出入国在留管理庁電子届出システムの概要とメリット・課題

出入国在留管理庁電子届出システムの概要とメリット・課題

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はじめに

はじめに

出入国在留管理庁電子届出システムは、出入国在留管理庁が提供する、中長期在留者及び法第19条の17に定める所属機関(記事内で詳細に説明します)などが、インターネットを利用して各種届出や報告を行うシステムです。

従来、これらの手続きは窓口での対面申請が必要でしたが、電子届出システムの導入により、時間や場所の制約を受けずに手続きが可能となりました。

出入国在留管理庁電子届出システムの概要

出入国在留管理庁電子届出システムは、中長期在留者の方が、インターネットを利用して届出や報告を行うシステムです。
対象となる届出については、以下、出入国在留管理庁のページから引用します。

〈対象となる届出又は報告〉
○法第19条の16に定める中長期在留者(注)が行う「所属機関等に関する届出」及び法第19条の17に定める中長期在留者を受け入れている所属機関の職員が行う「所属機関による届出」
詳細はこちら【所属機関等に関する届出(法第19条の16)】 【所属機関による届出(法第19条の17)】

○在留資格「特定技能」を有する外国人の方を受け入れている特定技能所属機関又は登録支援機関が行う全ての届出
・特定技能所属機関による随時届出(法第19条の18第1項)
・特定技能所属機関による定期届出(法第19条の18第2項)
・登録支援機関による随時届出(法第19条の27第1項、法第19条の29第1項、法施行規則第19条の23第2項)
・登録支援機関による定期届出(法第19条の30第2項)
詳細はこちら【特定技能所属機関・登録支援機関の届出】

○日本語教育機関の告示基準第1条第1項第38号、39号、44号、45号及び46号に規定する日本語教育機関による報告
詳細はこちら【日本語教育機関の告示基準に基づく報告】

下記で「入管法第19条の16」「第19条の17」など、専門的な部分について、詳しく説明します。

「入管法第19条の16」「第19条の17」

「入管法第19条の16」「第19条の17」

出入国在留管理庁は、中長期在留者の必要最低限の情報を、把握しておく必要があります。
情報を、継続的に把握する必要があるために、中長期在留者と、中長期在留者を受け入れている所属機関に対して、以下の届出を義務付けています。

中長期在留者本人が行う届出(入管法第19条の16)

中長期在留者は、在留資格に応じて、所属機関や身分関係に変更があった場合、14日以内に出入国在留管理庁長官に届け出る必要があります。

届けなければならない内容については、以下になります。
届出内容

  • 氏名
  • 生年月日
  • 性別
  • 国籍・地域
  • 住居地
  • 在留カード番号
  • 変更があった事項
  • 変更があった日
  • 所属機関の名称及び所在地(所属機関に変更があった場合)
  • 配偶者、子、父母、兄弟姉妹等の氏名、生年月日、国籍・地域、住居地及び続柄(身分関係に変更があった場合)

所属機関が行う届出(入管法第19条の17)

中長期在留者を受け入れている所属機関は、中長期在留者の受入れ状況を速やかに、出入国在留管理庁長官に届け出る必要があります。
届け出なければならない内容は以下になります。
届出内容

  • 所属機関の名称及び所在地
  • 中長期在留者の氏名、生年月日、性別、国籍・地域、在留カード番号、受入開始日及び受入終了日
  • 中長期在留者を受け入れる業務の内容

これらの届出は、中長期在留者の方々が安心して日本で生活を送るために、また、出入国在留管理庁が適切な在留管理を行うために必要なものです。
そのため遅れて届出をした場合、または虚偽の届出をした場合は、罰則の対象となることがあります。

中長期在留者とは

そもそも中長期在留者とは、どんな人か説明します。
中長期在留者とは、出入国管理及び難民認定法(入管法)上の在留資格をもって、日本に中長期間在留する外国人のことを指します。具体的には、以下のいずれにも該当しない外国人です。
1. 短期滞在者
在留資格が「短期滞在」、また3ヶ月以下の在留資格が決定された人
2. 外交・公用
外交・公用の在留資格の人
3. 特定活動
特定活動の在留資格が決定された人
4. 亜東関係協会職員等
亜東関係協会の本邦事務所(台北駐日経済文化代表処など)、また駐日パレスチナ総代表部の職員と家族
5. 特別永住者
特別永住者の在留資格が決定された人
6. 不法滞在者
在留資格を有しない人

中長期在留者の方々は、日本社会において重要な役割を果たしています。

  • 労働力として、日本の経済発展に貢献しています。
  • 留学生として、日本の教育機関で学び国際交流を促進しています。
  • 技術者として、日本の技術の発展に貢献しています。
  • 家族の一員として、日本の社会で生活しています。

出入国在留管理庁は、中長期在留者の方々が安心して日本で生活を送ることができるよう、様々な施策を講じています。

出入国在留管理庁電子届出システムの利用者情報登録について

ここからは、必要な届出をオンラインで行う「出入国在留管理庁電子届出システム」の登録について、説明します。

オンラインで情報登録

中長期在留者の場合には、オンラインで利用者情報登録ができます。
ですが、全員がオンラインで情報登録できるわけではありません。

法第19条の17に定める中長期在留者を、受け入れている所属機関、日本語教育機関、特定技能所属機関、登録支援機関の場合には、提出方法は以下の2つに限られます。

  • 窓口での提出
  • 郵送での提出

窓口で提出

所属機関等の担当者の方は、利用者情報登録届出書を、管轄の地方出入国在留管理官署の窓口で提出します。

提出時に必要なもの

  • 利用者情報登録届出書
  • 提出者が所属機関などの職員であることがわかる資料

「所属機関などの職員であることがわかる資料」は例えば以下のものです。

  • 職員証
  • 申請等取次者証明書
  • 在職証明書
  • 機関の名称が書かれた健康保険被保険者証

提出については、以下のフローになります。

  1. 利用者情報登録届出書を記入して、必要書類を準備します。
  2. 管轄の地方出入国在留管理官署の窓口へ行きます。
  3. 窓口で、職員に利用者情報登録届出書と必要書類を提出します。
  4. 職員が書類を確認します。
  5. 問題がなければ、利用者情報登録が完了します。

出入国在留管理庁電子届出システムのメリット

出入国在留管理庁電子届出システムには、従来の窓口での手続きと比較して、以下のメリットがあります。

時間と場所の制約がない

インターネット環境があれば、自宅やオフィスなど、いつでもどこでも手続きを行うことができます。従来の窓口手続きでは、平日の決められた時間内に役所へ足を運ぶ必要がありました。業務の繁忙期でも、自分や会社のペースで手続きを進めることができます。

手続き時間の短縮

必要な情報を入力し、添付ファイルをアップロードするだけで、簡単に手続きを完了することができます。従来の窓口手続きでは、書類の記入や提出、職員とのやり取りに時間がかかる場合がありました。電子届出システムでは、これらの時間を大幅に短縮することができます。

24時間365日受付

年中無休で、24時間いつでも手続きを行うことができます。従来の窓口手続きは、平日のみしか受け付けていない場合が多く、夜間や休日にしか時間がない場合にとっては不便でした。電子届出システムであれば、時間帯を気にせずに手続きを進めることができます。

手数料無料

電子届出システムの利用は無料です。従来の窓口手続きでは、収入印紙や手数料が必要となる場合がありました。電子届出システムを利用することで、これらの費用を節約することができます。

環境負荷の軽減

紙の書類を使用しない電子手続きにより、環境負荷を軽減することができます。

複数人で共有可能

所属機関の場合は、複数の担当者がシステムを利用することができます。

情報の確認・修正

提出前に情報を確認・修正することができ、誤入力を防ぐことができます。

サポートが充実

システム利用に関する疑問や困ったことは、電話にて問い合わせることができます。オペレーターは日本語、または英語で対応してくれます。
メールでの問い合わせも可能です。

出入国在留管理庁電子届出システムの課題

出入国在留管理庁電子届出システムの課題

電子届出システムは非常に便利ですが、現状では課題もあります。

身分事項の変更は、電子届出システムではできない

氏名・国籍などの身分事項は、電子届出システムでは変更できません。
電子届出システムで届出できる変更事項は以下の通りです。

  • 所属機関(勤務先・学校等)の名称
  • 上記の所在地
  • 配偶者、子、父母、兄弟姉妹等の氏名・生年月日・国籍・地域・住居地・続柄

一方で電子届出システムで届出できない変更事項は以下の通りです。

  • 氏名
  • 国籍・地域
  • 生年月日
  • 性別

これらの変更事項については、従来通り、近くの地方出入国在留管理局の窓口で届出を行わなければなりません。

原則、代理人による届出はできない

入管法第19条の16の規定に基づく届出は、親族や雇用先の日本人職員などに、代わりに行ってもらうことはできません。
「日本語も英語も得意じゃないので代わりに…」ということはできません。
利用者情報登録を行った中長期在留者本人のみ届出は行えます。
ですが以下場合には、例外的に許可されます。

所属機関による届出

「電子届出システム」の利用者情報登録を行っている所属機関は、届出を行えます。
ですが所属機関の名称、所在地の変更に関する届出に限られます。
またその届出も、所属期間が勝手に行うことはできません。中長期在留者からの依頼に基づいて「電子届出システム」で届出を行うことができます。

出入国在留管理庁電子届出システムの未来展望

出入国在留管理庁電子届出システムは、2019年4月に導入されて以来、中長期在留者及び所属機関の利便性向上に大きく貢献してきました。今後は、更なる進化と発展が期待されています。

AI等技術の活用

AI等技術を活用することで、必要書類の自動チェック、質問への自動回答などが実現可能となり、利用者の負担を大幅に軽減することができます。

顔認証等セキュリティ強化

顔認証等生体認証技術を導入することで、なりすまし防止、セキュリティ強化を実現し、より安全なシステム利用環境を提供することができます。

アプリケーション開発

スマートフォン向けアプリを開発することで、より手軽に、いつでもどこでも届出が可能となり、利便性が向上します。

まとめ

出入国在留管理庁電子届出システムは、法令で定められた中長期在留者、または所属機関などが、インターネットを通じて各種届出・報告を行うシステムです。従来の窓口での手続きに加え、オンラインでの手続きが可能になり、時間や場所を問わずに利用できるようになりました。
主に以下の特徴があります。

  • 利便性: 24時間365日、どこからでも利用可能
  • 時間短縮: 窓口での待ち時間や移動時間削減
  • 手数料無料
  • 環境負荷の軽減:紙の書類を使用しない電子手続きにより、環境負荷を軽減。書類の保管・管理の負担も軽減
  • 迅速な処理: 電子データによる迅速な処理

システムの改善や利用者への周知を進め、より多くの人が利用できる環境を整備していくことが期待されています。

ですが一方で下記のような課題があります。

  • 身分事項の変更は、電子届出システムではできない
  • 原則、代理人による届出はできない

出入国在留管理庁電子届出システムの未来展望として、下記のものが挙げられます。

  • AI等技術の活用
  • 顔認証等セキュリティ強化
  • アプリケーション開発

システムの改善や利用者への周知を進め、より多くの人が利用できる環境を整備していくことが期待されています。

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外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。