特定技能外国人を受け入れる企業や個人事業主のことを「特定技能所属機関」と呼びます。
特定技能所属機関は特定技能外国人の受け入れに際して、さまざまな書類を出入国在留管理庁に提出しなければなりません。
特定技能所属機関概要書は、受け入れ企業が提出しなければならない書類の一つです。
この記事では特定技能所属機関になるための条件や特定技能所属機関概要書の概要、その他提出が必要な書類について解説します。
目次
特定技能所属機関とは
特定技能外国人の受け入れ企業・機関のことを「特定技能所属機関」と呼びます。
以下ではまず特定技能所属機関の概要やなるための条件等を解説します。
特定技能外国人を雇用する企業や個人事業主
特定技能所属機関は一般的に「受け入れ企業」「受け入れ機関」などと呼ばれることもあります。
特定技能外国人を雇用する企業や個人事業主は雇用する外国人の労働についてだけでなく日常生活に対しての責任があります。
そのため受け入れ企業は労働に関するさまざまな法令はもちろんのこと、出入国管理関係法令を遵守することが求められます。
特定技能所属機関になるには
省令で定められている条件を満たした企業・個人事業主のみが特定技能所属機関として認められます。
以下では特定技能所属機関になる上での条件の概要を解説します。
労働関係および社会保険関係などの法令の遵守
特定技能所属機関として認められるには労働関係および社会保険関係といった、外国人に限らずあらゆる労働者の雇用に関する基本的な法律を遵守してきた実績が求められます。
労働基準法に則った雇用契約を締結しているかどうかや、各種保険の納付を行っているかどうか、国税や地方税の納付を行っているかどうかといったことが重視されます。
これらの実績は、納税証明書などを出入国管理庁に提出することで証明されます。
欠格事由に該当しない
外国人を雇用する場合、受け入れ企業は手続きだけでなく外国人労働者の日常生活の管理もしなければなりません。特定技能所属機関には高いモラル感が求められます。
そのため禁固刑以上や罰金刑に処されているまたは執行が終わってから5年が経過していない機関・個人や、暴力団関係者などは特定技能所属機関になることはできません。
また、出入国関連、労働関連、社会保険および労働保険関連の法律に違反し、罰金刑に処せられた場合も欠格事由に該当します。
必要な実績
法令遵守実績だけでなく、外国人を雇用することについての実績も特定技能所属機関として認められるためには必要になってきます。
具体的には、
- 過去2年間に中長期在留者の受け入れまたは管理を適正に行った実績および適合1号特定技能外国人支援計画の実施に関する責任者と事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任していること。
- 過去2年間に中長期在留者の生活相談業務に従事した経験のある役員または職員の中から支援責任者および事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任していること。
- 出入局管理庁長官が適正に特定技能外国人の支援業務を実施できる能力が1と2と同程度にあると認める場合。
のいずれかが実績として求められます。
特定技能所属機関概要書とは?
以下では受け入れ企業が特定技能外国人を雇用する際に提出しなければならない「特定技能所属機関概要書」について解説します。
必要な書類は大きく3つに分類される
特定技能外国人の雇用に際して受け入れ企業が提出しなければならない書類は大きく3つに分類されます。
- 申請人に関する書類(在留資格や雇用条件、報酬関連などについての書類)
- 所属機関に関する書類
- 分野に関する書類(外国人労働者を雇用する分野についての書類)
特定技能所属機関概要書はこの中の「所属機関に関する書類」に分類される提出書類の中の一つです。
また、受け入れ機関が企業か個人事業主かによっても提出すべき書類が異なるため注意が必要です。
特定技能所属機関概要書は受け入れ企業に関する書類の中の1つ
特定技能所属機関概要書は受け入れ企業についての情報を記入する書類です。役員全員の氏名や、これまでの外国人労働者の雇用実績、売上高、過去1年間の離職状況などについての項目が設けられています。
雇用する特定技能外国人の支援を自社で行う場合は、支援体制についても事業所ごとに記載が求められます。
特定技能所属機関概要書の内容
役員氏名
特定所属機関(受け入れ企業)の役員の氏名と役職。
決算状況
前年度~前々々年度までの決算状況を記入します。
前年度末に債務超過がある場合は第三者による改善の見通しについての評価についての書類を一緒に添付しなければなりません。
評価を行う第三者は中小企業診断士、税理士、公認会計士など企業評価を行う能力があると認められる公的資格をもった人物のことを指します。
基準適合性に係る事項
過去一年の特定技能外国人・日本人の離職率と、直近の一年間の特定技能外国人・技能実習生の行方不明者数を記入します。
中長期在留者の受入れ実績等
中長期在留者の受け入れ実績に関する情報を記入する項目です。
受け入れ人数や法令の遵守実績、支援責任者および支援担当者が過去2年間に中長期在留者の生活相談業務に従事した実績を持っているかどうかなどについて記入します。
実績や支援能力を証明するために別の書類を添付しなければならない場合もあります。
支援体制に関する事項
支援対象者、支援責任者、支援担当者について記載する項目です。設けられた記入欄に記入しきれない場合は「別紙のとおり」と記載し、別途記載した書類を添付した上で提出しなければなりません。
また、1号特定技能外国人支援計画の全ての実施を登録支援機関に委託する場合は記載は不要です。
特定技能所属機関概要書の入手方法
特定技能所属機関概要書をはじめとする提出書類は、出入国管理庁のホームページからダウンロードできます。
在留資格「特定技能」に関する参考様式(新様式)|出入国管理庁
「特定技能所属機関の役員に関する誓約書」とは
特定技能所属機関となる受け入れ企業の役員であっても、役員全員が特定技能外国人の受け入れに関する業務に直接的に関与するわけではない場合もあります。
「特定技能所属機関の役員に関する誓約書」には役員の中でも特定技能外国人に関する業務の執行に関与しない役員の氏名を記載します。
誓約書では、
- 特定技能外国人関連業務の執行に直接的に関与しないものの、誓約書に記載された特定技能外国人の雇用に際する欠格事由に該当する者ではない。
- 今後欠格事由に該当することがあった場合、直ちに出入国在留管理庁に申告するとともに役員の地位を退く必要性。
つまり特定技能所属機関の役員は直接的に業務に関与しなくとも、欠格事由に該当してはならないということになります。
その他受け入れ企業関連の必要書類
特定技能外国人を雇用するために受け入れ企業が作成・提出しなければならない書類は他にもいくつかあります。
以下では提出書類の中でも受け入れ企業関連の書類について解説します。
受け入れ機関が企業か個人事業主かで提出すべき書類が変わる
受け入れ機関が個人事業主の場合登記事項証明書の代りに住民票の写しが必要になるなど
提出すべき書類は異なります。
出入国在留管理庁のホームページで一覧を確認できるため、個人事業主の方はそちらを確認してください。
出入国在留管理庁|在留資格「特定技能」
以下では企業の場合の提出書類について解説します。
法人の場合の必要書類
企業が特定技能外国人を雇用する場合に提出しなければならない書類は以下の通りです。
- 特定技能所属機関概要書
- 登記事項証明書
- 業務執行に関与する役員の住民票の写し
- 特定技能所属機関の役員に関する誓約書
- 労働保険関係の書類
- 社会保険料納入状況回答票又は健康保険・厚生年金保険料領収証書の写し
- 税務署発行の納税証明書
- 納税に関する書類
- 公的義務履行に関する説明書
各書類の主な内容
労働保険関係の書類
労働保険関係の書類は特定技能外国人を初めて受け入れるか、現在受け入れ中かによって必要なものが異なります。
初めて受け入れる場合は保険料等の未納がないことを証明するために労働保険料等納付証明書を提出します。
受け入れ中であり、労働保険事務組合に事務委託していない場合は、
- 労働保険概算
- 増加概算
- 確定保険料申告書(事業主控)の写し及び申告書に対応する領収証書(口座振替結果通知ハガキ)の写し
さらに受け入れ中であり、労働保険事務組合に事務委託している場合は、組合が発行した直近2年分の労働保険料等納入通知書の写し及び通知書に対応する領収証書(口座振替結果通知ハガキ)の写しを提出します。
社会保険関係の書類
社会保険関係の法律も遵守しているということを示すため、申請する日の属する月の前々月までの24ヵ月分の社会保険料納入状況回答票または健康保険・厚生年金保険料領収証書を提出しなければなりません。
納付や換価の猶予を受けており、社会保険納入状況照会回答票にその旨の記載がない場合は納付の猶予許可通知書または換価の猶予許可通知書の写しを提出します。
税務署発行の納税証明書
納税証明書はきちんと納税していることを示すために提出するものです。
納税の猶予または納付受託の適用を受けている場合は適用を受けているという旨が記載された納税証明書および未納がある税目についての納税証明書を提出します。
納税関係の書類
市町村が発行する法人住民税の納税証明書も必要書類の一つです。
初めての受け入れの場合は直近1年分のものを、受け入れ中の場合は直近2年分のものを提出します。
公的義務履行に関する説明書
税金等に滞納がある場合のみ公的義務履行に関する説明書を提出する必要があります。
特定技能外国人・技能実習生関連の手続きをスムーズに行う方法
以下では煩雑になりやすい特定技能外国人および技能実習生関連の手続きをサポートするサービスを紹介します。
オンラインクラウドツール「dekisugi」
「dekisugi」は特定技能外国人や技能実習生関連の手続きをサポートするオンラインクラウドツールです。
業務フローがシステム化されていることや、データを一元管理できる機能が充実しているため、引き継ぎ等の業務をスムーズに行うことも可能です。
煩雑な手続きや管理を全てオンライン上で完結させることができるため、外国人を雇用する上でのコストを大幅に削減できます。
「特定技能外国人関連の手続きや管理業務をDXさせたい」
と考えている受け入れ企業におすすめのサービスです。
行政書士などのサービスの利用
特定技能外国人・技能実習生の雇用に関するサービスを提供している行政書士も存在します。そうした行政書士のサービスを利用することで関連業務がスムーズになる可能性もあります。
信頼関係を構築し、自社の社風などをよく理解している行政書士からは適切なアドバイスが受けられるかもしれません。
まとめ
慣れない環境で生活しながら働く特定技能外国人を雇用する企業には、高い倫理観と適切な知識を身につけていることが求められます。
そのため特定技能外国人を雇用する際には法令を遵守している事実や欠格事由に該当しないこと、そして特定技能外国人を雇用するにあたって必要な実績があることを証明しなければなりません。
特定技能所属機関概要書は外国人を雇用するのにふさわしい企業であることを証明するための書類です。自社についての正確な情報を記載した上で提出しましょう。