永住権は、外国籍を持つ人が、他国に永続的に滞在して、働いたり、生活する権利を与えられる法的なステータスです。永住権があって、一定の条件や要件を満たせば、出入国の制限やビザの更新手続きの必要性がなくなります。永住権の条件や要件は国によって異なりますが、特定の期間その国に滞在すること、特定の経済的条件を満たすこと、犯罪歴のないこと、その国の言語能力レベルに要件があること、などがあります。一般的に、永住権保持者の配偶者や子どもなどの家族は同じ場所で一緒に暮らす権利(家族結合権)があるので、ともに永住権を取得することができる場合が多くなっています。
目次
永住権とは?取得するとどう変わる?
永住権とは、外国人が在留期間を制限されることなく滞在国に永住できる権利のことです。日本の出入国管理及び難民認定法第22条では、永住許可と呼ばれており、これは在留資格を所持する外国人が、永住者への在留資格の変更を希望する場合に、法務大臣が与える許可のことです。滞在国で永住権を持つ外国人や永住許可を受けた外国人のことは、永住者と呼ばれています。永住者の権利としては、その国の国民における権利などとは、すべて、まったく同じにはなりません。ある程度制限されたものになることがあります。制限される内容としては、選挙権、被選挙権、軍、警察、役所などの公的機関への就職、土地の所有、パスポートの取得などにおいて、一定の制限を受けるということになります。その他、一定期間を超えて、その国から離れると、永住権が剥奪あるいは消滅する事になっている国もあります。
永住許可はどのように判断される?
永住許可は、入管法第22条で規定されています。在留資格がある外国人が永住者への在留資格の変更を希望する場合、法務大臣が与える「在留資格変更許可」となります。法務大臣から永住許可を受けた外国人は、永住者の在留資格によって日本に在留することになります。在留資格である「永住者」は、在留活動と在留期間のいずれにおいても制限されないということで、ほかの在留資格と比較するとかなり緩和されることになります。永住許可に関しては、一般の在留資格の変更よりも、厳密に審査されることになります。特に、一般の在留資格の変更許可の手続きとは、違った規定が設けられています。
(参考)入管法の条文 永住許可 第22条
在留資格を変更しようとする外国人で、永住者の在留資格への変更を希望するものは、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し、永住許可を申請しなければならない。
前項の申請があった場合には、法務大臣は、その者が次の各号に適合し、かつ、その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り、これを許可することができる。
ただし、その者が日本人、永住許可を受けている者、または、特別永住者の配偶者、または、子である場合においては、次の各号に適合することを要しない。
素行が善良であること。
独立の生計を営むに足りる資産または、技能を有すること。
法務大臣は、前項の許可をする場合には、入国審査官に、当該許可に係る外国人に対し、在留カードを交付させるものとする。
この場合において、その許可は、当該在留カードの交付のあった際に、その効力を生ずる。
永住権と帰化の違いはどんなところ?
日本では、外国人の在留資格のひとつとして、永住権があります。
永住権は、外国籍のまま現在の国籍を変えずに、長期間に渡って日本に住み続けることができる権利ということになります。一方で、帰化は、永住権とは異なり、今、当該の外国人が所持する国籍を日本の国籍に変更するということです。これが、永住権と帰化の違いです。
一般の在留資格については在留資格の許可申請で入国管理局長が許可、もしくは不許可を判断しますが、永住権は、法務大臣が最終的に判断をすることになります。永住申請が可能な外国人は、在留資格をもって長いあいだ日本に住んでいる外国人の中で、一定の要件を満たした人が対象となります。すでに持っている在留資格から変更申請することになります。つまり、永住許可は初めて日本に来日してすぐに申請を出すことはできません。申請するには、在留資格をもって10年以上日本に滞在している必要があります。この10年という必要年数は、特例により短くなるケースもありますが、いずれにせよ厳密な審査を受けて、永住者という在留資格を取得します。永住者は、法務大臣が認可したということになるので、日本での活動や在留期間の制限がなくなります。日本の法律は適用されますが、日本で自由に仕事ができます。永住許可の基準は、一般の在留資格とは違う基準があります。
帰化許可申請について
手続名:帰化許可申請
手続根拠:国籍法第4条第2項
手続対象者:日本に帰化しようとする外国人
提出時期:随意
提出方法
帰化しようとする者が15歳以上のときは本人、15歳未満のときは親権者や後見人などの法定代理人が、法務局または、地方法務局に自ら出頭して、書面によって申請することになります。
手数料:手数料はかかりません。
添付書類・部数:個人によって必要書類が異なりますので、申請を行おうとする法務局または、地方法務局に相談します。
申請書様式:申請書は、提出先に備え付けています。申請書以外にも、さまざまな書類を提出する必要がありますし、申請書類がそろっていれば必ず許可されるものでもありませんので、申請を行おうとする場合には、事前に申請を行おうとする法務局または、地方法務局に相談しておきます。
記載要領・記載:具体的には、申請を行おうとする法務局または、地方法務局に相談します。
提出先:帰化申請をしようとする者の住所地を管轄する法務局または、国籍事務取扱支局を含む地方法務局
永住許可に関するガイドライン
出入国在留管理庁は、令和5年4月21日改定で永住許可に関するガイドラインを発表しています。その要旨は、次のとおりとなります。
・法律上の要件としては、素行が善良であること、法律を遵守しており、日常生活において、住民として社会的に非難されることのない生活をしていること。
・独立の生計などを営むことができる資産、または技能があること。
・日常生活において、公共の負担にならずに、持っている資産または、技能などから、将来においても、安定した生活が見込まれていること。
・その者の永住が、日本の利益になると認められること。
・原則として引き続いて10年以上、日本に在留していること。
・ただし、この期間においては、在留資格の技能実習および特定技能1号を除く就労資格または、居住資格をもって、引き続き5年以上在留していること。
・罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。納税、公的年金や公的医療保険の保険料の納付、出入国管理および、難民認定法に定める届出などの公的義務を適正にしていること。
・所持している在留資格については、出入国管理および、難民認定法施行規則に規定されている最長の在留期間、在留していること。
・公衆衛生上から問題となるおそれがないこと。
・日本人、永住者または、特別永住者の配偶者または、子である場合には、これらが必要ない場合があります。難民の認定を受けている者の場合も同じです。
なお、原則としての10年在留に関する特例があります。
・申請者が日本人、永住者、特別永住者の配偶者の場合、実体を伴う婚姻生活が3年以上継続して、なおかつ、引き続いて1年以上、日本に在留していること。
・その実子などの場合には、1年以上本邦(日本)に継続して在留していること。
・定住者の在留資格で、5年以上継続して、日本に在留していること。
・難民の認定を受けた者の場合には、認定後、5年以上継続して日本に在留していること。
・外交、社会、経済、文化などの分野においては、日本国への貢献があると認められる者で、5年以上、日本に在留していること。
・出入国管理および、難民認定法の高度専門職の基準を定める省令、高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に、70点以上ある者であって、次のいずれかに該当するもの
・高度人材外国人として3年以上継続して本邦(日本)に在留していること。
・3年以上継続して日本に在留している者で、永住許可の申請日から3年前の時点を基準として、高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に、70点以上の点数があると認められること。
・高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に、80点以上ある者であって、次のいずれかに該当する者であること。
・高度人材外国人として1年以上継続して日本に在留していること。
・1年以上、継続して、日本に在留している者で、永住許可の申請日から1年前の時点を基準として、高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合、80点以上の点数があると認められること。
日本の永住権は難しい?取得するための条件とは
永住権とは、外国人が、日本での在留期間を制限されることなく、日本に永住できる権利のことです。永住者という権利であり、在留資格の一種になります。在留資格である永住者の資格を所持し、在留期間の制限がなくなり、日本での活動に制限がない仕事につくことができます。職種や業種などの就労の制限がなくなります。
永住権の在留資格の取得には厳しい条件があります。
素行が善良であること。
つまり、日本の法律や法令の違反をしないということです。法律を守って暮らしているかが審査されます。軽微な交通違反などについては、素行不良とはなりにくいと思われますが、常習者の場合は、不許可になることもあります。
独立した生計を営むことができる資産または技能があること。
日本で暮らしていくためのじゅうぶんな収入や技能があるかどうかということが審査されます。生活するのにじゅうぶんなお金や能力がないひとは、永住権は許可されないということになります。収入は、世帯全体で判断されますので、たとえ、申請者本人の収入が少ない場合でも、配偶者の収入がじゅうぶんであれば、独立の生計を営むに足りる資産または、技能があると判断されて、配偶者や子どもなどの働いていない者も条件を満たすことになります。
永住が日本国の利益になると認められること。
その外国人が永住することが、日本の国益になるかどうかで判断されます。永住権取得の特例として、日本人、在留資格の永住者、在留資格の特別永住者の配偶者、または子供である場合、次の要件は満たさなくてもよいことになっています。
・素行が善良であること、独立の生計を営むに足りる資産、または、技能を有すること。
10年間の在留がなくても、永住権を申請できる特例としては、次の規定があります。
・日本人、永住者および、特別永住者の配偶者の場合、実体を伴う婚姻生活が3年以上継続して、引き続き、1年以上、日本に在留していること。
・その実子などの場合には、1年以上本邦(日本)に継続して在留していること。
・定住者の在留資格で5年以上継続して、日本に在留していること。
・難民の認定を受けた者の場合は、認定後5年以上継続して、日本に在留していること。
・外交、社会、経済、文化などのさまざまな分野において、日本への貢献があると認められる者で、5年以上、日本に在留していること。
・高度人材ポイント制の優遇措置によって、在留期間が10年よりも短くても、永住権を申請できる場合があります。
いつまでに?永住許可の申請方法
出入国在留管理庁による手続きの概要です。在留資格がある外国人で、在留資格の変更を希望する者、または、出生などによって、在留資格の取得を希望する外国人が、「永住者」の在留資格への変更、または永住者の在留資格の取得を希望する場合に行う申請となります。手続の根拠は、出入国管理、および難民認定法第22条及び第22条の2となります。
申請期間
・変更を希望する者にあっては、在留期間の満了する日以前。
・永住許可申請中に在留期間が経過する場合は、在留期間の満了する日までに別途在留期間更新許可申請をすることが必要になります。
・変更ではなく「取得」を希望する者にあっては、出生その他の事由発生後、30日以内。
申請者について
申請提出者は、申請人本人、日本での滞在を希望している外国人本人となります。代理人の場合は、申請人本人の法定代理人です。
取次者は、次の者が定められています。
・地方出入国在留管理局長から申請等取次者としての承認を受けている次の者で、申請人から依頼を受けた者
・申請人が経営している機関、または、雇用されている機関の職員
・申請人が研修、または、教育を受けている機関の職員
・外国人が行う技能、技術、または、知識を修得する活動の監理を行う団体
・外国人の円滑な受入れを図ることを目的とする公益法人の職員
・地方の出入国在留管理局長に届け出た弁護士または、行政書士で、申請人から依頼を受けた者
提出先
提出先は、住居地を管轄する地方出入国在留管理官です。
審査基準
審査基準としては、素行が善良であること、独立の生計を営むに足りる資産または、技能を有すること、その者の永住が日本国の利益に合すると認められることとなります。日本人、永住者、または特別永住者の配偶者、または子の場合には、これらに適合することを要しないとされています。
申請の結果がでるまでの期間
標準処理期間としては、4か月とされています。実際には、1年かかるケースもあります。
必要な書類
身分関係を証明する次のいずれかの資料が必要になります。
・戸籍謄本(全部事項証明書)
・出生証明書
・婚姻証明書
・認知届の記載事項証明書
・上記に準ずるもの
・申請人を含む家族全員(世帯)の住民票
・申請人または、申請人を扶養する者の職業を証明する次のいずれかの資料
・会社等に勤務している場合であれば、在職証明書
・自営業等である場合、確定申告書控えの写し、営業許可書の写し(ある場合)
記入する書類は次のとおりです。
・永住許可申請書 (日本語版)
・身元保証書(日本語版/英語版)
役所で発行してもらう書類は次のとおりです。
・直近の5年分の住民税の課税証明書
・直近の5年分の住民税の納税証明書
・申請人を含む家族全員、世帯の住民票
・マイナンバー項目以外すべて記載された書類
勤務先で発行してもらう書類は次のとおりです。
・在職証明書、会社印のあるもので、形式は自由です。
年金・医療保険料関係の書類
過去2年間分の年金・医療保険料の納付状況を証明する資料
年金の納付状況の証明資料
ねんきん定期便、または、ねんきんネットの各月の年金記録の印刷画面
公的医療保険料の納付状況の証明資料
会社員の場合は、健康保険証のコピー
許可を得やすくするための資料
・預貯金関係の証明
・持っているすべての口座通帳のコピー、残高証明書など
・不動産の登記事項証明書(家を持っている場合)
・日本への貢献を証明する書類(表彰状、感謝状、叙勲書など)
永住権の身元保証人とは?身元保証人の条件
身元保証人になることができるのは、日本で永住権を持っている親、姉妹、兄弟、配偶者、友人、勤務先社員など、申請人の近親者になります。
身元保証人は、年間300万円以上の収入があり、納税義務を果たしていることとされています。
身元保証書においては、申請人の滞在費、帰国旅費、法令の遵守を保証しますが、法的な義務はありません。仮に申請人が法律義務違反をしても、身元保証人が滞在費などを払う義務はありません。
10年間の居住条件が免除される条件とは?
次のいずれかの条件を満たす申請人は、日本で10年間の居住経験がない場合でも、永住許可申請をおこなうことができます。
・申請人が日本人、永住者、特別永住者いずれかの配偶者で、かつ、結婚してから3年以上日本に居住している
・申請人が日本人、永住者、特別永住者いずれかの配偶者で、かつ、結婚してから3年以上、海外に居住した後、1年以上日本に居住している場合
・申請人が在留資格の定住者であり、5年以上日本に居住している場合
・申請人が難民認定を受けていて、かつ、認定後、5年以上継続して日本に居住している場合
・申請人が5年以上日本に居住していて、日本への貢献が認められている場合
・申請人が3年以上日本に居住していて、地域再生計画に定められた活動を行っており、日本への貢献が認められている場合
・高度人材ポイント制で70点以上あって、かつ、3年以上日本に居住しているか、永住許可申請をした日から数えて、丁度、3年前の時点で70点以上ある場合
・高度人材ポイント制で80点以上あって、かつ、「高度人材外国人」として1年以上日本に居住しているか、永住許可申請をした日から、丁度1年前に80点以上ある場合
永住許可申請理由書って必要?その内容は?
申請理由書の提出は、必須ではありませんが、申請人が日本人、または永住者の配偶者である場合には、用紙に記入しておくと説明などが簡単にできます。現在就労ビザを所持しており、10年以上の居住の後に、永住許可申請をおこなう申請人の場合、雇用理由書には、日本に来た経緯、日本での在留歴、生活状況や家族構成などを記載します。
永住許可申請をするなら残りの在留期間に余裕をもって!
審査期間が最長約1年かかることがあるので、現在、所持している在留資格の滞在可能期間が1年以上残されている時点で、申請をおこなったほうがよいでしょう。もし、永住許可申請の結果待ちをしている間に、所持する在留資格の有効期限が切れてしまう場合は、別途、所持する在留資格の更新申請を行います。
永住許可申請の回数制限
永住許可申請を申請する回数は、特に制限が決められていません。不許可の場合には、再申請をおこなうことができます。不許可の時には出入国管理庁に不許可理由を聞きに行くことができますが、その回数は1回だけとなります。不許可が何度も続くと、再申請時の審査が厳しくなるために、不許可理由の質問内容や再申請時に出す追加資料などは、事前に整理しておいたほうがよいでしょう。申請人が定住者の在留資格である場合は、永住許可を必要とする理由について、自由な形式で書くことができます。日本語以外で記載する場合には、翻訳文が必要になります。
永住権を持つメリットについて
永住権以外の在留資格、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の資格がある場合、ほかの在留資格のように就労の制限などがないので、日本での活動範囲の自由がありますが、永住権を所持することでメリットがでてきます。
まず、在留期限がありません。永住権以外の在留資格には、5年、3年、1年などの在留資格の期限があります。
永住権以外の在留資格の場合には、在留期間の更新許可申請をしなくてはなりません。
永住権の場合であれば、在留期限がないので、更新の手続きをしなくて済みます。
配偶者が死亡してしまっても、日本に引き続き在留することができます。日本人の配偶者等の在留資格があって、日本に滞在していても、日本人の配偶者が亡くなってしまった場合、または、配偶者と離婚した場合、日本を出国するか、定住者の在留資格に切り替える必要があります。
永住権を持っていれば、仮に、日本人の配偶者が死亡してしまった場合でも、あるいは、日本人の配偶者と離婚してしまった場合でも、継続して、日本に在留することができます。
さらに、社会的な信用を得ることができます。永住権を持つことができると、クレジットカードをつくったり、仕事で、起業が比較的、簡単になるというメリットもあります。
外国人の場合、日本で起業する場合には経営・管理の在留資格を申請することになりますが、「資本金500万円以上」や「常勤の2人以上の社員を雇用する規模の事業であること」などの一定の条件がありますが、永住権を持つことができれば、日本人と同じように資本金1円から会社をつくることができます。
まとめ
永住許可申請は、これらが重要になります。
(1)外国人本人が申請対象であるかと10年居住の必要性などを確認
(2)申請人が現在、持っている在留資格の種類を確認して、適切な書類を準備する
(3)不許可理由は一度しか聞けないので、その時に十分ヒアリングしておく
永住権を取得するためには、多くの書類の作成と提出や長期的な日本の滞在が要求されます。簡単に申請できるものではありませんが、準備をして手続きをすすめることができれば、許可される可能性は高くなります。永住権の取得を検討されている方は、行政書士などの専門家に相談して、準備をすすめることをおすすめします。