外国人も日本人と同じように、1日8時間、週40時間の労働時間の制限があるのでしょうか?
残業はどれくらいさせてよいのでしょうか?
実は、この答えは在留資格によって変わってきます。例えば留学生は学業が本業であるため、週28時間までしか働けません。留学生に限らず、資格外活動で働く外国人も、週28時間までと制限が設けられています。
この記事では、在留資格によって変わる外国人の労働時間、その制限やルールなどについて説明します。
目次
労働時間の制限は?
日本人の場合と、外国人の場合の労働時間の制限について、まず見ていきます。
日本人の場合
労働基準法では、働く時間は、1日8時間、週40時間までと決まっています。
また労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩が必要と定められています。
そして毎週1日の休日、4週間を通じて4日以上の休日が必要です。
では外国人の場合は、どのように変わるのでしょうか。
外国人労働者は在留資格によって違う
外国人労働者の場合も日本人と全く同じです。
働く時間は1日8時間、週40時間までと決められており、毎週1日の休日、4週間を通じて4日以上の休日が必要です。
ですが前述の通り、在留資格によって異なりますので注意が必要です。
留学生や家族滞在、特定活動の一部で日本で働いている外国人はこの限りではなく、週28時間までしか働けません。
労働基準法が定める労働時間
残業と休日について
労働基準法が定める労働時間について、より詳細に見ていきます。
労働基準法では、1日の労働時間は8時間まで、1週間の労働時間は40時間までと決められています。
ただ外国人も、日本人と同様に残業をすることはできます。
つまり上記ルールを守れなかったら違法になるというわけではなく、それ以上の労働時間は、残業時間としてカウントされるということになります(詳細は当記事「36協定」をご参照ください)。
また休日についてですが、「毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日」と決まっています。ですのでこれも日本人と同様に週5日ではなく週6日勤務にすることが可能です。
ですが週40時間勤務が基本になります。
そのため、例えば1日6.5時間勤務で週6日勤務なら、週39時間の労働となりますので、週6勤務にしても労働基準法のルールを守ることができます。
休憩時間について
働くときには、休憩をしっかり取ることが大切です。労働基準法では、1日の労働時間が6時間を超える場合は、45分以上の休憩時間をとってもらう必要があります。
8時間を超える場合は、1時間以上の休憩時間となります。
休憩時間については、いくつか注意点があります。
休憩時間は仕事の途中で取ることが原則です。仕事の始めや終わりに休憩を取るのは、認められていません。これは「拘束時間が長くなるから不要」と従業員に言われたとしても、取らないといけないと法律で決まっています。
また何かしらの理由で会社での拘束時間が長くても、休憩を間に挟んでいれば8時間労働となります。例えば拘束時間が10時間であっても、休憩時間が2時間であれば労働時間は8時間となります。
36協定とは
外国人労働者に残業をさせることは可能です。
本来労働基準法には「1日8時間、週に40時間を超えて労働させてはならない」とあります。ですが36協定を結ぶことで、企業は、労働基準法で定められた上限を超える時間外労働をしてもらうことができます。ただしこれは臨時的、また特別の事情がある場合でなおかつ労働者との合意を得ることが条件です。
具体的には、時間外労働をお願いしたい場合は、労働基準法の第36条に則った方法で、会社と、労働者との間で協定を結び、労働基準監督署に届け出なければなりません。
この協定を通称「36協定」(さぶろくきょうてい)と呼んでいます。
36協定の目的は労働者を過度な労働から守ることです。
いわゆるブラック企業と呼ばれるような、時間外労働の定めもなく、休日もなく従業員を働かせる会社では、従業員が過労死するなどの悲劇が起こることがあります。
そうした悲劇を防ぐために設けられています。
時間制限ありの在留資格
在留資格によっては労働時間に制限があります。
時間制限がある在留資格・特に定められていない在留資格をまとめます。
時間制限ありの在留資格は主に以下になります。
- 「留学」
- 「家族滞在」
- 「特定活動」の一部
- 給与を支給するインターンシップ
時間制限なしの在留資格
基本的には、上記の在留資格でなければ、時間制限はありません。
- 「永住者」
- 「日本人の配偶者等」
- 「永住者の配偶者」
- 「定住者」
- 「特定技能」
- 「技能実習」
- 「介護」
- 「技術・人文知識・国際業務」
- 「ワーキングホリデー」
これらの在留資格であれば、原則1日8時間の労働ができます。
アルバイトの労働時間
続いて、外国人のアルバイトの労働時間についてみていきます。
資格外活動
例えば「留学」の場合は、本業が学業です。
ですのでアルバイトをしたい場合には、出入国在留管理庁から資格外活動の許可を受けることが必要です。
許可を受けてない場合には、労働者自身も、雇用主も、不法就労助長罪で罰せられる可能性があります。
ダブルワーク
会社で働いている人が、他の会社でも働くことをダブルワークといいます。
ダブルワークの場合の注意点として、労働時間の制限は1社につき28時間ではなく、全社合計の労働時間が28時間以内です。
ですので留学生アルバイトなどを雇用する場合には、必ずダブルワークをしているか確認が必須です。ダブルワークをしている場合には、会社名、業務内容、1日の労働時間、労働日数などを申告してもらいましょう。
ただダブルワークをしている場合、他社で働く時間を参考にしながら何時間までなら働けるのかを話し合ったり決めたりする必要があります。ダブルワークが自社のリスクや負担になるようであれば、許可しないようにしましょう。
また労働基準法を遵守しなければならない点にも注意が必要です。
ダブルワークの場合には、全社合計で労働基準法に則り1週間に6日までしか働けません。
長期休暇
夏休みや冬休みなどの長期休暇期間には、例外的に労働時間が伸びて、1週間に40時間まで働くことができます。
人手不足などの場合には、留学生アルバイトにたくさん働いてもらうことができますので、こちらも認識しておくと良いでしょう。
従事できない業種
資格外活動許可を受けていても、従事できない業種があります。
在留カード裏面に、資格外活動許可を得ていると、以下のような文言が記載されます。
「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く。)」
この文言の通り、風俗営業などへは従事できません。
具体的には、パチンコ店やキャバクラ、ホストクラブ、ショーパブ、ダンスホール、バー、そしていわゆる性風俗に関連する風俗店などではアルバイトはできません。
具体的には以下の職種には従事できません。
- パチンコ店
- 麻雀店
- ゲームセンター
- キャバクラ
- ホストクラブ
- ナイトクラブ
- ダンスホール
- 喫茶店・バー(照明は10ルクス以下)
- ソープランド
- 出会い喫茶
ゲームセンターなどには、あまり風俗営業のイメージを持っていない方が多いと思いますが、風俗営業のカテゴリーに属するため従事することができません。
また細かいですが、喫茶店やバーの場合でも、その店が「照度が10ルクス以下」の場合には「風俗営業を行っている」と判断されます。照明が薄暗い喫茶店やバーでは、勤務ができないということになります。
風俗営業のカテゴリーに属する職種の一覧が警視庁のページにありますので、より詳細を知りたい場合にはご参照ください。
罰則について
労働時間の制限を守らずに働かせると、事業主は不法就労助長罪で逮捕・送検される可能性があります。
不法就労助長罪の罰則は決して軽いものではありません。3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられます。
企業だけではなく、外国人労働者も処罰を受けます。
外国人労働者は最悪の場合、退去強制や出国命令を受ける可能性があります。
摘発後に「知らなかった」という言い訳は通用しません。外国人労働者を雇うときは、必ず労働時間の制限を守るようにしてください。
実際に違反をしてしまい、摘発された事例も数多くあります。
実際の事例
産経新聞に掲載された実際の事例を紹介します。
全国展開するラーメンチェーン「一蘭」の大阪・ミナミの店舗であった事例です。
外国人留学生が週28時間を超えて働かされていたことが発覚し、社長と社員合計7人と、法人が不法就労助長などの疑いで書類送検されました。
社長や社員らは、大阪市中央区の店舗で、複数の留学生を週28時間を超えて働かせていました。本社が店員の勤務管理などに関与していたことから、会社としても違法就労を助長したと判断しました。
また会社と従業員だけではなく、違法に働いていた留学生たち10人も、書類送検されることになりました。
会社が信用を失うだけではなく、働いてくれている外国人労働者の人生を狂わせてしまうかもしれません。必ず注意しましょう。
労働時間制限に関する注意点
解説してきた通り、外国人労働者には労働時間の制限があります。
制限を超えて働くと外国人労働者は、在留資格の変更や更新ができなくなったり、罰金刑や退去強制の対象になったりすることがあります。ですがそのリスクをよくわかっていない方も多いです。
ですのでダブルワークなどについては必ずヒアリングが必要ですし、場合によっては「ダブルワークをしていない」という旨の誓約書の提出を求めても良いでしょう。
わかっていてオーバーワークをさせた場合ももちろんありますが、認識が甘かったが故にダブルワークをさせてしまった場合も数多くあります。
労働者だけではなく、会社を守るためにも真摯に取り組む必要があります。
まとめ
最後に記事の内容を簡単にまとめます。
労働時間の制限は?
外国人労働者も、日本人労働者も同じです。
働く時間は、1日8時間、週40時間までです。
また労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩が必要と定められています。そして毎週1日の休日、4週間を通じて4日以上の休日が必要です。
外国人の労働時間は在留資格によって違う
留学生や家族滞在、特定活動の一部で日本で働いている外国人は、上記の限りではありません。留学生や家族滞在、特定活動で働く外国人は週28時間までしか働けません。
36協定とは
時間外労働をお願いしたい場合は、労働基準法の第36条に則った方法で、会社と、労働者との間で協定を結び、労働基準監督署に届け出なければなりません。この協定を通称「36協定」と呼んでおり、この協定を結んでいれば残業をしてもらうことができます。
時間制限ありの在留資格
時間制限ありの在留資格は主に以下になります。
- 「留学」
- 「家族滞在」
- 「特定活動」の一部
- 給与を支給するインターンシップ
時間制限なしの在留資格
時間制限なしの在留資格は主に以下になります。
- 「永住者」
- 「日本人の配偶者等」
- 「永住者の配偶者」
- 「定住者」
- 「特定技能」
- 「技能実習」
- 「介護」
- 「技術・人文知識・国際業務」
- 「ワーキングホリデー」
アルバイトの労働時間
資格外活動
例えば「留学」の場合は、本業が学業です。
ですのでアルバイトをしたい場合には、出入国在留管理庁から資格外活動の許可を受けることが必要です。
ダブルワーク
ダブルワークの場合の注意点として、労働時間は1社につき28時間ではなく、全社合計の労働時間が28時間以内です。ですので留学生アルバイトなどを雇用する場合には、必ずダブルワークをしているか確認が必須です。
長期休暇
夏休みや冬休みなどの長期休暇期間には、1週間に40時間まで働くことができます。
従事できない業種
風俗営業などへは従事できません。
具体的には、パチンコ店やキャバクラ、ホストクラブ、ショーパブ、ダンスホール、バー、そしていわゆる性風俗に関連する風俗店などでは、アルバイトはできません。