外国人材受入れに対する企業側の課題とアンケート結果

外国人材受入れに対する企業側の課題とアンケート結果

特定技能外国人雇用就労ビザ

国内で深刻化する労働力不足の課題を解決する手段の一つとして、外国人材の活用が現在注目を集めています。
日本で働く外国人の人数は年々増加しており、令和6年の外国人就労者数は2,302,587人に上りました。(令和6年10月末時点/厚生労働省届出状況)

一方で日本人を雇用する場合とは異なり、コミュニケーションの取りづらさや在留資格などの管理負担が増えるなど、外国人の雇用には特有の課題も生じます。
この記事では政府や民間機関が実施したアンケートから見える、日本国内での外国人材雇用の現状や課題と、その具体的な対応策について紹介します。

参照:厚生労働省

外国人材雇用の現状

まずは日本国内での外国人材の雇用の現状について解説します。

労働力不足を補うための外国人材の活用

現在少子高齢化に伴い、さまざまな産業で労働力が不足しています。このまま労働力不足が深刻化すると、国内の産業・経済を維持できなくなる恐れがあります。

こうした中で外国人材は国内の労働力不足の課題を解決するだけでなく、異なる文化的背景や価値観を持つことから、日本の職場環境にいい変化をもたらすのではないかと期待されています。

少子高齢化による労働力不足を実感している企業の数

帝国データバンクの調べによると、2025年4月時点における人手不足を感じている企業は、正社員の雇用で51.4%、非正社員の雇用で30.0%でした。
正社員・非正社員共に十分に人員を確保できていないと感じている企業の割合は、近年高止まり状態が続いており、人手不足が慢性化していると言えます。

雇用形態・業種別特徴

正社員の人員不足が著しいのは、

  • ソフトウェア開発や情報処理サービスなどを含む情報サービス業
  • 清掃・警備・ビルメンテナンス業
  • 建設業
  • 道路貨物運送業
などがあげられます。

情報サービス業では業務効率化を目的としたDX・デジタルツールの導入が各産業で進められ、需要が高まっている一方で、システムエンジニアなど必要なスキルを持つ人材が不足しています。
清掃・警備・ビルメンテナンス業も受注に対し人員確保が難しい状況が続いている産業です。
また、建設業、道路貨物運送業は2024年に適用された時間外労働に対する新たな上限規制(2024年問題)による影響を受けています。
非正規雇用では、飲食店や旅館・ホテルなど、BtoCの産業での人員不足が目立ちます。

女性やシニアの社会進出

労働力不足の解決策として、女性やシニア人材の活用も進められています。

厚生労働省の令和5年の調査によると、女性の労働力人口は3124万人と前年に比べ28万人増加しました。労働力人口総数に占める女性の割合は45.1%であり、前年よりも0.2ポイント上昇しています。
労働力人口総数は6,925万人となり、男性の労働力人口の減少分と差し引き23万人増加したことになります。

また、総務省統計局のデータによると、高齢者の就業者は2004年以降毎年増加を繰り返し、2021年には高齢者の就業者は909万人と過去最多を記録しました。
このように女性やシニアの社会進出によって就労人口は増えていますが、労働力人口の減少ペースに追いついていないのが現状です。

現在外国人材を雇用している企業数は年々増加している

日本で働く外国人材、外国人材を雇用する企業数は年々増加しています。
令和6年の外国人就労者数は2,302,587人で対前年増加率は12.4%となっており、事業所数は342,087箇所で対前年増加率は7.3%となりました。
都道府県別に見ると、対前年増加率が10%を超えているところも少なくなく、全国的に受け入れが拡大しています。

外国人材の出身国・地域として最も多いのはベトナム

ベトナム出身者は外国人労働者の中でも最も多く、全体割合の24.8%を占めています。
その次に中国の17.8%、フィリピンの10.7%が続きます。

1位 ベトナム(24.8%)
2位 中国(17.8%)
3位 フィリピン(10.7%)

参考:厚生労働省

現在最も外国人材の活用が進められている産業分野は「製造業」

厚生労働省の令和6年外国人雇用実態調査の概況によると、現在最も外国人材の活用が進められている産業分野は「製造業」となっており、約59万人の外国人材が働いています。
次で「サービス業(他に分類されないもの)」約35万人、「卸売業、小売業」約29万人、「建設業」約17万人となっており、この製造業も含む上位4分野だけで国内の外国人材の約⅔を占めています。

1位 製造業(約59万人)
2位 サービス業(他に分類されないもの)(約35万人)
3位 卸売業、小売業(約29万人)
4位 建設業(約17万人)

参考:厚生労働省

国内企業における外国人材のニーズは年々高まっている

外国人労働者の雇用・採用動向

引用元:帝国データバンク 外国人労働者の雇用・採用に対する企業の動向調査(2025年8月)

帝国データバンクの2025年8月の全国2万6,162社を対象とした調査によると、現在外国人を「雇用している」と回答した企業は24.7%に上りました。
これは前回の2024年2月の調査から1.0ポイント上昇しています。

「雇用していない」と回答した企業は前回よりも1.1ポイント減少し、58.1%でした。
また、今後外国人労働者の採用を開始・拡大する意向のある企業は14.3%となっています。

参考:帝国データバンク

国内企業が外国人を雇用する理由

厚生労働省の令和6年外国人雇用実態調査の概況によると、国内企業が外国人労働者を雇用する理由として最も多くあがったのは「労働力不足の解消・緩和のため」でした。

「労働力不足の解消・緩和のため」は、

  • 電気・ガス・熱供給・水道業
  • 情報通信業
  • 金融業、保険業
  • 学術研究、専門・技術サービス業
  • 教育、学習支援業
  • 複合サービス事業
を除いた全ての産業で、50%以上の企業が回答しています。

また、製造業や建設業、農業、林業、漁業など、特定技能制度で指定されている産業分野では特に多くの企業が外国人材を雇用する理由としてあげています。
次いで「日本人と同等またはそれ以上の活躍を期待して」と回答している企業が多く(54.7%)、「事業所の国際化、多様性の向上を図るため」(15.8%)「日本人にはない知識、技術の活用を期待して(13.2%)が続きます。

参考:厚生労働省

外国人材を雇用する上での課題

日本人とは異なる価値観・文化的背景を持つ外国人を雇用する場合、日本人を雇用する場合とは異なる課題が生じることがあります。

厚生労働省の調査によると、特に課題はないと回答した企業も17.4%にのぼる一方で、

  • 言語が異なることによるコミュニケーションの問題
  • 在留資格の申請等の事務負担
  • 在留資格によっては在留期間の上限がある
といった課題を抱えている企業が多いようです。

参考:厚生労働省

コミュニケーションがとりづらい

特定技能1号の場合、日本語能力試験(JLPT)でN4レベル以上、あるいは国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)でA2レベル以上に合格することが在留資格取得の条件としてあげられています。
これは「日本での基本的な日常生活や業務に必要な日本語能力」を有しているということを示す水準です。

しかし細かいニュアンスを互いに伝え合うには不十分な面もあります。業務指示が正確に伝わらず、労災につながるケースも少なくありません。外国人材の職場での孤立を招くリスクも潜んでいます。
また、言語だけではなく、日本特有の労働慣習に不慣れなことからトラブルが生じることもあります。

外国人を雇用する上での各種事務業務の負担

外国人を雇用する場合、雇用する外国人材の在留資格の管理が非常に重要になります。さらに定期・不定期に関係各省庁への届出も滞りなく行わなければなりません。
万が一怠った場合、不法就労幇助などの罪に問われる恐れもあります。
外国人材を雇用することによって事務業務が増え、担当者の負担となるケースは少なくありません。

長期的な人材確保の難しさ

技能実習、特定技能1号など、在留資格によっては在留期間が終了すると日本での就労の継続が難しいものもあります。
在留期間満了後も日本で働き続けるためには、取得条件を満たした上で適切な在留資格への移行が必要です。
技能実習と特定技能1号は在留資格の移行ハードルが高いという課題がありました。

しかし2027年には技能実習制度が廃止となり、特定技能1号への将来的な移行を前提とした育成就労制度がスタートします。
これによって企業はより長期的に人材を確保できるようになるのではないかと期待されています。

【補足】地域との関係性

外国人材を雇用する理由として、「日本人にはない知識、技術の活用を期待して」と回答している企業も少なくない一方で、日本人を対象として実施された「外国人との共生に関する意識調査」では、地域に外国人が増えることに対し、「好ましくない」「どちらかといえば好ましくない」と回答した人は23.5%に上ります。

外国人材の受け入れ企業は、職場だけでなく地域に対しても責任を持たなければなりません。
特定技能制度では、令和7年に地方公共団体が実施している共生施策を確認し、その内容を踏まえた上で1号特定技能外国人に対する支援計画を作成・実施することが盛り込まれた形で改正されました。
さらに2027年にスタートする育成就労などでは、受入機関は地域と連携して外国人の地域での受け入れ環境整備に取り組むことが盛り込まれています。

参考: 出入国在留管理庁 法務省

日本で働く外国人が感じている就労上のトラブル

厚生労働省が実施した令和6年外国人雇用実態調査では、外国人労働者を対象にした調査も実施されました。

トラブルがあると感じている人は全体の10%

調査によると、今の会社で仕事をする上でトラブルや困ったことはあったかどうかについて、「あり」と答えた外国人材は10.9%で、「なし」という回答は86.9%でした。

トラブルの内容

全ての外国人が感じている具体的なトラブルの内容としては、「紹介会社(送出し機関含む)の費用が高かった」が18.6%と最も多く、「トラブルや困ったことをどこに相談すればよいかわからなかった(14.9%)」「事前の説明以上に高い日本語能力を求められた(8.8%)」が続きます。

また、特定技能の在留資格取得者に限定すると、「紹介会社(送出し機関含む)の費用が高かった」が45.9%、「事前の説明以上に会社に入るための費用がかかった」が9.8%、「事前に賃金について説明がなかった」が5.6%となっています。
来日するために借金をする人も少なくありません。
特定技能制度および2027年にスタートする育成就労では従来の外国人材の費用負担を見直すと同時に、人材及び各関係機関間で適正な分担がなされるよう見直しが進められています。

参考:厚生労働省

課題解決のための具体的な対応方法

外国人材を雇用する上で生じるさまざまな課題に対し、具体的な対応方法も検討が進められています。

些細な情報であっても双方で共有する

日本人の間では当たり前となっていることでも、外国人にとっては理解できないことはたくさんあります。コミュニケーションをとることの難しさは、言語が異なることだけが原因ではありません。
些細な情報であっても双方が共有できる体制作りは非常に重要です。情報共有の徹底は、労災や外国人の職場での孤立・いじめ・差別を防ぐだけでなく、外国人ならではの視点を取り入れる機会を増やします。

指導する場合は具体的に

日本人同士では婉曲的な表現でも十分通用する場合もありますが、外国人材に対し指導をする場合は背景や理由を明確に伝えることが重要になってきます。
主語や時制、目的、期限などを明確にし、具体的に伝えるようにしましょう。

また、意図が理解できているかをチェックするために、指示を出した後は適切にフォローする必要があります。

文化的背景や価値観が異なることを互いに理解しあう

文化的背景や価値観が異なることからトラブルに発展してしまうケースも少なくありません。
日本人のやり方を一方的に伝えるだけでは、双方の理解は深まりません。相手の外国人の表現ややり方に対し、理解を示した上で日本でのやり方を説明する姿勢が求められます。
業務上の指示や支援などは互いに価値観が異なることを理解した上で実施するようにしましょう。

外国人材が将来のキャリアを描けるようサポートする

慣れない労働環境下ではどうしても将来のことをイメージできず、モチベーションを維持できない外国人も少なくありません。
外国人材に日本で長く働いてもらうためには、彼ら自身の将来のキャリアビジョンに対する理解と適切なサポートも求められます。
自社でのキャリアパスについて丁寧に説明する、相談窓口の設置など、外国人材に対するサポート体制を整えることは、長期的な人材確保にもつながります。

まとめ

今後の日本の産業・経済を支える上で、外国人材は非常に重要な存在です。さまざまな課題を解決しながら、日本人・外国人双方にとって心地よい職場作りができるかどうかが、今後の日本経済の発展の鍵となります。

この記事を書いたライター
牧寛也

牧寛也