外国人材の定着率を上げる為に必要な人事施策について解説!

外国人材の定着率を上げる為に必要な人事施策について解説!

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現在、日本では少子高齢化が進行しています。そこで問題となりつつあるのが労働人口の減少です。
労働人口を補うために在留資格を持つ外国人の採用も進んでいますが、下記の論文で危惧されている通り、日本では大前提として治安の維持はもちろん、外国人の流入により、国内労働者が働けなくなることを危惧し、移民を認めていません。

”近年、アフリカ・中東など EU 域外から押し寄せる難民への EU レベルあるいは国レベルでの対応の遅れ、EU 域内の周辺部(中・東欧、南欧)から中心部(ドイツ、英国、北部欧州)への移民(主に、「社会保障ツーリズム」と揶揄される、自国より整備された社会保障給付や医療などの制度を目当てとした移民労働)の急増に対する受入国側の苛立ちや定住外国人に対する差別・排斥の動きが急速に高まりつつある。”
引用:欧州の反グローバリズム台頭の背景-経済格差、難民危機、エリート・大衆、ポピュリズムという要因-田中 友義 Tomoyoshi Tanaka (一財) 国際貿易投資研究所 客員研究員 駿河台大学 名誉教授

しかし今後も少子高齢化に伴って労働人口が加速的に減少していくことが予測されるため、外国人の受け入れを増やしていかざるを得ない状況になりつつある状況です。
それによって、技能実習、EPA、2019年には就労を目的とした特定技能の在留資格も加わり外国人の採用もますます進んでいくことが予想されます。

外国人の採用は、決して安価ではなく外部費用や教育コストがかかり頭数を揃えるには手間も費用もかかり、費用対効果を上げるには長期定着が鍵となります。
外国人材の定着を上げるにはどんな工夫が必要なのか下記より説明していきます。

入社時の動機形成

外国人の採用だからと言って日本人を採用するのと大差があるわけではなく、共通する部分も多いです。
例えば、日本人であっても外国人であっても、採用するのにあたって、「長期定着」を目的とするのであれば、採用の段階で慎重になる必要があります。

日本人であったとしても、本当は、旅行業界で働きたいけどコロナの影響で働けないから、とりあえず今は工場の仕事で食い繋ごうと考えている人を採用しても長く働くことは期待できないでしょう。それと同様に、外国人を採用する時も動機の形成が重要となります。

大前提として在留資格を持つ外国人を採用する在留資格に不備があると、不法就労助長罪に問われ、しばらく外国人の採用ができなくなるリスクもあります。
在留カードの確認を怠らないことも重要ですが、専門的な知識も要する為、弁護士や行政書士といった専門家の力を借りるのも一つの手です。

日本に来る目的を明確化

外国人に日本人の採用に関わらず、長期定着を目指すには入社時の動機形成が重要と上述しました。
経営が苦しい企業や、人手不足が深刻で即戦力がほしいと思う企業はつい、日本語能力が高い人を採用してしまいがちかもしれません。

日本語能力が高いから即戦力になると思って採用しても、自社への志望動機が特にない場合、他に興味がある仕事が見つかったり、条件がいい職場が見つかればすぐ転職してしまうリスクが想定されます。
外国人を採用する場合は、日本語の良し悪しで見極めをしたりするのではなく業界、企業に対する志望動機だけではなく以下をヒアリングをした方がより長期定着の期待値を上げることができるでしょう。

  • なぜ日本を選んだのか
  • 何年日本で働くつもりなのか
  • 最終的には母国に帰国するのか

母国で大学まで卒業しているような人は、元々裕福な家庭で、海外で学んだ知識と経験を活かして母国キャリアアップをしようと考えている可能性、元々家庭が貧しく自分が兄弟達の学費を稼ぐ為に経済ギャップのある国を選んでいる人はいずれは、家族も連れて日本で暮らしたいと考えている可能性、様々なケースが想定できます。

また、経済ギャップの大きいヨーロッパ諸国や、アメリカ、韓国ではなく、なぜ「日本」を選んだのか。
「なんとなく」
「母国と近いから」
「同じアジア圏だから」といった理由ではなく
「日本のアニメや漫画が大好きで日本語を学びたい」
「四季折々の日本で過ごしたい」
「日本人の礼儀や、文化が好き」といった動機がある方が長きに渡って日本に滞在する期待値が高いです。

なぜ、日本を希望しているのかまた、その人のバックグラウンド、日本で働く動機を面接を通してヒアリングすることによって企業側としても本人の志望度の強さ、長期定着を臨めるかを確認できますし、本人も面接を通して自分の口から動機を述べることによって自分の意思、決意を再確認できる機会にもなり得ます。

「憧れの日本で、〇〇の資格をとって、日本で半永住的に働きたい、そしていずれは家族も一緒に日本で暮らしたい」と考えている人を採用できたら、長く自社で働いてくれる外国人の採用が早期に叶えられ、後々の外国人のリーダー格の育成ができて、自走できる組織になるかもしれません。

キャリアプランの設計

人材の長期定着には企業のビジョンの共有が必要です。
日本人の採用と同様に長期定着を目指すには、自社のビジョンに共感し、一緒に成長していきたいと相互に思える人材であることも重要になり、企業が目指すビジョンに共感し、その中で自分が外国人としてどのような役割を果たしていくかを考えると、モチベーションになります。

例えば、今後ますます増えるであろう外国人採用が進んだ時に、「あなたには外国人のリーダーになるような人材になってほしいと思っている。」と伝えると、やる気につながるでしょう。
そのような人材になるために、何年後にはこんなことができるようになってこんな資格が取れてたらいいよねと話し合いをするようにすると、外国人の方も自社でのキャリア設計をイメージしやすくなるでしょう。
その人の性格や能力を見極めて、適切な声がけが必要です。

人事戦略と職務分掌提示

日本ではこれまで多くの企業が年功序列で評価されてきましたが、海外では仕事の成果、業績、実力等に応じて待遇を決定する成果主義をとっている企業が多いです。
よって、年功序列に納得できず、待遇に不満を持ち、離職を考える外国人も多いので、「公正な人事評価基準の整備」が定着率の向上につながるので、これまでの評価制度の見直しが必要になるでしょう。

また、上述した外国人リーダーといった役職を設けて、手当をつけるなどして、給与アップ提示をしたり、職務で果たすべき役割を明確にしながら達成報酬を設定し、その職務を果たすことで、外国人にとって裁量を持って働けていてやりがいがあると感じられて、それに伴い給与もアップすれば後々入ってくる外国人、ひいては日本人の働くモチベーションにもなり得ます。

外国人採用をきっかけに評価制度が変われば、頑張れば頑張るだけ評価されて、給与が上がる仕組みになり職場全体の士気が上がることも期待できて、相乗効果があると言えます。

入社後のサポート徹底

「採用できたら終わり」ではありません。外国人の方は慣れない土地で、家族や友人も近くにいない、母国語も話せない環境で慣れない、または初めて仕事をすることになるのです。

採用してからもホームシックや、仕事でのストレスで「帰国をしたい」と思わないように、二人三脚でのサポートが欠かせません。

母国語のマニュアルの整備

入社して間もない頃は、外国人の方に仕事を教えても、まず日本語での意思疎通が難しいでしょう。
最初は、日本語の理解が恐らく難しく、理解に時間を要しメモなどはできるような状態ではないかもしれませんので、前もって母国語のマニュアルを用意しておくことで、日本人と外国人の方が共通で理解している媒体ができるため、意思疎通がしやすくなります。

また、外国人の方にとっては就業前後に仕事の振り返りができて、仕事も覚えやすいかもしれません。
外国人の方の入社前に、母国語のマニュアルを作成するのはかなり骨の折れる作業になるでしょう。

しかし、日本語のマニュアルもないような職場では、各々仕事に対する認識の違いがあるかもしれません。社内でマニュアルを作成する時に人々の仕事に対する認識の違いを解消することによって「Aさんには〇〇と言われたけど、Bさんには△△と言われた。」といった、日本人でも悩みの種となるような事がなくなるかもしれません。

日本語学習、資格取得勉強フォロー

外国人の方の受け入れに当たって、外国人の方だけでなく、日本の受け入れ企業側も努力が必要です。
外国人の採用前に、日本語以外の言語で意思疎通をする必要がある場面が出てくることも想定されるので社内で外国語を話せる人を増やす必要があります。

とはいっても、企業側の人件費や経営状況的に言語のフォローが難しい場合は、監理団体や、登録支援機関の通訳などのフォローが手厚い団体から外国人を受け入れを検討するのも一つの手段となります。

受け入れ側のサポート体制の整備

技能実習生や特定技能外国人の方を受け入れるにあたって、在留資格の更新や、技能検定の受験が必要となります。
本人や、受け入れ機関にあたる監理団体や登録支援期間に任せっきりにするのではなく、自社でも、サポートができるように日々、在留資格についての勉強が必要です。

また、外国人労働者は、入社後マイノリティな存在となってしまい、孤立してしまうケースが多いです。
外国人の方のサポート役をOJTのような形式で設けるなど、悩みを言いやすい環境を設けることが離職につながる問題を早期に発見できる鍵となるので重要になり、外国人の方の家族を帯同させる場合は、本人だけでなく、家族の在留資格認定を交付申請を行ったり、手続きを踏むサポートも必要となります。
技能実習、特定技能から外れ、直接雇用となるとそういった申請も自社でする必要が出てきますが、そういった場合は上述した通り、行政書士や弁護士の先生を頼り、正しい申請ができるようにしていきましょう。

そういった手続きに慣れていけば、外国人採用に長けている企業というアピールポイントにもなります。

異文化理解を通して働きやすい環境を提供

外国人が日本企業で働いている中で、母国と日本の文化の違い、また雇用慣行のギャップなどによってトラブルが生じることがあります。
外国人の母国の文化を日本人側が理解するだけでなく、外国人にも日本の法制度、労働慣習を学んでもらえるような場を設けると、外国人の違和感も拭える機会になるかもしれません。

しかし、あまりに日本の価値観を外国人の方に押し付けてしまうと、外国人は企業に対して窮屈な印象を抱いてしまう可能性もありますので、トラブルが起こった場合には原因を外国人の方に根拠をきちんと説明して納得してもらい、都度都度疑問や不満を解消していく必要があります。
その際には会社独自の文化や、暗黙のルールは外国人にとっては何の根拠もない意味のないルールに感じることもあるので、きちんと言語化し説明することが必須となります。

また、日本と外国では、長期休暇の時期がずれている事があります。
母国に家族を残している人がいる場合には、母国の長期休暇に合わせて休暇が取れるよう調節するなどして、普段離れ離れで過ごしてる方にも家族の時間が取れるようにフォローすることが重要です。
そういったフォローができる企業は外国人の方にとっては働きやすい職場と言えるでしょう。

社内の理解と協力が必須

外国人を雇用するにあたって、経営陣だけが今後の人手不足を見据えて外国人の採用に前向きに取り組んだとしても、社内の理解を得られない結果となり、外国人の採用はうまくいきません。
外国人の方と密に関わるのは経営陣ではなく、現場の方々になります。

人手不足もあって、外国人を採用しているのにも関わらず、外国人の採用が進んで日本人の教育の負担が増えて離職率が増えては本末転倒です。
外国人のサポートも必要ですが、日本人の方々の理解と協力を得ることも重要です。
外国人採用を勝手に進めるのではなく、現場からの声も大切にしつつ、負担になりすぎないような指導体制を整える必要もあります。

また、外国人を受け入れる前に受け入れる外国人の母国の文化についてや、在留資格の仕組みについて学ぶ研修を設けるなどして、外国人採用についての理解を深めていくことで、抵抗感を無くしていけるかもしれません。

まとめ

技能実習生や特定技能外国人を採用するにあたって、監理団体や、登録支援期間への外部コストが発生し、雇用と離職を繰り返していると、外部コストが削減できずいつまで経っても、採用にコストがかかります。
外国人の方の長期定着が実現できて、外部コストをかけずに直接雇用が実現できれば、採用コストが削減できて、浮いたコストを設備投資など、今後の事業への投資に充てることが可能です。

また、外国人を雇用している方からの紹介で外国人の採用をするといったリファラル採用が実現できれば監理団体や、登録支援機関を通して採用する必要がなくなり、採用コストがかからなくなります。
外国人の定着率を上げるために、見直した職場環境や、処遇、評価制度は結果的に外国人だけに限らず日本人も働きやすいと感じる環境になり、最終的に働きやすい職場づくりにつながることもあります。

この記事を書いたライター
mika

mika

現在社会人3年目で介護業界を中心とした外国人人材の採用営業を担当 外国人の採用にあたり、在留資格の知識が必要で猛勉強に励み、外国人採用の難しさを改めて痛感。 外国人をただ受け入れるだけでなく、長期定着させる為にはどうしたらいいかを伝えられたらと思い執筆させていただいております。