現在日本では、年々深刻化する労働力不足を受け、特定技能など外国人材の雇用に関する制度や法律の見直し・改正が毎年のように行われています。
この記事では2027年施行予定の育成就労及び、特定技能制度など外国人材制度関連の法改正の現状と今後の見通しについて解説します。
目次
近年外国人材の雇用に関する制度の見直しが進められている
国内での少子高齢化が深刻化するにつれて、経済を支える労働力も年々減少しつつあります。すでに国内の人材だけでは十分に労働力をまかなえなくなっている産業も決して少なくありません。
こうした人手不足を解消し、日本の経済力を今後も維持・発展し続けるためにも外国人材は非常に重要な存在です。
一方で異なる文化や価値観を持つ外国人材を雇用する場合、さまざまなトラブルが生じるリスクもあります。
日本人と外国人の共生を目指し、そうしたトラブルの原因を改善するために、近年実態に見合わない制度や、形骸化した制度の見直しが進められています。
技能実習制度の見直しと新制度「育成就労」
外国人の雇用制度として最も馴染みのある制度の一つである技能実習は、日本での就労を通して身につけた技術や知識を、母国での経済発展に役立ててもらうことを目的として1993年に創設された制度です。
人材育成による国際貢献を目的としているため、本来技能実習制度は人手不足解消を目的として利用することは認められません。
また、転職が認められないなど制限が多いことから、人権侵害にあたるのではないかとの指摘も国内外からあります。
こうした制度の目的と実態の乖離や、人権侵害といった課題を解決するために、技能実習制度を廃止し、新制度「育成就労」が創設されることになりました。
これによって、受入機関はより長期的に人材を確保できるようになると同時に、外国人材は日本で働きやすくなります。
今後法改正される予定の制度
新制度「育成就労」の創設や技能実習制度の廃止だけでなく、今後外国人の雇用に関するさまざまな制度が見直されることが予想されます。
具体的に予想されることとしては、
- 育成就労制度の創設
- 特定技能制度の見直し
- 技能実習制度の廃止
- 永住権許可制度の見直し
- 技術・人文知識・国際業務
- 留学生の活用の促進
- その他就労可能な在留資格について
などがあげられます。
2027年施行予定の新制度「育成就労」
以下では2027年施行予定の育成就労制度について解説します。
制度概要
育成就労制度は、外国人材に日本での3年間の就労を通して特定技能1号水準の技術・知識を身につけてもらうことを目的とした制度です。
これによって企業はより長期的に人材を確保できるようになります。
さらに育成就労の在留資格の取得には就労開始までに日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格するか、それに相当する日本語講習の受講が求められる見込みです。
就労前に日本語能力をある程度身につけた外国人材を雇用できるようになることで、コミュニケーションが円滑になり、トラブルを回避しながら雇用関係が築けるようになります。
施行予定時期
育成就労に関する改正法は2024年6月21日に公布され、公布日から3年以内に施行されることとされています(=遅くとも2027年6月まで)。現時点で具体的な施行日は未定です。
従来の技能実習制度との違い
育成就労制度は従来活用が進められてきた技能実習制度の課題を見直した上で創設された制度です。
従来の技能実習制度の目的である国際貢献色は見直され、日本国内での長期的な人材確保の実現や、外国人材にとって働きやすい環境を整えることを目的として創設されました。
将来的に特定技能1号を取得することを目指した制度であると同時に、一定の条件の下での転籍が認められるなど外国人材にとっても働きやすい制度となっています。
移行スケジュール
おおよその移行スケジュールは以下のように想定されています。
今後の特定技能制度
新制度「育成就労」の施行に合わせて特定技能制度も大幅に見直されます。
育成就労制度の施行に合わせて変更されるポイント
これまで特定技能外国人の受入機関は、支援業務の一部を外部に委託する場合、登録支援機関以外の機関にも委託することが可能でした。
しかし改正法の施行後は支援業務の委託先が登録支援機関のみに限定されることになります。受入機関は支援業務を登録支援機関に委託するか、自身で支援業務を行わなければなりません。
ただし、経過措置として改正法施行時に登録支援機関以外の機関に支援業務を委託していた場合、支援対象となっていた外国人材については最初に在留期間の更新申請を行うまでの間までは従来の委託先に支援を委託しても問題ないということになっています。
受け入れ産業分野や受入れ人数についての見直しと検討
特定技能制度は全ての産業分野で活用が認められているわけではありません。
しかし、年々労働力不足が深刻化することにあわせて、産業分野内の業務範囲の見直しや、新たな産業分野の設置などが実施されています。
例えば自動車運送業は2019年の特定技能制度創設時にはありませんでしたが、2024年に新しく産業分野として追加されました。また、工業製品製造業はもともとは別々の3分野だったものが2023年に統合され、2024年には名称も変更された産業分野です。
また、各産業分野ごとに設定された受け入れ人数も、5年間の受入れ見込数を期間ごとに再設定されています。
技能実習制度は廃止に
2027年の育成就労制度の施行にあわせて、従来の技能実習制度は廃止になります。
これまで技能実習制度を活用してきた受入機関が今後も外国人材を雇用するためには、育成就労制度か特定技能制度を活用することになります。
育成就労の施行・技能実習制度の廃止・特定技能制度関連の法改正によって起こる変化
新制度「育成就労」の施行とそれに伴う技能実習制度の廃止、及び特定技能制度の見直しが進められることによって、今後は外国人の雇用の在り方も大きく変化することが予想されます。
以下では予想される変化について具体的に解説します。
長期的な人材の確保が可能になる
従来の技能実習制度と特定技能制度は、在留資格の移行ハードルが高いという課題を抱えていました。
そのため、実習終了後、受入機関は実習生を特定技能としてそのまま雇用し続けることが困難であるだけでなく、実習生として日本で働いていた外国人も、日本で長期的に働くことができずにいました。
育成就労は将来的に特定技能1号に在留資格を移行させることを前提とした制度です。産業分野も特定技能1号に準じた分野が設定されます。
これにより、技能実習制度が廃止され、特定技能1号になることを見越した制度である育成就労がスタートすることで、受入企業はより長期的に人材を確保できるようになることが期待できます。
育成就労では転籍が可能になる
新制度「育成就労」の下では一定の条件を見たせば転籍が認められます。これによって外国人材の人権保護がより強化されるようになるだけでなく、日本国内での外国人材の流動性が高まることが期待できます。
技能実習制度では、本人の意向による転籍は原則認められていませんでした。
その結果、実習生とのトラブルに発展するケースも存在しました。
転籍を認めることで、こうしたトラブルを未然に防ぎ、外国人材にとって働きやすい環境整備が促進されるでしょう。
転籍支援の在り方の変化
日本の雇用制度や習慣に慣れていない外国人材は、転職すべきであっても新しい職場を見つけることが難しい人も多いです。
今回の制度の大幅な改正により、今後外国人材の受入企業は、外国人本人がその能力を十分に発揮できるよう、職場環境を整備すると同時に、解雇等で離職する場合は再就職のための援助に努めるべきとされています。
そのため改正法の施行後は受入機関はハローワークや登録支援機関と連携し、転籍支援の実施が求められるでしょう。
また、転籍前の受入機関が負担した外国人材を受け入れるための初期費用負担等については、正当な補填が受けられるよう配慮されるため、転籍されることによる損失も抑えられるでしょう。
雇用状況に関する各種届出内容と頻度
外国人材を雇用する事業主は、在留資格が「外交」または「公用」、もしくは「特別永住者」以外の人材を雇用または離職させる際に、ハローワークへ届け出なければなりません。
従来の制度下では、届出書類の作成や手続きに手間がかかるといった課題も存在しましたが、今後は手続きの簡略化や頻度の見直しが進められることが考えられます。
受け入れコストが上がる
外国人材の中には仲介業者などに支払う費用等を支払うために、借金をする人も少なくありません。
こうした外国人の金銭的な負担を軽減し、外国人と受入機関双方が適正に雇用に関する負担を分担できるよう、今後送出機関・受入機関についての情報の透明性の向上等、適正な仕組みづくりが進められます。
その結果、従来よりも受入機関が負担するコストが上がることが予想されます。
関係各機関の連携が強化される
受入機関、送出機関や、監理支援機関・登録支援機関、ハローワーク等外国人材関連の各機関の連携が、今後はより一層強化されます。
これによって双方がより独立性・中立性を確保できるようになり、外国人材の人権の保護が促進されます。
それぞれの制度の概要まとめ
| 技能実習 | 育成就労 | 特定技能1号 | 特定技能2号 | |
|---|---|---|---|---|
| 制度の主旨 | 人材育成を通した 技能移転による 国際貢献。 |
特定技能1号水準の 技能と日本語能力を 有する人材を 育成するとともに、 当該産業分野に おける人材の確保。 |
特に人手不足が 深刻化しているとされる 当該産業分野における、 即戦力となる 人材の確保。 |
特に人手不足が 深刻化しているとされる 当該産業分野における、 熟練した技能を 有する人材の確保。 |
| 在留期間 | 技能実習3号まで 移行したとして、 最長5年。 |
3年(特定技能1号の 試験不合格となった場合は 再受験のために 最長1年の在留継続が 認められる) |
通算で上限5年とし、 1年・6カ月・4カ月ごとに更新 |
3年・1年・6カ月ごとに更新 (在留資格更新の上限はなし) |
| 技能水準 | 要件なし。 | 要件なし。 | 産業分野に 属する相当程度の知識 又は経験を必要とする 技能を有していることを 試験等で確認。 |
産業分野に 属する熟練した技能を 有していることを 試験等で確認。 |
| 日本語水準 | 要件なし。 | 日本語能力A1相当以上 あるいは日本語能力試験N5以上の能力、 認定日本語教育機関等による 日本語講習の受講によって これに相当する日本語能力を 身につけること。 |
日本語能力A2相当以上 あるいは日本語能力試験N4以上。 |
試験等での確認は不要。 (産業分野による例外あり) |
| 対応職種・業種 | 91職種168作業 (2025年3月7日時点) |
特定技能1号の 受け入れ分野に準じ、16分野。 |
16分野 | 11分野 |
| 転職の可否 | 不可。 | 条件を満たせば可能。 | 可能。 | 可能。 |
| 外国人材や受け入れ機関を サポートする団体 |
監理団体 | 監理支援機関 | 登録支援機関 | |
| 永住権の取得 | 不可。 | 不可 | 不可 | 条件を満たせば可能になる 可能性がある。 |
| 家族の帯同 | 不可。 | 不可 | 不可 | 条件を満たせば可能。 |
永住権許可制度の見直し
さまざまな在留資格がある中で、活動・在留期間の制限がなくなるなど、日本での生活が日本国籍を取得した人にかなり近くなることから、「永住者」は特別な在留資格とされています。
しかし少数ではありますが、永住者の在留資格取得者の中には日本で暮らす上で果たさなければならない公的義務を故意に履行しないなど、悪質な外国人も存在します。
こうした外国人によるトラブルを防ぐために、2024年には永住権に関する法律が一部改正となりました。
この法改正によって永住者の在留資格を取得していても、事実関係の慎重な調査の結果、故意に税金や社会保険料を収めていなかったことが発覚した場合、在留資格を取り消すことができるようになりました。
今後も永住権許可制度が見直される可能性はあるため、永住権を取得した外国人を雇用する場合は注意が必要です。
技術・人文知識・国際業務の役割
「技術・人文知識・国際業務」もまた、現在国内で取得者数が増えている在留資格であり、日本で働く外国人の中でも取得者数の多い在留資格です。
そのため、今後見直しが進められることが予想されます。
在留資格の取得目的や認められる活動範囲が明確化されると同時に、取得条件の厳格化が進められる可能性があります。
留学生の活用も今後進められる見通し
留学生は、日本の経済・産業の発展に欠かせない存在です。
しかし現状は、日本で学ぶ留学生に対する進路希望調査では、卒業後日本で働きたいと考える留学生が約65%に上る一方で、実際に日本で就職するのは卒業生の35%程度となっています。
政府はこうした留学生の日本での就職ハードルを低くし、卒業生の日本就職率を50%に引き上げることや、留学生を現行は2033年までに留学生40万人受入れを目標(30万人計画は旧目標)呼び込むことを目標としており、今後日本での留学生の活用も進められることが予想されます。
その他の就労可能な在留資格について
在留資格の中には他にも「経営・管理」「高度専門職」「技能」など、就労を目的としたものが存在し、「経営・管理」など取得要件が緩和されたものもあります。
人手不足が深刻化している今、特定技能や育成就労だけでなく、あらゆる就労を目的とした在留資格は今後取得要件や活動範囲が見直されることが予想されます。
まとめ
今後も日本では、育成就労や特定技能だけでなく、外国人の雇用に関するさまざまな制度や法律の見直しが進められることが予想されます。
外国人を雇用する企業は、制度の変更や法改正に柔軟に対応できるよう、常に最新の情報をチェックするようにしましょう。







