建設キャリアアップシステムの概要

建設キャリアアップシステムの概要

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建設業界は、日本の基幹産業の一つであり、国内総生産の7~8%を占めています。しかし近年、少子高齢化による労働力不足に直面しています。
こうした課題を解決し、持続的な成長を実現するために、国土交通省は「建設キャリアアップシステム(CCUS)」を推進しています。CCUSは簡単に説明すると、建設業界で働く人のための履歴書サービスです。
本記事では、CCUSの概要について、具体的な事例を交えて紹介します。

CCUSとは

CCUSとは

CCUS(建設キャリアアップシステム)は、建設業界で働く人々のスキルや経験を登録・蓄積する仕組みです。具体的には、以下の情報を登録します。

  • 技能者の資格
  • 社会保険加入状況
  • 現場の就業履歴

これらの情報は、建設業界全体の共有財産として活用されます。

そしてCCUSには、建設業界で働く人々にとって、以下のメリットがあります。

若い世代のキャリアパスの明確化

建設業界で働く人々のスキルや経験を可視化することで、若い世代にキャリアパスと処遇の見通しを示します。これにより若い世代は、建設業界で自分のスキルや経験を活かして、どのようなキャリアアップができるかが明確にわかります。

技能と経験に応じて給与を上げる

技能と経験に応じた給与体系の構築を支援します。これにより建設労働者は自分のスキルや経験に応じて、適切な給与の要求ができるようになります。

将来の建設業の担い手の確保

若い世代にキャリアパスと処遇の見通しを示して、技能と経験に応じた給与がもらえる環境を整えることで、将来にわたって建設業の担い手を確保します。

価格交渉力・競争力の向上

さらに建設労働者のスキルや経験を向上させ、給与体系を整備することで、建設業界全体の価格交渉力・競争力を向上させます。

CCUSの目的

CCUSの目的

CCUSに登録すると以下のようなことができます。

  • これまで働いた現場や、取得した資格を記録できる
  • 建設業界で働きたい人が、自分のスキルや経験をアピールできる

CCUSを利用することで、以下のようなメリットがあります。

  • キャリアアップの道筋を明確化できる
  • 自分のスキルや経験を、より多くの人に知ってもらえる
  • 建設業界で働きたい人にとって、就職活動がよりスムーズになる

そしてCCUSの目的は、基本的には以下の2つです。

  • 建設労働者のスキルアップとキャリアアップの促進
  • 建設現場における安全衛生・環境問題の改善
  • 建設業界の持続的な成長の実現

順番に説明します。

建設労働者のスキルアップとキャリアアップの促進

CCUSの目的の一つは、建設業界で働く人々がよりスキルアップして、高い給与をもらえるようにすることです。CCUSを活用することで、建設業界で働く人々は、自分のスキルや経験を把握し、キャリアアップに必要な情報を得ることができます。また建設企業は、建設労働者のスキルや経験を把握し、人材育成や人材確保に活用することができます。
建設業界全体でそれら情報を共有し、建設労働者の質の向上を図ることも目指しています。

建設業界の持続的な成長の実現

CCUSを活用することで、以下の3点が可能になります。

  • 建設労働者のスキルアップとキャリアアップの促進
  • 建設業界におけるイノベーションの促進

そのため持続的な成長を実現できます。
特に建設労働者がキャリアアップをスムーズにしていくことができるようになれば、ほかの業界への流出を抑えることができます。
また建設業界ではスムーズにスキルアップができて、給与も上がっていくということが一般化すれば、建設業界を敬遠していた若者たちからの支持をあつめることができるようになるでしょう。

CCUSの構成

CCUSは建設業界で働く人々が、キャリアアップに役立てるためのサービスです。
役立てるためには基本的にはまず登録が必要になります。

登録・認定

建設業界で働く人々は、まず自分の情報をCCUSに登録します。
登録された情報は、建設業界で働く人々が自分のスキルや経験を把握したり、より良い仕事に就くための情報を得たりするのに役立ちます。
登録することがすべてのスタートです。

スキルアップ・キャリアアップ支援制度

登録を行うと、スキルアップ・キャリアアップに役立てることができます。建設業界で働く人々のスキルや経験が評価され等級に応じて登録されるため、非常に明快です。

情報提供・普及啓発制度

ですが、CCUSに登録しても、「うまく使えない」「どう使えばいいかわからない」という声も多数あります。そのために、CCUSに関する情報の提供や、CCUSの普及啓発も行っています。

CCUSの利用方法

CCUSの利用方法

この章ではCCUSを使うための登録方法について説明します。

CCUSの登録方法

CCUSへの新規登録は、インターネットか、認定登録機関で申請します。
以下で技能者の登録の流れ、事業者の登録の流れ、代行申請の流れを説明します。

技能者の登録

  1. 運転免許証などの本人確認書類の写しを提出
  2. 運営主体または認定登録機関で本人確認が行われる
  3. 登録・審査完了後、技能者IDが付与される
  4. 技能者の顔写真が印刷されたICカードが発行される。この建設キャリアアップカードが指定の住所に郵送されるため、受け取りをする

事業者の登録

  1. 建設業許可通知書などの証明書類を添えて、登録を申請
    (建設業許可情報と連携することで、入力が簡単になります)
  2. 審査完了後、事業者IDが付与される。
  3. メールなどで通知される

代行申請

雇用事業主などの代行申請もできます。
代行申請の場合には、社会保険などの情報の登録が容易なため、なるべくなら代行申請で行うことが推奨されています。

以下で具体的な利用方法について、説明します。

技能者側の利用方法

技能者側の利用の流れは以下になります。

  1. カードを受け取る
  2. 現場のカードリーダーにカードタッチして就業履歴を記録する
  3. PCから自分の就業履歴を確認する

就業履歴を確認することで、以下のことができます。

  • いつ、どの現場で働いたのかを確認することができます。
  • どの立場(職長など)で働いたのかを確認することができます。
  • 自分のスキルや経験を把握することができます。
  • キャリアアップに役立てることができます。

元請け業者の利用方法

事業者IDの取得

CCUSを利用するには、まず事業者IDを取得する必要があります。
事業者IDは、CCUSの運営団体である建設業労働災害防止協会から発行されます。

現場・契約情報の登録

現場を開設する際には、現場・契約情報をCCUSに登録する必要があります。登録する情報は、以下のとおりです。

  • 現場名
  • 住所
  • 発注者
  • 契約内容
  • 工期

カードリーダーの設置

現場にカードリーダーを設置する必要があります。カードリーダーは、技能者が就業履歴を記録するために使用します。

CCUS事業者(下請事業者)の利用方法

施工体制の登録

元請事業者が登録した現場・契約情報に対して、それぞれの施工体制を登録する必要があります。登録する情報は、以下のとおりです。

    下請事業者名 担当者名 施工体制(作業員数、職種など)

技能者情報の登録

自社の技能者の情報(氏名、職種、職長などの立場)を登録する必要があります。

CCUS事業者(下請事業者)の役割を担うことで、以下のメリットがあります。

  • 技能者のスキルや経験を把握し、適切な人材配置を行うことができます。
  • 技能者のキャリアアップを支援することができます。
  • 建設業全体の生産性を向上させることができます。

CCUSの活用事例

この章では、CCUSの活用事例について詳しくご紹介いたします。
CCUSをさらに活用することで、技能者は以下のことができます。

目標を明確に設定する

技能者は、様々な現場で経験を積んでいる場合が多いです。しかし評価基準が現場や会社によって異なるため、キャリアアップを明確に描くことが困難な方も多いです。

CCUSの能力評価制度では、35の技能分野すべてで、必要な経験や知識・技能、マネジメント能力などの基準が公開されています。この基準を参考に自分の目標を設定することで、より具体的なキャリアプランを立てることができます。

具体的には、以下の手順で目標設定を行うことができます。

  1. CCUSの能力評価基準を確認する。
  2. 自分の現在のスキルや経験を評価する。
  3. 目標となるレベルを設定する。
  4. 目標達成のために必要なスキルや経験を具体化する。
  5. スキルアップのための計画を立てる。

CCUSの課題と展望

CCUSには様々な課題があります。

CCUS登録者数の低迷

当初の目標と現状

CCUSの運営側は、初年度の2019年度に技能者登録数100万人を目標としていました。
ですが登録者数は当初2万人、全国の技能者の7%でした。

現場アンケートの結果

2020年8月末に実施された現場アンケートでは、74%が「CCUSにメリットを感じていない」と回答しています。また4割の現場では元請けを除く業者登録数が0でした。

登録者数低迷の原因

登録者数低迷の原因としては、以下の2点が挙げられます。

  • メリットが知られていない
  • 申請処理が煩雑

まず1点目について説明します。
CCUSでは自分のスキルや経験を記録・管理できますが、しかしこれらのメリットは、まだ十分に認知されていないのが現状です。
またCCUSの申請手続きは、当初非常に煩雑でした。
技能者の場合、公的書類の写しに加え、多くの情報を入力する必要があり、入力内容に不備があると再申請となり受理までに時間がかかっていました。

改善に向けた取り組み

運営側は、登録者数低迷を受け、以下の取り組みを行っています。

  • メリットの広報強化
  • 申請手続きの簡素化
広報強化

CCUSのメリットを広く知ってもらうために、ホームページやパンフレットなどを活用した広報活動を強化しています。

申請手続きの簡素化

申請手続きの簡素化に向けて、以下の取り組みを行っています。

  • 入力項目の削減
  • オンライン申請の導入
  • 不備発生率の低減

まとめ

CCUSには、若い世代のキャリアパスの明確化、技能と経験に応じて給与を上げること、将来の建設業の担い手の確保、価格交渉力・競争力の向上などのメリットがあります。

また建設業界で働きたい人が、自分のスキルや経験を簡単にアピールすることができます。

CCUSを上手く活用することで、建設労働者のスキルや経験を把握し、人材育成や人材確保に役立ち、建設業界の課題解決につなげることができます。

この記事を書いたライター
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カナエル運営事務局

外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。