電気・電子情報関連産業業界で特定技能外国人を採用する方法

電気・電子情報関連産業業界で特定技能外国人を採用する方法

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特定技能「電気・電子情報関連業」とは

特定技能「電気・電子情報関連業」とは

少子高齢化の影響のために人手不足が深刻化しています。
なかでも製造業の人材不足は特に深刻であり、このままでは業務の遂行に大きな影響が出るため、即戦力の外国人が活躍できるように在留資格「特定技能」が導入されました。
2022年5月には、より現場の実態に沿った運用をできるようにするため、素形材産業分野、産業機械製造業分野、電気・電子情報関連産業分野の「製造3分野」が統合されて、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」と1つになりました。
また業務区分が19区分となっており複雑でしたが、3区分に統合されました。

今回は製造3分野で活躍できるこの特定技能の中で、電気・電子情報関連産業にフォーカスして解説します。

「電気・電子情報関連業界」の現状

人手不足

製造業全般が人手不足に悩まされていますが、電気・電子情報関連の分野も例外ではありません。2023年の全職種の有効求人倍率が1.3倍程度であるのに対し、製造業全体の有効求人倍率は約2倍となっています。また電気・電子情報関連の分野では、プラスチック製品・製造工が約4倍という異常値をつけています。
今後、ますます需要が増えていくため、早急な人材の確保が求められていますが、将来的には6万人近い人手不足に陥ると推測されています。

技能実習「製造業」

国内産業で、外国人労働者を最も多く受け入れている業界は、製造業です。
ですが技能実習はあくまで、「日本の技術を教える国際貢献」であるため、定められている期間以上は働くことができません。
ですが母国に比べ、高給を得ることができる日本で働き続けたいという若者が多く、不法滞在者になってしまうものも多くいました。
実際、製造業の技能実習生が不法滞在者になることが社会問題になっていました。
ですが特定技能がスタートしたため、さらに5年間働くことができるようになり、この問題は解消されつつあります。即戦力を確保したい思いもありましたが、不法就労者を減らしたい思いからも新設された背景があります。

特定技能「電気・電子情報関連産業」で従事できる業務※

令和4年8月30日の閣議決定で、従事できる業務区分は「機械金属加工」「電気電子機器組立て」「金属表面処理」の3区分になりました。詳しくは経済産業省の「製造業における特定技能外国人材の受入れについて」をご参照ください。
詳細な内訳は以下の通りです。
①機械金属加工

  • 鋳造
  • ダイカスト
  • 金属プレス加工
  • 工場板金
  • 鍛造
  • 鉄工
  • 機械加工
  • 仕上げ
  • プラスチック成形
  • 溶接
  • 塗装
  • 電気機器組立て
  • 機械検査
  • 機械保全
  • 工業包装

②電気電子機器組立て

  • 機械加工
  • 仕上げ
  • プラスチック成形
  • 電気機器組立て
  • 電子機器組立て
  • プリント配線板製造
  • 機械検査
  • 機械保全
  • 工業包装

③金属表面処理

  • めっき
  • アルミニウム陽極酸化処理

雇用形態・報酬

雇用形態・報酬

フルタイムの直接雇用のみ許可されています。
農業などの一部業種では派遣雇用が認められていますが(農閑期があるため)、電気・電子情報関連産業では直接雇用以外認められていません。

また報酬は日本人と同等以上を支払う必要があります。
能力で差をつけることは問題ありません。ですが「外国人である」ことを理由に低賃金にすることは許されません。

雇用期間

在留期間は通算5年です。
「通算」ですので2年働き、1年間帰国するなら、日本に再入国後3年働くことができます。

受け入れ人数

技能実習の場合と違って、特定技能では介護と建築以外では、会社ごとの受け入れ人数は決まっていません。

雇用するためにかかる費用

特定技能外国人の雇用のためには、雇用前・雇用後でそれぞれ費用がかかります。

雇用前にかかる費用

送り出し機関への手数料:20~40万円
海外から呼び寄せる場合にはこれくらいかかり、呼び寄せる国によって金額が前後します。
人材紹介会社への手数料:30〜90万円
年収の10〜30%がかかります。上記金額は年収300万円の場合の金額です。
在留資格申請の委託費:10~20万円

雇用後にかかる費用

登録支援機関への支援委託費:年間24~36万円
一人当たり月2~3万円の計算です。
在留資格更新申請に関する委託費:5万円〜15万円

特定技能1号「電気・電子情報関連産業」の取得方法

特定技能の取得方法は①試験にパスする、②技能実習から移行する、以上2つになります。
この章では、それぞれの方法について、順番に解説していきます。

特定技能1号「電気・電子情報関連産業」の取得方法

「特定技能評価試験」に合格する

経済産業省の定める「製造分野特定技能1号評価試験」に、即戦力となる技能があることを証明するため、合格しなければなりません。受験資格は18歳以上であれば基本的には問題ありませんが、留学生のときに退学処分になっているなどの場合には、採用することができませんので注意が必要です。

試験は以下の19の区分で行われます。

  • 鋳造
  • 鍛造
  • ダイカスト
  • 機械加工
  • 金属プレス加工
  • 鉄工
  • 工場板金
  • めっき
  • アルミニウム陽極酸化処理
  • 仕上げ
  • 機械検査
  • 機械保全
  • 電子機器組立て
  • 電気機器組立て
  • プリント配線板製造
  • プラスチック成形
  • 塗装
  • 溶接
  • 工業包装

特定技能評価試験

学科試験と実技試験で構成されています。
コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式、ペーパーテスト方式で今後は実技試験で制作などを行うことが予定されています。
学科試験は65%以上、実技試験は60%以上取得が合格ラインです。
問題サンプル
電子機器組立てのサンプル問題は以下の通りです。素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野のポータルサイトより引用します。

引用開始

次の文章のうち、正しいものはA、誤っているものはBをマークしなさい。
問題1 消火器が置かれている場所の周りには、ものを置いていてもかまわない。
問題2 電子部品を取り扱うときは、アースバンドをつける必要はない。
問題3 第三角法は、通常、正面図・平面図・側面図の三面図で構成される。
問題4 デジタルマルチメータは、電流のみを測定する専用の計測器である。
問題5 表面実装用の電子部品のことを「SMD」という。

引用終わり

以上のような真偽式の問題、また選択式の問題が出題されます。
その他実施される評価試験の問題サンプルは、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野のポータルサイトに掲載されています。こちらも併せて参照ください。

日本語試験

日本語能力を測る試験には以下の2種類があります。

  • 国際交流基金日本語基礎テスト
  • 日本語能力試験

難易度はほぼ同じでどちらかに合格する必要があります。

国際交流基金日本語基礎テストでは、日本語での日常会話の力を測定します。
日本語能力試験には、レベルは5段階あります。最も易しいN5は日本語の基礎、N1では高いレベルの日本語力が問われます。この日本語能力試験を選んだ場合には、N4に合格することが必要です。N4では、日本語で日常会話がある程度できること、簡単な日本語の文章であれば読むことができるかをチェックされます。

技能実習2号を良好に修了

2つ目の方法は、技能実習2号からの移行です。
技能実習とは日本の技術を海外の人材に教える研修制度です。
どの技能実習生も特定技能に移行できるわけではなく、技能実習生のなかで技能に習熟しているもの、つまり技能実習生2号である場合には無試験で特定技能に移行可能です。

より詳細に説明すると、技能実習を2年10ヵ月以上で修了し、技能検定3級に合格している場合には移行できます。もしくは、技能検定3級相当の技能実習評価試験の実技試験に合格している場合も「良好に修了」扱いになり移行可能です。
また技能実習生に関する評価調書の書面がある場合にも「良好に修了」扱いになります。

特定技能外国人を受け入れるには

特定技能外国人を受け入れるには

特定技能「電気・電子情報関連産業」を取得した外国人人材を受け入れるには、次の3つの条件を満たさねばなりません。
順番に説明します。

受け入れ体制を整える

まず、受け入れ態勢を整える必要があります。
具体的には、日本での生活に困らないように、入国前の事前ガイダンスをはじめ、出入国送迎、住居の確保、生活オリエンテーション、日本語学習、日本人との交流促進、相談苦情対応などの支援です。
これらの義務的支援は、過去2年間、外国人材の受け入れ実績がない場合には登録支援機関に委託する必要があります。

受け入れ側企業が対象産業に該当している※

産業機械製造業分野で特定技能外国人を受け入れるためには、受け入れ側企業が対象産業である必要があります。経済産業省の「製造業における特定技能外国人材の受入れについて」において、以下の19種類のいずれかに該当していなければならないことが示されています。

  1. 鋳型製造業(中子を含む)
  2. 鉄素形材製造業
  3. 非鉄金属素形材製造業
  4. 機械刃物製造業
  5. 作業工具製造業
  6. バルブ・コックを除く配管工事用附属品製造業
  7. 金属素形材製品製造業
  8. 溶融めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)
  9. 電気めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)
  10. 金属熱処理業
  11. その他の金属表面処理業(アルミニウム陽極酸化処理業に限る)
  12. ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業
  13. はん用機械器具製造業(消火器具・消火装置製造業を除く)
  14. 生産用機械器具製造業
  15. 業務用機械器具製造業(医療用機械器具・医療用品製造業及び武器製造業を除く)
  16. 電子部品・デバイス・電子回路製造業
  17. 電気機械器具製造業(内燃機関電装品製造業を除く)
  18. 情報通信機械器具製造業
  19. 工業用模型製造業

上記の産業に該当しているか否かは、直近1年間の「製造品出荷額等」が発生しているかどうかで判断されます。この「製造品出荷額等」とは、直近1年間の製造品出荷額、加工賃収入額、くず廃物の出荷額、そしてその他の収入の合計金額のことです。

特定技能協議会への加入

また、製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会への加入も必須となっています。
加入に対して費用などは掛かりません。
申し込みは入会申請システムを使い、オンラインで申請を行います。
申請と詳しい申請方法については、経済産業省のこちらのページに記載がありますので、併せてご参照ください。

まとめ

今回の記事を簡単にまとめさせていただきます。

特定技能「電気・電子情報関連業」とは

即戦力の外国人が業務に従事できるようにするため、特定技能「電気・電子情報関連業」が新設されました。2022年5月には素形材産業分野、産業機械製造業分野、電気・電子情報関連産業分野の「製造3分野」が統合されて、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」になりました。

「電気・電子情報関連業界」の現状

人手不足に苦しんでおり、全職種の有効求人倍率の1.3倍程度に対し、製造業全体の有効求人倍率は約2倍です。その製造業の中でも電気・電子情報関連の分野では、プラスチック製品・製造工の有効求人倍率は約4倍です。
将来的には6万人近い人手不足に陥ると推測されています。

雇用形態・報酬

フルタイムの直接雇用のみで、派遣やパートは認められていません。
また報酬は日本人と同等額以上を支払わねばなりません。

特定技能1号「電気・電子情報関連産業」の取得方法

特定技能1号「電気・電子情報関連産業」を取得するためには、製造分野特定技能1号評価試験と日本語試験に合格しなければなりません。
また技能実習生の場合には、無試験で特定技能に移行することができます。
試験は鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、 工場板金、めっき、アルミニウム陽極酸化処理、仕上げ、機械検査、機械保全、電子機器組立て、電気機器組立て、プリント配線板製造、プラスチック成形、塗装、溶接、工業包装の19の区分で行われます。

特定技能外国人を受け入れるには

特定技能外国人を受け入れるには、A受け入れ体制を整える、B受け入れ側企業が対象産業に該当している、C特定技能協議会への加入、以上A~Cを満たさなければなりません。

この記事を書いたライター
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カナエル運営事務局

外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。