現在さまざまな業界で外国人労働者が活躍しています。
日本で働く外国人労働者の数は年々増えており、今後も少子高齢化の影響により国内の労働力が不足するに従って増えることが予想されています。
一方で人手不足解消の手段の一つとして主流になりつつある外国人材ですが、異なる価値観や労働観を持つ人材であるからこそ活用する場合には工夫や配慮が必要です。
この記事では日本で働く外国人材の現状を解説した上で、主な人材供給国の人材の特徴等を解説します。
目次
【全体】日本で働く外国人の国籍ランキング
令和5年10月末時点での厚生労働省の資料によると、日本で働く外国人の国籍別割合は以下のようになります。
日本で働く外国人として最も多いのはベトナム人で、現在518,364人のベトナム人が日本で働いています。
続いて多いのが中国人の397,918人であり、さらにその次にフィリピン人226,846人が続きます。
在留資格の種類別割合ランキング
外国人が日本で働くためには、従事する業務内容に対応した在留資格を取得する必要があります。
令和5年における日本で働く外国人の在留資格別労働者の割合は以下のようになっています。
今後制度の見直しや国内の人手不足状況によってこの割合は大きく変化することが予想され、特に特定技能は今後対象産業で活用が進められる可能性が高いです。
【産業別】日本で働く外国人の国籍ランキング
上記の通り現在多くの外国人労働者が日本で働いていますが、産業別に見るとさらに労働者の国籍に特徴があります。
以下では特に在留資格を「特定技能1号」に限った上で産業別の労働者の割合について解説します。
製造業
製造業は外国人労働者の活躍が最も目立つ産業であり、日本で働く外国人のうち27%にあたる552,399人が製造業に従事しています。
在留資格を特定技能1号に限って見た場合のランキングは以下の通りです。
1位 | ベトナム | 24,886人 |
---|---|---|
2位 | インドネシア | 5,983人 |
3位 | フィリピン | 3,905人 |
4位 | 中国 | 2,780人 |
5位 | タイ | 1,454人 |
宿泊・飲食業
宿泊・飲食業も外国人労働者が目立つ産業の一つであり、現在日本で働く外国人全体の11.4%を占める233,911人が宿泊・飲食業で働いています。
宿泊
特定技能1号に限った場合の宿泊業で働く外国人の国籍別ランキングとしては以下の通りになります。
1位 | ベトナム | 122人 |
---|---|---|
2位 | インドネシア | 73人 |
3位 | ミャンマー | 56人 |
4位 | ネパール | 33人 |
5位 | フィリピン | 26人 |
飲食業
特定技能1号に限った場合の飲食業で働く外国人の国籍別ランキングは以下の通りです。
1位 | ベトナム | 6,766人 |
---|---|---|
2位 | ミャンマー | 2,219人 |
3位 | ネパール | 1,108人 |
4位 | インドネシア | 914人 |
5位 | フィリピン | 758人 |
建設業
建設業で働いている外国人の人数は144,981人と、日本で働く外国人全体の7.1%を占めています。
国籍別ランキングは以下のようになっています。
1位 | ベトナム | 16,583人 |
---|---|---|
2位 | フィリピン | 2,452人 |
3位 | インドネシア | 2,291人 |
4位 | 中国 | 1,301人 |
5位 | カンボジア | 690人 |
ベトナム人を雇用する場合のポイント
ベトナム人は日本で働く外国人の中で最も多い外国人です。そのため現段階では関係がなかったとしても、さまざまな業界で近い将来関わる可能性のある人材とも考えられます。
ベトナムの文化と国民性
勤勉で温厚な人が多いベトナム人は、日本人と気質が似ていることから一緒に働きやすいと感じる人が比較的多いです。家族思いな人が多く、寂しがりやな面もあり、日本で働く際も他のベトナム人と一緒に行動する傾向があります。
賃金に関しては日本人よりも厳しくチェックします。将来のことも踏まえた上で収入を考えるよりも、今いくらもらえるかを重視する人が多いです。
ベトナムの労働観
ベトナム人は家族を非常に大事にする国民性であるため、労働観もそれに伴い仕事よりも家族との時間を重視する傾向があります。そのため家族に会うための帰国に対する理解や配慮、休暇制度の整備などの工夫をすることをおすすめします。
また、ベトナム国内では残業代が非常に高いです。あまりにも残業代が高いため、ベトナムの企業は従業員に残業をさせることを控える傾向があります。
そのためベトナム人は「残業」というものに対する理解度はあまり高くありません。残業代が出るのであればするという判断を下す人が多いため、残業についての規則を明確にすることで残業してもらいやすくなります。
中国人を雇用する場合のポイント
日本との歴史的・経済的なつながりが深い中国人も、現在日本のさまざまな産業で働いています。
中国の文化と国民性
家族を大切にすると同時に、長幼の序を重んじる中国人は礼儀正しく、合理的な国民性を持っています。
一方ではっきりとものを言うため、コミュニケーションを取りにくいと感じる日本人は多いです。
中国人と会話をする際にははっきりと自分の意思を伝えるようにしましょう。自分の気持ちを汲み、思った通りに解釈してくれることを期待しないことで、かえってコミュニケーションがとりやすくなります。
中国の労働観
仕事においては成果主義を重んじる面があり、経過よりも結果で評価する・されることを好みます。そのため意欲的に仕事に取り組む人が多いです。
上昇志向が強く、成果に対し正当な評価が得られるとさらに意欲が掻き立てられます。
逆に個人主義的な一面もあるため、集団で動くことが苦手な人も少なくありません。チームワークを円滑に行うために、全体の目的を常に明確にする必要があります。
フィリピン人を雇用する場合のポイント
日本で働く外国人として3番目に多いフィリピン人は、特に介護職やサービス業での活躍が目立ちます。
フィリピンの文化と国民性
明るくフレンドリーな人が多いため、フィリピン人を雇用することで職場に活気が出ることがあります。社交的であり、他の国の人とも比較的簡単に打ち解けるのもフィリピン人の特徴です。
フィリピン人には勤勉かつホスピタリティにあふれている面もあります。そのためサービス業等では思いやりのある対応ができる人が多いです。
カレンダーや時計を見ない人が多いため、遅刻やタスクのやり残しなどを防ぐために声かけ等を心がけましょう。
日本の職場でのフィリピン人
家族思いな国民性であるため、家族のために遅刻・欠勤ということも珍しくありません。雇用する場合は休業制度について丁寧に説明すると同時に、家族絡みの休業等についての理解を示す必要があります。
海外に出稼ぎに出る人が多いため、日本に来て働くことに対しても抵抗があまりない人が多いです。
ネパール人を雇用する場合のポイント
ネパール人も日本人との相性がいい国民として人気があります。
ネパールの文化と国民性
ネパールは多民族・多宗教国家であるため、互いの価値観を寛容に受け入れる国民性が育まれる国と言えます。人懐っこく困っている人を積極的に助ける反面、人に頼りすぎる傾向もあるといえるかもしれません。
外国に出稼ぎに行くことが一般的であるため、日本に来て働くことに対しても抵抗があまりありません。日本語および外国語の習得にも慣れていることから、日本語もすぐにマスターします。
日本の職場でのネパール
信仰心が強く、自分が信仰する宗教の教えは出稼ぎ先でも守る人が多いです。一緒に働く場合は宗教に対する理解が必要な場合もあります。
また、礼儀を重んじ、年配者を敬い、年少者に優しくするのが当たり前という考え方が日本よりも強いです。職場では役職に関係なく冗談を言うこともあれば、相手が年下という理由で飲み物をおごるといった場面が見られることがあります。
時間にルーズな面もあるため、スケジュール管理はサポートが必要な場合もあります。
インドネシア人を雇用する場合のポイント
インドネシア人は近年特に特定技能の各産業分野で注目を集めています。今後も日本で働くインドネシア人が増加することが予想されます。
インドネシアの文化と国民性
温厚で礼儀を重んじる上に、南国的な楽観性を兼ね備えた人が多いインドネシア人は、一緒に働くことで組織全体にいい影響をもたらす可能性があります。思いやりもあり、相互扶助の意識も高いため、職場でも互いに助け合う姿が見られます。
時間にルーズな面もありますが、スケジュール管理をサポートするときちんとタスクをこなせます。また、出身地によって時間に対する価値観も異なり、特にジャワ島出身者は比較的時間を守る人が多いです。
インドネシアの労働観
インドネシアは日本よりも転職率が高く、頻繁に転職します。会社への帰属意識よりも直属の上司や仕事仲間とのつながりを重視するため、引き止めても成功しないことの方が多いです。
転職されるのを防ぐためには、常に新しい刺激を与え、キャリアアップを支援する必要があります。日頃からコミュニケーションをとり、信頼関係を構築するよう意識することも重要です。
ミャンマー人を雇用する場合のポイント
ミャンマー人も近年雇用する企業が増えている外国人材です。
ミャンマーの文化と国民性
温厚かつあまり自己主張をせず控えめな人が多いミャンマー人は日本人と一緒に働きやすい人種です。また、信仰心が篤いことからどの国の人に対しても礼儀正しく振る舞います。
寄付に対する意識も高く、ミャンマー人は積極的に寄付活動を行います。
現世で徳を積み、より良い来世を望む意識が深く根付いている国民性です。
日本の職場でのミャンマー人
ミャンマーには日本のようなあいさつの文化がありません。
「おはようごさいます」
「おつかれさまです」
など、日本人にとっては当たり前の職場でのあいさつ習慣がないため、慣れるのに時間がかかることがあります。職場の出入の際も無言の人が多いです。
決して無視をしているわけではないため、こちらから声をかけるときちんと応じてくれます。また、親しい人同士ではいきなり「ご飯食べた?」といった問いかけから会話が始まることがあります。
まとめ
日本の労働現場で活躍する外国人は今後も増えることが予想されます。あらゆる業界において外国人労働者は身近な話題です。
すでに外国人を雇用している場合も、将来雇用する可能性がある場合も、日頃から国内および世界の労働市場に関する情報を積極的にチェックすることをおすすめします。