現在日本では年々国内だけで十分な労働力を確保することが難しくなりつつあり、不足している労働力を解消する方法の一つとして外国人材が注目されています。
外国人の雇用には労働力の確保だけでなく、組織の活性化や海外進出の足がかりが得られるなどのメリットがあります。
日本人とは異なる手続き等が必要となる外国人を雇用する場合、人材の特性を深く理解することが重要です。
この記事では外国人を雇用する際に知っておきたいメリット・デメリットなどの特徴や、就労が認められている在留資格の種類、採用までの流れなどを解説します。
目次
外国人を雇用している企業が増えている背景
現在日本では少子高齢化が進んでおり、国内での労働力確保が年々難しくなりつつあります。
日本国内の人材だけでは産業を維持・発展させることが難しいことから、海外の人材を頼らなければならない状態に陥っている産業も少なくありません。
一方で海外にはまだ少子高齢化が進んでおらず、若い働き手が確保しやすい国や地域も存在します。外国に出稼ぎに行くことに対する心理的ハードルが低い国も多いです。
海外人材に目を向ける日本の企業が増えている背景には、こうした双方の事情が存在します。
外国人を雇用するメリット
外国人を雇用することには、日本人を雇用する場合とは異なるメリット・デメリットが存在します。
以下ではまず、外国人を雇用するメリットについて解説します。
1.若い労働力を確保しやすい
現在先進国を中心に少子高齢化が進んでおり、少子高齢化は世界的な課題として取り上げられることも少なくありません。
一方でまだまだ人口が増え続けている国や地域も存在し、そうした国の中には海外に出稼ぎに出ることは大して珍しいことではないと考えている国も多いです。
少子高齢化が進んでおらず、海外への出稼ぎに対する心理的ハードルが低い国や地域では、国内で採用活動をするよりも若い労働力が確保しやすいこともあります。
2.職場の活性化
異なる文化的・価値観的背景を持つ外国人は、日本人だけで話し合っていても生まれることのないアイディアをひらめくことがあります。
同質な者同士で構成されたままでは組織が次第に凝り固まるものです。適度に異なる価値観を持つ人材を取り入れることで、課題を解決し、時代の波に乗ることができるようになります。
また、組織内で生き生きと働いている外国人材の姿は世間に対し好印象を与える効果が期待できるため、昨今世界的に重視されている多様性の観点からも、外国人を雇用するメリットはあります。
3.海外進出の際の足がかりになる
海外の人材を雇用するためには登録支援機関や現地の送出し機関などさまざまな人や機関、組織と関わることになります。
そのため海外の人材を一人雇用することで、同時に多くの人脈を得られるかもしれません。そうして得られた人脈の中には海外進出の足がかりになる可能性があります。
今後海外進出も検討している企業の場合、積極的に海外の人材に目を向けることをおすすめします。特に進出検討先の国や地域から人材を確保すると、有効な人脈を得やすいです。
外国人を雇用するデメリット
一方で外国人を雇用する場合は日本人を雇用する場合とは異なる手続きが必要になります。また、日本人とは異なる価値観・労働観を持つからこそ起こりうるトラブルも少なくありません。
以下では外国人を雇用することのデメリットについて解説します。
1.煩雑な手続きが多く適切な知識を身につける必要がある
外国人を雇用する場合、出入国管理庁など関連省庁での手続きが必要になります。作成しなければならない書類が増え、担当者の業務の負担となり、他の業務を圧迫するケースも少なくありません。
こうした外国人の雇用関連の業務を簡略化させるために専用のサービスを使うなどの工夫が必要です。
手続き関連を中心に、外国人を雇用する場合は日本人を雇用する場合とは異なる知識を身につける必要があります。
2.文化・価値観・言葉の違い
日本人とは異なる文化・価値観を持ち、使う言葉も異なる外国人と信頼関係を築くためには、相手の文化や価値観を理解するよう努めなければなりません。
例えばイスラム教徒を雇用する場合、食事やお祈りの時間の確保などの配慮が必要になることもあります。
また、外国人は日本人よりも給料を重視する傾向があり、残業に対する考え方も大きく異なります。むやみに日本の労働観を押し付けるのではなく、相手の労働観を理解した上で接するよう心がけましょう。
3.生活面でのフォローが必要な場合も
慣れない土地で生活することに、不安を抱いている外国人は少なくありません。また、日本での風習に慣れないまま生活したことによる近隣住民とのトラブルも実際発生しています。
外国人を雇用する場合、職場だけでなく生活面でのフォローが必要になることも多いです。
そのため特に特定技能として雇用した外国人の場合は、事前ガイダンスの実施や住居確保・生活に必要な契約に際しての支援など、義務付けられている「支援」が設けられています。
生活上の不安を抱えたまま解消できずにいる外国人は犯罪や病気につながるリスクもあるため、親身に寄り添う必要があります。
外国人を雇用する際の注意点
上記のように外国人の雇用には日本人の雇用とは異なる特徴が存在します。実際に雇用する場合はそうした特徴をおさえた上で雇用するようにしましょう。
以下では外国人を雇用する場合の注意点を3つ紹介します。
待遇内容は日本人と同等のものに
外国人を雇用する場合であっても、労働条件および給料などは日本人と同等以上に設定しなければなりません。給料を安く設定したり、労働条件が異なる場合、違法行為とみなされ罰則の対象となる恐れもあります。
相手が外国人であっても日本で働く以上、日本の労働基準法をはじめとする労働法等だけでなく、2020年4月に厚生労働省から出された「同一労働同一賃金ガイドライン」も適用されます。
雇用する前に在留資格は必ずチェックする
在留資格は外国人本人が日本に来た目的に応じて出されるものであり、外国人は取得した在留資格に応じた「活動」のみが認められることになります。
例えば留学のために日本に来た外国人は留学生の在留資格を取得します。留学の在留資格では「留学」という活動のみが認められることになる反面、日本企業で会社員として働くことは「就労」にあたるため認められないことになります。
また、就労が認められている在留資格は複数あり、外国人は業務内容や求められるスキル水準に応じた在留資格を取得しなければなりません。実際の業務内容と在留資格の内容が一致していない場合は不法就労とみなされ罰則の対象となる恐れもあります。
雇用側は求める人材像に見合った在留資格を取得した外国人を雇用しなければなりません。実際に雇用する前に相手の外国人が取得した在留資格を必ずチェックしましょう。
差別のない職場環境作り
出自や人種、宗教による差別のない職場作りは、あらゆる事業者に法律で義務付けられています。
実際の現場だけでなく、採用の際にも相手の国籍などを理由に条件を他の従業員と異なるものにしたり採用・不採用を決めてはいけません。
ただし、国籍などの確認が禁止されているわけではないため手続き等に必要な個人情報をチェックすることは可能です。逆にそうしたチェックを怠り、不法就労させた場合は罰則の対象となる恐れがあります。
就労可能な在留資格の種類
在留資格の中には就労が認められているものと、認められていないものが存在します。
特に、
- 留学
- 研修
- 家族滞在
の在留資格は資格外活動許可がない状態では就労することはできません。
就労に関する在留資格は以下の通りです。
- 特定技能
- 技能実習(育成就労)
- 介護
- 高度専門職
- 経営・管理
- 法律・会計業務
- 医療
- 研究
- 教育
- 技術・人文知識・国際業務
- 企業内転勤
- 興行
- 技能
- 特定活動
その他、
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
は就労に関する在留資格ではありませんが、就労に制限がないため雇用できます。これらの在留資格は他の就労に関する在留資格とは異なり、業務内容などによる制限もないため幅広い業務に従事することが可能です。
外国人採用までの流れ
求人する業種や業務内容、相手の在留資格の種類によって採用までの流れは異なりますが、以下ではおおよそ全ての在留資格で共通する採用までの流れを解説します。
1.求人する業務内容の確認
在留資格は取得者本人の日本での活動に応じて発行されるものであるため、雇用側は任せたい業務内容に対して適切な在留資格を持った外国人を雇用しなければなりません。在留資格で認められていない業務に従事させた場合不法就労と見なされる恐れがあります。
そのため外国人の採用を検討する場合は、まずは任せたい業務の種類や内容、業務範囲をチェックしましょう。業務内容や範囲が明確になると、求める人材像が明確になります。
2.求人・採用活動
求める人材像が明確になったら実際の求人・採用活動を始めます。
求人サービス・サイトの活用や、現地の送り出し機関と連携することで採用活動がスムーズになります。
特定技能の場合、人材紹介サービスも提供している登録支援機関を利用すると求人以外の特定技能の採用に関わる手続き等のサポートも受けられることもあります。
3.在留資格の確認
気になる人材を見つけたら任せたい業務内容や範囲に適合しているかどうか在留資格の確認をしましょう。
まだ適切な在留資格を取得していない場合は雇用するまでの間に取得できるよう手続きをする必要があります。
他にもすでに日本におり、他の在留資格を取得している場合でも適切な在留資格に移行する必要がある場合もあります。
4.雇用契約の締結
人材が見つかったら日本人を雇用する場合と同様、相手の外国人と雇用契約を結びます。
5.手続き等
海外にいる外国人を雇用する場合は在留資格の取得および入国するために必要な手続きをします。
日本国内にいる外国人の場合も在留資格の移行等の手続きをしましょう。
6.雇用
手続きが完了し、雇用側も労働者側も働く準備が整ったら雇用がスタートします。
特定技能・技能実習を雇用する場合に便利なオンラインクラウドツール「dekisugi」
外国人を雇用する際には日本人とは異なる手続きが必要になるため、雇用した結果担当者の業務の負担が増えてしまうということも珍しくありません。
「dekisugi」はこうした課題の解決をサポートするオンラインクラウドツールです。
手続きで必要な書類の作成や、データの管理だけでなく、複数の担当者間でタスク管理やスケジュール管理が行えるなど、外国人雇用に関する全ての業務を円滑にする機能が備わっています。
さらにアラート機能なども充実しているため在留資格の更新忘れなどを防止することもできます。
業務マニュアルの作成機能や、一連の流れが登録されているなど、初めて外国人の雇用関連の業務に当たる人でもスムーズに進めることができます。
今後特に特定技能などで外国人の雇用を検討している事業者は、ぜひ一度オンラインクラウドツール「dekisugi」を活用してみてください。
まとめ
外国人を雇用することには日本人の場合とは異なる特徴があります。上手に活用し、信頼関係を築くことで人手不足の解消や職場の活性化といった効果が得られます。
実際に雇用する場合はそれらの特徴を把握した上で、メリットを活かしトラブルを予防しましょう。