ビルクリーニング分野の特定技能試験の概要と、試験対策について

ビルクリーニング分野の特定技能試験の概要と、試験対策について

ニュース・特集特定技能

特定技能制度について

特定技能制度について

まず特定技能制度について、説明します。
特定技能制度とは、人手不足が深刻な産業で、即戦力の外国人を受け入れる制度です。
もともと外国人を受け入れる制度には、技能実習制度がありました。
ですが特定技能の場合には、技能実習制度とは違い、技能試験と日本語試験をパスしなければなりません。ですので特定技能制度で受け入れる外国人は、その分野における一定以上のスキル・日本語能力がある即戦力として活躍してくれます。
この即戦力の外国人を受け入れる特定技能制度は2019年4月に新設され、漁業をはじめとする12の産業分野で受け入れることになりました。

またこの特定技能は1号と2号に分かれています。
特定技能1号は、即戦力の外国人です。
特定技能2号は、1号よりもより習熟した技能・技術をもつ外国人労働者が取得できます。

ビルクリーニング分野の人手不足について

衛生面を維持せねばならないビルなどを「特定建築物」と呼びます。
この特定建築物が年々増えているため、ビルクリーニングという仕事の需要も年々増えています。
ですが有効求人倍率は全産業の2倍以上の約3倍となっています。
そしてただ人手が不足しているだけではなく、 65歳以上の高齢者が全従業員の4割を占めています。
このままだと、今以上に人手不足に陥る可能性があるため、人手不足解消のために特定技能制度が導入されたという流れになっています。

特定技能1号評価試験とは

特定技能1号評価試験とは

技能実習の場合と違い、「特定技能」取得のためには、特定技能評価試験と日本語試験にパスする必要があります。技能試験は名前の通り、その産業分野において、即戦力として動けるか最低限のスキルがあるかをチェックされます。
以前はこの特定技能試験を受けるには、中長期在留者である必要がありました。
ですが現在は在留資格を持つ方全員に、受験資格が与えられています。
ですので短期滞在のビザで入国して、特定技能試験を受験するということが可能になっています。

日本語試験

また現場で「即戦力となる」ことが特定技能の条件ですので、一定レベル以上の日本語力が必要となります。
日本語能力を示すために日本語試験の受験が必要です。
日本語試験は「日本語能力試験」か「国際交流基金日本語基礎テスト」のどちらかで、基準点以上の取得が必要です。

日本語能力試験(JLPT)

日本語能力試験は、国際交流基金と日本国際教育協会(現日本国際教育支援協会)が開始しました。初めは受験者が7,000人ほどでしたが、2011年になると61万人、2023年には148万人もの外国人が受験する現在世界最大規模の日本語試験です。

こちらの日本語能力試験はN1、N2、N3、N4、N5の5段階のレベルに分けられています。
それぞれのレベルですが、N1が最も難しく、N5が最も易しいです。
N1になると、ほとんどの場面で自然なスピードで話される日本語が理解できるレベルとなります。具体的にはテレビのニュースなどを聞いて、大体の内容が理解できるレベルです。
中間のN3となると、少しゆっくりであれば、ある程度ボリュームある会話も理解できるレベルです。

特定技能を取得するためには、日本語能力試験ではN4の取得が必要です。
N4の取得には、180点満点中90点取得が必要です。
得点の配分ですが、言語知識が60点満点、読解が60点満点、聴解が60点満点となっています。それぞれ19点が基準点となっており、1科目でも19点を下回ると取得ができません。

国際交流基金日本語基礎テスト

国際交流基金日本語基礎テストと、日本語能力試験に大きな違いはありません。こちらも日本語能力を測定する試験です。
CBT方式のため、各国のテスト会場でコンピューターで問題を受けて回答します。
コンピューター画面に表示される問題を解いたり、ヘッドフォンを繋いでそこから流れる音声を聞いて回答したりします。

国際交流基金日本語基礎テストの場合には、6段階のレベルに分かれています。
A1、A2、B1、B2、C1、C2の6段階で、A1が最も簡単でC2が最も難度が高いです。
特定技能を取得するにはA2の取得が必要です。
このA2は、自分の周りの物事や状況について簡単な言葉で説明できて、簡単な日常会話が問題なくできるレベルであれば、取得ができます。

国際交流基金日本語基礎テストの場合には、「文字と語彙」「会話と表現」「聴解」「読解」の4つの分野で構成されており、それぞれ約12問となっています。全部で約50問であり、受験時間は60分です。例えば「文字と語彙」から「会話と表現」のように別のセクションに移る場合には、やり直しや見直しなどができませんので注意が必要です。

日本語能力試験のN4も、国際交流基金基礎テストのA2も、難易度はほぼ同等になっています。またどちらも受験する必要はなく、どちらかでN4かA2を取得すれば問題ありません。

試験問題

試験問題

ビルクリーニング分野の試験問題について、説明します。

学科試験

まず学科試験です。
こちらは写真やイラストなどを見て、回答する形式です。
問題は17問、試験時間は20分、ペーパーテスト方式となっています。

実技試験

実技試験の場合には、以下3つの作業への従事が必要です。

  1. 床面の定期清掃作業
  2. ガラス面の定期洗浄作業
  3. 洋式大便器の日常清掃作業

こちらの試験時間は全部合わせて12分です。

合格基準ですが、まず学科試験点数が満点の60%以上(24点以上)が必須です。
なおかつ、作業試験の点数が満点の60%以上(36点以上)の場合、合格です。

合格証明書の交付申請

無事、技能試験と日本語試験にパスした後は、合格証明書の交付申請が必要です。
なぜなら特定技能ビザを申請するには、特定技能の合格証明書が必要だからです。
難しい手続きではないのですが、交付申請をしてから、1〜2週間くらいかかることが多いため、交付申請は早めに行うように心がけましょう。

試験の注意点

日本国内での試験の注意点について、簡単に説明します。

持ち物

当日は、本人確認書類と、印刷した確認書が必要です。
本人確認書類は、パスポートか在留カードです。コピーは無効なため、必ず原本が必要です。また確認書も、印刷されたものがない場合には受験ができません。

携帯電話・時計はロッカーに

本人確認書類以外のもの、例えば携帯電話・筆記用具・腕時計などは、全てロッカーに預けなければいけません。例え腕時計であったとしても、持ち込みをした場合には不正行為として認定されます。

時間厳守

受付は試験開始の30分前から15分前までに、済ませる必要があります。
万が一、試験開始の15分前までに受付ができていない場合には、そもそも受験をすることができませんので注意しましょう。

そのほか、特定技能試験についての注意点はPROMETRICにて確認できます。
あわせてご参照ください。

試験の対策

ビルクリーニング分野の対策テキストは、数多く用意されています。
以下でご紹介いたします。

日本語テキスト

目指せ!ビルクリーニング特定技能評価試験~学習テキスト~
こちらは、公益財団法人全国ビルメンテナンス協会が作成したものです。
ビルメンテナンスの基礎が、漫画でわかりやすく学ぶことができるようになっています。
日本語での基本的な挨拶から、具体的な清掃方法まで網羅しています。
ビルクリーニングの基礎の基礎を簡単に学びたい場合には大変おすすめです。

上記は日本語のものになりますが、日本語以外にも、7ヶ国語で展開されています。
母国語で漫画で学べるのでまず、こちらを有効活用する方が良いでしょう。
以下で、英語、インドネシア語、クメール語、ミャンマー語、ベトナム語、ネパール語、タイ語のテキストのリンクを貼ります。
参考にしていただければと思います。
どれも漫画で読むことができるため、母国語はないが英語は少しわかるという状態であれば、英語でしっかり学ぶことができます。

その他言語テキスト

過去問題

2019〜2020年実技問題

こちらは2019〜2020年の実技問題です。
床面のドライバフや、ガラス面の定期洗浄作業、洋式大便器の日常清掃作業など、2019〜2020年に出題された実技問題を確認できます。
取得のためには過去問のチェックは必須となりますので、確認しておくと良いでしょう。

2019年度判断試験問題

こちらは特定技能1号の、2019年度学科試験の問題になります。
文化ちりとりの写真を選んだり、送風機の写真を選んだりと、基礎的な内容が中心です。
問題と解答、ともに覚えるくらいにやり込むと良いでしょう。

2019年度判断試験解答

こちらは上記問題の解答になります。
印刷して、記憶に残るまで問題・解答を読み込むと良いでしょう。

具体的な学習方法

試験には、学科試験と実技試験があります。
学科試験については、テキストと過去問が公開されているため、覚えるまでひたすら読み込む・やり込むことが重要となっています。
一部業界では、母国語のテキストがほとんどないという場合もあるかと思います。
ですが幸いにも、漫画で読める学習テキストが英語も含む7ヶ国語で用意されていますのでその心配もいりません。
学科については無料のテキストとWebで公開されている過去問でも十分対策ができます。
ですが紙ベースの参考書なども書店やWebで販売されていますので、不安であれば、それらを追加で読み込むのも一つの方法です。

続いて、実技試験です。
実技試験についても過去問が公開されていますので、正解をしっかり身につけておくことがまず必要です。
またビルクリーニングについて、「清掃」という仕事なため簡単そうと考える方もいらっしゃいます。ですが実際はそうではなく、ビルクリーニングという専門的な仕事ならではの道具・決まった清掃方法があります。しっかり対策をすることが重要になります。

まとめ

最後に、今回の記事を簡単に振り返ります。

特定技能制度について

特定技能制度とは、人手不足が深刻な産業で、即戦力の外国人を受け入れる制度です。
特定技能制度で受け入れる外国人は、その分野における一定以上の技能スキル・日本語能力があるため、即戦力として活躍してくれます。

ビルクリーニング分野の人手不足について

衛生面を維持せねばならない「特定建築物」が年々増えているため、ビルクリーニングという仕事の需要も年々増えていますが、有効求人倍率は全産業の2倍以上の約3倍となっています。

日本語試験

日本語試験は「日本語能力試験」か「国際交流基金日本語基礎テスト」のどちらかで、基準点以上の取得が必要です。

日本語能力試験(JLPT)

特定技能を取得するためには、日本語能力試験ではこのN4の取得が必要です。
N4の取得には、180点満点中90点取得が必要です。
得点の配分ですが、言語知識が60点満点、読解が60点満点、聴解が60点満点となっています。それぞれ19点が基準点となっており、1科目でも19点を下回ると取得ができません。

国際交流基金日本語基礎テスト

国際交流基金日本語基礎テストの場合には、6段階のレベルに分かれています。
A1、A2、B1、B2、C1、C2の6段階で、A1が最も簡単でC2が最も難度が高いです。
特定技能を取得するにはA2の取得が必要です。

試験の対策

英語、インドネシア語、クメール語、ミャンマー語、ベトナム語、ネパール語、タイ語、日本語を含めた8ヶ国語で、漫画形式でテキストが用意されています。
基礎的な部分を抑えてあるので、何度も繰り返し読むことが必須になります。
また過去問題として、2019〜2020年実技問題、2019年度判断試験問題が公開されていますので、何度もやり込むことが必要となります。

この記事を書いたライター
カナエル運営事務局

カナエル運営事務局

外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。