【制度比較】特定技能と技能実習6つの違いとメリット・デメリット

【制度比較】特定技能と技能実習6つの違いとメリット・デメリット

ニュース・特集技能実習特定技能

外国人が日本に在留するためには、「在留資格」が必要となります。「在留資格」は、世の中では、たいてい「ビザ」と呼ばれています。実際のところ「在留資格」と「ビザ」は少々異なるものですが、理解しやすいように「在留資格」を「ビザ」と読みかえても問題ないと思います。
2023年1月現在、日本における在留資格は全部で29種類あります。大きく3つに区分すると、1つ目は、「働くことのできる就労系在留資格」、2つ目は、「働くことの出来ない在留資格」、3つ目は、「日本人との婚姻などによって得られる身分系在留資格」です。
今回のテーマにある「特定技能」も「技能実習」も在留資格の1つであり、1つ目の「働くことのできる就労系在留資格」に該当します。
在留資格にはそれぞれ要件があり、活動できる範囲や在留期間などが定められています。「特定技能」と「技能実習」は就労系の在留資格というカテゴリーは同じですが、在留資格の要件も異なっていますし、制度上の違いも多くみられます。
今回は、その相違点のうち6つに焦点を当ててお話を進めたいと思います。


外国人労働者の受け入れの検討を始めている方の中には、「技能実習」と「特定技能」は、ともに外国人労働者を受け入れるための在留資格ということはわかるけれども、実際は何が違うのかよくわからないと思っている方も多くいらっしゃるかもしれません。
この2つの在留資格は、実は、創設の背景や目的はまったく異なっています。まずは、そのお話から始めたいと思います。

在留資格創設の背景

「技能実習」の創設の背景

「技能実習」の起源は、1960年代に始まった日本企業による海外現地法人等の社員教育としての研修制度にあるといわれています。これは、「外国人研修生制度」と呼ばれ、現地事業所の生産性の向上や関連産業への社会貢献を目的としていました。
創設当時より技能実習制度は、発展途上国などへの国際貢献を目的としており、現在もその目的は変わっていません。それは、厚生労働大臣が示す現在の技能実習制度の基本理念をみてもわかります。

「我が国が先進国としての役割を果たしつつ、国際社会と調和ある発展を図っていくため、開発途上国等へ技能や技術、知識の移転を図り、経済発展を担う『人づくり』に協力すること」

また、技能実習制度は、労働力を受け入れる制度ではないとも明示しています。

「技能実習」が本来の目的と実態が乖離したのはなぜか

それでは、なぜ「国際貢献」を目的としている技能実習制度が外国人労働者を受け入れるための制度になったのでしょうか。
1970年代、日本の大手企業が海外の研修生を受け入れる一方で、ほとんどの中小企業は、3K(きつい、汚い、危険)の職場が多く、賃金も低かったため若手の雇用確保の問題をかかえていました。そこで、人材不足の解消として着目したのが「外国人研修生制度」です。
1986年のバブル景気により、人手不足はより深刻になりました。また、産業界からの要請もあり、1990年に法務省告示により「団体監理型」の技能実習生の受け入れが認められ、1993年には、「技術等の移転を図り、その国の経済発展を担う人材育成を目的」とした「技能実習制度」が始まりました。
海外研修生を受け入れる制度の目的をそのままに、中小企業の人手不足を解消しようと制度を利用したため、目的と現状が大きく乖離することになりました。現在もこれが原因で、多くの課題が生じています。

人材不足解消のために創設された「特定技能」

「特定技能」は、2019年4月に日本における人手不足解消のために創設された大変新しい在留資格です。これにより、今まで単純労働とみなされ外国人の受け入れが認められなかった分野にも外国人の受け入れが可能となりました。
しかし、どのような企業でも「特定技能」をもつ外国人の受け入れができるかというと、そうではありません。
この在留資格を使って外国人を受け入れられるのは、現時点では、国が「特定産業分野」に指定する14分野に限定されています。
「特定産業分野」とは、“生産性の向上や国内の人材確保のための取り組みを行ってもなお深刻な人材不足であり、当該分野の存続のために外国人材が必要と認められる分野”のことをいいます。
2023年2月現在、「特定技能」の受け入れ対象となる14分野は、次のとおりです。

介護、ビルクリーニング、製造3分野(素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業)、建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業

ここでは、「技能実習」と「特定技能」が全く異なる背景や目的をもって生まれたことをお話しました。それでは、次に在留資格の要件における、3つの相違点について説明したいと思います。

在留資格の要件からみた相違点

在留資格が異なれば当然求められる要件も異なります。
次の表は、「技能実習」と「特定技能」の在留資格の要件を比較したものです。技能実習は1号から3号まで、特定技能は1号と2号があり、「1号」とついているのは、「一番初めに取得できる在留資格」を意味します。また、各分野により更に細かい基準などが設定されていることもありますが、ここでは一般化して比較しています。
この表から、受入れ外国人の「日本語能力」と「就労期間」、「転職」における相違点をお話したいと思います。

表1.「技能実習」と「特定技能」の要件比較
  「技能実習1号」 「特定技能1号」
日本語能力の要件 不問 ※1 日本語能力試験N4 又は
国際交流基金日本語基礎テスト
A2合格 ※2
就労期間 最長5年 最長5年
転職 ×
家族帯同 × ×
雇用形態 直接 直接 ※3
報酬 日本人と同等以上
(最低賃金以上)
日本人と同等以上
採用方法 監理団体を通す 指定なし
人数制限 常勤職員の総数に
応じた人数枠
制限なし ※4
(参考:「外国人雇用のはじめの一歩」 矢澤めぐみ著P8、P57)
※1 介護分野では日本語能力試験N4程度が要件となっています。
※2 介護分野では介護日本語評価試験の合格も必要です。
※3 農業・漁業分野は派遣形態も認められます。
※4 介護・建設分野は人数制限があります。

来日時の日本語能力について

外国生活において言葉の壁は避けては通れません。言葉による意思疎通ができないことなどから、その組織から孤立してしまうことも考えられます。仕事を覚える上でも言葉はとても大切です。ここでは、受入れ外国人に求められる日本語能力についてお話したいと思います。

「技能実習1号」に求められる日本語能力

上の表からもわかる通り、「技能実習」においては日本語能力の要件は「不問」となっています。技能実習生が日本に入国する時は、介護など一部の職種をのぞいては、日本語レベルは問われません。 それでは、まったく日本語を知らずに来日する技能実習生はいるのでしょうか。 一般的に技能実習生は、「入国前講習」と呼ばれる講習を受講してから来日します。 受講内容は、①日本語、②日本の生活に関する知識、③日本での円滑な技能習得に必要な知識となります。 受講期間は、1ケ月以上、かつ160時間以上と決められています。しかし、実際は送出機関や準備機関により受講内容や期間が大きく異なっていることから、来日前の技能実習生の日本語レベルは一様ではありません。 また入国後は、監理団体から、基本的な日本語や日本での生活ルールを学びます。しかし、残念ながら、これらの講習だけでは日本において不自由なく生活がおくれる日本語レベルに達することは期待できません。 実質的には配属後も技能実習生に対し継続的な支援が必要であり、実習生自らの努力も必要となります。

「特定技能1号」に求められる日本語能力

「特定技能」は、はじめから即戦力となることが期待されることから、“日本での生活および従事しようとしている業務に必要な日本語能力”が求められます。
日本語能力を証明するためには、日本語の試験に合格することが方法の一つとなります。
日本語の試験として認められているものは、次のいずれかです。

・日本語能力試験(JLPT)
・国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)

「日本語能力試験(JLPT)」は5段階に分かれているのですが、「特定技能1号」の要件を満たすには、下から2番めの「N4」に合格する必要があります。N4の目安は「基本的な日本語を理解することができる」となります。
「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」は、2019年に新設された新しい試験です。
目的は「就労のために来日する外国人が遭遇する生活場面でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定し、『ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力』があるかどうかを判定すること」となっています。「特定技能1号」の要件を満たすには、6段階のうち下から2番めの「A2」に合格する必要があります。
また、介護分野においては、別の試験にも合格する必要があることからも、分野によってはさらに高いレベルを求められることがあります。

「特定技能」に関連する日本語試験ついて知りたい方は、次のサイトをご参照ください。

なお、「技能実習2号」「技能実習3号」の在留資格をもつ技能実習生が、「特定技能1号」の在留資格に変更する場合は、上記の試験に合格していなくても、“技能実習2号を良好に修了”した証明書があれば良いとされています。

“技能実習2号を良好に修了”したとは、技能実習を2年10ケ月以上修了していることと、次の①か②が必要です。

  1. 技能検定3級又はこれに相当する技能実習評価試験の合格
  2. 技能実習生に関する評価調書
※評価調書とは、受入れ企業などにより技能実習生の実習中の業務態度や出勤状況、生活状況などを記載した書面のこと

在留期間について

せっかく外国人を雇用したのに3ケ月で国に帰ってしまった・・・というのは大変残念なことです。できるだけ長く働いてもらいたいというのが雇用主の思いであり、来日した外国人にとってもキャリア形成やスキルアップのためにはある程度の年数が必要です。
上の表では、「技能実習」と「特定技能」の在留期間は、ともに最長5年となっています。
ここでは2つの在留資格は必ず5年の滞在期間が保障されるのか、またそれ以上の滞在は絶対に認められないのかについてお話します。

「技能実習」の最長5年は条件付き

実際、「技能実習」は、「1号」、「2号」、「3号」の3つの在留資格に分けられます。来日から1年目は「1号」、来日より2年目・3年目は「2号」、来日より4年目・5年目は「3号」と、順にレベルが上がっていきます。これは、時間の経過とともに自動的に移行するのではなく、筆記試験や実技試験に合格する必要があります。
「技能実習」の在留期間が最長5年といわれるのは、「1号」から「3号」までの実習を終えた期間を指しています。5年間の実習を終えるには、技能実習生の努力も必要ですが、受入れ企業や監理団体が所定の要件を満たし、「優良」と認定されていることも必要です。つまり、「優良(一般監理事業)」と認定を受けた監理団体のみ「技能実習3号」の受け入れが可能となります。

特定技能の「1号」は、最長5年

「特定技能」は、技能のレベルに応じ「1号」と「2号」に分かれます。「特定技能1号」は、“相当程度の知識や経験を必要とする技能を要する業務に従事する”ことが求められ、通算して最長5年までの在留が認められます。
また「特定技能2号」は、“熟練した技能”が求められ、要件を満たす限りは在留期間を何度でも更新できます。
したがって、「特定技能」の在留期間が5年といわれているのは、「特定技能1号」のことを指しており、「2号」への移行が認められれば、在留期間の上限はなくなります。
現在、建設分野と造船・舶用工業分野だけでしか「特定技能2号」の取得が認められていませんが、将来的には「特定技能2号」を取得できる分野が追加される可能性もありますので、期待したいところです。

5年の活動後は、帰国を余儀なくされるのか

在留期間の上限が5年と決まっている「技能実習」と「特定技能1号」では、その期間が満了すれば、必ず帰国しなければならないのでしょうか。

結論からいいますと、必ず帰国を余儀なくされるわけではありません。
「技能実習」の場合は、「特定技能1号」に移行すれば、さらに5年間の雇用につなげていくことができます。
「技能実習」から「特定技能」へ資格変更ができるのは、「技能実習2号」と「技能実習3号」の在留資格をもつ外国人となります。(「技能実習1号」は認められていません。)
したがって、「技能実習2号」である技能実習3年の修了後に「特定技能」に移行すればトータル8年の雇用、「技能実習3号」である技能実習5年後に移行する場合は、最長10年の雇用が可能となります。ただし、特定技能に移行できない職種もありますので注意が必要です。
また、「特定技能1号」の場合は、「特定技能2号」への移行の他、申請者本人が大学を卒業しているなど、他の在留資格の要件を満たす場合は、在留資格を変更し、就労し続けることが可能です。

転職について

雇用主の立場からすると、せっかく時間とお金をかけて育てた人材に転職してほしくないというのが正直な気持ちでしょう。「技能実習」と「特定技能」は、他の就労系の在留資格に比べ、転職の自由度がかなり低いため、その一面においては、雇用主に有利な状況にあるといえます。

技能実習における「転職」

技能実習生は、表1の通り、原則転職は認められていません。技能実習生として日本で働く場合は、契約を交わした受入れ企業で働く場合のみ、日本に滞在することが認められています。したがって、仕事への不満が募ったとしても転職ができないだけではなく、母国へ帰国しなければなりません。
また、絶対に転職ができないということではなく、「技能実習1号」から「技能実習2号」へ移行する場合は転職は認められていませんが、「技能実習2号」から「技能実習3号」へ移行する場合は、母国へ一時帰国した後、転職することが可能です。
その他、受入れ企業が倒産するなどやむを得ない状況が発生した場合は、実習生が希望すれば同一業種の他の企業に「転籍」することができます。

特定技能における「転職」

特定技能においては、転職が認められていますが、それほど転職の自由度が高いとは言えません。「特定技能1号」は“相当程度の知識又は経験を必要とする技能”を必要とする業務に従事することが求められますので、同じ特定産業分野内であっても、必要な技能を備えていることが証明できなければ転職することはできません。基本的には、同一の業務区分内であるか、技能試験によってその技能水準の共通性が確認されている業務区分間において転職することが可能だといえます。

また、自己理由で退職した場合、就職活動中にアルバイトができません。多くの技能実習生や特定技能外国人は、稼いだお金を自国に送金しているため、転職活動中に無収入になると困窮してしまうリスクがあります。
雇用主の方々には、このような不幸な状況を招かないように、大切な外国人人材が、そもそも転職したいと思わないような良好な職場環境の整備に努めていただきたいと思います。

よく目にするキーワードからみえる相違点

ここからは「技能実習」と「特定技能」というワードとともに、よく目にするキーワードに焦点をあてその違いについてご説明したいと思います。
まずは、「監理団体」と「登録支援機関」についてです。「監理団体」は、技能実習生のサポート機関であり、「登録支援機関」は、特定技能外国人のサポート機関となります。
それでは、この二つのサポート機関はどのような点において異なっているのでしょうか。

「監理団体」と「登録支援機関」の違いとは?

技能実習には、「企業単独型技能実習」と「監理団体型技能実習」があります。令和3年度は「監理団体型技能実習」が約98%を占めていることからも、ほとんどの技能実習制度は「監理団体型」をとっていることがわかります。
この「監理団体型技能実習」においては、監理団体を通してしか技能実習生を受け入れることができません。
「監理団体」は非営利団体であり、技能実習生と受入れ企業(事業所)の両者へ包括的なサポートを行います。具体的には、受入れ企業の依頼を受け、技能実習生の募集から受け入れまでの手続き、現地での面接、技能実習生が来日した後には、基本的な日本語や日本生活のルールの講習するなどがあります。また、受け入れ後は受入れ企業が適正な技能実習を行っているかどうか、監査や指導なども行います。

一方、「登録支援機関」は、本来、受入れ企業が行うべき特定技能外国人への支援を、受入れ機関からの委託を受けてその一部や全部を請負う団体です。
具体的には、特定技能1号外国人が、日本在留中に安定的かつ、円滑に活動を行うことができるようにするために職業生活や日常生活、社会生活において様々なサポートを行います。
採用から監査まで包括的なサポートを行う「監理団体」は、技能実習においては絶対的な存在ですが、特定技能においては「登録支援機関」はそうではありません。すべての支援を受入れ機関でまかなうことも可能ですが、支援計画の作成や特定技能外国人への細やかなサポートの必要性を考えると、登録支援機関を利用することが現実的であると思われます。
また、登録支援機関は、監理団体とは違い、受入れ機関へ監査や指導は行いません。「登録支援機関」は、営利目的での団体でも支援事業を行なうことができますので、監理団体として登録している団体より数が多いのも特徴の1つです。

「技能実習計画」と「特定技能外国人支援計画」の違い

技能実習制度において中心的な役割を果たすのが「技能実習計画」です。
これは、技能実習の実施に関する計画書のことで、技能実習生ごとに作成し、技能実習開始前に認定申請を行う必要があります。この技能実習計画にしたがって技能実習を行わない場合は、改善命令や実習認定の取り消しの対象になります。

技能実習計画書を作成するにあたり、「技能実習の目標」と「習得する技能」などを明確にする必要があります。
「技能実習の目標」ですが、技能実習を継続するには必ず検定試験や技能実習評価試験の実務と学科試験に合格をしなければいけないことから、合格に必要な技能や知識をどのように身につけて行くかなどが必要です。
「習得する技能」については、同一作業の反復のみによって習得できるものではないことなどが求められます。

厚生労働省が「技能実習計画書」のモデルを示していますので、ご参考ください。

次に、特定技能外国人支援計画についてです。

特定技能外国人は、必ずしも日本の生活に慣れているわけではありません。受入れ外国人が、安定的かつ円滑に日本での活動を行えるように、日常生活や職業生活、社会生活における支援体制を整えることも受入れ企業に求められる基準の一つとなっています。
また、体制を整えるだけでは不十分で、どのように実施していくのかを計画書にまとめて入管へ申請する際の資料として添付する必要があります。
この計画書を「1号特定技能外国人支援計画書」といいます。この計画書は、特定技能外国人が十分に理解できる言語によって作成し、内容を理解した後、署名をしてもらう必要があります。

この「特定技能外国人支援計画書」に記載し、提供しなければなければならない支援内容は次の通りです。

  • 事前のガイダンスの提供
  • 出入国する際の送迎
  • 適切な住居の確保に関する支援生活、生活に必要な契約に関する支援
  • 生活オリエンテーションの実施
  • 日本語学習の機会の提供
  • 相談や苦情の対応方法
  • 日本人との交流促進に関する支援
  • 非自発的離職時(労働者の責めに帰すべき理由によらない退職)の転職支援
  • 定期的な面談の開催、行政機関への通報

受入れ企業(事業所)が実際に支援計画を立て、1号特定技能外国人が理解できる言語で支援を実施していくには、大変なコストや相当の労力が必要となります。したがって、特定技能制度においては、「登録支援機関」に外部委託することが認められています。

まとめ(メリット・デメリット)

まとめ(メリット・デメリット)

ここでは、「1.在留資格の創設の背景」、在留資格の要件から、「2.来日時の日本能力」、「3.在留期間」、「4.転職」について、またよく目にするキーワードから、「5.監理団体と登録支援機関の違い」、「6.技能実習計画と特定技能外国人支援計画との違い」の6つの相違点についてお話してきました。

最後にまとめとして、技能実習制度と特定技能制度に関連するデメリットとメリットをお話したいと思います。まず、2つの制度のメリットは、日本の人材不足の一助を担ってくれる点にあります。在留期限はありますが、その間は安定した人材の確保が期待できます。また、海外より意識の高い、優秀な人材が入ることにより、これまでの組織を活性化させる効果もあるのではないかと思われます。

デメリットは、費用や手間がかかるということです。よくある思い違いですが、2つの制度は海外から安い労働力を入れる制度ではありません。日本人と同等もしくはそれ以上の給与の支払いが必要な上に、受け入れ時から制度を利用し続ける間は、日本人を雇う以上の経費が発生し、また指定団体への加入や定期的な届出などさまざまな義務や事務上の手間が発生します。また、文化の違いや言葉の壁によるトラブルの発生なども考えられます。

次に、「技能実習」と「特定技能」を比べた場合のメリットとデメリットですが、「特定技能」は、即戦力となる人材を対象としているため、日本語能力や技能の知識がある程度担保されているため、比較的早い段階で日本人と同じ仕事をしてもらえると期待できます。ただし、特定技能外国人を受け入れられる分野が現在のところ14分野であり、受入れ企業自体にも高い基準が求められるため、制度そのものを利用できる企業が限定されているのが現状です。
反面、「技能実習」は、「特定技能」に比べ、広い範囲の職種で外国人の受け入れが認められ、受入れ企業に求められる基準もそれほど高くありません。しかし、技能実習生の来日時の日本語能力を問わない等、受け入れる外国人の能力にばらつきが大きいため、人材育成に一定の時間を要すことが考えられます。
いずれにしても、受入れ企業側だけのデメリットやメリットを考えるのではなく、日本で働きたいと望む外国人が日本に来て良かったと思ってもらえるような労働環境を整えていくことが、曳いては日本の大きな財産となり、真の人材不足の緩和、日本社会の活性化に繋がっていくことを忘れないように頂きたいと思います。

この記事を書いたライター
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外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。