目次
在留カードとは?
在留カードとは何かをまず説明します。
在留カードは外国人の身分証明書です。
免許証で日本人が身分を明らかにするように、日本で暮らす外国人はこの在留カードで身分を証明します。
ですが日本にいる外国人の全員が持っているわけではありません。
3カ月以上日本にいる外国人のために、出入国在留管理庁長官が発行します。よって3カ月以下の短期滞在者には交付はされません。
この在留カードで、在留の合法性のほか、資格外活動の可否などの判断をします。ですので外国人を採用する場合には、この在留カードを必ず確認しなければなりません。確認を怠って採用すると、企業が不法就労助長罪に問われることがあります。
在留資格について
そもそも在留カードが証明している在留資格とは、正式に日本へ入国して日本で特定の活動ができるという資格です。
入国のためには犯罪者でないこと、感染症に感染していないことなど、いくつか満たさねばならない最低条件があります。在留資格は、この最低限のラインをクリアしていないと得ることができません。
また在留資格には留学や技能実習などの種類があり、どの在留資格かによって活動内容、例えば就労の可否が変わってきます。
在留カードからわかること
在留カードからは様々な情報が得られます。
まず、氏名と生年月日、性別、国籍がわかります。16歳以上の場合には顔写真が添付されています。
またほかに、住所(引っ越しをしている場合には裏面)、現在の在留資格と、在留期間と在留期間の満了日、在留カードの交付年月日と在留カード有効期間の満了日も記載されています。就労制限の有無についても記載があります。
2点注意点があります。
1点目は「在留期間」と「在留カードの期限」が異なる場合があることです。珍しいケースではありますが、在留期間満了日までに在留資格変更許可、もしくは在留期間更新許可の申請をすると起こることがあります。
上記裏面に「更新中」などと記載がある場合には、2か月以内であれば、違法滞在ではなく適法の在留となります。(一般的に特例期間と言われます)
2点目は永住者の在留カードです。
永住者には在留期限はありません。そうなると在留カードにも期限がないと思いがちですが、在留カードには7年の期限があるため、在留カードの更新は必要で、この期限が切れている場合には有効な在留カードとして使うことができません。
チェック必須な在留カードの項目とは
外国人を雇用する場合には、在留カードのチェックが必須です。
ですが項目が多く、具体的にどこをチェックしたらいいか混乱しがちです。
この章では必ずチェックするべき4つの項目について説明します。
氏名・顔写真
在留カード表面、上部に記載されている名前と、顔写真のチェックが必要です。間違いなく本人であるかをしっかり確認しましょう。
在留カードの偽造は残念ながら存在し、例えば2022年9月には在留カード偽造工場が摘発されたというニュースがありました。そのため違法に手に入れた偽造在留カードを使う外国人も少数いますが、他人の在留カードをつかい、なりすましているケースもあります。
ですので、氏名・顔写真をしっかり確認することが非常に肝心です。
在留期間満了日
在留カード表面、下段に記載があります。
ここで在留期間内であることも、必ず確認する必要があります。
就労可否
就労可否は表面の中段に記載があります。
在留資格は30種類近くあり、就労できるものとできないものがありますので、雇用の際には必ずこちらをチェックしましょう。
また「就労不可」の文字がある場合でも、裏面に「週28時間以内」なら可能などと別途記載がある場合があります。
資格外活動の可否
在留カード裏面の下段に記載があります。
資格外活動ができる場合は「許可」の文字、また「週28時間以内」というように、就労する場合の規則の記載がされています。
偽造カードの見分け方
残念ながら、偽装された在留カードが使われることがあります。
前述のとおり在留カード偽造工場が摘発されたというニュースがありました。
まずなりすましでないか、間違いなく本人かを顔写真などでしっかり確認した後、それが偽造カードでないかチェックする必要があります。
主な確認方法は、①偽変造、②在留カード等読取アプリケーション、③在留カード等番号失効情報照会です。順番に説明します。
偽変造
在留カードには、「MOJ」の透かし文字が入っています。
MOJとは法務省、Ministry of Justiceの略称です。
特に注意してチェックするとよい箇所は次の5か所です。
①在留期間(満了日)の下段
在留カード表面の在留期間(満了日)の下に「MOJ」の文字があります。在留カードを傾けると、MOJの文字がピンク→グリーンと変化します。
②在留カード表面左端
カードを上下に傾けると、在留カード左端がグリーン→ピンクと変化します。
③顔写真 中段のホログラム
在留カード表面の右側にある顔写真の下部に、MOJのホログラムが入っています。このホログラムはカードを左右に傾けると、3D的に左右に動くようになっています。
④顔写真 下段のホログラム
顔写真下段に、MOJの銀色のホログラムが帯状に入っています。
この帯状のホログラムは、見る角度を90度かえると、MOJの白黒が反転するようになっています。
⑤カード裏面の透かし文字
暗い場所で、カードの表面側から、強い光をじかにあてると、MOJの透かし文字が見えるようになっています。
こちらのカード裏面の透かし文字まで、念のためチェックしておくと安心です。
あわせて法務省のこちらのPDFもご参照ください。
在留カード等読取アプリケーション
出入国在留管理庁の「在留カード等読取アプリケーション」もあわせて使うと非常に安心です。なぜなら、偽造在留カードを外国人ブローカーに提供した事件では、カード表面に貼るホログラムシールなども作成していたことがわかっています。そのため目視だけで見抜くことが難しくなっています。
アプリを使っての確認もあわせておこなうことで、目視では見抜けなかった偽造を見抜くことができます。
この「在留カード等読取アプリケーション」は、在留カードや特別永住者証明書のなかのICチップを読み取り、ICチップ内に記録されている情報を画面に表示します。
こちらのアプリケーションは、プライバシーの問題がありますので、本人の同意を得たうえで在留カードを提示してもらい、許可を取ったうえで読み取るほうが良いです。
出入国在留管理庁のこちらのページから、アプリケーションをダウンロードできます。Windows版、Mac版、またAndroid版とiPhone版も用意されており、操作マニュアルも用意されていますので操作でつまずくことはないようになっています。
スマートフォンの場合は問題ありませんが、パソコンの場合には、カードリーダーが必要になります。
在留カード等番号失効情報照会
出入国在留管理庁の在留カード等番号失効情報照会を利用する方法もあります。このサイトに、在留カード番号、在留カード等有効期間を入力すると、カード番号が失効していないかなどを確認できます。
ただ今までに発生した偽造在留カードの事件では、実在する在留カードなどの番号が悪用されたこともありました。ですのでこの方法だけではなく、複数の偽造対策を組み合わせることが非常に有効です。
就労制限について
就労制限については間違いやすいので、改めて解説します。
「就労制限の有無」は、在留カードの表面中段の、青い背景の欄に「就労不可」などというように記載されています。
ですが「就労不可」とあると絶対就労できないかと言ったらそうではなく、裏面下段に「週28時間以内であれば許可する」といった文言の記載がある場合があります。ですので「就労不可」の場合でも、必ず裏面のチェックもしなければなりません。
また在留資格「特定活動」の場合も「就労不可」の記載があっても就労できることがあります。特定活動の場合には、パスポートに指定書と呼ばれるものがホッチキスで留められています。在留資格「特定活動」の場合には、外国パスポートの指定書の確認も必要となります。
在留カードの確認不足には要注意!
在留カード偽造の確認方法について解説しましたが、そもそも在留カードの確認不足でトラブルになるケースも多々あります。
就労を望む外国人が「就労ができる」と言っていても、「就労不可」であったり、就労できても1週間当たり28時間以内であったりという場合があります。
そのため必ず在留カードを確認して、就労可否については在留カードから判断しなければなりません。
在留カードの確認を怠り、就労制限の欄が「就労不可」の外国人を働かせると、入管法73条の2に規定される「不法就労助長罪」という罪に問われる可能性があります。不法就労助長罪では3年以下の懲役、または300万円以下の罰金、または両方が課される場合があります。
偽造在留カードを見破れなかった場合はまだしも、在留カードをきちんと確認していなかった場合には、不法就労助長罪に該当します。
不法就労助長罪については、法務省のこちらのPDFも、あわせてご参照ください。
企業ができること
偽造在留カードは年々その精度を上げているのが現状です。
そのため偽造在留カードによる被害を防ぐため、企業ができることをまとめます。
偽造カードを見つけたら
採用などの過程で偽造在留カードを見つけた場合には、必ず最寄りの出入国在留管理庁に連絡をしましょう。
ただその偽造在留カードを預かることは難しいはずなので、コピーをとるなどして、「確かに偽造在留カードが使われた」という証拠を残しておくのが良いです。
紛失時
在留カードを仮に紛失した場合、悪用される可能性がありますので、企業として紛失の連絡を受けたのであれば、即座に再交付申請を案内しましょう。
再交付申請のためには、まず最寄りの警察か交番に「紛失届」を出して、遺失届出証明書などをもらう必要があります。
その後、本人確認書類と在留カード再交付申請書をもって、地方出入国在留管理局で再発行の手続きをします。
紛失した場合には、14日以内に再交付申請をしなければならないと決められているので、すぐ対応するよう案内しましょう。
原本携帯を周知
在留カードの原本は、常に携帯しなければなりません。
雇用している外国人が警察に職務質問を受けるなどした場合、在留カードの提示ができないと、20万円以下の罰金が科せられることがあります。また常に携帯するなら紛失したときにすぐ気づくことができます。
採用時にはコピーを
必ず採用時には在留カードのコピーを取りましょう。
在留期限を超えて労働させた場合、罪に問われます。
そのため企業側も、各外国人の在留期限をしっかり確認しておく必要があります。
コピーを取る際、外国パスポートのコピーもしておくとよいでしょう。
再入国に注意
外国人が日本から海外に出張などをしてもどってきた場合、在留カードを提示すると同じ在留資格で再入国できます。みなし再入国と呼ばれます。ですがみなし再入国は1年以内の再入国の場合のみ有効です。
1年以上たってからの再入国の場合には、在留カードが失効するので注意が必要です。
まとめ
在留カード偽造の確認方法などを中心に解説しました。
偽造された在留カードの精度は、年々上がってきています。
そのため、在留カードの写真などでなりすましでないかをしっかり確認したうえで、法務省のこちらのPDFなどを参照しながら目視で在留カードを確認しましょう。そのうえで、さらに在留カード等読取アプリケーションなどを使うとよいでしょう。
1つの確認方法だけではなく、複数の確認方法を組み合わせることが、偽造を見抜く確実な方法だと言えそうです。
また企業がもし偽造された在留カードを発見した際には、速やかに最寄りの出入国在留管理庁に連絡をしましょう。