宿泊業界で外国人労働者を雇用する場合の特定技能・技能実習などの在留資格について解説

宿泊業界で外国人労働者を雇用する場合の特定技能・技能実習などの在留資格について解説

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宿泊業界では特定技能外国人や技能実習生を雇用することも可能です。

ただし、外国人を雇用する場合は必ず在留資格で定められた範囲内の業務に従事させる必要があります。

特に宿泊業はフロント業務やレストラン業、清掃業務など業務範囲が多岐に渡るため、相手が適切な在留資格を持っているかどうかはコンプライアンス遵守の観点からも非常に重要です。

この記事では宿泊業に従事できる在留資格と対応する業務内容の例を紹介した上で、宿泊業での特定技能・技能実習について解説します。

宿泊業に従事できる在留資格と従事できる業務内容の例

宿泊業に従事できる在留資格と従事できる業務内容の例

以下ではまず宿泊業に従事できる在留資格と在留資格で定められた業務内容について解説します。

技術・人文知識・国際業務

技術・人文知識・国際業務は外国人が、本人の学歴や実務経験が活かせる業務に就労する場合に取得が認められる在留資格です。

本人の学歴や職歴等だけでなく、実際の業務内容にその関連性が認められることが重要になってきます。

また、学歴や実務経験による知識や技術を必要としない、単純作業などでは雇用できません。例えば宿泊業ではベッドメイキングなどの業務を任せることはできないため注意が必要です。

ただし業務に付随した形であれば単純作業を任せることはできます。

従事できる業務

  • 宿泊プラン等の企画立案やマーケティング、宣伝・広報業務
  • フロントなどでの通訳・翻訳
  • 営業や人事労務、経理などの業務

特定技能1号・2号

学歴や職歴などに左右されず、業務に必要な技術・知識が相当程度あれば十分である場合は特定技能の在留資格を持った外国人を雇用することをおすすめします。

特定技能制度は人手不足の解消を目的として設けられた制度です。

以前は宿泊業では特定技能1号のみが雇用できましたが、2023年に2号も解禁されたことにより現在は2号での雇用も可能となっています。

従事できる業務

  • フロント業務
  • 館内案内の作成等
  • 問い合わせに対応
  • ベッドメイキングや清掃など
  • レストランサービス業務

宿泊施設内のレストランでの配膳等の業務は外食業として特定技能の在留資格を取得した場合でも対応できます。ただし、その場合はフロント業務など宿泊業ならではの業務を任せることはできません。

同様に、宿泊業として特定技能を取得している場合は宿泊施設内のレストランサービスにのみ従事させることは認められていません。

特定活動46号

就労可能な在留資格にはさまざまなものがありますが、どの在留資格にも該当しない活動の受け皿として「特定活動」と呼ばれる在留資格が設けられています。

特定活動での活動内容は「法務大臣が個々の外国人について特に活動を指定する」形で定められており、法務大臣があらかじめ告示している活動内容は現在46種類存在します。

その中の特定活動46号は特に外国人留学生の就職先を拡大することを目的として作られたもので、この在留資格によってアルバイトとして雇っていた留学生を雇用することが認められます。

従事できる業務

  • 通訳や翻訳業務
  • 外国人客への接客

ただし、客室の清掃のみに従事することは認められていません。

技能実習

技能実習は日本で働くことを通して身につけた知識や技術を帰国後にその地域の経済活性化のために活かしてもらうことを目的とした、国際貢献のための制度です。

従って人手不足解消のために利用することは認められていません。

従事できる業務

  • チェックイン・チェックアウト関連作業
  • 接客業
  • レストラン業務
  • 安全衛生業務

    ※ただし、技能実習の場合は上記を含む作業基準に定められた全ての「必須作業」を網羅的に従事させなければなりません。(時間配分は自由です。)従って、3年間レストラン業務のみに従事させると言う働き方は認められておりません。
    詳しくは厚生労働省HPの審査基準をご参照ください。

その他

永住者やその家族など、身分系の在留資格を取得している場合は労働基準法に基づいた就労規定であれば、就労制限なく雇用することができます。

活動範囲を気にする必要がない反面、取得者数が少ないという特徴があります。

ただし、雇用した外国人が日本人の配偶者等であり、就労期間中に離婚した場合は在留資格が取り消しなるため注意が必要です。離婚後も引き続き雇用するためには在留資格及び業務内容を変更する必要があります。

特定技能外国人として雇用する場合のポイント

特定技能外国人として雇用する場合のポイント

宿泊業における1号と2号の違い

2号の取得には1号よりも高いスキルを身につけていることが求められるだけでなく、2号は家族帯同ができ、在留資格の更新に上限がないといった特徴があります。

一方で1号は相当程度のスキルがあれば取得できる反面、家族帯同が不可能であったり更新に上限があるという条件があります。

2023年度の改正により、それまでは一部の産業にのみ対応していた2号への在留資格の移行が宿泊業でも可能になりました。

これによって現在は宿泊業でもそれまで1号として雇用していた外国人を引き続き雇用することができるようになっています。

まだまだ活用が進んでいない面もありますが、今後は宿泊業でも特定技能2号を取得した外国人が増えるでしょう。

単純作業等を任せる場合に適した在留資格

特定技能制度は人手不足を補うためのものであることから、必要な相当程度の技術・知識があれば対応できる、単純作業を中心とした業務を任せる場合に適した在留資格です。

逆に高度な専門性や外国人ならではの思考・感性が求められる業務には対応していません。

特定技能制度は人手不足を解消することを目的として設けられました。

現在日本では少子高齢化の影響を受け、中小企業を中心に深刻な人手不足に陥っています。このまま労働力を確保できなければ、社会経済基盤を揺るがす恐れがあります。

外国人労働者を利用することでこうしたリスクを未然に解決するために、特に人手不足にあえいでいる産業で特定技能制度が設けられました。

技能実習2号から特定技能1号に移行することも可能

特定技能1号の在留資格を取得するには、産業分野に関する技能試験と日本語試験に合格する必要があります。

しかしすでに技能実習2号として良好に修了した外国人であれば特定技能1号に移行することも可能です。

従って宿泊業で特定技能1号を雇用する方法は、

  • 試験に合格した外国人を雇用する
  • 技能実習2号を良好に修了した外国人の在留資格を変更する

の2種類が存在します。

技能実習2号から特定技能1号に移行する場合、それまでの職種と作業内容が特定技能として働く際の業務内容と関連性が認められる場合は技能試験と日本語試験の両方が、異なる産業分野である場合は日本語試験のみが免除されます。

宿泊業が技能実習の移行対象職種となったのは2020年のことです。そのため宿泊業で技能実習2号から特定技能1号に移行した外国人はあまり多くありませんが、今後は利用が拡大していくことが予想されます。

受け入れ企業には協議会への加入が義務付けられている

特定技能の全ての産業には、制度の健全な運用を目指して作られた協議会が存在します。

協議会は各産業の所管省庁が中心となって運営されており、宿泊業は国土交通省が設置する「宿泊分野特定技能協議会」への加入が義務付けられています。

技能実習生として雇用する場合のポイント

技能実習生として雇用する場合のポイント

特定技能は人手不足解消を目的として設けられた制度であるのに対し、技能実習は国際貢献を目的として設けられた制度です。

従って実際に利用する場合は制度の主旨を理解する必要があります。

技能実習は国際貢献を目的とした制度

日本で身につけた技術や知識を帰国後にその地域の経済発展等に役立ててもらうことを目的として作られたのが技能実習制度です。

本人の帰国ありきの制度であるため、長期間雇用することはできません。日本での滞在期間も最長5年となっています。

また、日本での労働を通して技術や知識を身につけてもらうことが目的であるため転職も認められていません。

特定技能とは異なる在留資格であることを理解する必要がある

技能実習制度を労働力の需給の調整の手段として用いることは法律で禁止されています。

そのため技能実習制度を用いて人手不足を解消することは認められていません。人手不足の解消を目的とする場合は特定技能制度を利用するようにしましょう。

もし技能実習として日本で働いている外国人に、人手不足解消のためにもっと長く働いてほしい場合は特定技能に移行する必要があります。

ベッドメイキング等のみであれば「ビルクリーニング」に該当することもある

ベッドメイキング等のみであれば「ビルクリーニング」に該当することもある

宿泊業として特定技能外国人を雇用する場合、労働者を客室の清掃やベッドメイキングにのみ従事させることは認められていません。フロント業務など宿泊業ならではの業務を幅広く任せる前提で雇用する必要があります。

客室の清掃やベッドメイキング等の業務をメインとした上での雇用を検討している場合、「ビルクリーニング」として在留資格を取得した外国人の雇用をおすすめします。

ビルクリーニングは宿泊業とは産業分野が異なります。そのためフロント業務などを任せることはできませんが、清掃等に特化した人材を確保したい場合には有効です。

日本の宿泊業界で働く外国人労働者の現状

日本の宿泊業界で働く外国人労働者の現状

全産業での労働者の国籍

2023年10月末時点での日本で働く外国人労働者数は2,048,675人となっており、前の年と比較すると225,950人増加しました。

外国人労働者の数は全ての在留資格で年々増えていることから、今後も日本で働く外国人は増え続けることが予想されます。

国籍別では多い順に、

1位 ベトナム
2位 中国
3位 フィリピン

となっています。

宿泊業界での特定技能外国人の数は伸び悩んでいる

外国人労働者全体の27.0%が製造業で働いており、その次にサービス業(15.7%)、小売業(12.9%)と続き、4番目に宿泊・飲食サービス業(11.4%)が入ります。

さらに特定技能に限るとごくわずかであり、受け入れ見込み数の11,200人に全く届いていないのが現状です。

宿泊業で働く外国人が別の在留資格「技術・人文知識・国際業務」に流れているのではないかといったことが原因の一つとして考えられます。

確かに宿泊業での業務の中には技術・人文知識・国際業務にも対応できるものが少なくありませんが、人手不足を解消したい場合には技術・人文知識・国際業務は不適切な在留資格であるため注意が必要な面もあります。

宿泊業界でも今後人手不足が深刻化するのではないかと危惧されています。特定技能制度を利用することでこうした問題を解決できる可能性があるため、外国人材を取り入れる場合は特定技能制度の利用を検討することをおすすめします。

国内での人手不足の影響を受け今後も増加する見込み

外国人材は特に事業規模が30人未満の事業所での利用が目立ちます。中小企業など規模の小さな事業所ほど人手不足の影響を受けやすく、外国人材に頼らざるをえない状況になりやすいのが現状です。

今後も国内での少子高齢化の加速に伴い日本国内で働く外国人材は増加するのではないかと考えられます。

それに伴い制度の拡充や変更もなされる可能性があるため、これから外国人材の採用を検討している企業だけでなくすでに雇用している企業にも柔軟な対応が求められます。

宿泊業界で外国人を雇用する場合は在留資格の範囲に注意

宿泊業界で外国人を雇用する場合は在留資格の範囲に注意

宿泊業界で外国人を雇用する上での在留資格にはさまざまなものが存在しますが、在留資格ではそれぞれ活動範囲が定められています。

活動範囲外であると見なされた場合、不法就労をさせたと見なされ罰せられる恐れもあるため、外国人を雇用する際には本人の持つ在留資格で定められた活動範囲を必ずチェックしなければなりません。

特に宿泊業は業務内容が多岐に渡ります。特定技能の場合、フロント業務を含む清掃やレストラン業務に従事する場合は産業分野「宿泊業」に該当しますが、清掃のみやレストラン業務のみの場合は該当する別の産業分野で雇用しなければならない可能性もあります。

雇用する前に任せる業務はどういったものなのかを明確にするようにしましょう。適切な業務に適切な在留資格を持った人材を雇用することで、健全な制度の利用が可能になります。

宿泊業で特定技能・技能実習を雇用する際に便利なオンラインクラウドツール「dekisugi」

日本人労働者を雇用する場合とは異なり、外国人を雇用する際にはさまざまな手続きをしなければなりません。そうした手続き関連業務が担当者の負担となってしまう恐れもあります。

「dekisugi」は担当者の負担を軽減し、スムーズに特定技能・技能実習生を雇用するためのオンラインクラウドツールです。

書類作成業務の時短・効率化ができるだけでなく、「dekisugi」ではデータやスケジュールの一元管理ができるため複数人で業務を担当する場合でもスムーズに進捗を確認することも可能です。

まとめ

製造業などと比較するとまだまだ活用が進んでいない分野ではありますが、今後も人手不足が進む中で宿泊業界でも特定技能外国人の活用が拡大することが予想されます。

特定技能や技能実習生として雇用した外国人材は技術・人文知識・国際貢献とは異なる業務での活躍が期待できます。

外国人材を取り入れる上では雇用する目的を明確にした上で、適切な業務に適切な在留資格を持つ人材を配置することが重要です。制度を適切に活用しながら労働力を確保するようにしましょう。

この記事を書いたライター
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カナエル運営事務局

外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。