的には、日本での生活に困らないように、入国前の事前ガイダンスをはじめ、出入国送迎、住居の確保、生活オリエンテーション、日本語学習、日本人との交流促進、相談苦情対応などの支援です。
これらの義務的支援は、過去2年間、外国人材の受け入れ実績がない場合には登録支援機関に委託する必要があります。

宿泊分野特定技能協議会に加入

国土交通省が設置する「宿泊分野特定技能協議会」へ加入しなければなりません。
この協議会は、特定技能「宿泊」制度を、適切かつスムーズに運用するための組織です。
また加入後は、必要な協力を同協会に行う必要があります。

特定技能「宿泊」外国人を受け入れる際の注意点

特定技能「宿泊」外国人を受け入れる際の注意点

特定技能「宿泊」外国人を受け入れる際には、いくつか注意点があります。
まず、就労ビザを申請する際には、審査が必要になることがあります。
技能実習の場合には、事業協同組合が、まとめて申請をしていました。しかし特定技能の場合には、受け入れ側のホテル・旅館などが、個別に申請をしなければなりません。
そのため、申請を行うホテル・旅館に審査がはいります。
このとき、経営状態によっては、審査に時間がかかる可能性もありますので注意が必要です。

まとめ

宿泊業界で、特定技能外国人を採用する方法をまとめます。
特定技能「宿泊」とは、宿泊業界で、外国人人材を雇用するための制度です。

宿泊業界の現状

現在、宿泊業界は、深刻な人手不足に陥っています。
宿泊業全体の平均有効求人倍率は6倍以上となっており、今後、インバウンドでますます観光客が増加することも考えると、人材確保は急務です。このままでは、2030年には8万5千人の人材不足に陥ると予測されています。

その状況を打破するため、特定技能「宿泊」が新設されました。

従事可能な業務

特定技能「宿泊」では、フロント業務、企画・広報業務、接客業務、レストランサービス業務、また関連業務に従事可能です。
関連業務では、ベッドメイキングや掃除などの単純労働に従事可能ですが、これらがメイン業務となることはルール違反です。

雇用形態・報酬・雇用期間

フルタイムの直接雇用のみ許可されており、報酬は日本人と同等額以上を支給しなければなりません。また雇用期間については、通算5年間です。

「宿泊」の取得方法

特定技能「宿泊」を取得するには、「宿泊」分野特定技能評価試験及び日本語試験に合格する必要があります。ですが現在技能実習生であるならば、技能実習2号を良好に修了すれば、特定技能に無試験で移行することができます。

特定技能外国人の受け入れ

特定技能外国人を受け入れるためには、受け入れ態勢を整える必要があります。
具体的には入国前の事前ガイダンス、出入国送迎、住居の確保、生活オリエンテーション、日本語学習、日本人との交流促進、相談苦情対応などの、義務的支援です。
また義務的支援を整えると同時に、宿泊分野特定技能協議会への加入も必須です。

特定技能外国人人材を受け入れるためには、守るべきいくつものルールが存在しています。ですので人手不足に悩んでいる場合には、特定技能外国人の登用は有効な手段ですが、ルール違反やトラブルにならないよう注意が必要です。

この記事を書いたライター
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カナエル運営事務局

外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。