技能実習生制度の見直しや特定技能外国人制度の整備が進められる中、現在日本国内でもベトナム人は急増しており、中国、韓国に次ぐ国となっています。
日本とベトナムでは所得水準が異なるため日本で働くことを望むベトナム人も少なくない一方で、日本の企業経営者の中には自社の人材不足をベトナム人で解消したいと考えている人も増えています。
ベトナムは若手人材が確保しやすい上に、日本人との国民性の相性もいい国です。
この記事ではベトナム人の国民性を解説・日本人との比較をした上で雇用する際のポイントを解説します。
目次
ベトナム社会主義共和国の基本情報
以下ではベトナム人の国民性や実際に雇用する際のポイントを把握する上で重要な、ベトナム社会主義共和国の歴史、食事事情、経済について解説していきます。
ベトナムの歴史
南北1650kmに広がる、縦に長い国であるベトナムは、中国の影響を受けて発展した北部、独自の文化を形成しながら発展したチャンパ王国、現代のカンボジア・クメール王朝の影響を受けて発展した南部でそれぞれのルーツを持っています。
それぞれ別のルーツを持つ地域が統一され、今のベトナムの原型になったのが1830年代です。しかし統一後間もなく欧米列強による侵攻を受け、最終的にはフランスから植民地支配を受けることになります。
植民地支配下でも国内で反仏運動が盛んに行われました。そして第二次世界大戦後にフランスからの独立を果たし、ベトナム民主共和国を樹立しますが、これをきっかけに「北ベトナム」と「南ベトナム」への分断が始まります。
社会主義系の北ベトナムと資本主義系の南ベトナムによる内戦は、ソ連とアメリカによる介入戦争に発展し10年以上も続きました。これが一般的に「ベトナム戦争」と呼ばれるものです。
ベトナム戦争は1975年に終結し、現代のベトナム社会主義共和国の樹立に至りました。
ベトナムのライフスタイル
朝早くから活動し始めるのがベトナム的なライフスタイルの特徴です。ベトナムの市場は朝6時に開き、市場が開くタイミングで各家庭がその日一日分の食材を買いに行くのが一般的な朝のルーティンとなっています。
そして朝早くから活動し始めた分、昼寝の習慣が一般的であるということも日本とは大きく異なる点です。朝早く起きた分睡眠時間を補う必要がある、昼間の暑い時間帯に活動するのは非効率だといった点が昼寝文化と関係しているのではないかと考えられます。
ベトナムの食事
中国文化とフランス文化の影響を強く受けているベトナム料理は、野菜をたくさん使ったものが豊富なだけでなく、主食として米を使うことも多いです。そのため日本人にも親しみやすく人気があります。
宗教的なタブーを持つ人が少ないため、食材に配慮する必要もありません。
フランスによる植民地支配の影響により、ベトナムでは独自のカフェ文化が発展しました。練乳入りの非常に甘いベトナムコーヒーは観光客だけでなくベトナム人も愛飲するドリンクです。
ベトナムの経済
少子高齢化が進行している日本とは対照的に、ベトナムは生産年齢人口の割合が高く、若手人材が確保しやすい国です。2018年の人口構成を見ると、総人口9,554万人のうち生産年齢人口が約70%を占めています。
また、ベトナム人の平均所得はここ10年で3倍にまで成長しました。都市部と農村部での格差はまだまだ存在しますが、こうした差も縮小傾向にあります。
ベトナムは社会主義国家ではありますが、ドイモイ政策など積極的に資本主義の風潮を取り入れる姿勢も目立ち、現在では東南アジアの有力発展途上国として世界各国から注目を集めています。
ベトナム人の特徴
次にベトナム人の特徴について解説します。
勤勉で向上心の高い人が多い
一般的にベトナム人は勤勉で温厚な人が多いと言われています。儒教や仏教的価値観を持っている人が多いことが理由として考えられます。
こうした国民性は日本人と共通しているため、日本人との相性がいい人も多いです。
職人気質な人が多いのもベトナム人の特徴です。繊細な伝統工芸を作り上げる器用さを活かして日本で活躍する人もいます。
向上心が旺盛な傾向があるため、日本語や英語など母国語以外の言語での高い語学スキルがある人も少なくありません。
家族や血縁のつながりを重視する傾向がある
儒教的な影響を受けているため、家族や血縁のつながりを日本人よりも重視する傾向があります。「家族や血縁のコネを利用してのし上がる」といった考え方も日本人よりも強いです。
また、ベトナムでは女性が一家の大黒柱的役割をになっていることも珍しくありません。ベトナム人女性は勤勉でしっかりものな面があるため、ベトナムでは女性の管理職登用率も高いです。
中長期的な計画よりも「今どうするか」を重視する
日本人と比較して近親眼的な傾向があり、短期的な視点で「今どうするか」を考え、行動するところがベトナム人にはあります。こうした国民性を「計画性が足りない」「短絡的」と感じてしまう日本人は多いかもしれません。
植民地支配や戦争など、先を見通すことが困難な状況を長く過ごしてきたことが影響しているのではないかと考えられます。
一概に「ベトナム人」とは言えない場合も多い
南北に長く広がる国土を持つベトナムは、北部と南部で気候にかなり差があります。北部は亜熱帯性気候に属し日本と同じように四季があるのに対し、南部は熱帯性気候に属すため年間平均気温が32度と一年を通して暑い気候が続きます。
そのため北部出身者は貯蓄を好む傾向があるのに対し、南部出身者は楽天的など、一概に「ベトナム人」とは括れない場合もあります。
また、北部は政治都市であり、歴史的な建造物が多く、社会主義的な風潮が感じられる一方で、南部は経済の中心地として高層ビルが立ち並ぶ資本主義的な風潮を感じられるといった違いがあります。
日本人の国民性と似ているところ
上記でベトナム人の国民性を解説しましたが、以下では特に日本人の国民性と似ている点を紹介します。
勤勉で温厚なところは日本人との親和性が高い
ベトナム人の勤勉で温厚なところは日本人と非常に親和性が高く、相性がいいと感じる人はベトナム・日本両方に多いようです。受け持った仕事はしっかりとこなすところがあるため、日本企業の間でもベトナム人は特に人気があります。
米食なので日本食との相性がいい
稲作が盛んな国であるため、ベトナムも日本と同様米食文化の国です。米食であるだけでなく野菜が多い点も日本人からベトナム料理が人気を集めている理由の一つです。
調味料などの違いはあるものの、米食文化が共通することによりベトナム人は他の外国人よりも一緒に食事をしやすいかもしれません。
実はシャイな傾向がある
特に南部は熱帯性気候に属するため、開放的で楽天的な人が多い傾向がありますが、実はベトナム人には全体的にシャイな人が多いという特徴があります。
日本人と同様、ベトナム人には恥ずかしがり屋な面があるため打ちとけるには少し時間がかかるかもしれません。しかし一度打ちとければ人懐っこいところもあるので、きちんと信頼関係を築くようにしましょう。
日本で働くベトナム人が増えている理由
現在日本で働くベトナム人が急増しています。
以下ではその背景について解説します。
日本とベトナムの関係が良好
まず、日本とベトナムとの国家間の関係が良好であることがベトナム人が増えている理由としてあげられます。
ベトナム国内の社会インフラ構築に際し、日本の経済援助・ODAが大きく貢献したことなどが良好な関係性を築いてきました。
さらにベトナムのテレビでは連日日本のニュースだけでなく、ドラマやアニメといったコンテンツも放送されています。このように日本の文化に触れる機会が日常の中に多いため、日本に対していい印象を抱いているベトナム人が多いのです。
また、日本のコンテンツに触れる機会が多いことは「日本語を勉強したい」という意欲を掻き立てる効果もあります。日本のアニメがきっかけで日本語を勉強し始めた外国人はベトナムに限らず世界各国にいます。
日本の給与水準がベトナムよりも高い
日本の給与水準がベトナムよりも高いこともベトナム人の若者が日本で働きたがる動機になります。ベトナムで同じ時間、同じ労働をするよりも日本でした方がたくさん稼げることから、日本で働きたいと考えるのです。
ただし、日本人とは異なりベトナム人は業務内容や諸費用をどうするのかや、報酬などお金の話を明確にしたがります。給与水準の高さに魅力を感じて日本に来たベトナム人を雇用する際にはそういった国民性を理解するようにしましょう。
ベトナム人を雇用するメリット4つ
ベトナム人は日本企業からの人気を集めていますが、逆に日本で働くことを望むベトナム人も多いです。
ベトナム人を雇用するメリットを4つご紹介します。
1.勤勉で親日的な人が多い
勤勉で温厚といった日本人と親和性の高い国民性であるだけでなく新日的な人が多いため、外国人の中でもベトナム人は特に一緒に働きやすいです。
教育水準も高く、受験の重視度合いは日本や中国、韓国と同レベルとも言われています。
2.若い人材を確保しやすい
ベトナムは総人口に対する若者の比率が非常に高い国です。少子高齢化が進み若者の数が急激に減少しつつある日本よりも、ベトナムの方が圧倒的に若手人材を確保しやすいと言えます。
若手人材の不足が叫ばれる日本企業にとって、ベトナムの労働力は非常に魅力的にうつることでしょう。技能実習生制度の見直しや特定技能外国人制度の整備によって、自社の未来を担う人材をベトナム人から探せるようになる可能性もあります。
3.ITスキルが高い人材が多い
新しい教育カリキュラムが取り入れられたことにより、ベトナムではIT分野のスキルが高い人が現在増えています。
また、ベトナムは発展途上国の中でも識字率が高い国でもあります。元々向上心が高い国民性である上に、学力水準が高く、高いスキルを持つベトナムの若者は、日本だけでなく世界各国の企業が注目しています。
4.宗教的タブーが少ない
日本人の多くは無宗教と言われていますが、ベトナムも無宗教の人が多い国です。ベトナム人の73%が特定の宗教を信仰していない無宗教と言われています。
食事や生活場面で宗教的タブーに配慮する必要がなく、ベトナム人は気軽に一緒に過ごせると感じる人も多いかもしれません。
ベトナム人を雇用する際に意識すべきポイント4つ
日本人との親和性が高く相性がいい傾向があるベトナム人ですが、やはり異なる文化・歴史を持つ人たちではあるため、実際に雇用する際には意識しなければならないポイントがあります。
ベトナム人を雇用する際には以下に紹介する4つのポイントを意識し、お互いに尊重しあえる関係を築くようにしましょう。
1.コミュニティを形成する傾向がある
恥ずかしがり屋な反面人懐っこいところもあるベトナム人は、大人数でこうどうすることを好みます。一人で過ごすよりも10人で集まりわいわいしゃべったり遊ぶ方を好むだけでなく、週末には友達と集まって過ごすこともあります。
一人で仕事をするのも嫌う傾向があり、周りに仲間がいない環境で働かせると離職する可能性があります。離職率を下げるためにも、賑やかな環境で楽しみながら働ける環境づくりが必要です。
2.日本とは異なる労働文化がある
ベトナム人の多くは朝型です。一般的にベトナムの始業時間は日本よりも早いと言われています。また、始業時間が早い分お昼休みは日本より長くとられていることが多いです。
そのためベトナム人の中には日本の労働時間の文化に慣れるのに時間がかかる人もいます。技能実習生・特定技能外国人としてベトナム人を雇用する際には労働文化が異なるということを常に意識するようにしましょう。
3.ベトナム人は給与を重視する
ベトナム人が仕事で重視するのは給与とキャリアであり、やりがいなどではありません。そういった点が日本人とは大きく異なります。
日本で働くベトナム人の転職理由で最も多いのは「給料の低さ」と「仕事内容がキャリアのギャップ」です。
年功序列的な日本の考え方もベトナム人には理解されないものと理解する必要があります。
「給料やキャリアに影響するのは成果やスキルのみ(年齢ややる気ではない)」
というスタンスで接しなければなりません。
さらにベトナム人に残業してもらうには割増賃金が必要です。ベトナム人は基本的に残業をせず、終業時間になったらすぐに帰宅します。
ベトナム国内でも「残業」はあり、割増賃金についての法律も存在しますが、「残業代で稼ぐ」という感覚がある人はあまり多くありません。
ベトナム人を残業させる場合はしっかりと残業代についての説明をするようにしましょう。「残業によるメリット」が理解できさえすれば意欲的に残業する人も多いです。
4.日本だけでなく中国や韓国もベトナム人材に注目している
若手人材を集めやすいベトナムに注目しているのは日本だけではありません。中国や韓国もベトナム人材を求めている国です。
また、ベトナム国内での平均所得はこの10年で約3倍も伸びました。
そのためベトナム人材を雇用したいのであれば、魅力的な労働条件を提示する必要があります。
まとめ
植民地支配や戦争、そして社会主義国家といった特徴があるベトナムですが、資本主義的な色合いも併せ持った国でもあります。日本人と国民性が似ているところも多いため、一緒に働きやすいと感じる経営者も多いです。
ベトナム人を雇用する際にはお互いの国民性を理解した上でお互いの文化・歴史を尊重し、信頼関係を築くよう心がけましょう。