外国人の募集から、入社後の労務管理について簡単解説

外国人の募集から、入社後の労務管理について簡単解説

ニュース・特集外国人雇用就労ビザ

外国人労働者は年々増加しています。
ここ10年間で約3倍になり、2022年の時点では日本では180万人もの外国人労働者が働いています。
外国人労働者が増加している理由として、まず少子高齢化が急速に進んでいることがあげられます。
若い労働力が減少しているため、外国人労働者の受け入れを国がどんどん推し進めています。
この記事では、増加している外国人労働者の募集から、その後のケアまでを、簡単に説明します。

外国人の雇用自体は難しくない

外国人の雇用自体は難しくない

現在、介護や建築、宿泊業などにおいては、人手不足解消の有望な一手として外国人労働者の雇用が選択されています。ベトナムや中国、フィリピンなどから来日する外国人労働者は、日本の産業を支えるなくてはならない存在となりました。

ですが外国人の雇用は、日本人の場合といくつかの点で異なるので注意が必要です。
ただ雇用手続きのフローは、初めは難しく感じるかもしれませんが、何度かこなせばその後はスムーズに進みます。肝心なことは入社後のケアやサポートです。

入社後の方が大変!

外国人労働者は雇用したら終わりではありません。
外国人労働者に十二分に力を発揮してもらい、企業の利益に貢献してもらうことがゴールです。

全く文化の違う日本での生活には戸惑いを感じるでしょうし、職場でも言葉がうまく通じないために苦しむことがあるでしょう。そういった悩みを放置せず、職場にとけ込めるようにサポートすることこそが重要です。
企業が十分なサポートを行えない場合には、能力を最大限発揮できないだけでなく、企業を去ってしまうことがあり得ます。

外国人の募集フロー

外国人の募集フロー

まず外国人人材の雇用フローについて、簡単に解説します。

①募集をかける

主に以下の5つの募集方法があります。

直接募集する

外国人労働者を、自社のホームページなどを利用して直接募集する方法です。
自社ホームページのみだと、閲覧者が限られてきますので、外国語の新聞や雑誌、web広告を利用する方法があります。

外国語の新聞や雑誌では、例えばメトロポリスや日本新華僑報があげられます。
メトロポリスは訪日・関東在住の外国人に向けた英字のフリーペーパーで、様々な情報発信を行っており閲覧者が多いために広告効果が大きいです。
日本新華僑報は日本と中国の両国で情報発信をしている中国系の新聞です。
こちらは中国人の読者が多い媒体です。

最近では、「GaijinPot Jobs」などの外国人人材の採用に特化したサービスがあります。そのようなエージェントを利用して募集をかける方法もあります。

教育機関からの紹介

また紹介に頼って、外国人従業員を雇用する方法があります。
自社の外国人スタッフから紹介してもらえれば、それに越したことはありませんが、専門学校や大学などから、紹介してもらう方法もあります。

外国人留学生を多く抱えている専門学校や大学が多くあります。
そのような専門学校や大学は、留学生の卒業後の就職までサポートしています。
ですのでこちらから、専門学校や大学の就職課に営業をすることが有効です。
教育機関側も、留学生に紹介できる就職先を探していますので、うまく連携することができれば双方にメリットがある関係を結べます。

ハローワークの利用

ハローワーク(公共職業安定所)に紹介してもらうこともできます。
ほとんどの日本人が、ハローワークは「日本人の就職活動のためだけの機関」と考えがちです。
ですが外国人を専門に人材紹介を行うハローワークがあります。
外国人を専門に人材紹介を行うハローワークは以下です。

  • 東京外国人雇用サービスセンター(東京都港区)
  • 新宿外国人雇用支援・指導センター(東京都新宿区)
  • 名古屋外国人雇用サービスセンター(名古屋市中区)
  • 大阪外国人雇用サービスセンター(大阪市北区)
  • 福岡外国人雇用サービスセンター(福岡市中央区)

外国人を専門に人材紹介を行うだけではなく、就職説明会なども頻繁に行っています。

人材紹介会社の利用

外国人人材の紹介に特化している民間人材紹介会社が、現在数多くあります。
人材紹介会社にはそれぞれカラーがあり、通訳業務に強みがあるなど、特定の業界に強みを持っているなどします。
ですので企業の要望とマッチしている人材紹介会社を選ぶとよいでしょう。

SNSを利用

SNSで人を募集する方法は、日本ではまだまだ一般的ではないかもしれません。
ですがSNSで求人をすることが一般的な国が多くあり、外国人の中にはSNSの求人をチェックしている方が意外と多いです。

日本ではTwitterやInstagramが特に人気ですが、世界のユーザー数が最も多いFacebookを上手に活用するとよいでしょう。現在、日本の産業を支えてくれている外国人労働者のなかで、ベトナム人の割合が非常に多いですが、ベトナムでは、Facebookは全員が使っていると言われるほどの普及ぶりです。
またビジネス特化型のSNS・LinkedInなども登場しています。
日本での普及はまだまだですが、世界に10億人ものユーザーがいると言われています。
有効に利用すると求めている人材を効率的に採用できるでしょう。

②採用したい外国人の決定

募集をかけたら面接などを行って採用したい外国人を決めましょう。

③雇用契約書を結ぶ

採用する外国人と賃金や労働条件について話し合いを行ったら、雇用契約を結びましょう。
この「雇用契約書の締結」を、日本人の場合と違い、後回しにしてしまう企業があります。ですが賃金や労働条件の話し合いをして、納得してもらったのであれば、早い段階で雇用契約書は結ぶべきです。のちのちのトラブルを避けることができるためです。

また書面の雇用契約書に重きを置いている国は非常に多いです。
雇用契約書や労働条件通知書などは、日本人の場合と同様、外国人の場合にも交付が義務付けられていますので注意しましょう。

④就労ビザ申請

就労ビザの申請が必要です。
まず就労ビザについて簡単に説明をします。
外国人に業務に従事してもらうには、就労ビザが必要です。まれに「在留資格があれば労働してもよい」という思い違いをする方がいらっしゃいますが、在留資格があっても働けない場合は数多くあります。

在留資格のなかで、労働が許可されているいわゆる就労ビザには以下のものがあります。

  • 技術・人文知識・国際業務
  • 特定技能
  • 技能実習
  • 介護
  • 企業内転勤
  • 経営・管理
  • 技能
  • 興行
  • 教育
  • 研究医療
  • 芸術
  • 宗教
  • 報道
  • 法律・会計事務
  • 教授

現在の在留資格は、在留カード、パスポート、就労資格証明書、資格外活動許可証などで確認が可能です。

就労ビザを確認したら、従事してもらう仕事が在留資格の「資格内」の活動かどうかを確認しましょう。
もし「資格内」であれば、就労ビザに関しての特別な手続きは必要ありません。
ですが在留資格の変更が必要な場合には、必要書類をそろえて、在留資格変更許可申請を行い、新しい在留資格へ変更しなければなりません。

注意点として、この申請は必ず通るものではありません。
ですので「資格外」の活動を行ってもらいたい場合には注意が必要です。

⑤受け入れ準備

以上のフローを終えることができたら、外国人人材の入社が可能になります。
外国人人材を迎え入れる場合には、住居の準備や日本語学習のための支援などを行うとよいでしょう。
外国人の日本での生活をスムーズにするだけではなく、支援を行うことで、外国人スタッフの信頼を得ることもできます。

外国人の入社後ケア

外国人の入社後ケア

以上の入社までのフローをクリアしたらおしまいではなく、入社後にも手続きや外国人労働者のケアがあります。
入社の手続き、また外国人労働者のケアについて解説します。

雇用保険加入の手続き

要件を満たす場合には、外国人労働者の場合でも、必ず雇用保険に加入しなければなりません。雇用保険の加入手続きは、ハローワークで被保険者となった日の翌月10日までに行わなければなりません。
必要書類は以下の6点です。

  1. 雇用保険被保険者資格取得届
  2. 賃金台帳
  3. 労働者名簿
  4. 出勤簿
  5. 他の社会保険の資格取得関係書類
  6. 雇用契約書等

健康保険・厚生年金加入の手続き

こちらも、外国人労働者の場合でも必ず必要です。
以下2点が必要書類となります。

  1. 健康保険
  2. 厚生年金保険被保険者資格取得届

日本人従業員の場合と全く同じですので、手続きはスムーズに進む場合が多いでしょう。

社会保障協定締結国の場合に必要な手続き

採用する外国人が、社会保障協定締結国の出身である場合には、別途この手続きが必要です。

社会保障協定とは、簡単に言えば、年金の二重払いを防止するための協定です。
例えば協定を締結している国で毎年年金を支払っており、途中で日本に働きに来たとします。その場合、日本で保険料を支払えば、その保険料は母国に収めていたことと同じ扱いにできるという制度です。

これにより日本に来ている間は未払いになる、もしくは母国と日本で二重で支払うという問題を回避できます。
以下の国が対象国です。

  • ドイツ
  • 英国
  • 韓国
  • アメリカ
  • ベルギー
  • フランス
  • カナダ
  • オーストラリア
  • ブラジル
  • アイルランド
  • イタリア
  • フィンランド
  • ノルウェー
  • スウェーデン
  • デンマーク
  • ニュージーランド
  • メキシコ
  • フィリピン

イギリス、韓国、中国は二重払いは防止できますが、期間の通算はできません。
詳しくは日本年金機構のぺージをご参照ください。

中長期在留者の受け入れに関する届出

こちらも、必要になる場合があります。
ただ「外国人雇用状況の届出」をしていれば不要である場合がほとんどです。
中長期在留者の受入れを開始した日から14日以内となっています。

就業規則を理解してもらう

就業規則を理解してもらう必要があります。
日本人の場合には、すでに文書化されている就業規則を読むようにお願いするだけでOKです。
ですが外国人労働者の場合には、日本語が不安な人もいますし、日本語にある程度堪能でも、就業規則の堅苦しい文言には苦戦する場合が多いです。

ですので口頭で、かみ砕いてわかりやすく説明するなどの対処が必要です。
また英語が堪能である外国人労働者は多くいます。
英文の就業規則を用意しておき、そちらを一読してもらう方法もあります。

就業規則と同時に、給与所得にどのように課税されているのかについても、説明をするとよいでしょう。

退職時の届出について

入社後、雇用した外国人労働者が転職などで職場を去った場合、14日以内に、出入国在留管理庁に届出をする必要があります。
本人、もしくは事前に署名をもらっていれば会社が代行することもできます。
こちらを失念してしまうと、外国人労働者の今後の在留資格変更に影響する場合がありますので注意が必要です。

人事管理・教育訓練

こちらは必ずやらなければならない義務ではありません。
ですが入社をしてもらったら、能力を十二分に発揮してもらうため、適切な人事管理、教育訓練を行うほうがよいです。

相談に乗ることができる従業員の選任

具体的には、相談にしっかり応じる役割の従業員の選任があります。
まず日本語教育や日本の生活習慣や文化、風習などについての理解を深めてもらう必要があります。そのための指導を時間を割いてしっかり行い、また外国人労働者の仕事・生活における悩みなどの相談に乗る必要があります。

教育訓練

仕事における教育訓練をしっかり行うことも必要です。
こちらは日本語で行うのではなく、同じ国の先輩従業員がいるなら、彼らに協力を仰いで母国語での研修を行うなどができればなおよいです。

福利厚生

住居の確保やしっかりとした休養期間の提供、レクリエーション施設の利用など、快適に労働に従事できるよう環境の整備が必要です。かつその利用方法の案内ができるとよいでしょう。

まとめ

最後に記事の内容を簡単にまとめます。

外国人の募集フロー

①募集をかける

・直接募集する
自社ホームページで募集、またはメトロポリスや日本新華僑報などの英字や中国語のフリーペーパーや新聞に公告を出す方法があります。また最近では「GaijinPot Jobs」などの外国人人材の採用に特化したサービスがあります。

・教育機関からの紹介
外国人留学生を多く抱えている専門学校や大学の就職課に営業をして、紹介をしてもらう方法です。

・ハローワークの利用
東京外国人雇用サービスセンター、新宿外国人雇用支援・指導センター、名古屋外国人雇用サービスセンター、大阪外国人雇用サービスセンター、福岡外国人雇用サービスセンターなど、外国人を専門に紹介するハローワークを利用することが可能です。

・人材紹介会社の利用
外国人人材の紹介に特化している民間人材紹介会社を利用することができます。

・SNSを利用
Facebookや、ビジネス特化型のSNS・LinkedInなどを利用して、効率的に人材を募集することもできます。

②採用したい外国人の決定

③雇用契約書を結ぶ

海外では、書面の雇用契約書に重きを置く場合が多いです。
またのちのトラブルを避けることもできますので、必ず締結をしましょう。

④就労ビザ申請

最後に就労ビザの申請が必要です。

⑤受け入れ準備

住居の準備や日本語学習のための支援などを行うとよいでしょう。

外国人の入社後ケア

相談に乗ることができる従業員の選任

日本語教育や日本の生活習慣や文化、また外国人労働者の仕事・生活における悩みなどの相談に乗る相手を、企業側が選任するとよいでしょう。

教育訓練

母国語で仕事の研修を行うなどができれば効果的です。

福利厚生

住居の確保や休養期間の提供、レクリエーション施設の利用など、快適に働ける労働環境の用意が、能力の発揮にプラスになります。

この記事を書いたライター
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外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。