製造業は日本経済を支える重要な産業ですが、近年は少子高齢化の影響を受け人手不足が深刻化している産業でもあります。
また、外国人労働者の数が最も多い産業とも言われており、現在「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」分野で特定技能外国人として働いている外国人の多くは技能実習生から移行した人でもあります。
この記事では外国人労働者が多い製造業における、特定技能外国人について在留資格や制度の概要等を解説します。
目次
特定技能「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」とは
特定技能は2019年に活用が始まった、日本国内で年々進行している人手不足を外国人材によって解消することを目的として設けられた制度です。現在12の産業分野が対象となっており、製造業である「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」もその中の1つとして扱われています。
制度の運用開始当初は「素形材産業分野」「産業機械製造分野」「電気・電子情報関連産業分野」は製造3分野としてそれぞれ独立していました。
しかし一つの事業所で複数の産業をまたぐことになることも多かったことから、2022年に「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」として一つの産業分野に統合されました。
特定技能「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」の3区分
産業分野「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」は業務ごとにさらに3区分に分割されています。
機械金属加工区分
素形材製品や産業機械等の製造工程の作業等
- 鋳造
- 鍛造
- ダイカスト
- 機械加工
- 金属プレス加工
- 鉄工
- 工場板金
- 仕上げ
- プラスチック成形
- 機械検査
- 機械保全
- 電気機器組立て
- 塗装
- 溶接
- 工業包装
電気電子機器組立て区分
電気電子機器等の製造工程、組立工程の作業等
- 機械加工
- 仕上げ
- プラスチック成形
- プリント配線板製造
- 電子機器組立て
- 電気機器組立て
- 機械検査
- 機械保全
- 工業包装
金属表面処理区分
表面処理等の作業等
- めっき
- アルミニウム陽極酸化処理
その他全ての業務区分で想定される関連業務の例
- 原材料・部品の調達・搬送作業
- 各職種の前後工程作業
- クレーン・フォークリフト等運転作業
- 清掃・保守管理作業
など。
「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」への統合とその背景
現在は製造業である「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」は1つの産業分野として扱われていますが、元々は、
- 素形材産業分野
- 産業機械製造分野
- 電気・電子情報関連産業分野
の3つの分野としてそれぞれ独立していました。 以下では上記の製造3分野が「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」として1つに統合された背景を解説します。
2022年5月に統合された
全ての在留資格では日本で行える活動範囲が定められており、日本に滞在する外国人は自身が取得した在留資格に対応した活動範囲でしか就労等ができないことになっています。
特定技能の在留資格は産業分野・業務区分ごとに取得することになっているため、外国人は自身が取得した産業分野で在留資格で定められている活動範囲内でしか就労できないということになります。
また、同じ事業所で働く特定技能外国人であってもそれぞれ属する産業分野が異なるということは、手続きや対応できる作業もそれぞれ個別に対応しなければならないということになります。
製造業では一つの事業所内であっても数種類の技術を持つ人材が求められることも珍しくありません。
そのため制度の施行当初の製造3分野の分類の仕方では一つの事業所で複数の産業分野の特定技能外国人を雇用しなければならず、手続きや人材配置が煩雑になるといったケースが生じるようになりました。
さらにコロナ禍の影響を受け製造業において半導体製造装置、及び産業用ロボットの需要が高まったことから、2022年2月には産業機械製造分野で受け入れ見込み数を超過してしまうという事態が発生しました。
それを受けて2022年4月には産業機械製造分野での在留資格認定証明書の交付が一時停止されることになります。
こうした現場からの声やコロナ禍による需給バランスの変化等の影響をを受け、2022年5月に製造3分野は「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」へと統合されることになりました。この統合を以って産業機械製造分野での在留資格認定証明書の交付一時停止は解消されます。
製造業における技能実習生
製造業は日本経済を支える産業でしたが、近年進行する少子高齢化の影響を受け、現在深刻な人手不足に喘いでいる産業の一つでもあります。そのため日本の製造業は現在国内産業の中でも最も外国人労働者が多い産業とされています。
しかし「日本の製造業で働く外国人」の中には技能実習生も含まれます。
技能実習制度は日本での労働を通して培った知識や技術を、帰国後に母国の発展のために活かしてもらうことを目的とした、国際貢献のための制度です。
そのため本来技能実習制度は人手不足の解消を目的として活用することは認められていません。
外国人労働者の数が非常に多く、技能実習生も数多くいる日本の製造業は、制度の本来の目的と実態の乖離が起きているケースも多く、国際社会からも問題視されています。
また、技能実習生は在留期限が最長で3~5年と定められているため、長期的な人材の確保には不向きです。現在特定技能として日本で働く外国人の多くは、技能実習2号から移行した人が多いとされています。
「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」として特定技能1号の在留資格を取得するための技能試験
3つの業務区分に分割されている「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」分野では、対応する業務に合った業務区分で在留資格を取得する必要があります。
以下では「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」分野での在留資格の取得に際して合格する必要がある技能試験について解説します。
在留資格取得には業務区分ごとに設けられた試験に合格する必要がある
特定技能の在留資格は、産業分野ごとに設けられた業務区分に応じて取得することになっています。そのため実際に業務にあたる外国人は、従事する業務に対応した在留資格を取得していなければなりません。
「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」は、機械金属加工区分、電気電子機器組立て区分、金属表面処理区分の3つの業務区分ごとに技能試験が実施されます。従ってこれから特定技能の在留資格を取得しようとする外国人は、日本で従事する業務に対応した試験を受験することになります。
試験は日本語で実施される
在留資格取得のための技能試験は日本語で実施されます。試験の問題文には漢字も使用されていますが、全て読み仮名が振られています。
試験内容
各業務区分に関する学科および実技問題。
問題数
40問(学科試験30問、実技試験10問)
試験時間
80分
試験場所
日本国内
全国各地で実施
国外の実施地域
- バングラデシュ
- カンボジア
- インド
- インドネシア
- モンゴル
- ミャンマー
- ネパール
- フィリピン
- スリランカ
- タイ
- ウズベキスタン
- ベトナム
試験の実施方法
特定技能の「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」における技能試験は、コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式によって実施されます。
これはテストセンターのコンピューターを使用した試験実施方法であり、コンピューター上で試験問題の出題及び受験者による解答がなされることになります。
合格基準
学科試験:65%以上 実技試験:60%以上
年間の試験実施回数
年3回
「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」における特定技能2号
施行当初、特定技能2号の在留資格は「建設」と「造船・舶用工業」のみに設けられていましたが、現在は製造業である「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」でも2号の在留資格が設けられています。
「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」においても特定技能2号は1号と異なる特徴を持つため、雇用している特定技能外国人が2号に移行する場合、受入企業にはそれまでとは異なる対応が求められることが考えられます。
2023年に製造業でも2号の在留資格が取得可能になった
2019年の特定技能制度創設当初は、1号よりもさらに熟練した技能を持つ2号の在留資格が設けられているのは「建設」と「造船・舶用工業」のみでした。
しかし2023年には2号の対象産業分野が拡大され、製造業でも2号の在留資格を取得できるようになりました。
「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」の他にもこのタイミングで、
- ビルクリーニング
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
1号との違い
特定技能1号と2号の違いは以下の通りです。
1号 | 2号 | |
---|---|---|
在留期間 | 1年、6か月又は4か月ごとの更新。(通算で上限5年まで) | 3年、1年又は6か月ごとの更新(上限なし) |
技能水準 | 相当程度の知識又は経験を必要とする技能 | 熟練した技能 |
日本語水準 | 生活や業務に必要な日本語を有することを試験等によって確認 | 試験等による確認は不要 |
家族の帯同 | 原則として不可 | 要件を満たせば可能 |
永住権の取得 | 不可 | 可能となる場合もある |
2号の在留資格の取得方法
「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」で2号の在留資格を取得する方法には「特定技能2号評価試験ルート」と「技能検定ルート」の2種類があります。
「特定技能2号評価試験ルート」の場合は、
- ビジネス・キャリア検定3級取得 (生産管理プランニング区分、生産管理オペレーション区分のいずれか)
- 製造分野特定技能2号評価試験の合格 (機械金属加工区分、電気電子機器組立て区分、金属表面処理区分のいずれか)
- 日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場における3年以上の実務経験を有すること
一方「技能検定ルート」の場合は、
- 技能検定1級取得 (鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス 加工、鉄工、工場板金、めっき、アルミニウム陽極 酸化処理、仕上げ、機械検査、機械保全、電子 機器組立て、電気機器組立て、プリント配線板製 造、プラスチック成形、塗装、工業包装のいずれか)
- 日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場における3年以上の実務経験を有すること
また、「日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場における3年以上の実務経験を有すること」はいずれのルートでも設けられている要件です。
特定技能を雇用する際に便利なオンラインクラウドツール「dekisugi」
外国人を雇用する場合、受入企業は日本人を雇用する場合とは異なる手続きなどを行わなければなりません。そうした手続きやそれにまつわる書類の作成といった業務が担当者の負担となってしまうケースも珍しくありません。
オンラインクラオンラインクラウドツール「dekisugi」はそうした事態を防ぎ、特定技能関連のあらゆる業務を簡略化させる上で非常に便利です。
雇用する特定技能外国人の在留期限やデータ管理がスムーズに行えるだけでなく、担当者間のスケジュール・タスク共有機能やアラート機能などが充実しています。
「dekisugi」は特定技能外国人の雇用関連業務を簡略化させたい事業主様におすすめのオンラインクラウドツールです。
まとめ
特定技能制度は人手不足の解消を目的として創設された制度です。
現在も日本経済を支える重要産業とされている製造業では、今後も外国人材の活用が進むことが予想されています。
日本人を雇用する場合とは異なる対応が求められる場面も多いため、特定技能外国人を雇用する場合は制度の主旨や概要をよく理解した上で活用するようにしましょう。