目次
カンボジアってどんな国?
カンボジア人の国民性や文化を紹介する前に、カンボジアが、どのような国かについて、外務省のページなどから説明いたします。
カンボジアの正式名称は「カンボジア王国」、首都はプノンペンです。
東南アジアの中心にあり、ベトナムとタイの間に位置しています。日本と違い、若い世代の人口比率が高い国です。近年は日系企業が多数進出し、ベトナムやタイの工場と連携した動きをとっています。
人口は約1659万人、人口の90%がカンボジア人(クメール人)です。
仏教の影響が強い国で、国民のほとんどが仏教徒ですが、イスラム教を信仰する少数民族もいます。
経済成長が非常に目覚ましいことが、特筆すべき点として挙げられます。
2004年から2007年までは10%を超える経済成長を記録していましたが、リーマンショックで成長が鈍化しました。それでも2011年から毎年平均7%もの高い経済成長を続けています。コロナで一時落ち込みはしましたが、今後もすさまじい経済成長を続けると予測されています。
カンボジア人を受け入れることができる制度とは
カンボジア人を採用する制度は主に「技能実習」と「特定技能」の2つです。
それぞれを解説します。
技能実習
技能実習は、外国の人材に日本の技術を教え、母国で生かしてもらうための国際貢献の制度です。あくまで「母国で生かしてもらうため技能を教える」制度なため、最長で5年間しか業務に従事できません。
ハードルはあまり高くなく、試験などの実施はありません。
特定技能
技能実習生と違い、即戦力となる外国人人材を採用する制度です。
「即戦力であること」が求められるため、一定レベルの日本語能力とスキルがあるかを確認するための試験が課されますが、技能実習生から無試験で移行することもできます。
受験資格は過去に日本国内で問題などを起こしていなければ誰でも得られるため、多くの外国人人材に門戸は開かれています。
特定技能1号では最長で5年、さらに技能に習熟して特定技能2号に移行できれば、上限なく日本で業務に従事できます。
カンボジアの国民性
カンボジアには様々な個性を持った方たちがいますが、大多数の方に共通する国民性について解説します。
農業との相性が良い
カンボジアのGDPの25%が農業と、カンボジアでは農業が主産業の1つなため農業になじみのあるカンボジア人が多いです。
そのため農業で技能実習生の雇用を考えている場合には、農業にあまりなじみのない国の人材を雇うよりは、カンボジア人のほうが業務への適性が高いと言えるでしょう。
日本と同じで仏教が浸透している
カンボジア人の90%以上が仏教徒で、チャム族などの少数民族の4%ほどがイスラム教徒です。キリスト教やイスラム教と違い、仏教の教えや文化は、日本でも根付いているため考え方の面で共通するところが多くあります。
たとえばほとんどのカンボジア人には、宗教による食べ物の制限がありませんし、目上の人間を敬うなどの礼儀作法の考え方も日本人と似ています。
温和な人が多い
多くのカンボジア人は温和です。
仏教の影響もあり、日本と同じく家族を非常に大切にする国民性であり、家族で協力して生きていくことを好みます。協調性も高く、個人でどんどん数字を挙げていく個人主義というよりは、周りを見て互いに協力しながら仕事を進めていく方が多いです。
そのあたりがうまく作用し、人間関係のトラブルなどが少なく人間関係を良好に保つことにも意識を傾けています。
プライドが高い
カンボジア人には穏やかな人柄の方が多いです。
ですがプライドが高い一面があります。
特に人前で恥をかかされることに対しては、非常に不快感を覚えます。
ミスがない人はいないため、注意する場面は必ず発生します。ですがその際には、別室に呼んで個別に注意するなどの配慮をすることが必要になります。
親日家が多い
カンボジアには親日家が多いと言われています。
実際、世界各国が日本をどう思っているかを調査する「対日世論調査」では、カンボジア人の95%が日本との関係は「良好である」と回答しています。また日本との信頼関係について、ASEAN平均は93%にもかかわらず、97%のカンボジア人が「信頼できる」と回答しています。
また「カンボジアにとって重要なパートナーとなる国は?」という質問に対しては、米国を抑えて、42%のカンボジア人が「日本」と回答しています。
カンボジアに旅行に行くと、日本人というだけで親切にしてもらえたという声もあります。
カンボジアの文化と歴史
カンボジアと聞いたら「アンコールワット」が思い浮かぶ人は多いでしょう。ですがその他の文化や歴史は意外と知られていませんので、カンボジアの文化と歴史について紹介します。
仏教が国教の国
カンボジアでは仏教が国教です。上座部仏教というタイプの仏教で、簡単に言えば、個人が修行の末に最終的には「悟り」を開くことを目的としています。ちなみに日本に浸透している仏教もこの上座部仏教です。
人口の90%以上が仏教徒なため、2011年の宗教省の統計によれば、カンボジア全土に4466か所も仏教寺院があり、僧侶は56000人以上いるとされています。また週に1度は多くの仏教徒が寺院に集まります。
国教は仏教ですが、宗教は自由に選ぶことが認められています。2008年の国勢調査によるとイスラム教が1.92%、キリスト教が0.17%、その他の宗教が0.78%の人に信仰されていることがわかっています。
痛みの歴史
カンボジアには、痛みの歴史があります。
千年以上前、アンコール王朝の時代には栄華を極めていました。ですが1884年にフランスの保護領となりました。その後、1953年に独立を果たしましたが、そのあと国民にとって苦しみの時代が長く続きました。
1970年代にはクーデターや内戦、またポルポト政権の大虐殺などが行われ、長く国際的に孤立していた時代もありました。1990年後半まで、カンボジアの政情不安は続いていました。
現在は経済発展が著しいですが、ポルポト政権の時代の影響で地域格差が極めて大きく、農村部の大部分は貧困状態に陥っています。
カンボジアの経済について
経済発展は著しいですが、経済の状況は具体的にどうなのでしょうか。
カンボジアの経済状況について解説します。
日本での収入は17倍?
2020年に適用されたカンボジア国内の最低賃金は「月190ドル」。日本円では月額約2万円です。一方、厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』のデータによると、日本の平均月収は、34万円です。その差は17倍です。
経済発展が著しいとはいえ、日本との格差は極めて大きいです。
出稼ぎ労働者たち
カンボジアでは様々な業種において雇用が不安定です。
経営悪化ですぐ解雇されたり、最低賃金の規定がなかったり、労災事故が多かったりという環境すら珍しくありません。
また失業率は公開されていませんが、仕事がない人たちも多くいると推測されています。そのため他国との政府間協定を結び、海外に出稼ぎに出るカンボジア人は珍しくありません。
高収入を稼ぐために、日本と違ってまず「出稼ぎ」が候補にあがる国というわけです。
埋まらない格差
格差も大きな問題です。
経済発展が著しいため、世界銀行は2015年にカンボジアを「低所得国」から「低中所得国」へ格上げしました。
ですが国民全員の状況が上向いているわけではなく、都市部では発展が進んでいますが、農村部の貧困は変わらずで、住んでいる地域によっての格差が社会問題になっています。
カンボジア人を雇う上での注意点
プライドが高い
カンボジア人の多くはプライドが高く、人前で恥をかかされることを嫌がる傾向があります。
プライドに配慮し、注意をする場合には呼び出して個別に話すほうがよいでしょう。
ですが恥をかかされることを嫌う文化は日本人にも通じるため、カンボジア人だからこそのデメリットとは言えないでしょう。
あまり自己主張をしない
ここも日本人と共通するデメリットかもしれません。
アメリカ人など自己主張の強い国民が多い国とは違い、カンボジア人の大多数は自己主張をあまりしません。
仕事にはまじめに取り組み、指示内容には素直に従いますが、疑問点などを持っても黙ったままということが多いです。
厳しい職場環境を好まない
ルールは大切ですが、気楽に働ける環境を望む方が多いです。
そのためあまりプレッシャーは与えないほうがいいです。
カンボジア人採用のメリット
ここからはカンボジア人を採用するメリットを解説します。
年長者を敬う
カンボジアは日本と違い、若者が多く高齢者のほうが少ない国です。
また3世代家族や4世代家族も多い国なため、年長者を敬う文化が根付いていますので、年長者を立てることを自然と行えます。
満期で働いてくれる人が多い
前述のとおり、日本での収入はカンボジアの17倍もあります。
そのため日本での仕事は非常に魅力的な場合が多く、在留期間いっぱいまで働きたいというカンボジア人が非常に多いです。
採用時の流れ
カンボジア人人材の採用方法は、主に技能実習と特定技能の2つです。
技能実習採用の場合
技能実習の受け入れ方法には、企業単独型と団体監理型の2つがあります。
9割以上の企業が団体監理型なため、ここでは団体監理型の採用の流れを解説します。
1.監理団体へ加入する
カンボジアの取扱いをしているかを監理団体に確認をとり監理団体に加入の希望を伝えます。すると提携している海外の送り出し機関が、採用活動を行ってくれます。
2.採用の決定
採用活動後、履歴書や面接などの過程を経て、企業が採用を行います。
3.在留資格証明書の発行
採用が決まると、在留資格認定証明書の発行を行います。
発効までに3~4か月かかるため、その間に採用された外国人は現地の日本語学校で日本語及び日本文化を学びます。
4.入国
監理団体で入国後講習を受けて企業に配属されます。
5.技能実習開始
技能実習が始まった後も、監理団体のフォローが定期的にはいります。
特定技能の場合
1.資格の取得
まず在留資格特定技能を取得しなければなりません。
取得方法は以下の二つです。
①特定技能試験と日本語試験に合格する
②技能実習2号を良好に修了する
2.採用
2-1 特定技能試験合格者
ハローワークや人材紹介会社などからの採用となります。
受け入れ企業が決まってから、在留資格取得手続きを行います。
2-2技能実習2号を良好に修了
日本国内にすでにいる場合には、「技能実習」からの「特定技能」への在留資格変更を行えばいいのでスムーズです。ですが日本にいない場合には、特定技能の在留資格認定証明書交付申請手続きを行う必要があります。
3.義務的支援
入社後には義務的支援を継続的に行っていく必要があります。
採用時にかかる費用
団体監理型で技能実習生を受け入れる場合
監理団体への加入
まず監理団体に入会する必要があります。
入会費:1万~10万円
年会費:2万~15万円
JITICOへの加入
年会費:10万~30万円
監理団体によっては、JITCO(公益財団法人 国際研修協力機構)への入会が必須です。
技能実習計画のサポートなどを受けられるので、必須でなくとも有益であると判断できるなら加入しましょう。
現地への事前訪問
渡航費:約15万~25万円
往復の航空券代と宿泊費、食事代込みでだいたい上記の金額です。
監理団体によってはWeb面接に対応しており、その場合には費用を抑えられます。
技能実習生の入国準備
在留資格(ビザ)申請:約2万~4万円
技能実習生総合保険料(37ヶ月分):約2万~6万円
健康診断費用:約1万円
入国前講習費:約1万5千円~4万円
入国渡航費:約10万円
技能実習生の国籍や送り出し機関によって幅があります。
入国後にかかる費用
入国後研修:約10万円
講習手当:6万円
健康診断費用:約1万円
配属までにも様々な費用が掛かります。
総額としては約50万円から95万円ほどになります。
カンボジア人の受け入れ状況
技能実習生・特定技能人材が多く来日
カンボジアにとって日本は魅力的な就業先です。
2022年1月時点で、日本のカンボジア留学生は681人です。
また技能実習生は1万317人、特定技能は1872人と年々増加しています。
近年では、横浜市が王立プノンペン大学で、横浜市での就労を促進するセミナーを開いたり、ジェトロはフェイスブックなどで日本での就労方法をライブ配信したりと、日本側も積極的な人材獲得に動きつつあります。
王立大学に日本人講師
カンボジア側も日本での就労を積極的に推進しています。
例えば王立プノンペン大学で、日本人介護士や看護師を講師として招き、介護講座を行うなどしています。
野心に燃えるカンボジア人たちが、与えられたチャンスを利用して学びを深めています。そのため野心と技能の双方を持ったカンボジア人が、今後多く来日する可能性が高まっています。
まとめ
カンボジアの国民性や雇用時の注意点をまとめます。
カンボジアは人口は約1659万人で、国民のほとんどが仏教徒のため仏教の影響の強い国です。そのためカンボジア人にはフードタブーはなく、目上の人を敬うなど日本人と共通する感覚を持っています。アニメや日本の経済支援などの影響から親日家が多いです。
また農業従事者が非常に多い国であるため農業との相性のいい方が多いです。
性格は温和な人が多いと言えるでしょう。
ですが一方で、プライドが高い方が多いため、注意の仕方などには気を使う必要があります。またあまり自己主張をしない国民性でもあるためその点にも注意が必要です。
経済発展が目覚ましい国です。
ですが日本との給料の差は大きく、日本にくるとカンボジアの平均給与の17倍もの金額を稼ぐことができます。そのため出稼ぎで稼ぐことは珍しくなく、カンボジアの王立大学に日本人の講師を呼び、カンボジアは日本など海外で働く若者を積極的に支援しています。
そのためカンボジアからの労働者は今後ますます増えると予測されています。