少子高齢化の影響を受け、日本ではさまざまな産業で労働力が不足しつつあります。
そうした中、現在外国人材は日本の産業を支える上で重要な存在となっている一方で、治安維持に対する不安や、日本人による外国人に対する差別など課題も少なくありません。
現在「外国人」は政治の場でも主要なテーマとして扱われることも増えています。
この記事では日本における外国人に対する世間の意識の変化とその背景について解説します。
目次
国内で深刻化する少子高齢化と外国人の増加
外国人材の活用は、年々深刻化する人手不足を解消し、日本経済を今後も維持・発展させる方法の一つとして現在注目を集めています。
少子高齢化に伴いさまざまな産業で労働力が不足しつつある
近年日本社会では少子高齢化が進んでおり、2025年には全ての団塊の世代が75歳になり、75歳以上の人が全人口の18%を占めることになります。
今後も少子高齢化が進めば、2070年には65歳以上の人が全人口の39%を占め、人口は8700万人まで減少すると予想されています。
このままでは高齢者が増え、生産年齢人口は減る一方です。
すでにさまざまな産業で労働力が不足しており、こうした課題を解決するために女性や高齢者の活用も進められていますが、対策が追いついていないのが現状です。
外国人材による労働力の補填
不足している労働力を補う方法の一つとして現在注目を集めているのが、外国人材の活用です。
技能実習や特定技能といった外国人の雇用制度はすでに幅広い産業分野で活用が進められており、受け入れ企業も増加傾向にあります。特に規模の大きな企業ほど活用が進んでいると考えられますが、今後は従業員数50人以下の企業での活用も広がると見込まれます。
さらに、2027年4月1日に技能実習制度を刷新する形で創設された新制度「育成就労」の施行が決定し、今後は留学生や高いレベルの技術・知識を持った外国人材の活用も進められることが予想されます。
増え続けている外国人
こうした影響を受け、日本国内に在留する外国人は年々増加しており、今後もこの傾向は続くことが予想されます。
日本に住む外国人の出身地と在留資格の内訳
国内の在留外国人の出身地と、在留資格の内訳の構成比は以下のようになっています。
現在出身地別では中国が最も多く、ベトナムがそれに続いています。
新興国での経済成長が一定水準に達すると、国外に出稼ぎに出る人の数が伸び悩むようになるのが一般的です。
そのため、今後も日本国内や現地での経済状況や国際情勢の影響を受け、この割合も変化し、中国は減少する一方で、東南アジア諸国、中央アジアや中東地域からの外国人材の受け入れが進められるのではないかと予想されます。
在留外国人は都市部に集中
国内の在留外国人は増加傾向にありますが、都市部に集中しているという特徴もあります。
東京都をはじめとし、大阪府、愛知県、神奈川県、埼玉県、千葉県などに在留外国人が集中しており、地方に行くほど外国人は少なくなります。
既存の外国人材雇用制度の変遷と課題
これまでにも日本では外国人材が活用されており、その時代の価値観を反映した制度が運用されてきました。
従来の技能実習制度と新制度育成就労
外国人の雇用制度として広く馴染みのあるものとして、技能実習制度があげられます。1993年に創設された技能実習制度は、日本での就労を通して培った知識や技術を母国の発展に活かしてもらうことを目的とした制度でした。
しかし実際には人手不足の解消を目的として活用されていることも多く、理念と実態の乖離が国内外から問題視されています。また、制度の運用上にもさまざまな課題がありました。
こうした従来の外国人の雇用制度が抱えていた課題を解決するため、2027年4月1日に新制度の育成就労がスタートします。
育成就労は従来の技能実習制度にあった国際貢献という目的を見直し、人手不足の解消を目的として活用される制度です。
将来特定技能として日本で働くことを目指すことを前提とした制度であるため、外国人が日本で働きやすくなるだけでなく、日本の受入機関も長期的に人材を確保できるようになります。
特定技能制度の目的と課題
技能実習制度とは異なり、特定技能制度は労働力不足が著しいとされる特定の産業分野における人手不足の解消を目的として、2019年に運用がスタートした制度です。現在は16の産業分野で活用が認められています。
しかし技能実習制度との接続性が悪い、受入機関・外国人材・送出し機関それぞれの費用負担の公平性のなさ、特定技能1号の外国人材に対する支援の実態についてなどの課題が存在します。
今後特定技能制度も産業分野や受け入れ人数の見直しだけでなく、新制度育成就労のスタートと並行して、さまざまな改善が加えられることが予想されます。
在留外国人に対する日本人の感情
外国人材の活用が進むのと同時に、日本国内に在留する外国人は年々増加しています。
外国人を見かける機会が「増えた」と感じている人は87.7%
令和元年に内閣府政府広報室が実施した、「外国人の受入れに伴う環境整備に関する世論調査」によると、
あなたは、日本で外国人を見かける機会について、10 年くらい前と比べて増えたと思いますか。それとも減ったと思いますか。
(ア)増えた
(イ)変わらない
(ウ)減った
(エ)わからない
という問いに対して、87.7%の人が「増えた」と回答しています。
インバウンド需要の高まりやコロナ禍が明けたことも影響
87.7%の人が「増えた」と感じている背景には、日本で働く外国人の増加だけでなく、インバウンド需要が高まり、街中で外国人観光客を見かけることが増えたことによる影響も考えられます。
さらにコロナ禍によって一時入国が制限されていた時期があったことも、反動として「増えた」と感じる原因として考えられます。
外国人が日本で安心して生活できる環境を充実させることに対する意識
また、同調査によると、
あなたは、外国人が日本で安心して生活できる環境はどの程度、整っていると思いますか。
という問いに対し、「充実させる必要がある」「どちらかといえば充実させる必要がある」と回答した人は74.3%であるのに対し、「どちらかといえば充実させる必要がない」「充実させる必要がない」と回答した人は16.5%となりました。
年齢層による考え方の違い
外国人に対する感情や考え方は年齢層によっても異なり、若年層ほど受け入れに対する抵抗が低い傾向があります。
地域社会に外国人が増えることに対する感情
法務省が令和5年に日本人を対象に実施した「外国人との共生に関する意識調査」によると、地域社会に外国人が増えることに対し、全回答者の28.7%が「好ましい」「どちらかといえば好ましい」と感じていると回答しました。
一方で23.5%の人が「どちらかといえば好ましくない」「好ましくない」と回答しており、47.3%の人が「どちらとも言えない」と回答しています。
外国人が増加することについての考え
地域社会に外国人が増加することにより、
- 外国の言葉や文化等を知る機会が増える
- 多様性が生まれる
- 異文化に対する偏見がなくなることにつながる
- 地域の活性化につながる
といったプラスの影響を受けると考える人が半数以上を占める一方で、
- 文化・習慣の違いによるトラブルが生じる
- 言葉の壁によるトラブルが生じる
- 外国人向けサービス(多言語対応等)や教育など、社会的負担が増える
- 緊急時や災害時における地域活動でトラブルが起きないか不安に感じる
といったマイナスの影響について考えている人も半数以上を占めています。
「外国人」のテーマが政治の論点の一つとして注目を集めることも
令和7年の参議院選挙では、各党が「外国人」について触れたことが話題になりました。
先の参院選では外国人政策が論点の1つに
先の参院選では各党が在留外国人に関する政策を打ち出し、「外国人」というテーマがメディアやSNSを賑わせました。
具体的には、
- 外国人に対する社会保険など社会保障の在り方
- 外国人の日本の土地取得や運転免許取得などの制限について
- 不法滞在など外国人の法令違反に対する取締りについて
- 「移民政策」に対する捉え方やその是非について
といった点に触れており、それぞれがさまざまな視点から今後の日本は外国人とどのように向き合うのかについて主張しました。
今後も外国人政策は注目を集め続ける可能性が高い
現在外国人材は日本経済・産業に必要不可欠な存在となりつつあります。さらにインバウンド需要の高まりの影響も受け、今後もさまざまな理由で日本に来る外国人が増えることでしょう。
地域社会に外国人が増えることにはメリット・デメリットの両方があります。そのため政策も日本人と外国人の双方がメリットを受けられるようなものでなければなりません。
今後は日本の政治の場でも外国人政策が重要な争点の一つとして扱われる可能性は非常に高いです。
外国人に対する差別についての意識調査
外国人が身近な存在になりつつある中で、差別も看過できない問題となりつつあります。
差別があると感じている人が68%
法務省が令和5に日本人を対象に実施した「外国人との共生に関する意識調査」によると、68%の日本人が「外国人に対する偏見や差別がかなりある・多少はある」と感じていると回答しました。
これはあくまでも日本人からみた場合の、日本人の外国人に対する差別や偏見についての捉え方であり、外国人同士についての印象ではありません。
差別があると感じる場面
日本人が「外国人に対する差別がある」と感じる場面としては、「仕事を探すとき」が最も高く48.4%が回答しています。
他にも、
- 近所の人との付き合いのとき
- 公的機関(市区町村・都道府県・国)などの手続のとき
- 家を探すとき
に「差別がある」と感じている人の割合は30%以上に上ります。
差別をなくすために
差別をなくすためには、双方が歩み寄る姿勢が重要になってきます。そのため日本人だけが、あるいは外国人だけが差別をなくそうと努力しても望んだ効果は得られません。
同調査では日本人に対し、差別をなくすために自分たちができることと、外国人にしてほしいことについても尋ねています。
自分たちができると考えていること
日本人が外国人に対する差別をなくすために自分たちができると考えていることとしては、「外国人に対する差別意識を持たないようにする」と考えている人が66.2%に上りました。
次いで40%以上の人が「近くの外国人と日常的なあいさつをする」「外国の言葉や文化、習慣を学ぶ」と答えています。
外国人にしてほしいと考えていること
差別をなくすために、日本人が外国人にしてほしいと考えていることとしては、最も多くの77.5%の人が「日本の習慣、生活ルールを守るようにする」と回答しました。
次いで「日本語や日本の文化を学ぶ」と回答した人が60.7%に上ります。
共生社会実現に向けた取り組み事例
年々日本に住む外国人が増えている今、共生社会実現に向けた取り組みも各地で進められています。
以下ではその事例を3つ紹介します。
【愛媛県の今治市】国別サッカー対抗戦
造船業やタオル産業が盛んな愛媛県の今治市では、外国人労働者は産業を支える労働力として欠かせない存在となりつつあります。
しかし外国人労働者は休日も家で過ごすことが多く、余暇を楽しめないという人も少なくありません。こうした状況は外国人の孤立の原因ともなります。
こうした課題を解決するために交流の場を設けようということで、今治市では外国人労働者による国別サッカー対抗試合が開催されました。
【愛知県知多市】児童向けキャリア教育支援
愛知県知多市では児童向けのキャリア教育支援事業として、名古屋グランパス通訳スタッフとして活躍するブラジル人の佐々木トニーユタカさんとの交流・意見交換会が開催されました。
愛知県でも外国人の人口が年々増加しており、学校などの教育現場でも外国にルーツのある児童が増えつつあります。そうした状況下では外国人の生徒だけでコミュニティが形成され、日本人の生徒との交流が促進されないという事態も生じかねません。
この教育支援事業はこうした事態を解消し、日本人も外国人も自分の願うキャリアを描けるということを伝えることが目的です。
地元のスーパーが交流の場になることも
日本有数の競走馬の産地として知られる北海道浦河町では、牧場で働くインド人が増加しています。
生活習慣や食文化が異なるインド人に対し、警戒してしまう日本人も少なくありません。
双方の警戒心を解き、安心して暮らせる社会を実現することを目的とし、浦河町のスーパー「コープさっぽろ・パセオ堺町店」ではインド人の職員を採用しました。
インド人職員はスーパーでのレジ打ちなどの業務だけでなく、インド人利用者から母国語で日常のことを相談できる存在として重宝されています。
まとめ
年々深刻化する少子高齢化の影響を受け、現在日本国内ではさまざまな産業分野で労働力不足が叫ばれています。
外国人材による労働力の補填は先進国を中心に世界中で行われており、外国人材の獲得競争も年々激化しています。
競争を勝ち抜き、日本は外国人材に選ばれる国になるためにも、日本人と外国人の双方が安心して暮らせる社会を実現する必要があります。







