日本の外食業で働く外国人労働者が受ける「特定技能試験」の概要を解説

日本の外食業で働く外国人労働者が受ける「特定技能試験」の概要を解説

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近年、海外から日本への観光客が増えつつあります。しかし、日本の外食業は少子化の影響を受け、人手不足の店が多いのが現状です。そのため、日本の外食業では、外国人労働者の存在が重宝されています。本記事では、日本の外食業で働く外国人労働者に必要な「特定試験」について徹底解説します。

日本の外食業で外国人労働者が必要とされている理由

日本の外食業で外国人労働者が必要とされている理由

なぜ、日本の外食業では外国人労働者が必要とされているのでしょうか。日本の外食業が外国人労働者を必要としている理由について、2つご紹介します。

少子化による働き手不足

日本の外食業は、少子化の影響を受け、深刻な人手不足問題をかかえています。また、日本の外食業では「学生アルバイト」が多く、長期的に働ける人材が不足しています。自動オーダーシステムなどの機器を導入している店舗も増えてきているものの、それでも外食業では人材が欠かせません。そのため、日本人の人手だけでは足りず、外国人労働者を必要としているのです。

海外の食事が日本人に好評だから

インドカレーや韓国のトッポギなど、日本人の間では、海外の食事が人気です。最初は物珍しさを感じ、食べてみたところ「美味しい!」と感激してリピートする日本客が増えています。そのため、近年の日本では、インド人が作った「インドカレー」や韓国人が作った「トッポギ」など、外国人労働者が働く機会が増えているのです。

日本の外食業で働く外国人労働者に必要な「特定技能試験」とは

日本の外食業で働く外国人労働者に必要な「特定技能試験」とは

日本の外食業で働く外国人労働者には、「特定技能試験」の受験が必要です。なぜ特定技能試験が必要なのか、特定技能試験が行われる目的や、特定技能試験の「1号」と「2号」の違いについてご紹介します。

特定技能試験が行われる目的

特定技能試験が行われる目的は、人手不足が深刻化している業界に、素早く外国労働者の雇用を実現させるためです。しかし、一時的な人手不足の解消を目的としているため、特定技能1号の場合、「通算5年」で母国への帰国が必要です。特定技能2号を取得することで、更新する限り上限なく在留して働くことができます。ただし、「永住許可」ではないため、雇用されていることが条件になります。特定技能試験に合格することで、外国人労働者は素早く就職が決まり、会社・企業側は素早く人手不足を解消させられるという利点があります。

外食業の特定技能試験には1号と2号がある

日本の外食業で働く外国人労働者が受験する「特定技能試験」には、「1号」と「2号」があります。それぞれの違いは、以下の通りです。

特定技能1号 外食業の「特定技能1号」を取得するには、以下の2つの試験に合格する必要があります。

①外食業技能測定試験
外食業についての知識・技術を確認するための試験です。
また、試験では「衛生管理」「飲食物調理」「接客全般」などが、筆記試験で出題されます。

②日本語能力試験(N4以上)
日本語能力試験とは、外国人労働者の日本語能力をレベル化した試験です。
N1〜N5の5段階に分かれており、数字が低くなるほど、難易度は高くなります。
N4は「日常生活で、ゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる」という状態です。
特定技能2号 外食業の「特定技能2号」を取得するには、以下の条件を満たす必要があります。

・日本国政府が定める「指導等実務経験」がある者
・「日本語能力試験(N3以上)」に合格した者

なお、特定技能1号の取得に必要な試験を受験をする必要はありません。
「医療・福祉施設給食製造」の第2号試験を修了している場合、特定技能1号を取得することも可能です。

外食業の「特定技能試験」の概要について紹介

外国人労働者が、日本の飲食業で働くことに欠かせない「特定技能試験」について、「1号」と「2号」に分けて、詳しくご紹介します。

特定技能試験の受験資格

特定技能の受験資格は、「特定技能1号」と「特定技能2号」によって異なります。ここからは、それぞれの特定技能試験の受験に必要な「受験資格」についてご紹介します。

1号の受験資格

日本の外食業で働くための「特定技能1号」を受験する方に欠かせない「受験資格」は、以下の①~②の両方の条件を満たす人です。

①在留資格を持っており、試験日当日の年齢が満17歳以上の人
②公的機関が発行したパスポートを持つ人

2号の受験資格

日本の外食業で働くための「特定技能2号」を受験する方に欠かせない「受験資格」は、以下の①〜③のすべての条件を満たす人です。

①在留資格を持っており、試験日当日の年齢が満17歳以上の人
③公的機関が発行したパスポートを持つ人
④日本国政府が定める「指導等実務経験」がある者
 
指導実務経験とは2年以上の期間、日本の外食業において、複数の日本人従業員や特定技能外国人を指導・監督しながら、店舗管理を補助した経験のことです。また、試験日の前日までに2年以上に満たない場合、試験日から6ヵ月以内に「指導等実務経験」の必要期間を満たすことが条件となります。

受験に必要な手続きの方法

「特定技能1号」と「特定技能2号」の受験に必要な手続きをご紹介していきます。手続きにお困りの方は是非、以下に続く項目をご覧ください。

1号の手続き方法

基本的に、特定技能試験の手続きはOTAFF(一般社団法人外国人食品産業技能評価機構)のサイトで行います。手続きの手順は全部で5stepです。これから紹介する手順と合わせて手続きを進めてください。

step.1 マイページ登録を行い、受験申し込みをする
特定技能試験の申し込みを受け付けている「OTAFF」というサイトを開き、「マイページ登録」をします。マイページ登録では、自分自身の情報と顔写真の登録が必要です。登録後、土日祝日を除く5日間の審査があります。マイページの登録が済んだら、次は受験申し込みをしてください。申し込みをする際は、マイページにログインし、「試験日時」や「会場」などを選び、受験資格を満たしているかを確認することが大切です。

step.2 当選したら受験料を支払う
特定技能試験の申し込み者が定員を超えた場合は、「抽選」で選ばれます。抽選結果は、登録したメールアドレスか、マイページの「受験履歴」で確認可能です。受験料の支払いは、以下の3つの中から1つ選んで、必ず期日内に支払いを済ませておいてください。

・クレジットカード支払い
・コンビニ払い
・ペイジー決済(口座振替)

原則として、支払った受験料は返金されません。もしも、地震や津波などの自然災害などにより、試験が中止になった時のみ、受験料の返金をしています。

step.3 受験票をダウンロードする
受験票は、自分自身でダウンロードする必要があります。マイページ内の「受験履歴」からダウンロード可能です。ダウンロードの開始日は「OTAFF」のホームページにある「試験日程(全体の流れ)」をクリックし、「受験票の発行」の項目を探します。受験票のダウンロード開始は、登録したメールアドレスに通知されます。

step.4 試験を受ける
試験を受ける前に、事前に試験案内に記載されている「試験の日の注意事項と不正行為の禁止」と「試験の日に持ってくるもの」をしっかりと読んでください。もし、読まずに試験を受けてしまうと、受験ができなくなる可能性もあります。試験日当日は、受付で本人確認をした後に、試験を受けるという流れです。

step.5 合否の結果を受け、合格の場合「合格証書」を受け取る
合否の結果は、全日程の試験終了後から「約3週間以内」を目途に、「OTAFF 」のホームページまたはマイページの「受験履歴」に表示されます。試験に合格した方には、マイページの「受験履歴」に合格証書が表示されます。自分自身で印刷をすることで合格証書を受け取ったことになります。

2号の手続き方法

外食業分野の「特定技能2号」の受験申し込みは、個人で行うことができません。外国人労働者の方が現在働いている企業からの申し込みには対応しています。「特定技能2号」の取得を考えている方は、勤め先の上司に相談してみてください。

試験科目・試験の実施方法

試験科目や試験の実施方法は「特定技能1号」と「特定技能2号」とで異なります。ここからは、それぞれの試験科目・実施方法についてご紹介します。

1号の試験科目

特定技能1号の試験科目は「学科試験と実技試験の2科目」です。試験時間は70分、マークシートを使ったペーパーテスト方式で試験を行います。試験問題はすべて日本語表記ですが、漢字には読みをつけています。

①学科試験
日本の外食業で必要な知識全般や日本語能力が備わっているかを確かめる試験です。

項目 主な内容 問題数 配点
衛生管理 ・一般衛生管理に関する知識
・HACCPに関する知識
・食中毒に関する知識 など
10問 満点40点
飲食物調理 ・調理に関する知識
・食材に関する知識
・調理機器に関する知識 など
10問 満点30点
接客全般 ・接客サービスに関する知識
・食の多様化に関する知識
・クレーム対応に関する知識 など
10問 満点30点

合計30問・合計点数100点です。

②実技試験
実技試験では、図やイラストなどを見て正しい行動がどれか選ぶ「判断試験」と、計算式を使って、業務計画を立案する「計画立案」の2つがあります。

項目 主な内容 問題数 配点
衛生管理 学科試験と同じ 判断試験:3問
計画立案:2問
合計:5問
満点40点
飲食物調理 学科試験と同じ 判断試験:3問
計画立案:2問
合計:5問
満点30点
接客全般 学科試験と同じ 判断試験:3問
計画立案:2問
合計:5問
満点30点

判断試験:計9問・計画立案:計6問・合計:15問・合計点数100点

2号の試験科目

特定技能2号の試験科目や試験時間、試験方法については、1号と同じです。しかし、1号よりも問題数や配点が多いことが特徴です。

①学科試験
日本の外食業で必要な知識全般に加え、店舗運営に関わる知識が備わっているかを確かめる試験です。

項目 主な内容 問題数 配点
衛生管理 ・一般衛生管理に関する知識
・HACCPに関する知識
・食中毒に関する知識
・食品衛生法に関する知識 など
10問 満点40点
飲食物調理 ・調理に関する知識
・食材に関する知識
・調理機器に関する知識
・食品の流通に関する知識 など
5問 満点10点
接客全般 ・接客サービスに関する知識
・食の多様化に関する知識
・クレーム対応に関する知識
・公衆衛生に関する知識 など
10問 満点30点
店舗運営 ・計数管理に関する知識
・雇用管理に関する知識
・届出関係に関する知識 など
10問 満点40点

合計35問・合計点数120点です。

②実技試験
質疑試験の出題方法も、1号と同じです。しかし、項目や主な内容、問題数、配点が1号よりも多いことが特徴です。

項目 主な内容 問題数 配点
衛生管理 学科試験と同じ 判断試験:3問
計画立案:2問
合計:5問
満点40点
飲食物調理 学科試験と同じ 判断試験:3問
計画立案:2問
合計:5問
満点20点
接客全般 学科試験と同じ 判断試験:3問
計画立案:2問
合計:5問
満点30点
店舗運営 学科試験と同じ 判断試験:3問
計画立案:2問
合計:5問
満点40点

判断試験:計12問・計画立案:計8問・合計:20問・合計点数130点

特定技能試験の合格基準

特定技能試験の合格基準は、「1号」と「2号」で違いはありません。しかし、問題数や得点数が異なるため、特定技能2号の方が難しいと言えるでしょう。

1号の合格基準

特定技能1号の学科試験と実技試験を合わせた点数は、「満点200点」です。その内の65%以上の得点で、合格となります。

2号の合格基準

特定技能2号の学科試験と実技試験を合わせた点数は、「満点250点」です。その内65%以上の得点で、合格となります。

「特定技能試験」を受ける際の注意点

「特定技能試験」を受ける際の注意点

特定技能試験には、「注意事項」と「不正行為の禁止」が定められています。もし、試験中に不正行為があった場合、合格を取り消されます。また、最大5年間受験ができなくなる場合もあるため、注意事項と不正行為について、よく理解することが大切です。

重複申し込みをしないこと

受験の申し込み時に、「マイページの登録」を行いますが、1人で複数のマイページを作る「重複登録」は、禁止事項に該当します。マイページの登録は、必ず「1人につき1回」です。外食業以外にも、飲料食品、製造業の試験を申し込む際は、「1つのテストにつき1回」の登録をします。

受験料の支払いを忘れないこと

受験料は「試験当日」や「試験終了後」に支払うものではありません。前払いとして、税込7,000円を支払う必要があります。しかし、「受験料は当日に支払えばいいか」と勘違いしてしまう方もいるようです。試験が受けられなくなるため、必ず受験料は試験前に支払いましょう。

試験日当日に必要な持ち物を忘れないこと

試験日当日に必要な持ち物は、以下の通りです。

・受験票
・在留カード
・パスポート
・HBのえんぴつ
・消しゴム
・電卓(希望者のみ)

試験当日に忘れないよう、チェックリストを作成することがおすすめです。

「特定技能試験」は日本国外で受験することもできる

「特定技能1号」は、海外からでも受験可能です。ここからは、2024年4月時点での日本国外の受験会場をご紹介します。

国名 試験会場
インドネシア ・バンドン
・デンパサール
・ジャカルタ パデマンガン
・ジャカルタ サウスジャカルタシティ
・ジャカルタ ウタラ
・メダン
・スマラン
・スラバヤ
・ジョグジャカルタ
カンボジア プノンペン
スリランカ コロンボ
タイ バンコク
ネパール ・カトマンズ
・ポカラ
フィリピン ・セブ
・ダバオ
・マニラ
ミャンマー ・ヤンゴン1
・ヤンゴン2
・ヤンゴン3
・マンダレー

会場によって試験の日時が異なりますが、「試験問題の構成」「問題数」「試験時間」「合格基準」については、日本国内での試験と同じです。

まとめ

日本の外食業は、時代とともに年々進化を遂げてきました。現在では、海外の食事やお菓子などが流行しています。外国人労働者の方にとっては、日本の外食業は「働きやすい」「求人数が多い」と感じるのではないでしょうか。是非、職業選択の1つとして、日本の外食業を検討してみてください。

この記事を書いたライター
カナエル運営事務局

カナエル運営事務局

外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。