中国からの技能実習生や特定技能外国人が、様々な現場の仕事を支えています。
この記事では中国人を雇用する上での基礎知識と、中国人人材の日本語学習などにも使える助成金について、解説します。
中国の「雇用」と「仕事」
まず中国の仕事や仕事観について説明します。
中国では「出身地」で仕事が決まりがち
中国には14億人もの人口がいるため、人口統制がされています。
巨大な人口大国なため、やむを得ない部分もありますが、大きなデメリットも生じています。それは戸籍が「農村部出身者」と「都市部出身者」に分けられていることです。
戸籍が二つに分けられているだけでは、問題はありませんでした。
ですがこれが、大学進学の際、大きなデメリットとなっています。
なぜなら大学は、各地域からの入学者数を決めているからです。
例えば北京や上海などの地域だと、人数が少ないため大学進学に有利です。
ですが農村部出身だと、人数が多いため、倍率が跳ね上がります。
出身が農村部というだけで、都市部出身者よりも何倍、場合によっては何十倍も高い倍率で戦わねばなりません。
戸籍を分けることで、進学に影響し、その先の仕事にも影響を与えています。また出身地差別も発生してしまっています。
日本人と違って「結果」のみを重視する
中国人は、結果のみを重視する傾向が強いです。
形式を重視する日本人とは、大きく違う部分です。
例えば日本では、報告書にテンプレートがあります。
またメールを送る場合にも、テンプレートとなる文面があり、それを一部改変して送るなどの方法が主流である会社が多いです。
ですが中国人の多くは、そのような考え方をしません。
「結果、報告ができればいい」「結果、伝わればいい」と考えますので、細かいルールなどは基本的には気にしません。自分流のやり方で進めていきます。
また中国では、そもそも報告書を作る文化もあまりないのが実情です。
仕事で現れる文化の違い
日本では敬語を使う文化があります。
上司には当然敬語、部下だとしても年上であれば敬語を使うという方もいるはずです。
ですが中国では、上司に敬語を使うという文化がありません。
日本人からするとびっくりですが、仕事の指示はもちろん上司から部下に出しますが、職場の人はみんな平等という考え方があります。
つまり上司から仕事の指示は受けながらも、それ以外では上下はないと考えています。
そのため上司に対してやたら気を使ったり、職場を離れたプライベートの場でも敬語を使ったりという行動は、少し奇異に映るかもしれません。
上司と部下の距離が近い職場などが、中国人には親しみやすいと言われています。
また飲み会などで、上司が部下におごるという文化も、上下がないため一般的ではありません。
中国人雇用のメリット
中国人顧客を逃さない!
日本の最大の貿易相手国は、アメリカを抑えて中国です。
人口14億人を超える中国は日本にとって、非常に重要な取引先です。
また貿易相手国としてだけではなく、デザインは日本で行い、生産は中国の工場で行うという企業も年々増えています。
またインバウンド需要も重要です。中国人観光客が爆買いをしたというニュースがまだ記憶にあるかと思います。
コロナ禍などで一時下火になりましたが、今後も中国人観光客や、中国企業は重要な顧客・取引先であり続けます。
そういった場合、日本語と中国語どちらもわかるスタッフは、会社にとって非常にありがたい戦力となるはずです。また言葉がわかるだけではなく、中国の文化も理解しているスタッフは、収益に直結するアイディアなどを出してくれるのではないでしょうか。
異なる文化圏のアイディアを取り入れられる
中国人材だけに限りませんが、外国人材が会社に来ることで、社内に新しい価値観をもたらします。これが企業にとって良い流れを作ることが多いです。
前述した「中国では上司も部下も対等」という文化も、日本にそのまま持ち込むと混乱することもあるかもしれません。
ですが上下関係が厳しく、息苦しさを感じている従業員がいる会社も現状少なくはないはずです。そういった職場環境をいい方向に改善するよいきっかけになるのではないでしょうか。
また日本人からは出てこない解決策が出てくる可能性も高いです。
中国人従業員は、日本人にとっての「当たり前」を疑うことができるという面でも、会社に良い影響をもたらすことができると言えるでしょう。
【中国人顧客を逃さない!】優秀な中国人を雇用するには
中国人人材を雇用する上で、知っておくべき在留資格について簡単に説明します。
技能実習
まず技能実習制度があげられます。
技能実習とは、主に途上国の人材に、日本の技能や技術、知識などを習得してもらい、母国で生かしてもらうための国際貢献制度です。
最長5年間滞在することができて、取得は比較的簡単です。
現在日本に約32万人の技能実習生が滞在しています。
技能実習は幅広い職種で利用できて、なおかつ一定の期間は安定的に人材を確保できる点がメリットです。
ですがデメリットとして、その仕事に対してほとんど素人同然であることが多いです。
また日本語が全くできない場合がほとんどですので、コミュニケーションについての問題はでてくるでしょう。
特定技能
特定技能制度は、技能実習生のデメリットを解消することができます。
こちらの特定技能は2019年に創設されたまだまだ新しい制度です。
人手不足が特に深刻な12分野で外国人の就労が可能となっています。
こちらの特定技能は取得のために、技能実習と違って、技能試験と日本語試験にパスする必要があります。ですので技能実習に比べると取得が困難です。
ですが技能試験と日本語試験をパスするからこそのメリットがあります。
その業務における最低限の知識があるため、即戦力として活動してくれることです。
ゆっくり簡単な言葉で話せば、日本語の最低限のコミュニケーションは基本的にはとることができます。
中国人向け就活サイトの活用
技能実習・特定技能の在留資格で働いてもらうことが、現状では最もポピュラーな方法となっています。ただそれだけではなく、企業によっては、中国人向け就活サイトも活用するとよいでしょう。
隣国の中国は14億人もの人口を抱えています。
現在日本国内には、中長期滞在している中国人が76万人もいます。
さらに26万人もの中国人が永住者です。
20代の中国人も多く滞在しておりますので、積極的に中国人向け就活サイトも活用するべきといえるでしょう。
中国人の多くは東京都、埼玉県、神奈川県など関東に集まっているため、関東圏の企業であれば、有力な人材を確保できる可能性が高いでしょう。
雇用の際には在留資格の確認が必須
日本国内の中国人を雇用する場合、まずしなければならないことは在留資格の確認です。
在留資格によって、どのような仕事ができるかが決まっています。
在留資格と、従事する予定の仕事内容が違う場合には、その仕事に就くことができません。
もしくは在留資格の変更手続きが必要になりますが、在留資格は、誰でも簡単に取得したり、変更したりできるものではありません。大学卒などの学歴やその職種の仕事での職歴などが必要となります。
ですので日本国内の中国人を雇用する場合にはまず在留資格の確認が必要です。
呼び寄せて雇用する場合には、在留資格を取得するための条件を満たしているかどうかの確認が必須となります。
雇用契約の注意点
日本人が相手の場合ももちろんそうですが、中国人を雇用する場合には、労働条件について詳細に話し合いましょう。
賃金や業務内容などについては、文化の違いから就業後にトラブルを生む可能性もあります。曖昧な説明はせず、可能であれば昇給のシステムなども細かく説明しておくほうがよいでしょう。
また雇用契約書などは、従業員に書面で配布しなければなりません。
労働基準法で義務化されています。
日本人が相手でも、中国人が相手でも、ここは全く同じなので注意しましょう。
書面にして配布しておくことで、もしものときのトラブルを防ぐこともできます。
中国人雇用の際の届出
ハローワークかWebから可能
企業が、中国人をはじめとする外国人を雇用する際には、届け出が必要です。
この「外国人雇用状況の届け出」は、雇用する際だけではなく、外国人が離職する際にも必要になります。
この「外国人雇用状況の届け出」は法律で決まっており、なおかつハローワークは、雇用環境の改善に向けて、企業に助言をしたり指導したりします。
またこの届出をちゃんと出していることで、離職した外国人への再就職支援を、ハローワークが行うことができるようになります。
そのため雇用・離職の際には必ず届出を行いましょう。
詳しくは厚生労働省のこのページにも記載がありますので、あわせてご参照ください。
届け出は、ハローワーク、またはインターネットから行うことができます。
届け出様式は民間かそれ以外かで異なる
届け出様式は、民間事業者か、それ以外かで異なります。
民間事業者の場合には
①雇用保険の被保険者である外国人の場合
②雇用保険の被保険者ではない外国人の場合
以上2つによって、届け出が変わってきます。
①雇用保険の被保険者である外国人の場合には、以下の3点を届け出る必要があります。
- 資格外活動許可の有無
- 雇い入れに係る事業所の名称および所在地
- 「雇用保険被保険者資格取得届」に記載が必要な事項
②雇用保険の被保険者ではない外国人の場合には「離職する事業所の名称と所在地など、喪失届に記載必要な事項」のみとなります。
そのほか、①でも②でも氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍・地域などは共通して届け出が必要です。
国・地方公共団体の場合にも
①雇用保険の被保険者が外国人か、②雇用保険の被保険者ではない外国人かによって、変わってきます。
詳しくは厚生労働省のこのページにも記載がありますので、あわせてご参照ください。
そもそも届け出の対象者とは?
届け出の対象者は、ほとんどすべての外国人労働者になります。
例外は特別永住者など一部の在留資格保有者のみです。
そのため留学生のアルバイトであったとしても、外国人派遣社員の場合でも、届け出が必須になります。
中国人雇用の場合でも、助成金を活用できる?
雇用調整助成金
雇用調整助成金とは、事業縮小をせざるをえなくなったため、休業したり教育訓練したりする費用を、助成するための制度です。
利用するためには、①雇用保険適用事業所であること、②経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされたこと、③雇用調整を実施していることの以上3点を満たす必要があります。
ただ以上の点を満たしていれば、中国人従業員をはじめとする外国人人材の日本語教育や、職業訓練の経費に活用することができます。
中小企業緊急雇用安定助成金
こちらは失業者を出すことを防ぐための助成金です。
雇用維持のための助成金で、中国人をはじめとする外国人の雇用維持のため、要件を満たしていれば利用可能です。
売り上げや生産量などが5%以上減少してしまっている場合に利用ができます。
まとめ
中国の「雇用」と「仕事」
中国では「出身地」で仕事が決まりがちです。
中国の大学は、各地域からの入学者数を決めているからです。
そのため北京や上海などの地域だと、人数が少ないため大学進学に有利ですが、農村部出身だと人数が多いため、倍率が跳ね上がります。
また日本人と違って「結果」のみを重視する傾向が強いです。
形式を重視する日本人とは、大きく違う部分ですので、注意が必要です。
中国人雇用のメリット
観光や小売り、また飲食業でも中国人顧客の心をつかむことができるスタッフは、とても重要です。
また中国に進出を考えている場合、中国語だけではなくて中国の文化をしっかり理解しているスタッフは、重要な戦力になります。
【中国人顧客を逃さない!】優秀な中国人を雇用するには
雇用するには在留資格として、技能実習、特定技能があります。
また現在日本国内には、中長期滞在している中国人が76万人もいますので、中国人向け就活サイトの活用も活用するとよいでしょう。
中国人雇用の際の届出
企業が、中国人をはじめとする外国人を雇用する際には、届け出が必要です。
この「外国人雇用状況の届け出」は、雇用する際だけではなく、外国人が離職する際にも必要になります。
ハローワークかWebからこの届出は可能です。
中国人雇用の場合でも、助成金を活用できる
助成金には主に、雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金があります。
中国人人材の日本語教育や、中国人をはじめとする外国人の雇用維持のために、利用することができます。
ですが利用には満たさねばならない条件がありますので、注意が必要です。