外食業界の人手不足と課題について

外食業界の人手不足と課題について

ニュース・特集外国人雇用

近年、飲食業界は深刻な人手不足に悩まされています。
厚生労働省の調査によると、飲食店の求人倍率は令和5年時点で、飲食物調理が3.01倍、接客・給仕が3.28倍です。全産業平均の1.27倍を大きく上回っています。飲食業界では、なぜここまで応募者が集まらない状況なのでしょうか。
この記事では外食業界の人手不足の現状や、課題について、解説していきます。

外食業界の人手不足ってどうなってるの?

外食業界の人手不足ってどうなってるの?

外食業界の人手不足は、特に深刻

人手不足に悩む企業は、全企業の半数以上だという調査結果が出ており、現在人手不足は飲食業界に限らず日本企業全体の問題となっています。
そのなかでも、特に深刻な人手不足に直面しているのはやはり飲食業界です。
人手不足企業の割合を調べた調査結果では、なんと飲食業界の77%が人手不足であるとわかっており、これは2位の宿泊業界の62%を大きく上回っています。

離職率も高い

人手不足のため、人を雇い入れても離職する人が多いようです。令和3年の厚生労働省の調査によると、外食業界の離職率は25.6%でした。
全体の平均値は13.9%なので、これは約2倍となり、全産業の中でも極めて高いことがわかっています。
このように離職率が高いと、人の入れ替わりが頻繁におこり、経験を蓄積するスタッフが生まれにくくなってしまいます。また職場におけるコミュニケーションがうまくいかないというデメリットもあります。
それはサービスの質の低下や、残された社員の負担が増してしまうなどの問題にも発展します。

外食業界の人手不足の理由

外食業界の人手不足の理由

それではなぜ外食業界では、ほかの産業に比べて人手不足が深刻であったり、離職率が高かったりするのでしょうか。それには主に、以下の3つの理由があると考えられています。

業務内容がハード

外食業界には調理、接客、ホール、配達など、多様な業務があります。
そのため業務によって差はありますが、厚生労働省の調査によると、外食業界の業務は、他の業種に比べて長時間労働者が多いことがわかっています。
令和3年度の調査(令和4年版過労死等防止対策白書)では、週60時間以上労働している割合が全体の14%です。60時間以上働く労働者の全体の割合は、ほかの業種、例えば医療・福祉業界は5.2%、製造業は5.8%であるため、長時間労働する労働者が非常に多いことがわかります。

長時間労働だけではなく、24時間営業を行う飲食店があるため夜勤があったり、シフト制のため不規則な勤務形態になったりという働きにくさもある業界になっています。
また人手不足なため、接客も調理も行わないといけなかったり、さらに配達を兼ねなければならなかったりと、複数業務をやらねばならない場合も増えています。

待遇の問題

また外食業界に人が集まらない理由として、待遇の点があげられます。
サービスで他の企業に負けないよう、24時間営業を続けなければならなかったり、かき入れどきの土日祝日の出勤が必須であったりします。
そのため決まった休みやまとまった休みを取りにくいことが多いようです。
また低価格競争のために、産業別でみると、飲食業界の平均賃金は全産業よりも低くなっています。女性の賃金だけで見る場合には、パートタイマーの女性が多いことも上げられますが全産業の中で最も低くなっています。

働き方が不自由

また現在、働き方が多様化しているにもかかわらず、調理や接客などの業務では、基本的には出勤が必須であることが不自由ととらえられています。
現在は、テレビ電話のZOOMを利用した在宅勤務などが非常に普及しました。IT化を進め、オフィスを賃料の高い都内から移転する企業も増えてきました。
週5日がテレワークという企業も決して珍しいとは言えなくなりました。
ですが外食業界では出勤が必須である場合がほとんどで、若者から敬遠されてしまっています。

外食業界の人手不足で起こる問題

外食業界の人手不足で起こる問題

人手不足による問題について見ていきます。

サービスの低下

人手不足になると、当然サービスの質が低下します。
深夜の勤務を人手不足の中、従業員にしてもらい、その結果として従業員が疲弊して、最も来客数の多いランチタイムのサービスが悪くなったという事例もあります。
またミスが増えたり、職場の活気がなくなったりと、様々なデメリットもあります。
それだけではなく、人手不足で従業員が疲弊したり、活気がなくなったりすると、業務を効率化するためのアイディアなども出てこなくなります。

お客様の待ち時間が長くなる

接客や調理の分野では、IT化はある程度推し進めることができても、限界があります。
配膳にロボットを利用する店舗も、最近はずいぶん増えてきましたし、注文は店員に頼まずタブレットでするスタイルが飲食チェーンでは主流になりつつあります。スマホで注文を取る飲食店も出てきました。
またレジもお客様自身で行うというスタイルも、徐々に取られつつあります。
ですが調理や清掃などの作業においては、DX化の推進は簡単ではありません。
また衛生管理については、AI等に任せることができません。

そのため人手不足が深刻な企業・店舗では、人でないと行えない調理などに時間がかかり、食事などのサービスを提供するまでの時間が長くなり、それが満足度の低下につながります。

採用コストがかかる

人手不足が慢性化していると、常に募集をかける必要があります。
求人情報サイトなどに求人を載せる費用がその分、余計にかかります。
それだけではなく、離職率が高いため、求人サイトなどに採用の成功報酬を支払い、また求人広告を掲載してとなるため、コストがかさみます。

外食業界で働く喜び

外食業界で働く喜び

ここまで外食産業のデメリットを中心に解説してきました。
この章では、外食産業で働く喜びについて、現場の声などからまとめていきます。
飲食店で働いて、うれしかったことはなにかというアンケートに対して、上位は「お客様に喜んでもらえた体験」があげられています。
具体的には笑顔でお礼を言われたときや、お客様と仲良くなれたとき、またお客様に顔を覚えてもらえた時などがあげられています。
お客様との関係以外では、スタッフ同士で仲良くなれたときや上司に褒めてもらえた時などが、うれしかったことの上位にあげられています。

そのためキッチンやフロアなどにより、業務は違いますが、お客様にどのような貢献ができているかが、はっきりとわかるようにするとスタッフの満足度やモチベーションにつながることがわかります。

一方で、飲食店で働いてつらかったこととしては、やはり長時間労働があげられています。

外食業界の人手不足の解決方法

では外食業界の人手不足は、どのように解決していけばよいのでしょうか。
この章では3つの視点から、課題解決の方法について説明します。

業務内容の見直し

まず業務内容の見直しが重要になります。
現在はタブレットで注文、またQRコードを読み込んでもらいスマートフォンで注文する店舗が増えています。
注文をお客様自身にやってもらうだけで、フロアの人員を削減することができます。
また配膳の部分も、ロボットに任せる店舗などが近年では増えています。
人の手が不可欠なこと以外は、どんどんDX化を進めていくとよいでしょう。

また行列ができるような店の場合には、SNSなどを駆使して、混雑する時間帯をお客様に共有して、繁忙期の人員が少なくて済むように混雑回避に努めることも有効です。

ITツールの活用

ITツールを積極的に導入しましょう。
ランチタイムなどの混む時間帯には、フロアのスタッフの人数が不足する店舗も多いと思います。その場合には前述のとおり、個人店でも簡単に導入できるセルフオーダーシステムがあります。
タブレットで簡単に注文できるようになれば、忙しい時間の人員削減ができます。
また在庫管理、売上管理、財務管理についても、ITツールを積極的に導入することで割く時間を大幅に削減することができます。
ほかにもスタッフ管理、給与管理、予約受付、顧客管理などに割く時間も、ITツールを導入することで大幅に削減することができます。

外国人労働者の雇用

また人員不足解決には、やはり人手を増やすことが最も有効です。
なかでも外国人労働者を雇用する方法が有効です。
外国人労働者の雇用を後押しする制度として、2019年に特定技能制度が新設されました。
特定技能「外食業」を取得している外国人は、レストランなどで調理や接客などの業務に従事することができます。
取得するために学歴などは一切不問で、技能試験と日本語試験にパスすれば、基本的には誰でも取得することができます。

技能実習生などの場合には、日本語が全くわからない方が多いです。
ですが特定技能を取得している外国人人材の場合には、最低限の日本語能力と日本の外食業での基本的なルールを理解していますので、即戦力として雇用できます。

人手不足に苦しんでいるのであれば、積極的に外国人人材の雇用を検討するとよいでしょう。

まとめ

最後にこの記事の内容を簡単にまとめます。

外食業界の人手不足は、特に深刻

人手不足企業の割合を調べた調査結果では77%で、これは2位の宿泊業界の62%を大きく上回っています。

離職率も高い

令和3年の厚生労働省の調査によると、飲食業界の離職率は25.6%でした。
全体の平均値は13.9%なので、これは約2倍となり、全産業の中でも極めて高いことがわかっています。

外食業界の人手不足の理由

主に、以下の3つの理由があると考えられています。

業務内容がハード

長時間労働が慢性化している店舗があったり、24時間営業を行う飲食店では夜勤があったり、シフト制なため不規則な勤務形態になったりという働きにくさがあります。また接客も調理も行わないといけなかったり、さらに配達を兼ねなければならなかったりと、複数業務をやらねばならない場合も増えています。

待遇が平均より良くない

低価格競争のために、産業別でみると、飲食業界の平均賃金は全産業よりも低くなっています。女性の賃金だけで見る場合には、パートタイマーの女性が多いことも上げられますが全産業の中で最も低くなっています。

働き方が不自由

テレビ電話のZOOMを利用した在宅勤務などが非常に普及しました。IT化を進め、オフィスを賃料の高い都内から移転する企業も増えてきました。ですが飲食業界では出勤が必須である場合がほとんどで、なおかつ24時間営業などにより長時間労働が多くなっており、若者から敬遠されてしまっています。

外食業界の人手不足で起こる問題

サービスの低下

サービスの質が低下します。
深夜の勤務を人手不足の中、従業員にしてもらい、その結果として従業員が疲弊して、最も来客数の多いランチタイムのサービスの質が低下するという事例、ミスが増えたり、職場の活気がなくなったりという事例があります。

お客様の待ち時間が長くなる

人手不足が深刻な企業・店舗では、来店したお客様に、食事などのサービスを提供するまでの時間が長くなり、それが満足度の低下につながります。競争の激しいこの業界では、それは利益の減少に直結してしまいます。

採用コストがかかる

人手不足が慢性化していると、常に募集をかける必要があります。
求人情報サイトなどに求人を載せる費用がその分、余計にかかります。

外食業界の人手不足の解決方法

人手不足解消のためには、業務内容の見直しやITツールの活用、そして外国人労働者の雇用など様々な方法があります。
外国人労働者の雇用については、それを後押しする制度として、2019年に特定技能制度が新設されました。特定技能「外食業」を取得している外国人は、レストランなどで調理や接客などの業務に従事することができます。
技能実習生などの場合には、日本語が全くわからない方が多いですが、特定技能を取得している外国人人材の場合には、最低限の日本語能力と日本の外食業での基本的なルールを理解していますので、即戦力として雇用できます。

外食業界で人手不足の解消をお考えであれば、特定技能外国人の受け入れを積極的に検討すると良いでしょう。

この記事を書いたライター
最新情報をメールでお届けします

カナエル運営事務局

外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。