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特定技能「農業」とは
特定技能「農業」は、外国人が農業分野の業務に従事できる在留資格です。この特定技能は、学歴や母国での従事経験不要で取得することができるため、農業分野で即戦力となる外国人の就労を狙うことができます。
そのため農業分野で就労している外国人労働者は、2022年時点で4万3500人で、5年間で約1.6倍に増えました。農業分野での日本国内の受け入れ上限人数は5年間で最大34万5150人で、2022年12月末での特定技能外国人の受け入れ総数は130,915人、前年より約50%も増加しています。
2019年に制度が変わり、特定技能試験のため短期の滞在資格で来日したとしても受験ができて、合格したあとすぐ特定技能で働くことも可能になりました。この制度変更などもあり、今後ますます増加が見込まれています。
農業分野の現状と、特定技能が許可されたワケ
人手不足
農林水産省のホームページによると、日本人の農業従事者は減少し続けていて、2005年には224万1千人でしたが2015年には175万7千人、2020年には136万3千人にまで減少しています。15年で40%近く減少、人数で言えば100万人近くが離職しています。
農業は、天候の影響を受けるために収入が不安定であること、土地や農機具などの固定費が多くて新規参入が難しいこと、主に以上2点の理由から若者の人気がないと言われています。
また肉体労働が多く、一部業務が重労働であるという面も、敬遠される理由となっています。
そのために有効求人倍率は2018年の時点で農耕作業員で1.72倍、養畜作業員で3.11倍と非常に高くなっています。農業就業者の減少には歯止めがかかる見込みがなく、経営規模の拡大なども進展しているため、需給のバランスは悪いまま、有効求人倍率は今後も上がっていく可能性が高いです。
高齢化
多くの業界が高齢化に悩まされていますが、特に農業分野の高齢化問題は深刻です。
2020年の時点で、基幹的農業従事者の平均年齢は67.8歳、65歳以上が約7割を占めています。一方で49歳以下はわずか11%となっています。収入の不安定さ、また固定費が多く新規参入が難しいため若手就業者が減少し続けているためです。
特定技能で対象としている業務内容
耕種農業全般
耕種農業全般に従事できます。
具体的には、田畑を耕して、種を撒いて作物を栽培する農業です。「施設園芸」「畑作・野菜」「果樹」などが対象です。より簡単に言えば野菜などや果樹の栽培になります。栽培管理の業務が含まれているなら関連業務として集出荷・選別をすることもできます。
畜産農業全般
養豚や養鶏、酪農に従事できます。
こちらも関連業務として飼養管理の業務が含まれているなら集出荷・選別をすることができます。
関連する業務
同じ業務をする日本人が通常行う農畜産物の製造や加工、運搬、販売、冬場の除雪作業などにも従事できます。
雇用形態・報酬
農業では「直接雇用」と「派遣形態雇用」の2種類の雇用形態が許されています。
特定技能分野では、派遣での雇用は基本的には認められていませんが、農閑期などが存在するために、農業分野においては派遣での雇用を認めるほうがよいと判断されているためになります。
派遣で雇用することができる点は、多くの農家にとってありがたい部分だと思いますが、直接雇用の場合にも、この派遣雇用の場合にも、いくつか満たさねばならない条件があります。
直接雇用
直接雇用するには
①「農業特定技能協議会」に入会し、協議会に必要な協力を行うこと
②過去5年以内に労働者を6カ月以上雇用した経験があること
③「誓約書」の作成と地方出入国在留管理局への提出
以上の3点を満たしている必要があります。
また労働契約を結ぶ際には、賃金やその支払い方法はもちろん、就業期間や始業終業の時間、休日や休暇に関する事項を書面により明示しなければなりません。
派遣形態雇用
派遣形態で雇用する場合には
①過去5年以内に労働者を6カ月以上雇用した経験があること
または、派遣先責任者講習などを受けた者を派遣先責任者に選任していること
②派遣事業者を通す場合、派遣事業者と労働者派遣契約を結ぶこと
③「誓約書」の作成と地方出入国在留管理局への提出
以上3点が必要です。
また派遣事業者は、労働や社会保険などのルールを守っていることのほか、過去1年以内に特定技能外国人が従事する職種と同じ業務の労働者を離職させていないことなど、いくつかの厳しい条件を満たしていないと特定技能外国人の派遣はできません。
報酬※
報酬は当然、日本人と同じ額を支払わねばなりません。能力で差をつけることはできますが「外国人である」ことを理由に低賃金にすることは、外国人差別になりますのでできません。
そのため特定技能外国人を雇うにあたって受け入れ先企業は「日本人の報酬と同じ、もしくはそれ以上であること」を文章で作成し特定技能外国人に示す必要があります。
特定技能「農業」 を取得するためには?
農業分野の2号技能実習を良好に修了※
農業分野の技能実習2号までを良好に修了している場合には、必要な技能水準・日本語能力水準を満たしていると判断され、技能試験・日本語試験なしで1号特定技能に移行できます。ちなみに「良好に修了」とは技能実習を2年10ヵ月以上で修了し、技能検定3級に合格していることです。
例えば、いま受け入れている技能実習生を受け入れ続けたい場合や、過去に受け入れをしていた技能実習生を呼び戻すケースなどがこれにあたります。
すでに日本の農業の状況を理解している従業員であるため、新しく雇い入れる特定技能外国人よりハイスキルの仕事を任せることができる場合が多いです。
技能試験&日本語試験に合格※
農業分野の技能実習生でない場合には、農業の基礎知識をチェックするための農業技能測定試験、また日本語能力試験に合格しなければなりません。
日本語試験
日本語試験には2種類あり、国際交流基金日本語基礎テストと日本語能力試験、どちらかで合格点が必要です。
技能測定試験
農業技能測定試験は「畜産」と「耕種」の技能分野に分かれています。
試験時間はだいたい1時間程度です。
日本語音声を聞くリスニングテストと、学科試験、実技試験で、全部で約70問ほど出題されます。
問題内容は日本の農業分類、植物の仕組みから、農機の使用方法、出荷や収穫、施設園芸や果樹までとなっており、農業の基本的な知識をしっかりもっているか確認されます。
農業技能測定試験の詳細はASATのページから確認できますのであわせてご参照ください。
特定技能「農業」外国人を採用するには
受け入れ先企業が、特定技能外国人と雇用契約を結ぶためには、下記のAとBの二つを満たさねばなりません。
農業特定技能協議会に入会
特定技能外国人を雇用した場合には、受け入れをしてから4か月以内に、農業特定技能協議会への入会が必要です。農林水産省のこちらのページから入会申し込みをすることができます。申請してから1〜2週間程度で、登録したメールアドレスに「加入通知書」が送付されます。
会費などは無料ですが、同協議会の活動に、必要な協力を行わなければなりません。
もし4ヶ月以内に農業特定技能協議会に加入していない場合には、特定技能外国人の受入れができなくなります。
なお申請時には、特定技能人材向け在留カードの交付日、また在留カード番号を記入する必要があるため、受け入れ前に申し込みを行う必要はありません。
支援体制を整える※
特定技能外国人と直接雇用契約を結ぶためには、日本での生活に困らないように義務的支援を行わねばなりません。
具体的には、入国前の事前ガイダンスをはじめ、出入国送迎、生活オリエンテーション、日本語学習、相談苦情対応などの支援です。過去2年間、外国人材の受け入れ実績がない場合には、登録支援機関に委託する必要があります。
特定技能「農業」の特徴
技能実習と比較しながら、特定技能「農業」について解説します。
受け入れ人数の上限がない
技能実習生と違い、受け入れ上限がありません。
技能実習生の場合には、たとえば夫婦2人で農業をしている農家の場合は、1号実習生は2人までしか受け入れできません。
ですが特定技能「農業」の場合には、1事業者あたりの受け入れ人数の上限がありませんので、足りない労働力をしっかり確保することができます。
業務範囲が広く期間が長い
特定技能「農業」には日本語が流ちょうに話せる留学生や、技能実習生から移行してきた外国人も含まれています。日本語能力が高かったり、仕事がスムーズにこなせたりする特定技能外国人には、技能実習生の管理などの業務を任せることもできます。
また技能実習生は、原則3年までしか働けませんが、特定技能外国人の場合には5年間働くことができます。
またこの5年間は通算の期間になりますので、農家の繁忙期に半年だけ来日し、農閑期に帰国するというスタイルを繰り返し、通算10年間勤務することも可能です。
まとめ
今回の記事の内容を簡単に振り返ります。
特定技能「農業」とは
農業分野の人手不足を解消するため、外国人が農業分野の業務に従事できるようにした在留資格です。学歴や母国での従事経験などが不要で取得するできるため、即戦力となる外国人の就労が狙えます。
農業分野での日本国内の受け入れ上限は5年間で最大34万5150人です。
農業分野の現状
農業従事者は減少し続けていて2020年には136万3千人にまで減少していて、15年で40%近く減少、人数で言えば15年間で100万人近くもの労働力が減少しています。
農業は天候の影響を受けるために収入が不安定であり、土地や農機具などの固定費が多くて新規参入が難しい、また肉体労働が多いこともあり、有効求人倍率は2018年の時点で農耕作業員で1.72倍、養畜作業員で3.11倍と非常に高くなっています。
高齢化も進んでおり、2020年の時点で、基幹的農業従事者の平均年齢は67.8歳、65歳以上が約7割、一方49歳以下はわずか11%です。
対象の業務内容
耕種農業全般、畜産農業全般、関連する業務に従事できます。
耕種農業全般は、具体的には「施設園芸」「畑作・野菜」「果樹」です。
畜産農業全般は、養豚や養鶏、酪農のことです。
また関連業務として、日本人が通常行う農畜産物の製造や加工、運搬、販売の作業、冬場の除雪作業などにも従事できます。
雇用形態・報酬
農業では特定技能では珍しく、農閑期などが存在するために、「直接雇用」と、「派遣形態雇用」の2種類が許されています。
報酬は日本人と同じ額を支払わねばなりません。「外国人である」ことを理由に低賃金にすることはできません。
特定技能「農業」を取得する方法
特定技能「農業」を取得する方法は2つあります。
まず農業分野の2号技能実習を良好に修了することです。
技能実習生でない場合には、技能試験と日本語試験に合格すれば、特定技能を取得できます。
特定技能「農業」外国人を採用する方法
特定技能外国人を雇用した場合には、受け入れをしてから4か月以内に、農業特定技能協議会に入会して同協議会の活動に必要な協力を行わなければなりません。
また、特定技能外国人と直接雇用契約を結ぶためには、日本での生活に困らないように支援を行う義務を負うことになりますので、受け入れ態勢を整えなければなりません。
特定技能「農業」の特徴
技能実習生と違い、受け入れ上限がなく通算5年間働くことができます。そのため繁忙期に半年だけ来日して、農閑期に帰国するというスタイルを繰り返し、通算10年間勤務することもできます。