外食業で外国人を雇用する場合に必要な在留資格と特定技能として雇用する際のポイント

外食業で外国人を雇用する場合に必要な在留資格と特定技能として雇用する際のポイント

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外食業で外国人を雇用する場合、業種に対して適切な在留資格を取得していることが求められます。

任せた業務が本人の在留資格で認められていないものである場合、本人だけでなく企業側も罰則の対象となる恐れがあります。

特定技能は業種内であれば幅広い業務に従事できる在留資格であり、人手不足を解消したい事業者にとって非常に有益な人材が確保できる可能性のある在留資格です。

提供する料理の調理やホールでの接客、清掃等の業務の担い手を探している場合は特定技能の外国人材を活用しましょう。

この記事では外食業で働く外国人の在留資格を紹介した上で、特定技能として外国人を雇用する場合のポイントを解説します。

外国人が外食業界で働く上で求められる在留資格の種類

外国人が外食業界で働く上で求められる在留資格の種類

以下では外国人が外食業界で働く場合に求められる在留資格と、可能な業務の例を紹介します。

技術・人文知識・国際業務

技術・人文知識・国際業務は、日本または海外の短大を含む大学を卒業しているか日本の専門学校を卒業している、ないしは10年以上の実務経験がある場合に取得できる在留資格です。

学歴や実務経験などの要件を満たさなければ取得できないものであることから、接客や調理、洗い場作業、清掃業務などの単純作業に従事させることは認められていません。

対応業務例

外国人ならではの視点を持つ外国人を雇用したい場合などに、技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人を雇用することが認められます。

例えばマーケティングや営業、店舗経営などの業務分野などが該当業務として挙げられます。

ただし、小規模な飲食店の場合こうした業務で外国人を雇用することの必要性が客観的に認められにくいため、技術・人文知識・国際業務の外国人を雇用するには複数の店舗を展開している、店舗と事務所機能を持つ拠点が異なるなど、相応の規模がなければ認められません。

技能(調理)

シェフやコックなどの料理人として外国人を雇用する場合は、技能(調理)の在留資格を取得している必要があります。

技能(調理)の取得要件は10年以上の実務経験があることです。ただし、タイ料理については日タイEPAによって実務経験年数が短縮されているため5年で取得できます。

技能(調理)の在留資格は外国料理にのみ対応しているため、日本料理店や居酒屋、ファミレスなどで雇用することは認められていません。

さらに例えばインド料理店の場合、ナンを焼くための釜・タンドールの有無が問われるなど、受け入れ企業に料理上設備や客席数が一定規模以上あることが求められます。

対応業務例

例えば、

  • 中華・フランス・インド料理店での料理人
  • パン職人
  • パティシエ

などの業務が技能の在留資格に該当します。

技能もまた熟練した技術を有する外国人のための在留資格であるため、接客や調理補助、清掃など単純業務に従事させることは認められません。

特定技能

接客や調理補助、衛生管理、清掃、洗い場業務などで雇用したい場合は、特定技能の在留資格を持つ外国人を雇用するようにしましょう。

特定技能(外食)は衛生管理や調理、接客に必要な知識・技術を持った外国人が取得できます。

人手不足を解消したい場合や、留学生アルバイトを卒業後も雇用したい場合などに活用できる在留資格です。

対応業務例

特定技能の在留資格であれば飲食物の調理や接客、清掃等に従事することができます。

また、テイクアウト専門店や宅配専門店、仕出し料理店など、店内で飲食する前提ではない業態の場合も特定技能の外国人を雇用することは可能です。

ただし、外国人労働者に接待業務を任せることは禁じられています。

特定活動

他の在留資格に該当しない分野での活動に関しては「法務大臣が個々の外国人について特に活動を指定する在留資格」として特定活動と呼ばれる在留資格が設けられています。

これによって他の在留資格では対応できない場合であっても法改正することなく、その分野の活動に従事しながら日本に在留することが可能になります。

もし特定活動の在留資格を持つ外国人を雇用する場合、必ずパスポートに添付された「指定書」を確認するようにしましょう。

不確実性の高い在留資格であるため、雇用する前に専門家に相談することをおすすめします。

特定活動46号

留学生のアルバイトを卒業後も引き続き雇用したい場合、特定活動の中でも46号の在留資格が該当します。この在留資格によって飲食店などでは日本の大学・大学院を卒業した留学生を接客スタッフとして雇用することができます。

特定活動46号は特定技能とは異なり登録支援機関など第三者を介さず雇用することができます。在留資格の取得・更新手続き以外は採用までの流れが日本人とほぼ同じです。

さらに仕事がある限り日本に滞在できるため、長期的な関係を築くことも可能です。

対応業務例

店舗管理業務や、外国人客に対する通訳も含めた接客業が認められています。

ただし、厨房での皿洗いや清掃にのみ従事させることは認められていません。

また、店舗管理業務については受け入れ企業に相応の規模が求められます。

留学生や帯同家族を雇用する場合

「資格外活動許可」が認められている留学生や帯同家族であれば、アルバイトとして雇用することが可能です。

この場合、就労時間に1週間に28時間以内という制限が設けられており、これを超えると不法就労になってしまうため注意しましょう。

その他

永住者や日本人・永住者の配偶者等、定住者など身分系の在留資格を持つ外国人は就労活動に制限がありません。

そのため身分系の在留資格を持つ外国人は非常に雇用しやすい人材と言えます。

特定技能として外国人を外食業界で雇用する場合のポイント

特定技能として外国人を外食業界で雇用する場合のポイント

以下では特定技能として外国人を雇用する場合のポイントを紹介します。

在留資格で認められている範囲内で業務にあたらせる

特定技能に限らず外国人を雇用する場合、受け入れ企業は雇用する外国人労働者を在留資格で認められている範囲内の業務にしか従事させることができません。範囲外の労働を行わせた場合は罰則の対象となる恐れがあります。

特定技能は全部で12分野の業種に分類されており、業種を跨いでの在留資格の取得は認められていません。

飲食店など外食業界で特定技能の在留資格を持つ外国人を雇用する場合は、本人が特定技能の中でも外食の在留資格を取得しているかどうかを必ず確認しましょう。

飲食店以外で受け入れることができるサービスも存在する

特定技能を雇用することができるのは店内で飲食する前提の飲食店に限られているというわけではありません。

特定技能の外食の在留資格を持つ外国人は、外食業に関わる単純労働を含む幅広い業務全般に従事することが認められています。

店内で飲食せず、購入した飲食物を持ち帰ることを前提とされるテイクアウト専門店、フードデリバリーサービス、給食事業、仕出し弁当屋なども該当します。

外食業での業務の中には判断が難しいものも少なくありません。特定技能の在留資格に該当する業務かどうか判断に迷った場合は専門家に相談することをおすすめします。

宿泊施設内の飲食店での雇用は可能?

宿泊施設内に作られた飲食店で特定技能外国人を雇用することは不可能ではありません。ただし、特定技能制度は分野を跨いだ雇用が認められていないため注意が必要です。

特定技能の分野には外食業の他にも宿泊業が存在します。

宿泊業として在留資格を取得している外国人を宿泊施設内の飲食店での業務のみに従事させることはできません。フロント業務等宿泊業に関連する業務を幅広く任せる前提でレストラン業務にも従事してもらう必要があります。

逆に外食業の場合は宿泊施設の直営レストランであっても、外食業関連の業務にのみ従事してもらうようにしましょう。

また、宿泊施設の直営ではなく、テナントとして営業している飲食店であれば特定技能(外食業)の外国人を雇用できます。

宿泊施設で人手不足解消のために外国人を雇用する場合は、どの業務を任せたいのかを明確にした上で採用活動を進めましょう。

関連業務の扱いについて

外食業内の業務には接客や調理、清掃だけでなくその他にもさまざまな関連業務が存在します。特定技能として雇用した外国人にそうした業務を付随的に任せることは可能です。

逆にその業務が本人にとってのメイン業務となっている場合は認められないため注意しましょう。

フルタイムでの直接雇用でなければならない

特定技能外国人を雇用する場合、労働日数が週5日以上かつ年間217日以上であり、さらに週の労働時間が30時間以上のフルタイムで雇用しなければなりません。

さらに直接雇用であることが求められます。

対象外となるケース

弁当屋なども外食業として扱われるため、業務内容が似ているものが少なくないスーパーのバックヤードでの惣菜の製造も該当するのではないかと誤解してしまう人は少なくありません。

しかしスーパーのバックヤードでの業務は外食業ではなく小売業の一部として扱われます。

従って外食業だけでなく飲食料品製造業にも該当しません。

ただし、スーパー店内であってもテナント営業として惣菜の製造・加工・販売を行っている場合は特定技能外国人を外食業として雇用することが認められます。

受け入れ企業には協議会への加入が義務付けられている

特に外食業の受け入れ企業は農林水産省が運営する「食品産業特定技能協議会(飲食料品製造業分野・外食業分野)」への加入が義務となっています。

協議会では受け入れ企業に対し、制度に関する情報などの周知が行われます。

加入手続きは外国人労働者の受け入れから4ヵ月以内に行わなければなりません。
※2024年6月15日以降は、制度改正により事前加入が義務付けられました。

外食業界で技能実習生を受け入れることはできる?

外食業界で技能実習生を受け入れることはできる?

外食業は技能実習の対象業種ではない

外食業は技能実習制度の対象分野ではないため、技能実習生として外国人を雇用することは認められていません。

特定技能への移行

在留資格を技能実習から外食業の特定技能へ移行した外国人であれば雇用することができます。

医療・福祉施設給食製造職種の医療・福祉施設給食製造分野において技能実習2号を修了した外国人であれば、外食業に関連するスキルを身につけていることが認められるため、試験を免除された上で外食業の特定技能に移行することが認められます。

外食業界で外国人労働者を雇用する場合の注意点

外食業界で外国人労働者を雇用する場合の注意点

異なる背景や価値観を持つ外国人を雇用することにはさまざまな注意点が存在します。

以下では特に外食業界で外国人を雇用する場合の注意点を紹介します。

接待飲食等営業および接待は禁止されている

外食業の特定技能の在留資格を取得しているからといって外国人を接待業務に従事させることは認められていません。

特に風俗営業法で規定されている店舗では、特定技能に限らず外国人を雇用することが禁止されています。フィリピンパブなど外国人が接待飲食をする店舗は存在しますが、法律に則ると違法営業にあたるため度々警察による摘発が行われています。

日本人労働者と同等の待遇

特定技能に限らず外国人を雇用する場合は同じ業務に同水準で従事する日本人と同等の待遇で雇用しなければなりません。給与も日本人と同等かそれ以上であることが定められています。

「日本人よりも安く雇用できる」というわけではないため制度の主旨を正しく理解する必要があります。

特定技能・技能実習関連の手続きをスムーズに行うためのオンラインツール「dekisugi」

特定技能および技能実習生など外国人を雇用する場合、日本人労働者とは異なる手続きが格段に増えます。そのため外国人を雇用することによって担当者の負担が増す恐れもあります。

「dekisugi」はこうしたリスクを防ぐ上で便利なオンラインクラウドツールです。

雇用している外国人労働者のデータやスケジュールの管理等ができるだけでなく、担当者間での業務進捗の共有等をスムーズに行えるようになります。

提出書類も多く、煩雑になりがちな業務のスリム化を目指す事業者の方におすすめです。

まとめ

「外食業で働く外国人」にはさまざまなものがあると同時に対応する在留資格がそれぞれ異なるため、特定技能で定められた12分野の業種の中でも外食業は若干特殊な分野と言えます。

そのため外食業で外国人を雇用する場合は、本人の在留資格と認められている活動について必ずチェックしましょう。

外食業に関する幅広い業務に対応することが認められている在留資格であるため、特定技能の在留資格を持つ外国人は非常に有用である可能性があります。適切な制度の利用を通して人手不足の解消を目指しましょう。

この記事を書いたライター
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カナエル運営事務局

外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。