外国人の適正雇用と採用、不法就労助長罪とは、企業の罰則と対策について

外国人の適正雇用と採用、不法就労助長罪とは、企業の罰則と対策について

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外国人の雇用は適正に行わないと罰則がある

外国人の雇用は適正に行わないと罰則がある

働けない外国人と知りながら雇用したり、身分確認などをしっかりしないで雇用していた場合、不法就労助長罪に罰せられます。

不法就労助長罪とは、外国人に対して不法就労をさせたり、不法就労を斡旋したりした者を処罰するもので、入管法73条の2に規定されています。

資格外活動の罰則(入管法 第73条)において、資格外活動の許可を受けずに、在留資格に該当する範囲外の就労活動を行った者は、懲役、もしくは禁錮、もしく罰金、または、これらをあわせて、科せられることになります。

短期滞在や研修など、就労が認められない在留資格で在留する外国人や、在留期間が満了を過ぎてしまっていたり、上陸の許可なく滞在している外国人は、就労させることはできません。こういった外国人が日本で働いていた場合は、不法就労となり退去強制などになります。

不法就労している外国人を雇用した事業主や、不法就労となる外国人をあっせんした者などは、不法就労を助長した者として入管法第73条の2により3年以下の懲役、または300万円以下の罰金に処せられます。

集団密航者を運んできた者から、その密航者を収受して、支配管理下において不法就労させている場合、不法就労助長罪のほか、入管法74条の4により5年以下の懲役、または300万円以下の罰金(営利目的があれば1年以上10年以下の懲役、および1,000万円以下の罰金)に処せられます。

不法入国者・不法上陸者が退去強制にならないようにかくまったりした場合、入管法第74条の8により、3年以下の懲役、または300万円以下の罰金(営利目的があれば5年以下の懲役及び500万円以下の罰金)に処せられます。

外国人の適正雇用について

外国人の適正雇用について

外国人が在留資格の範囲内で能力を発揮しながら適正に日本で働くことができるよう、雇い入れる側である事業主が守らなければならないルールなどがあります。

雇入れ・離職時の届出

外国人の雇入れと離職の時は、外国人の名前や在留資格などをハローワークに届け出しなければなりません。届け出にあたって、雇い入れる外国人の在留資格などを確認すれば、不法就労の防止にもなります。

ハローワークでは、届出をもとに、雇用管理の改善に向けた事業主への助言や指導、離職した外国人へ再就職の支援を行います。

届出の対象となる外国人の範囲

日本の国籍をもたない者で、在留資格「外交」、「公用」以外の人が届出の対象となります。

特別永住者、在日韓国、朝鮮人などの人は、特別の法的地位が与えられており、日本における活動に制限はありません。特別永住者の人は、外国人雇用状況の届出制度の対象外とされていますので、確認や届出の必要はありません。

特別永住者とは、特別永住者の資格のある人は、「平和条約国籍離脱者」「平和条約国籍離脱者の子孫」が要件となっており、在日韓国人や朝鮮人、在日台湾人と呼ばれる人たちが属しています。 特別永住者の数が最も多かったのが平成3年で、その後、帰化や高齢による死亡などで年間1万人のペースで人口が減って、今ではピーク時と比べると半数以下になりました。

届出事項の確認や記載方法について

外国人の雇用状況の届出は、外国人労働者の在留カード、旅券(パスポート)、または指定書などの提示が求められます。

届出の方法について

届出の対象となる外国人が雇用保険の被保険者となるかどうかによって、使用する様式や届出先となるハローワーク、届出の提出期限が異なります。管轄の最寄りのハローワークに出向いて手続きをします。

届出事項の確認・記載方法について

外国人雇用状況の届出は、外国人労働者の在留カードまたは旅券(パスポート)などの提示を求めて、届け出る事項を確認します。

留学や家族滞在などの在留資格の外国人が資格外活動許可を受けて就労する場合は、在留カード、旅券(パスポート)、または資格外活動許可書などによって、資格外活動許可を受けていることを確認します。

在留カード

在留カードは、中長期在留者に対して、上陸許可や在留資格の変更、在留期間の更新などの在留に関する許可に伴って交付されます。

出入国在留管理庁ウェブサイトで、在留カード等番号が失効していないか確認することができます。

適切な雇用管理

外国人労働者の雇用管理の改善は、事業主の努力義務になっています。

労働基準法や健康保険法などの労働関係法令や社会保険関係法令は、国籍を問わずに外国人にも適用されます。労働条件面での国籍による差別なども禁止されています。

労働契約の締結に際して、賃金、労働時間等主要な労働条件について書面などで明示することが必要です。

母国語などによって外国人が理解できる方法で明示するようにします。賃金の支払い、労働時間管理、安全衛生の確保などについては、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などに従って、適切に対応します。

解雇等の予防と再就職援助について

労働契約法にもとづいて解雇や雇止めが認められない場合があります。安易な解雇などを行わないようにして、やむを得ず解雇などを行う場合は、再就職希望者に対して、在留資格に応じた再就職が可能となるよう必要な援助を行うよう努めます。

業務上の負傷や疾病の療養期間中の解雇や、妊娠や出産などを理由とした解雇は禁止されています。

事業主は外国人労働者について、労働関係法令や社会保険関係法令は、国籍にかかわらず適用されることから、事業主はこれらを遵守することが必要です。

外国人労働者が適切な労働条件および安全衛生のもと、在留資格の範囲内で能力を発揮しつつ就労できるように適切な措置を講じることが求められます。

事業者の留意事項

募集に当たって、従事すべき業務内容、労働契約期間、就業場所、労働時間や休日、賃金、労働・社会保険の適用に関する事項等について、書面の交付などによって明示することが重要になってきます。

特に、外国人が国外に居住している場合には、事業主による渡航、または帰国費用の負担の有無や負担割合、住居の確保などの募集条件の詳細について、あらかじめ明確にするよう努めることが必要です。

外国人労働者の斡旋を受ける場合、職業安定法等の定めるところによって、職業紹介事業の許可を受けている者、もしくは届出を行っている者から受け、外国人労働者と違約金もしくは保証金の徴収等に係る契約を結ぶなど、職業安定法または労働者派遣法に違反する者から受けないことを確認します。

国外に居住する外国人労働者の斡旋を受ける場合、外国人労働者と違約金、または保証金の徴収などに関係する契約を結ぶ者を取次機関として利用する職業紹介事業者などからあっせんを受けないことが重要になります。

職業紹介事業者等に対し求人の申込みを行うにあたって、国籍による条件を付すなどして、差別的取扱いをしないよう十分留意するようにします。

労働契約を締結しようとする場合であって、募集時に明示した労働条件を変更や特定などする場合は、明示した事項と変更内容などを対照できる書面を交付するなどによって明示するようにします。
採用に当たっては、あらかじめ、在留資格上において、従事することが認められる者であることを確認することとし、従事することが認められない者については、採用しないように留意します。
在留資格の範囲内で、外国人労働者がその有する能力を有効に発揮できるよう、公平な採用選考に努めることも重要です。

労働条件の明示について、労働契約の締結に際して、賃金、労働時間等主要な労働条件について、その内容を明らかにした書面を交付するようにします。

最低賃金額以上の賃金を支払うとともに、基本給、割増賃金などの賃金について、全額を支払わなければなりません。
労使協定にもとづいて、食費、居住費などを賃金から控除などをする場合については、控除額は実費を勘案して、不当な額とならないように留意します。

適正な労働時間などの管理については、法定労働時間などの上限規制を遵守して、週休日の確保をはじめ適正な労働時間の管理を行うとともに、時間外や休日労働の削減に努めることが重要です。
労働時間の状況の把握に当たっては、タイムカードによる記録などの客観的な方法その他の適切な方法によるものにするようにします。

安全衛生教育の実施については、労働安全衛生法などの定めるところによって、安全衛生教育を実施するに当たっては、母国語などを用いる、視聴覚教材を用いるなど、当該の外国人労働者がその内容を理解できる方法によって行うようにします。

特に、使用させる機械など、原材料などの危険性、または有害性、および、これらの取扱方法などが確実に理解されるよう留意しなければなりません。

労働災害防止のための日本語教育等の実施については、外国人労働者が労働災害防止のための指示などを理解することができるようにするために必要な日本語および基本的な合図等を習得させるよう努めるようにします。

労働災害防止に関する標識、掲示などについては、事業場内における労働災害防止に関する標識、掲示などについて、図解などの方法を用いるなどで、外国人労働者がその内容を理解できる方法により行うよう努めるようにします。

公的年金の被保険者期間が一定期間以上の外国人労働者が帰国する場合には、帰国後に脱退一時金の支給を請求することができるなどの旨、帰国前に説明するとともに、年金事務所などの関係機関の窓口を教示するよう努めるようにします。

教育訓練、福利厚生など、外国人労働者が円滑に職場に適応できるように、社内規程その他文書などの多言語化など、職場における円滑なコミュニケーションの前提となる環境の整備に努めることも大切になります。

職場で求められる資質、能力などの社員像の明確化、評価・賃金決定、配置等の人事管理に関する運用の透明性・公正性の確保など、多様な人材が適切な待遇の下で能力発揮しやすい環境の整備に努めるようにします。

日本語教育および日本の生活習慣、文化、風習、雇用慣行などについては、理解を深めるための支援を行うとともに、地域社会における行事や活動に参加する機会を設けるように努めるようにします。

居住地周辺の行政機関、医療機関、金融機関などに関する各種情報の提供や同行など、居住地域において安心して日常生活、または社会生活を営むために必要な支援を行うよう努めるようにします。

外国人労働者の苦情や相談を受け付ける窓口の設置など、体制を整備して、日本における生活上、または職業上の苦情や相談などに対応するよう努めるとともに、必要に応じて、行政機関が設けている相談窓口についても教示するようにします。

在留期間が満了して、在留資格の更新がなされない場合には、雇用関係を終了して、帰国のための諸手続きの相談や、その他の必要な援助を行うようにします。

外国人労働者が病気などで、やむを得ない理由によって、帰国に要する旅費を支弁できない場合には、当該の旅費を負担するよう努めるようにします。

在留資格の変更、または在留期間の更新の時には、手続きに当たっての勤務時間の配慮やその他の必要な援助を行うようにします。
一時帰国を希望する場合には、休暇取得への配慮や、その他必要な援助を行うよう努めることが必要になります。

事業規模の縮小などを理由として、解雇を行う場合であっても、労働契約法の規定に留意して、外国人労働者に対して、安易な解雇を行わないようにします。
労働契約法の規定に留意して、外国人労働者に対して、安易な雇止めを行わないようにすることも大切です。

外国人労働者が解雇、その他の事業主の都合によって離職する場合においても、当該の外国人労働者が再就職を希望するときには、関連企業などへの斡旋、教育訓練などの実施・受講斡旋、求人情報の提供など、当該外国人労働者の在留資格に応じた再就職が可能となるよう、必要な援助を行うよう努めるようにします。

外国人労働者の希望によって、労働契約の期間をできる限り長期のものとして、安定的な雇用の確保に努めるようにします。

労働施策総合推進法の規定にもとづいて、外国人労働者を採用して雇った場合、または外国人労働者が離職した場合には、ハローワークに届け出ることが重要です。

不法就労助長罪とは?

不法就労は法律により禁止されています。不法就労した外国人本人だけでなく、不法就労させた事業主も処罰の対象となります。不法就労外国人を雇用した事業主や不法就労となる外国人を斡旋した者など、不法就労を助長した者は、入管法第73条の2によって、3年以下の懲役、または300万円以下の罰金に処せられます。

平成24年7月から導入された「中長期在留者の在留管理制度」によって、在留カードを所持する外国人が就労できるかどうかの判別が簡単になっています。

外国人を雇用する時は、外国人が不法就労にならないよう注意しなければなりません。

不法就労とは

不法就労となるのは、次の3つの場合になります。

  • 不法滞在者や被退去強制者が働くケース
    たとえば、密入国した人や在留期限の切れた人が働く、退去強制されることがすでに決まっている人が働くケースです。
  • 入国管理局から働く許可を受けずに働くケース
    たとえば、観光等短期滞在目的で入国した者が働く、留学生や難民認定申請中の人が許可を受けずに働くケースです。
  • 入国管理局で認められた範囲を超えて働くケース
    たとえば、外国料理のコックとして働くことを認められた者が工場、事業所で単純労働者として働く、留学生が許可された時間数を超えて働くケースです。

事業主も処罰の対象

不法就労させたり、不法就労を斡旋した者は、不法就労助長罪となり、3年以下の懲役・300万円以下の罰金となりますので注意が必要です。

外国人を雇用する時には、必ず在留カードを確認します。
在留カードは、企業などへの勤務や日本人との婚姻などで、入管法上の在留資格で適法に日本に中、長期間滞在する外国人が所持するカードです。

旅行者のように一時的に滞在する人や不法滞在者には交付されません。特別永住者の方を除いて、在留カードを所持していない場合は、原則として就労できません。

外国人を雇用した時

外国人(「特別永住者」「外交」「公用」を除く)を雇用する事業主には、雇用対策法にもとづく外国人雇用状況の届出が義務づけられています。
外国人を雇用した場合や外国人が離職した場合は、ハローワークへ届出をしなければなりません。この届出を怠った場合には、罰則適用の対象となります。ただし、この場合は、入国管理局への届出は不要になります。

不法就労が判明した時の対応

不法就労とは、日本で働く資格を持っていない外国人が働くことです。技術、医療、教育、企業内転勤などの18資格であれば、限られた分野での就労が許可されています。

その範囲を超えて別の仕事をした場合は、不法就労とされます。

資格なしで働いた外国人は処罰が課せられて、国外退去の強制事由に該当してしまいます。不法就労は、働いていた外国人だけではなく、働かせた事業主にも責任があることになります。

就労資格のない外国人を働かせた事業主は、不法就労助長罪に該当する場合があります。

不法就労の取り締まりは強化されており、不法就労だと知らずに外国人を雇っていたというケースも多くあります。

事業主に、外国人雇用に関する知識や経験が少なくて、資格のない外国人を雇用してしまうケースが多いためです。

事業主が不法就労の事実を知っているか、知らないか関係なく、違反した人に対しては、取り締まりが実施されます。

不法就労は、法律で禁じられた就労ですから、不法であることがわかった段階で、解雇をしなくてはなりません。解雇したあとで、入国管理局へ出頭することを本人に促します。

出国命令制度というものがあり、一定の条件を満たして、自ら出頭した不法残留者は身柄を拘束されることなく、日本から出国することができます。

雇用している従業員が不法就労をしていることが判明した場合は、そのことを本人に説明して、入国管理局へ出頭させます。解雇と出頭の促しが必要となります。

不法就労の対策 出入国在留管理庁

令和5年現在において、警察庁、法務省、出入国在留管理庁、および厚生労働省は、不法就労外国人対策等関係局長連絡会議を設置して、日本における不法就労等外国人問題について連携、協力しているところです。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に関する水際対策が終了して、今後、日本に入国する外国人が大幅に増加することが見込まれるためです。

日本に在留する外国人を取り巻く状況が大きく変化しており、不法就労など、外国人は日本の労働市場、治安などのさまざまな分野に影響をおよぼすことが懸念されています。

不法就労等外国人対策の推進が策定されて、四つの省庁が協力して、不法就労等問題に取り組むことになっています。

不法就労外国人対策等関係局長連絡会議構成員

不法就労外国人対策などの関係局長の連絡会議構成員は次のとおりです。

  • 警察庁関係:刑事局組織犯罪対策部長、生活安全局長、警備局外事情報部長
  • 法務省関係:刑事局長
  • 出入国在留管理庁関係:次長
  • 厚生労働省関係:労働基準局長、職業安定局長

不法就労等外国人問題の現状と対策

在留資格を持っていない不法滞在者の多くが、不法就労をしているとみられており、これに対して、警察、法務省、厚生労働省が中心となって、さまざまな施策が実施されています。

この施策によって約25万人にのぼるとみられていた不法滞在者を大幅に縮減させるに至っています。しかし、令和5年1月現在の不法残留者数は7万491人と、昨年の不法残留者数に比べ、3,732人増加しているとのことです。

偽装した在留カードを使ったり、うその書類を使うなどして、在留資格に該当するかのようによそおって、不正に在留許可等を受けている、不法就労をしている外国人、あきらかに難民に該当する事情がないにもかかわらず難民認定申請をして不法就労している外国人も多くいるとされています。

外国人との共生社会の実現に向けて、不法入国などの事前の阻止、不法就労者などの取締りの強化、効果的な在留管理等に向けた情報収集や分析体制の強化などを行うとされています。外国人材の受入れや共生に関する関係閣僚会議で了承された外国人材の受入れ、共生のための総合的対応策においても、不法滞在者などの取締りを推進していくこととされています。

まとめ

外国人を雇用するためには、ハローワークへの届出をしっかり行うことと、雇用したい外国人が在留資格を適正にもっているかどうかを必ず確認することがとても重要です。これらを怠った場合、外国人本人はもちろん、採用した企業側にも罰則があります。
とくに、外国人が不法滞在者や不法上陸者だった場合は強制退去の処分になることとなり、せっかく採用した人材を失うことになります。
雇用を決めたということは、その外国人人材に大きな魅力があったということだと思いますので、お互いに残念な思いをしないよう、義務化されている手続きやルールをしっかり守り、そのための準備は欠かさないようにしなければなりません。
手続きや在留資格のことなど、難しく感じる場合は、専門家に相談することをおすすめします。

この記事を書いたライター
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外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。