ネパールの基本情報
まずはネパールの歴史や文化、経済事情といった概要を解説します。
歴史
南部のカピラヴァストゥは仏教の開祖・ゴータマ=シッダールタの生誕の地とされています。紀元前300年頃からネパールは様々な王朝の支配下となりますが、1769年に樹立されたシャハ王朝が現在のネパールの原型となっています。
国家としての原型ができたものの、1814〜1816年にはインドの植民地化を進めていたイギリスとの間で行われたグルカ戦争(ネパール=イギリス戦争)でイギリスに敗れたことにより、ネパールは実質的なイギリスの保護国となりました。
第二次世界対戦後の1951年には立憲君主政として国家運営をスタートさせましたが、1955年に即位した第9代国王であるマヘンドラ国王によって政党の結成なども禁止されるなど独自の独裁体制が強化され、1960年には議会が解散されることとなります。
独裁体制が敷かれる一方で1990年には民主化運動も開始され、民主化運動の活発化により1991年に国民主権といった内容が盛り込まれた新憲法が発布され、その後民主国家として動き始めました。
しかし1995年に王制の打倒と人民共和制の樹立を掲げるネパール共産党毛沢東主義派が結成されたことにより、ネパール国内は再び内戦状態へと陥ります。
内戦の中で王族が殺害されるといった事件も起こり、国内は混乱を極めましたが、2006年に国王とネパール共産党毛沢東主義派の間で和平協定が締結されたことによって終結しました。
こうして2008年5月に国王が退位し連邦制の民主共和国となったものの、その後も政権が不安定な状態が続き、現代に至るまで混乱が続いています。
多民族・多宗教国家
インドと中国のチベット自治区に接していることから、ネパールにはさまざまな民族が暮らしています。
宗教に関してはヒンズー教を信仰する人が多いものの、仏教やイスラム教徒も少なくありません。
民族間の生活様式の違いと、ヒンズー教の文化であるカーストが複雑に入り混じっていることからネパール人は人によって価値観や生活習慣が大きく異なります。そのため一概にネパール人として扱うことは避けたほうが無難かもしれません。
また、先進国等では見られない女性についての社会規範が現在も固く守られている地域も一部あります。
ネパールの公用語はネパール語です。しかし各民族の言葉もあわせて使用されています。
ネパール国内の経済事情
ネパールは世界最高峰・エベレスト登山の登山口として世界的に知られています。
国土の約8割が丘陵・山岳地帯であることからインフラの普及が追いつかず、国内に行政サービスが行き届かないといった問題を抱えており、雇用の機会は少なく、家計を支えるために子供が働くことも珍しくありません。
自然災害が多いことも経済発展が妨げられている原因となっています。
ネパールの食事
ネパールではチベット料理にインド料理や中国料理が融合した独自の食文化が発展しました。しかしネパール料理はインド料理や中国料理のように香辛料はあまり強くなく、野菜が多く使われる傾向があります。
こうした特徴から日本人にとっても馴染みやすい食文化と言えます。
日本とネパールの関係
ネパールでは2008年に王政が廃止されましたが、国王による統治文化が長く培われてきたため、以前から日本の皇室とも交流がなされてきました。
国内での雇用機会が少ないネパールでは他国に出稼ぎに出ることが一般的です。約3,000万人の国民人口のうち約600万人以上が不在人口という統計データからも、出稼ぎに出ることに対する抵抗があまりないことが伺えます。
一方日本国内でも近年外国人労働者が増えており、ネパール人も増加傾向にあります。2018年時点ではネパール人は日本国内で6番目に多い外国人として数えられています。
なぜネパール人が日本に働きに来るのかというと、ネパールに比べて日本の労働環境がいいことや、ネパール国内での月間平均所得が17,809ネパール・ルピー(約1万8,000円)であることから日本で働いた方が得であることなどがあげられます。
また、日本とネパールは現在も国会議員による交流や、経済・技術交流が盛んに行われており、日本とネパールの関係は比較的良好と言えることもネパール人が日本で働きたいと思う理由の一つです。
ネパール人の国民性の特徴5つ
以下ではネパール人を雇用する際に押さえておきたい、ネパール人の国民性の特徴を5つ紹介します。
寛容でおおらかな人が多い
多民族・多宗教国家であるため、ネパール人は互いの価値観に寛容な人が多いです。生まれた時から「身近に価値観の異なる人がいるのはあたりまえ」という環境で育ってきたため、異なる考え方や生活習慣に対しても柔軟に対応できます。
特に他の国からも技能実習生を受け入れている企業は、ネパール人を雇用することで彼らの寛容さに助けられることもあるかもしれません。他の国の技能実習生とも一緒に働かせやすいです。
相手への思いやりを大切にする
気さくな人が多く、他人に対する思いやりの気持ちを大切にするところもネパール人の国民性の特徴です。例え言葉が通じにくかったとしても、知っている言葉を駆使しながら、相手に向き合う姿勢を大切にします。
こうした性質は一緒に働く技能実習生同士のコミュニケーションの場面で非常に活かされることでしょう。生活の中で互いに助け合える人がネパール人にはたくさんいます。
年配者に対する礼儀を大切にする
ネパール人は年上の人や年配者に対する礼儀を日本人以上に重んじます。自分の親の世話をするのは家族の義務という考え方が民族・宗教に関係なく広く根付いており、日本で仕事をしに来た理由に「家族を養うため」と答える人も非常に多いです。
ネパール人は職場でも年配者や年上に対する礼儀を大切にします。
また、故郷に暮らす両親や家族を仕事のモチベーションにしている人も少なくありません。
時間にルーズな面もある
現在も政権が不安定な状態が続いているだけでなく、インフラが十分に整備されていないことや天災などの影響を受けやすいネパールでは、「計画通りに物事が進むことの方が珍しい」と考える人が多いです。
こうした事情から遅刻や〆切に対する意識も日本人ほど高くありません。ネパール人を雇用する場合は時間にルーズなところがあるということを理解するようにしましょう。
協調性がありモチベーションが高い人が多い
多民族・多宗教の環境下で生まれ育ったネパール人は、協調性が高い傾向もあります。異なる生活習慣の中でも他の人と協力し合いながら仕事・生活できる人が多いです。
ヒマラヤ山脈をはじめとする高い山に囲まれた土地で生活してきたことから、ネパール人は全体的に互いに助け合うのが当たり前という意識が高いです。
さらに他国に出稼ぎに出ることが一般的であるため、仕事に対するモチベーションが高く、仕事にも熱心に打ち込みます。勤勉でモチベーションが高いため、仕事に関する指示も素直に聞いてくれます。
ネパール人を雇用する上でのポイント4つ
多民族・多宗教国家であり、寛容な人が多い一方で時間にルーズな面もあるネパール人を雇用する際は以下の4つを意識するようにしましょう。
相手が信仰している宗教に配慮する
国内で複数の宗教が信仰されているネパールから技能実習生を受け入れる場合、相手の宗教に対して必ず配慮しなければなりません。
例えばヒンドゥー教の場合は牛を食べないなどの宗教的ルールがあります。こうしたルールに対する配慮を怠るとトラブルになる可能性もあるため、相手が信仰している宗教を把握すると同時にその宗教に対しある程度の知識を身につけるようにしましょう。
さらに同じ宗教でも人によって信仰の度合いが異なることもあります。ひとくくりに「ネパール人だから」「〇〇教だから」とすることが難しいため、一人一人の価値観に向き合う姿勢を心がける必要があります。
日本での時間感覚を理解してもらう
「時間通りに物事を進めることの方が難しい」という価値観を持った人が多く、時間を守るという意識が希薄なネパール人は日本での時間感覚に慣れるまでに苦労する人も多いです。
まずは〆切を守る、遅刻をしないといった日本的な感覚を理解してもらう必要があるということを理解しましょう。
整理整頓の仕方を教える
国内で政権が不安定な状態が続いているため、ネパール人は先のことを考えた上で行動することをあまり重視しません。
そのため物事の管理もいい加減になりやすいところがあります。「後の人が使いやすいように」といったことを考えることに慣れておらず、日本人に比べて整理整頓に対する意識が低いと感じてしまう場面もあるかもしれません。
こうした特徴から根気よく整理整頓の仕方を教えなければならない場合もあるということを理解しましょう。
整理整頓が苦手というよりも単に意識がないだけであるため、目的が理解できれば整理整頓が習慣化する人も多いです。
給料や業務範囲についての説明は丁寧に行う
ネパールの平均月収は4〜5万円であり、日本の30万円と比較するとかなり安いです。ネパール国内では雇用機会が少なく、仮に仕事を見つけたとしても十分に稼げない可能性があります。
こうした国内事情のため、より多くのお金を稼ぐためには海外に出稼ぎに出なければなりません。
そのためネパール人は「稼ぎたい」という思いが強いです。
ネパール人にかぎらず出稼ぎに来ている外国人には給料について丁寧に説明するようにしましょう。説明を怠るとトラブルの原因になるリスクが高まります。
生活環境や業務内容についてだけでなく、社会保険料など給料から天引きされるものについての説明は特に重要です。
ネパール人を雇用するメリット4つ
以下ではネパール人を雇用するメリットを4つ解説します。
仕事に対するモチベーションが高い
「国内で働くよりも日本で働いた方が稼げる」と考えている人が多いことから、ネパール人は仕事に対するモチベーションが非常に高いです。家族思いでもあり、故郷にいる家族のために頑張る人もたくさんいます。非常にモチベーションが高いため、ネパール人の技能実習生は粘り強いところもあります。離職率も低く、すぐにはできないことでもスキルを習得しようと一生懸命努力できる人が多いです。
英語を話せる人が多い
公用語はネパール語ですが、国内での普及率があまり高くないことと海外で仕事をする人が多いことからネパール人には英語スキルがある人が多いです。例えば接客業などで英語スキルが必要な場合、ネパール人の技能実習生・特定技能外国人は非常に役立つ可能性があります。英語を話せる人材を求めている企業はネパール人の雇用も検討してみることをおすすめします。
若い人材を雇用しやすい
日本国内では少子高齢化が深刻化していますが、ネパールはまだ若年層が多い国です。労働力となる若い人がたくさんいる反面国内での雇用機会が少ないことから、ネパールからは若い人材を確保しやすいと言えます。体力を要する現場や、自社の発展に役立つ若手を求める企業にとって、ネパール人は魅力的に映るでしょう。
日本語をスムーズに習得できる
多民族・多宗教国家であるネパールでは、言語学習に対して抵抗感を抱く人はほとんどいません。幼少期からネパール語・英語以外の複数の言語に触れながら過ごしてきたことにより、知らない言語は学ぶことが当たり前という感覚が根付いています。言語学習に馴染みがあることから、ネパール人は比較的スムーズに日本語も習得すると言われています。また、日本語の文法などがネパール語に近いことから、ネパール国内で日本語は英語に次ぐ人気の外国語です。
まとめ
日本との交流の歴史も長く、日本で働く人も年々増えているネパールは、今後も国内外の多くの企業から注目を集める可能性があります。
若手を確保しやすいため技能実習生・特定技能外国人としてネパール人の雇用に興味がある企業も少なくありません。
気さくな人も多く、協調性も高いためネパール人は今後も人気を高めていく可能性のある人材です。