特定技能外国人が一時帰国する際本人が行うべき手続きや受け入れ企業側のポイント

特定技能外国人が一時帰国する際本人が行うべき手続きや受け入れ企業側のポイント

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特定技能外国人を雇用していると、本人の体調や家庭の事情、宗教上の理由などのために一時帰国の申し出を受けることがあります。

受け入れ企業が行わなければならない出入国に関する手続きはほとんどありません。しかし万が一手続き等に問題があった場合には在留資格が取り消され、再入国できなくなる恐れがあります。

一時帰国の申し出は外国人労働者ならではのものであるため、特定技能外国人を雇用する場合はあらかじめ対応策を考えておくようにしましょう。

この記事では特定技能外国人が一時帰国する際の手続きやポイントを解説します。

特定技能外国人の一時帰国は可能?

特定技能外国人の一時帰国は可能?

制度上の結論としては、特定技能外国人の一時帰国は可能です。在留期限が満了していなかったとしても一旦帰国し、再び日本の同じ職場で働くことは認められています。

家族の都合や体調、宗教上の理由などの理由で雇用している外国人から帰国したいとの要望があった場合、制度的には帰国を許可することはできます。

また、一時帰国のために有給をとりたいと申請をされた場合、相手が特定技能外国人であったとしても雇用主側は有給の申請を拒否することはできません。

これは特定技能制度の話ではなく、労働基準法で定められていることです。

もし申請された期間が事業の正常な運営を妨げる場合は時季変更権を行使し、別の期間に有給をとってもらうことは可能ですが、時季変更権の行使には本当に空いた人員を補完する術がないことが明確であることが求められます。

雇用している外国人が一時帰国する場合受け入れ企業が行うべき手続き

特定技能の一時帰国について受け入れ企業側が行うべき出入国管理庁などに関係する行政的な手続きはありません。

従って雇用している特定技能外国人の一時帰国については有休消化や不足した人員の補給といった労務関係や、それに伴う社会保険関係の手続きや処理の方が重要になってきます。

「一時帰国したい」という申し出は外国人材ならではのものであるため、外国人の雇用に慣れておらず対応に困ってしまう企業も少なくありません。

特定技能外国人を雇用する場合は、一時帰国をはじめとする日本人からは受けることのない申し出に対応できるよう対策を整える必要があります。

「みなし再入国許可」とは

「みなし再入国許可」とは

基本的に日本に滞在している外国人は、在留期間の満了日以前に再び日本に入国する予定で出国するのであれば再入国許可を取得しなければなりません。

しかし在留期間を3ヵ月以下と決定された外国人及び「短期滞在」の在留資格で日本に滞在している外国人以外で、出国の日から1年以内に再入国する予定であれば再入国許可の取得が不要になります。

特定技能の在留資格は「在留期間が3ヵ月以下」でも「短期滞在の在留資格」にも該当しません。

従って特定技能の在留資格を持つ外国人は再入国許可の取得申請が不要ということになります。

ただし、一時帰国のために日本を出国する際に本人が「みなし再入国許可」の手続きを行わなければなりません。特定技能に限らず中長期の在留資格を持つ外国人はみなし再入国許可を取得することで、在留資格を維持した状態で一時帰国することができるのです。

一時帰国する外国人本人が出国時に手続きを行う

みなし再入国許可の手続きは、特定技能の在留資格を持っている外国人本人が出国の際に
入国審査官に対し一時的な出国である旨を記載した(該当箇所にチェックを入れた)EDカードを提出することで行います。

その際にパスポートや在留カードも一緒に提出します。

そのため受け入れ企業がみなし再入国許可についての手続きに関与することはできません。

「みなし再入国許可」を受けるための条件

特定技能の在留資格を持つ外国人の場合、出国の日から1年以内に再入国する予定であればみなし再入国許可を取得することができます。

また、特定技能の在留資格の場合は出国審査の際に、EDカードとパスポートの他に在留カードの提示も求められます。

みなし再入国許可の対象とならないのは以下の場合です。

  1. 在留資格取消手続中の者
  2. 出国確認の留保対象者
  3. 収容令書の発付を受けている者
  4. 難民認定申請中の「特定活動」の在留資格をもって在留する者
  5. 日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあることその他の出入国の公正な管理のため再入国の許可を要すると認めるに足りる相当の理由があるとして法務大臣が認定する者

上記に該当する外国人は再入国するためには通常の再入国許可を取得しなければなりません。

さらに出国の日から1年を経過する前に在留期限を迎える場合は、在留期限までがみなし再入国許可によって認められる再入国期限となります。

もし、一時帰国の申請をされた期間内に在留期限を迎える場合は、受け入れ企業にも適切な対応が求められる可能性があります。

EDカードにチェックを入れ忘れた場合

みなし再入国許可の申請手続きは出国する外国人本人が行うものであるため、受け入れ企業側が行わなければならない手続きは存在しません。

しかし万が一外国人本人が出国の際に適切な手続きを行わなかった場合、本人の特定技能としての在留期間だけでなく在留資格も消滅してしまいます。

特定技能としての在留資格を失うことになるため、在留資格を取得し直さなければ予定通り日本に帰国し、日本で働くこともできません。

手間が増える可能性があるため、特定技能外国人が一時帰国する際には必ずみなし再入国許可の申請をしてもらうようにしましょう。

在留期限と一時帰国

雇用している特定技能外国人が一時帰国することについて、雇用主側が最も気をつけなければならないのは本人の在留期限です。

みなし再入国は日本から出国した日から1年以内に再入国する場合に認められますが、もし母国に滞在中に在留期限を迎える場合はその在留期限がみなし再入国できる期限となります。

母国に滞在中に在留期限を迎えてしまうと、みなし再入国できなくなるということです。

そのため特定技能外国人が一時帰国する場合は在留期限に注意しましょう。

在留期限が迫っている場合は更新等の手続きを行います。また、あらかじめ再入国許可の申請を行った上で帰国させることで対処できる場合もあります。

二国間協定一時帰国について定められている場合がある

外国人を雇用する特定技能制度では、人材の円滑かつ適正な送り出し・受け入れをするために、日本と各送り出し国との間で二国間協定が結ばれている場合があります。

一時帰国について二国間協定で定められている国もあり、もし協定に基づいた手続き等を踏まずに一時帰国をさせた場合は再入国できなくなる恐れもあります。

送り出し国によって内容は異なるため、雇用する特定技能外国人の出身国にあわせた対応をとるようにしましょう。

特にフィリピンはフィリピン当局によって発行される入国許可証がなければ、日本に再入国するための出国ができなくなるため注意が必要です。

一時帰国の申し出があった場合のポイント

特定技能外国人の一時帰国では、労務関係の手続きや欠員分の人員の補充などは必要になりますが、本人の出入国そのものについての手続きはない場合も多いです。

しかし一時帰国の申し出は外国人材ならではのものであるため、対応に慣れていない場合は不安になる方も少なくありません。

以下では特定技能外国人から一時帰国の申し出があった場合の代表的なポイントを紹介します。

一時帰国時の航空代は負担しなくてもいい

一時帰国の際の航空運賃は原則として帰国する本人負担です。受け入れ企業側が負担しなければならないというわけではありません。

一時帰国の際は空港への送迎は不要

特に1号の特定技能外国人の受け入れ企業には外国人に対する支援が義務付けられており、「出入国時の送迎」も義務的支援の中に含まれています。

ただし、この義務は日本で働くために来日し、在留期間を満了し帰国する際に該当し、一時帰国などの場合には当てはまりません。

有給および休暇について

出入国管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」では特定技能外国人の一時帰国の申し出があった場合、受け入れ企業は特定技能外国人に対し有給・無給休暇が取得できるよう配慮することが求められています。

労働基準法は特定技能外国人にも適用されるため、有給の申請があった場合は日本人労働者からの申請と同じように対応しなければなりません。

また、すでに有給を全て消化している場合であっても無給での休暇を与えるなどの配慮が求められます。

あらかじめ雇用条件書で一時帰国について定めておく

特定技能外国人を雇用する場合、一時帰国について雇用条件書で定めることになっています。

他にも特定技能外国人からは家族の来日など、日本人からは受けることが想定されない休暇申請をする可能性が存在します。

受け入れ企業にはそのような場合も有給・無給での休暇が取得できるよう配慮することが求められているため、適切に対処しましょう。

脱退一時金について

外国人であっても日本で働く以上、健康保険・厚生年金保険に加入し保険料を納めることになります。

しかし外国人の場合帰国によって支払った保険料分の保証が受けられなくなるケースが考えられることから、日本国籍ではない労働者が帰国する場合は、それまで納めていた保険料の一部が返金されるよう制度が設けられています。

この返金されるお金が「脱退一時金」です。

脱退一時金は基本的には企業との雇用契約が終了し、帰国する場合に支払われるものですが、以下の条件を満たしていれば一時帰国であっても受け取ることができます。

  • 日本国籍を有していない
  • 公的年金制度(厚生年金保険または国民年金)の被保険者でない
  • 保険料納付済期間等の月数の合計(※)が6月以上ある(国民年金に加入していても、保険料が未納となっている期間は要件に該当しません。)
  • 老齢年金の受給資格期間(厚生年金保険加入期間等を合算して10年間)を満たしていない
  • 障害基礎年金などの年金を受ける権利を有したことがない
  • 日本国内に住所を有していない
  • 最後に公的年金制度の被保険者資格を喪失した日から2年以上経過していない(資格喪失日に日本国内に住所を有していた場合は、同日後に初めて、日本国内に住所を有しなくなった日から2年以上経過していない)

ただし、脱退一時金の手続きは本人の日本出国後に行うものであるため、受け入れ企業が代理で手続きをすることになる場合が多いです。本人が手続きを行うことも可能ですが、必要書類の準備などサポートしなければならない可能性があります。

「支援」は継続することが望ましい

特定技能1号を雇用する場合、受け入れ企業にはさまざまな支援義務が課せられることになります。一時帰国の際にも必要な支援は継続して行うことが望ましいとされています。

一時帰国を終え、仕事に復帰する特定技能外国人が円滑に業務に復帰できるような環境整備と配慮をするようにしましょう。

まとめ

雇用している特定技能外国人が一時帰国をする場合、本人の出入国については受け入れ企業側がしなければならない手続き等はほとんどありません。しかし有給・無給休暇の扱いや、本人が職場復帰しやすくなるような配慮や工夫が受け入れ企業には求められます。

特定技能外国人を雇用する場合はこうした外国人ならではの申し出にスムーズに対応できるよう体制を整えるようにしましょう。

この記事を書いたライター
カナエル運営事務局

カナエル運営事務局

外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。