建設業界で外国人材を雇用する方法や注意点とは?

建設業界で外国人材を雇用する方法や注意点とは?

技能実習特定技能

近年、建設業界では深刻な人手不足の問題を抱えています。その対策のひとつとして、建設業界では外国人労働者の需要が高まっています。 技能実習や特定技能・施工管理などさまざまな職種で活躍をしている外国人労働者ですが、まだまだ不安や課題を抱える企業も少なくありません。 そもそも建設業界で外国人材を雇用する方法やさまざまな在留資格があり違いが分からないといった疑問点も多くあります。 この記事では、建設業界で外国人材を雇用する方法と在留資格の種類を、注意点やメリット・デメリットと合わせて解説していきます。

ビルクリーニングとはどのようなものか?特定技能や受入人数も解説

建設業界が外国人を雇用する理由

近年、建設業界では積極的に外国人を雇用する企業が増えていますが、それにはどのような理由があるのか解説していきます。 建設業界は全産業のなかでも高齢化が進んでいるほか、建設業就業者の数も2002年より減少し続けているのが現状です。今後は、さらに高齢化が進むことがわかっており、熟年技術者が高齢を迎え引退することで就労者の数は減少することが予想されています。

また、建設業界の人手不足の原因には、若年層からの建設業に対するイメージの悪さがあり、若年層の就業を活発化させるためにも、労働環境の見直しやイメージ払拭のための対策などが実施されています。 このように深刻な人手不足となる建設業界では、対策のひとつとして外国人労働者の雇用が求められているというわけです。

建設業で外国人労働者を雇用するために必要なこと

外国人労働者を雇用するためには、就労資格の有無や雇用状況の届出を行う必要があります。以下で詳しくみていきましょう。

在留カードの確認

外国人を雇用する場合には、日本に住んでいる外国人においても、業種に応じた在留資格が必要です。 在留カードを確認することで、建設業界で就労可能な資格を持っているか確認することができます。 在留カードの確認では、現物の提出を必須とすることが重要で、有効期限・偽造されたカードである可能性がないかしっかり確認を行う必要があります。 在留カードをコピーで提出された場合には、偽造したものである可能性もあるので注意しなければなりません。 また、在留カードの確認を怠った場合や不法就労を黙認した場合には、不法就労助長罪となり、最大で3年の懲役、300万円の罰金が科せられる可能性があります。

外国人雇用状況の届出の提出

在留カードに問題がなく就労することが決定したら、厚生労働大臣に外国人雇用状況の届出の提出をしなければいけません。 提出がない場合には、雇用者1名につき30万円の罰金が科せられる可能性があるため、必ず提出を行ってください。また、離職時も同様に届出の提出が必要です。 また、下請け会社から元請け会社に提出をする外国人建設就労建設現場入場届出書がありますが、これは在留資格が永住者の場合や技能実習である場合には、提出の必要はありません。

建設業で就労することができる在留資格の種類

建設業で就労することができる在留資格の種類

外国人が日本の建設業界で働くためには在留資格が必要ですが、在留資格にはどのような種類があるのか、以下で紹介していきます。

特定技能(特定技能1号・特定技能2号)

特定技能実習は、建設業を含む人材不足を解消させるための対策として新設された在留資格で「特定技能1号」「特定技能2号」の2種類です。
特定技能の申請は、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

  • 日本語の試験と建設分野特定技能1号評価試験に合格
  • 日本の建設業で3年以上の実務経験(技能実習2号を良好に修了)

特定技能1号は、通算5年間の日本滞在が認められているのに対し、特定技能2号は滞在期間の制限がありません。特定技能の在留資格を持っている外国人は、ある程度の専門性や技能を身に着けているため、即戦力として雇用することができます。 特定技能の外国人材を採用するには、自社で働いている技能実習生に特定技能へ移行してもらうか、技能試験・日本語能力試験に合格した外国人材を採用するかの2パターンです。

技能

技能とは、特殊な分野において熟練した技能を持つ外国人がもつことのできる在留資格です。 外国料理の調理師・航空機の操縦車・貴金属の加工職人・スポーツ指導者などが該当されます。 技能のビザ取得には、10年以上の実務経験を証明する必要があります。 在留期間は5年・3年・1年・又は3ヶ月のいずれかになります。 どの在留期間になるかは、申請者である外国人労働者や雇用する企業側が決定することはできません。 一般的には出入国在留管理庁側によって、就労予定期間や希望する在留期間・雇用主となる企業の規模や経営状況などを踏まえ、総合的に審査されたうえで決定されます。 ただし、技能は在留期間の通算上限がなく、更新申請が許可されれば長期的に在留することができます。

技能実習

技能実習とは、外国人が技能実習制度を利用して、技能実習生として日本に滞在するための在留資格です。 技能実習制度とは、外国人が日本の企業で働くことで技術や技能を取得し、母国に持ち帰ることで発展に役立ててもらうことを目的とした制度です。 技能実習制度は、1年目が技能実習1号・2~3年目が技能実習2号・4~5年目が技能実習3号に分類されます。

それぞれ移行する際には、技能が習得されているかの試験を受ける必要があります。 試験に合格すれは、実習を続けることができますが、不合格の場合は帰国を余儀なくされます。 また、技能実習2号を良好に修了すると、特定技能の在留資格に変更することができます。 技能実習生が日本で働くことができる期間は最大5年間ですが、特定技能1号に移行すればさらに5年間の在留期間が設けられます。 さらにその後、特定技能2号に移行すれば在留期間の制限がなく、働き続けることが可能です。

技能実習生の採用をするほとんどの企業は、監理団体を通し受け入れを行っています。 監理団体とは、求人の取次ぎや必要書類の作成指導・入国の研修・受け入れ企業の監査などを行う団体です。 多くの場合は、監理団体が提供する求人情報をもとに面接を行い、採用をします。 採用が決まったら、技能実習計画の認定や在留資格の申請といった手続きを監理団体のサポートのもとで行うのが一般的です。

技能実習生が対象となる主な職種・作業では、石材施工・建築板金・建築大工・配管・鉄筋施行・タイル貼り・防水施工・サッシ施工・内装仕上げ施工・建設機械施工などがあります。

身分又は地位にもとづく在留資格

身分又は地位にもとづく在留資格は「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の4つに分けられ、日本での活動制限や在留制限のない、長期的な人材確保が可能な在留資格です。 日本人の配偶者等では「日本人の配偶者」「日本人の特別養子」「日本人の子と出生した者」が対象となり、永住者の配偶者等では「永住者の配偶者」「特別永住者の配偶者」「永住者の子ども」が該当します。 身分にもとづく在留資格は、日本での活動に制限がないことから、日本人と同じように建設業のどの業務にも従事することができます。 また、採用方法も日本人の採用と同様に可能です。

資格外活動

資格外活動は、上記のどの在留資格にも該当しない就労目的以外の理由で来日した外国人を対象とした在留資格です。 対象者は、留学生・留学生の配偶者・子ども・就労可能な在留資格をもつ外国人の配偶者・子どもになります。 資格外活動は、週28時間以内の就労が認められているため、ほとんどの場合がアルバイトとして雇われています。

建設業で外国人を雇用するメリット

建設業で外国人を雇用するメリット

建設業では外国人雇用が積極的に行われていますが、どのようなメリットがあるのか紹介していきます。

若年層の労働力確保

建設業で外国人労働者を雇用する最大のメリットは、若者の労働力の確保です。 外国人労働の多くは若い男性なので、若者離れが進む建設業にとっては、なくてはならない存在になりつつあります。 フィリピン・ベトナムなどの東南アジア諸国から来る外国人は器用で真面目に働く人が多く、年齢も若いため、建設業界において即戦力となる人材を確保することができます。

活性化に繋がる

外国人労働者の賃金は、母国と比較しても日本の賃金のほうが高いことから、仕事に対してとても意欲的です。 また、母国を離れて働き、その収入のほとんどは仕送りにあてているため、仕事に対する覚悟と熱意をしっかり持って働きに来る外国人労働者がほとんどです。 また、若い人材を確保できることからも社内の士気の向上となり、日本人社員に良い影響となるため、社内の活性化に繋がるというわけです。

社内教育の確立

外国人労働者を雇用する場合に、日本語が得意でない外国人に対し、社内教育を行う必要があります。 外国人に対する教育では、きちんと伝わるようなマニュアルを作成するとともに、社内でしっかりとした教育体制を整えることが重要となります。 結果として、外国人労働者を雇用することにより、社内教育が確立されるのです。

海外進出の足掛かりになる

外国人労働者の雇用によって、海外進出への足掛かりを掴むことができたという企業もいます。 海外進出を視野に入れて外国人材を雇用した場合はもちろんですが、たまたま人脈のある外国人を雇用して、そこから販路を開くことができたというケースです。 日本の市場が縮小していくなかで、海外に販路を持っていることは、企業が生き残るためには重要なポイントとなります。

建設業で外国人労働者を雇用するデメリット

建設業で外国人労働者を雇用する場合には、メリットだけでなくデメリットがあるので紹介していきます。

言葉の壁によるコミュニケーションの問題

雇用する外国人の日本語のレベルにもよりますが、技能実習生や特定技能外国人の場合は、十分に日本語が理解できないケースが多いです。 日本語が理解できないと、仕事の指示がわからない・言っていることが理解できないなどストレスを感じてトラブルの原因にあることもあります。

文化や価値観の違いを理解する

つぎに、国による文化の違いや価値観の違いがあげられます。 日本では当たり前のように行っていることでも、他国でも同じように行っているとは限りません。 例えば、仕事の集合時間に遅刻した場合、日本ではもちろん大問題となりますが、文化的な違いから遅刻を悪いと感じない外国人もいます。 こういった文化の違い・価値観の違いを理解したうえで外国人と関わっていかなければいけません。 また、他国の文化を理解することは大切ですが、日本の文化や仕事における基本のマナーを教えてあげることも大切なことです。

日本人の採用に比べてコストがかかる

外国人労働者を雇用する際には、就労のビザの取得・更新費用などが必要です。 外国人を日本に連れてくるには、現地に行き所定の費用を支払い、在留資格の取得に必要な書類をそろえなくてはなりません。 日本において在留資格を取得する場合にも、収入印紙代と証明写真の費用が必要となります。 また、現地で採用活動を行う際には、渡航費が発生するほか、外国人が日本に来るための渡航費も負担するのが一般的です。

建設業で外国人労働者を雇用する際の注意点

建設業で外国人労働者を雇用するときには、いくつかの注意点があるので紹介します。

在留カード・在留資格の確認を行う

外国人を雇用するまえに、在留カードの確認・雇用する在留資格の確認を行う必要があります。 就労が可能な在留資格でも、建設業に従事できない種類もあるからです。 自社に必要な人材を確保するためには、在留資格の種類をしっかり確認し、自社に必要な人材を雇用することが大切です。

受け入れの準備をしっかり行う

外国人労働者を雇用する際には、働きやすい環境づくりをしておく必要があります。 日本語がわからない外国人に対しては、多言語対応や最低限のコミュニケーションで済むICT化などの取り組みが行われています。 外国人にとって働きやすい労働環境を整えるためには、外国人労働者とのコミュニケーションの取り方や、文化の違いなどをお互いに理解し合うとことが重要となります。 また、日常生活のサポートも必要不可欠です。

労働条件の差別は禁止されている

労働基準法第3条で、労働者の国籍や社会的身分を理由とした賃金・労働時間などに関する差別を行うことは禁止されています。 外国人労働者と日本人労働者とで賃金等の不当な差別は労働基準違反となります。 外国人労働者のみに特殊な就業規則を適用したり、反対に特定の就業規則を適用しない場合にも、労働基準法違反に当たるので注意が必要です。 就業規則は、すべての従業員や社員に適用するものです。 それを踏まえたうえで外国人労働者の労働条件を検討しなければなりません。

また、職業安定法3条では、国籍や社会的身分などを理由に、職業紹介に関して差別を行うことを禁止しています。 例えば、求人を出すときに「ベトナム人のみ募集」など国籍の制限を行うことは、職業安定法違反となるので注意が必要です。

まとめ

まとめ

建設業で外国人労働者を雇用する際には、在留カードの確認・必要な在留資格の確認のほか、各種届出の提出をしなければいけません。 届出をせず不法労働者に労働をさせた場合には、罰則が科せられる可能性もあるので、注意が必要です。 また、外国人労働者を雇用するメリットとして、人材不足の解消や社内の活性化などに繋がることがあげられますが、言葉の壁によるコミュニケーションの問題や文化の違いによるトラブルを防ぐためにも、お互いの文化の違いや価値観の違いを共有し合い、親交を深めていくことが重要です。

この記事を書いたライター
maiko

maiko

1984年生まれ 東京都出身 職業:ライター・経理事務(建設業) 好きなこと:ゴルフ・海外ドラマ・映画・読書・美容・お風呂・子供 執筆記事:建設業・美容・引越し・占い・ナイトワーク・起業(手続きなど)・その他