- 技能実習生にかかる税金の仕組みが分かりにくい
- 技能実習生も所得税や住民税の支払い義務があるのか
- 技能実習生の税金納付額はいくらなのか
このような疑問や悩みをお持ちではないでしょうか?
はじめて技能実習生を採用される方にとって、制度は煩雑で不明点が多いものです。
今回の『税金』に関するものも、その一つです。
そこでこの記事では、過去に8名の外国人人材を雇入れた経験から、技能実習生にかかる所得税と住民税について徹底解説致します。
最後までお読みいただくと、技能実習生にかかる税金についての疑問や悩みを解消し、納税トラブルを回避していただけます。
ぜひ、最後までお読みください。
目次
技能実習生も税金を払う!
所得税と住民税を納付する義務は、技能実習生も日本人と同様です。ただし、来日してからの滞在期間に応じて支払いの数が変化しますので、少し注意が必要です。
ここでのポイントは、『居住者』と『非居住者』になります。以下より順番に解説致しますので、一つずつ確認していきましょう。
技能実習生の税金は滞在期間で変わる
はじめに、『居住者』と『非居住者』の区分について見ていきます。
前述の区分において、キーワードとなるのは『1年』です。日本に住所を有して1年未満のものを『非居住者』、現在まで引き続き1年以上住所を有するものを『居住者』と区分されます。
その点を踏まえて、以下のように納める税金の種類を見ていくと良いでしょう。
・住所を有して1年未満のものは、所得税だけを納付する
・引き続き1年以上住所を有するものは、所得税と住民税の両方を納付する
このように認識した上で、下記より所得税と住民税について見ていきます。
実習1年目は所得税のみ
技能実習1年目から所得税の支払いが必要です。こちらは居住の区分に限らず、日本国内において所得を得るものから、平等に徴収することとなっています。
一方で日本における住民税は、前年度の収入に対して支払い義務が発生する仕組みですので、前年度の収入が無い技能実習生は対象外となります。
また、住民税は『居住者』に対し発生するものですので、『非居住者』の区分に該当する入国後1年未満の技能実習生は対象外です。
以上の理由から、技能実習1年目は所得税のみの納付となります。
技能実習1年目の所得税のポイントは下記の通りです。
・所得に関わらず、一律20.42%を源泉徴収で納付する
・『租税条約』を締結している国の技能実習生は、減税または免税を受けられる可能性あり
所得税の税務処理において、一律20.42%を納付する期間で間違いが起こりやすくなっています。技能実習生の税金を計算する際は、十分に注意が必要です。
また、『租税条約』に関する減税と免税は『租税条約に関する届出書』の提出が必要となります。こちらの詳細は、後章にてご確認ください。
実習2年目以降は所得税と住民税の両方
技能実習2年目に入ると『居住者』の区分になります。
日本人従業員と同じ扱いで所得税を徴収され、仕組みは以下の通りです。
・『給与所得の源泉徴収税額表』に基づいた源泉徴収
・年末調整を実施して税額の清算
住民税に関しても日本人従業員と同様に扱い、会社員の場合は給与天引きとなるのが一般的です。以下にポイントをまとめましたので、あわせてご確認ください。
・住民税は1月1日の住所地をもとに課税される
・前年度の所得から計算される
・課税所得に対し約10%でほぼ全国一律となる
また、技能実習1年目に比べ税額が変化するため、技能実習生から給与に関する問い合わせが増える時期でもあります。
給与天引きのシステムがない国もあり、疑念や誤解が生まれやすくなるため、事前に対応されることをオススメします。事前に住民税に関する説明会を開いたり、監理団体に依頼して母国語での説明書面を配布したりなどの配慮が必要です。
技能実習生はほとんどの場合、税金に関する事項を入国前オリエンテーションなどで、一度説明を受けています。しかし、時間の経過とともに忘れられ、あたかも初めて聞いたかのように反応するケースが往々にしてあります。
ここは寛容に理解を示し、穏便な解決を心掛けることが大切です。
技能実習生から「なるほど!」と納得が得られる税金の説明
日本で生まれ育った私たちには当たり前に思える行政サービスでも、技能実習生には驚くほど充実していると感じられるものです。
例えば、公衆トイレが多くトイレットペーパーも無料など、技能実習生の国ではありえない光景だとうかがったことがあります。こういった公衆衛生を維持するためにも、我々の税金が使われていると説明すると、「なるほど!」と納得してくれる場合が多いものです。
実例を交えた説明を根気強く行うことで、技能実習生は税金に関する理解を深め、疑念や不満を解消できる大きなキッカケとなります。労使お互いの良好な関係を築き、円満な職場環境の実現のためにも、ぜひ実践することをオススメします。
技能実習生の税金が免除される『租税条約』
技能実習生が日本で得た所得に対し、日本と母国の両方で二重課税される可能性があります。それを防止するために、日本とそれぞれの国同士で取り決めたものが『租税条約』です。2023年1月1日現在、この条約を締結している国は100カ国以上にわたります。
締結国により適用の要件や条件が異なりますが、該当した場合は所得税及び復興特別所得税・住民税などで、減税または免税の対象です。
適用された場合は技能実習生にとってメリットのある条約ですが、いくつか注意が必要です。主なものは以下の通りとなっております。
・『租税条約に関する届出書』を提出しないと適用されない
・『非居住者』が受けられる措置のため、2年目以降の技能実習生には適用されない
・技能実習生を送り出している国で、条約を締結していない国もある
1項目に関しては、給与支払者の納税地の所轄税務署長への届け出が必要です。同条約は自動的に適用されるものではなく、『租税条約に関する届出書』の提出が必須となります。
3項目の条約を締結していない国はミャンマー、カンボジア、モンゴル、ラオスなどです。技能実習生として、こちらの国々から人材を雇入れる場合は特にご注意ください。
また、この制度は少々複雑な仕組みであり、自力で調べるには相当の労力が必要となります。時間を割いて調べたのに適用外だったともなると、担当者にも技能実習生にもメリットがない結果です。
そのような事態を避けるためにも、技能実習生が所属する監理団体などに、あらかじめご協力を依頼することをオススメします。
【注意喚起】技能実習生3年目の住民税
技能実習が進むにつれて、労使が互いに税金の理解を深めた場合でも、陥りがちな制度が3年目の住民税です。前述の通り、住民税は前年度の所得に応じて翌年に課税される仕組みとなっています。
3年間の技能実習を終えて帰国した場合、その翌年に税金の支払いを請求される事案が発生します。帰国後の技能実習生に納税を促すことは難しいもので、確実性にかけるものです。技能実習期間を終えるまでに、納税を済ませるのが得策と言えます。
税金の未納は受け入れ先企業の評価に影響を及ぼすことになり、技能実習制度の継続利用ができない事態にもなりかねません。そのような事態を防ぐためにも、対応を失念することなく、確実に行うことが必要です。
あらかじめ納税する方法は、所轄市役所の納税課へ相談すると対応していただけます。
受け入れ先企業側としての対応は、以下の2つがあります。
・退職時の給与または退職金から一括で徴収する
・日本に居住している者が納税管理人になり、本人に代わって住民税を納める
技能実習生には、この事実をなるべく早い段階から伝えることが必要です。何故ならば、帰国直前だと技能実習3年間の蓄えを既に母国へ送金している可能性もあるためです。手元資金がない状態で、10万円を超える支払いを請求されると事態は深刻になります。
また、この事由は3年目に限らず、『居住者』となった後に技能実習を終えた全てのものに関わりますので、ご留意ください。
まとめ
ここまで、技能実習生にかかる所得税と住民税に関して解説しました。
少し複雑になるため、最後に各ポイントについてもう一度おさらいをしていきます。
実習1年目
・住民税は非課税で所得税のみ支払う
・租税条約が適用できる可能性がある
・租税条約には届け出が必要
実習2年目
・所得税と住民税の両方が課税される
・住民税により手取りが減少し、技能実習生からの問い合わせが増える
・税金に関する不満は実例を交えて説明する
実習3年目
・帰国後にかかる住民税の対処法を予め検討する
・技能実習生には早い段階で住民税について説明する
・住民税の納付に関して所轄市役所の納税課へ相談する
以上です。
初めて技能実習制度を利用される受け入れ先企業にとって、外国人の納税は複雑に感じるものです。同様に初めて日本で働く技能実習生にとって、納税制度は理解が難しい部分になります。
双方にとって円満な関係を築くことが、快適な職場づくりへと繋がる大きな鍵となりますので、様々な配慮が必要です。寛大な心で根気強くサポートを続け、会社全体が発展していくことが何よりも大切と肝に銘じ、尽力して参りましょう。
この記事が、受け入れ企業様の業務の一助となりますことを願いながら、解説を終えます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。