日本列島は四方を海に囲まれた島国です。
周りが陸地の国では牧羊などが盛んだったりしますが、日本では古来より漁業が主な産業の一つで、米と野菜、そして魚が中心に食べられていました。
近年は若者の魚離れなどとも言われていますが、四方が海であることから、今でも世界トップクラスの漁獲水揚げ量です。
ですが日本では少子高齢化が進み、また漁業が盛んであった街では過疎化が起こり、漁業業界は慢性的な人手不足に悩まされています。
漁業業界の人手不足解消のため、政府も様々な対策を講じていますが、思うように成果が上がっていません。
この記事では漁業業界の人手不足と、その対策について詳細に解説します。
目次
漁業の人手不足の現状
水産庁によると、漁業就業者は一貫して減少しています。
ここ60年間で5分の1になったと言われています。
減少幅は大きく、例えば2018年から2019年には4.6%も減少して14万4,740人となりました。
少子高齢化の影響や、職業観の変化などにより、この先もますます減少していくと考えられています。
そんな中でも漁業の新規就業者は毎年一定数おります。
ですがこれも、同じ2018年から2019年で見ると、やはり減少しています。減少幅は1割ほどとなっています。
続いて、漁業従事者を、雇用形態別に見てみましょう。
雇われでの漁業就業者は例年、大きな変化がありません。
ですが独立をする漁業従事者が大きく減少しており、これも2018年から2019年で見てみると、3割近くも減少しています。
人手不足の原因
では重要な産業であるにもかかわらず、なぜ漁業業界では人手不足が深刻なのでしょうか。
その理由について見ていきます。
少子高齢化
日本では少子高齢化が深刻化しています。
日本の人口は2008年の約1億2800万人がピークでした。
ですが、2011年以降、かなりのペースで減少しており、2021年には約1億2500万人です。
さらにそのうちの約30%が65歳以上の高齢者となっています。
この深刻な少子高齢化は、今後もますます進むと考えられています。
漁業の世界でも、同じように少子高齢化が進んでおり、平均年齢が他の業界に比べて高めで約80%以上が40歳以上です。
また65歳以上は約40%となっています。
若者の従事者が少ないため、漁業の世界でも高齢化はどんどん進んでいくと考えられています。漁業の高齢化が進むことで、若者にますます敬遠されるようになることも心配されています。
3Kのイメージ
漁業が若者などに人気がない理由の2つ目は、3Kのイメージです。
職業観・働き方が近年、大きく変化しました。
テレビ電話のZOOMを利用したオンラインミーティングや、テレワークが一般的な働き方になりつつあります。
そんな中、漁業や農業、一部の製造業は、きつい・汚い・危険の3Kのイメージを若者に持たれがちです。IT関連の仕事が人気を集める一方で、肉体労働というだけでそもそも敬遠されがちなのですが、この3Kのイメージでますます若者離れが進んでいます。
労働時間が不規則
またこの3Kのイメージだけではなく、労働時間が不規則である点も人気がない理由となっています。
漁業も幅が広いので、全てがそうというわけではありませんが、早朝の5時に出航して昼には業務が終了となるというスタイルなどもあります。
また自然が相手ですので、天候などの影響を非常に強く受ける職種でもあります。
漁業は日本人の食を支える非常に重要な仕事です。
ですが少子高齢化だけではなく、漁業という仕事が持たれてしまっているマイナスイメージ、また労働時間が不規則である点などがこの仕事の人気を低下させています。
日本の取り組み
では漁業就業者を確保するために、どのような取り組みが行われているのでしょうか?
この章では、人手不足に苦しむ漁業業界で、どのような対策が取られているのか説明します。
新規就業者を支援する
まず新規就業者の支援を国が行っています。
この「新規就業者の支援」は、漁業業界の人手不足解消のための重要な一手になると考えられています。
理由として、漁業を営む経営体のほとんどが家族中心で行っています。
そのため両親の漁業を、子が継ぐという流れで漁業従事者になる方が多いです。
ですが職業観や時代の変化に伴い、必ず漁業を継ぐとは限らなくなりましたし、また他の産業から漁業に転身する方も増えています。
実際に、新規の漁業就業者の実に7割が他の産業から転身してきています。
東京や大阪から、漁業に興味を持ち転職する方も、少数ではありますが実際にいます。
国としては、「漁業に少し興味がある」という潜在的なニーズを持つものを確保して、育成していくことが重要であると考えています。それは漁業業界の人手不足解消だけではなく、漁村の活性化などにもつながると考えられています。
具体的な支援について
水産庁は、その具体的な支援策として、まず漁業就業相談、そして漁業を体験する就業準備講習会開催の支援を行っています。
これら就業相談や準備講習会があることで、漁業経験が全くない未経験者でも、スムーズに就業できたり、終業後の悩みを解決できたりできるようになっています。
具体的な支援策は、それだけではありません。
就職氷河期世代に向けた支援も同時に行なっています。
就職氷河期とは、バブル崩壊直後やリーマンショック直後の世代です。
日本の景気が最悪だった時代ですので、非正規雇用に甘んじなければならなかった方も多く、中には就職活動をしたが景気が悪く無職の状態にある方もいらっしゃいます。
こういった現在30代半ばから40代半ばの世代に、通信教育などで漁業に関する講座の受講を勧めたり、また漁業学校で学ぶ方には資金を交付したりしています。学び終えた方には、漁業現場でOJTによる研修を行うなど、手厚くサポートを行っています。
水産高校生に対してアクションをおこす
水産高校生に、漁業就業を進める働きかけも行なっています。
これには理由があります。
漁業の世界には近海の漁業もありますが、遠洋漁業もあります。
遠洋漁業では、漁船の運航に海技士が必須です。
ですが遠洋漁業の世界ではこの海技士の確保が大変困難になっています。
そこで遠洋漁業の海技士確保のため、「漁船乗組員確保養成プロジェクト」が始まりました。2017年にスタートし、水産庁が全面的にこのプロジェクトを支援しています。
具体的には漁業ガイダンスを行なっています。
この漁業ガイダンスですが、漁業者が全国の水産高校を訪れて求人活動をしたり、漁業のメリット・デメリット、実際の仕事内容などを伝えたりする活動となっています。
漁業関係者は水産高校に情報発信をしたいと思っており、また求人票を届けたいと考えていました。そして水産高校の教職員は、教育現場で漁業について説明してほしいと考えていました。
そのため企業が、生徒や水産高校で学生を教える教職員との繋がりが生まれました。教育にも良い影響を及ぼした取り組みとして高く評価されています。
また水産高校生たちがこの取り組みにより、漁業業界への就業に前向きになったことがわかっています。また水産高校生は漁業業界に対して、休暇の少なさや、Wi-Fi環境のあるなしを非常に重視していることがわかりました。これらがわかったことで、漁業業界が、若者の就業のために行うべき取り組みが見えてきました。
人材を育成する
また人材の育成にも力を入れています。
20トン以上の船舶で漁業をする場合がありますが、その場合には漁船の重さなどに応じて海技資格を持った船長、機関長、通信長などが乗り込まなければなりません。
必要な海技資格は当然国家資格であり、乗組員の安全のため誰でも簡単に合格できるものではありません。その上遠洋漁業に従事する従業員にとって、海技免許取得のための学習時間確保は難しいと考えられていました。
そこで国では、漁業就業相談会、そして水産高校などへ、積極的な働きかけをしています。
具体的には遠洋漁業などの際に、海技免許取得の研修であったり、免許取得にかかる費用の援助だったりをしています。
女性が活躍できる世界へ
また女性の活躍が非常に重要となっています。
漁業は肉体労働が多いこともあり、女性の割合が全体の約12%となっています。
ですが魚の仕分けなど、陸上で作業する仕事では、女性の割合が多いという現状があります。
しかしながら女性が、漁業経営などの場において、重要な意思決定に関わるという機会は極めて少ないです。具体的には全国の漁業協同組合では、正組合員の女性の割合はわずか、5.7%となっています。これが女性役員となると、さらに少なくなり0.4%です。
女性が活躍できる社会への変革が、業界の活性化のためにも重要視されており、その改革が進められています。
外国人労働者
少子高齢化が進み人手が不足し、日本では若者に決して人気のある仕事ではありません。
そのため外国人に遠洋漁業の漁船に乗り込んでもらい、人手不足を解消しているという現状もあります。
実際、技能実習生を積極的に受け入れています。
漁業・養殖業の10種の作業と、水産加工業の10種の作業において、技能実習生を受け入れています。
ですが近年、世界的に新型コロナウイルス感染症が流行して、技能実習生をはじめとする外国人の多くが入国拒否となってしまいました。そのため漁業・水産加工業で多くの欠員がでました。
このため国は、遠洋漁船の外国人漁船員の継続就業などを支援する決定をしました。
この先も外国人労働者の力が不可欠であり、またますます重要になるとも考えられています。現在は特定技能外国人も、漁業の世界で多く受け入れられるようになりました。
まとめ
最後に記事の内容をまとめます。
漁業の人手不足の現状
漁業就業者は一貫して減少しており、2018年から2019年には4.6%も減少して14万4,740人となりました。少子高齢化の影響や職業観の変化などにより、この先もますます減少していくと考えられています。
また雇われでの漁業就業者は例年、大きな変化がありません。
ですが独立をする漁業従事者が大きく減少しており、これも2018年から2019年でみてみると、3割近くも減少しています。
人手不足の原因
少子高齢化
日本では少子高齢化が深刻化していますが、漁業の世界でも同じように少子高齢化が進んでいます。
平均年齢が他の業界に比べて高めで、約80%以上が40歳以上、また65歳以上は約40%となっています。
3Kのイメージ
2つ目の人手不足の原因は3Kのイメージです。
テレビ電話のZOOMを利用したオンラインミーティングや、テレワークが一般的な働き方になりつつありますが、肉体労働であり、なおかつきつい・汚い・危険の3Kのイメージを若者に持たれがちです。
労働時間が不規則
早朝の5時に出向して昼には業務が終了となるというスタイルなどもあり、労働時間が不規則になりがちです。
日本の取り組み
新規就業者を支援する
漁業を営む経営体のほとんどが、家族中心で行っています。
ですが現在、新規の漁業就業者の実に7割が他の産業から転身してきています。
そのため水産庁は、具体的な支援策として、まず漁業就業相談、そして漁業を体験する就業準備講習会開催の支援を行っています。
就職氷河期世代に向けた支援も同時に行い、通信教育などで漁業に関する講座の受講を勧めたり、また漁業学校で学ぶ方に資金を交付したり、漁業現場でOJTによる研修を行うなど、手厚くサポートを行っています。
水産高校生に対してアクションをおこす
また水産高校生に、漁業就業を進める働きかけも行なっています。
遠洋漁業の海技士確保のため、「漁船乗組員確保養成プロジェクト」が始まりました。漁業者が全国の水産高校を訪れて求人活動をしたり、漁業のメリット・デメリット、実際の仕事内容などを伝えたりする活動となっています。
人材を育成する
水産高校の学生に対して、海技免許取得の研修であったり、免許取得にかかる費用の援助だったりなどをしています。
女性が活躍できる世界へ
漁業は肉体労働が多いこともあり、女性の割合が全体の約12%となっています。
ですが魚の仕分けなど、陸上で作業する仕事では、女性の割合が多いという現状があります。しかしながら女性が、漁業経営などの場において、重要な意思決定に関わるという機会は極めて少ないです。女性が活躍できる社会への変革も重要視されており、その改革がすすめられています。
外国人労働者
少子高齢化が進み、また若者に決して人気のある仕事ではありませんので、外国人に遠洋漁業の漁船に乗り込んでもらい、人手不足を解消しているという現状もあります。