外国人労働者に、自社で働いてもらう場合、住居の確保が必須です。
ですが外国人の住居の確保は様々なハードルやルールがあり簡単ではありません。
この記事では、外国人労働者に住居を用意する方法や、住居に関するルールについて説明します。
目次
アパートオーナーが外国人を嫌がる場合が多い
外国人がアパートなどを契約する場合、さまざまなハードルがあります。
もっともよくある事例として、まず、アパートなどのオーナーが、外国人を嫌がって部屋を貸し渋るケースです。
オーナーの貸し渋り
アパートはオーナーにとって、大切な財産です。
文化が全く違う外国人に貸すと、その財産に思わぬ損傷が出るのではないかと心配して、貸し渋る大家が多い現状があります。また、夜遅くまで騒いだりゴミ出しなどのルールを守らないなどで近隣トラブルとなるケースもあり、それらを嫌がる方もいます。
外国人差別になるため、外国人であることを理由に貸し渋ることは本来許されませんが、貸し渋りがあるのが現状です。
保証人が用意できない
またオーナーが貸し渋るわけではなく、ルールを満たすことができずに借りられないケースも多く見られます。
一例として、日本でアパートを借りる場合には、保証人が必須である場合が多いです。
ですが「留学」や「技術・人文知識・国際業務」などで日本に来た場合には、日本に知人がいないケースがほとんどです。
日本人の配偶者がいるなどという場合をのぞいては、保証人が用意できず、保証人必須だと契約が先に進みません。
収入面で審査に通らない
また経済面で安定していないため、審査に通らないというケースがあります。
アパートなどのオーナーには、毎月安定的に家賃を徴収する必要があります。
そのため契約時に、源泉徴収票や3か月分の給料明細の提出が必須であったりします。
これらを用意できない・また用意できても収入が規定に達していない場合には、審査でつまずきます。
契約書でつまずく
日本語能力がまだ乏しい場合には契約書を読むこと・記載することが困難です。
また日本には敷金や礼金、更新料という独自の制度があります。ほとんどの国にはこれら制度はないため、このような独自の制度が理解できずに、契約を進められないケースがあります。
また契約書には、連絡先の電話番号を書いたりハンコを押したりします。それら契約するにあたって必要なものを、用意できずに契約書を作成できないケースも見られます。
義務的支援として、受け入れ先企業が住居を用意する
前述した理由により、来日したばかりの外国人が、1人で住居を契約することは困難です。ですので企業が支援の一環として用意する方が良いでしょう。
そもそも1号特定技能外国人を雇用する場合には、義務的支援の一環として住居の用意が必須です。ですがそうではない場合にも、外国人の住居確保はサポートするほうが良いでしょう。
義務的支援とは?
1号特定技能外国人を雇用する場合には、義務的支援の一環として住居の用意が必須と説明しました。
ではそもそも義務的支援とはなんでしょうか。
義務的支援とは、簡単に言えば、1号特定技能外国人を雇用する場合、受け入れ先企業がやらねばならないサポートです。サポートの内容は簡単にまとめれば、外国人が仕事・日常生活を問題なくできるようにすることです。
1号特定技能外国人を雇用する場合には、「住居の用意」がこの義務的支援の中に含まれています。
ただ住居の用意は、1号特定技能外国人では必須ですが、「技術・人文知識・国際業務」などで日本に来た場合にも、同じように企業側が用意・サポートする方が良いでしょう。
在留資格にかかわらず、外国人が独力で住居を確保するにはハードルが高いためです。
支援として住居を用意する方法
では外国人人材のため、企業が住居を用意するにはどうしたらよいのでしょうか。
寮
社宅・寮を従業員のために所有しているようであれば、社宅・寮を提供することが簡単です。
ただ注意点があります。
1号特定技能外国人を、会社が所有する寮に住まわせる場合には、賃料の徴収において厳格なルールが定められています。
そのため、基本的には企業は寮などを提供して、外国人から利益を得ることはできません。
この点については、日本人の場合とは異なるため気を付けましょう。
ですが社宅・寮は、電気やガス、水道などのライフラインの契約も企業側がサポートできるため、様々な手続きがスムーズに進みますので最適な選択肢です。
受け入れ先企業が借りる
社宅・寮を所有していないようであれば、受け入れ先企業が借りると良いでしょう。
受け入れ先企業が契約を行って、外国人にその住居を提供する方法です。
トラブルを避けるため、居住する外国人と話し合い、外国人・企業の双方が合意の上で契約することが必須です。
企業側が勝手に選んでしまうと、賃料などの関係でトラブルになることがあります。
前の章で説明した社宅・寮を提供する場合には、賃料の徴収が難しいです。
ですが会社が借りて提供するこの場合には、特定技能外国人に賃料を負担してもらうことができます。
ただ企業が利益を得るための上乗せなどはすることはできませんので、注意しましょう。
契約サポート(保証人となる)
こちらは、外国人にアパートなどを契約をしてもらい、企業が保証人になるなどしてサポートを密に行う方法です。
外国から呼び寄せる場合には不向きですが、すでに日本に住んでいる外国人への住居提供の場合にはおすすめです。
具体的なサポートとしては外国人がつまずきやすい以下3点について行うと良いでしょう。
- 物件情報の提供
- 内見や日本語での契約サポート
- 保証人となる
特に、日本語での契約と保証人の用意ではつまずきがちです。
この点をしっかりサポートすれば、すでに日本に居住している外国人であれば問題なく契約を進められることが多いです。
また現在は、外国人を対象にした保証会社がありますので、それら保証会社の紹介を行うこともおすすめです。ただ特定技能外国人の場合には、保証会社の保証料は受け入れ先企業の負担となります。
外国人には負担させられませんので注意しましょう。
住居の間取りはルールで決められている
特定技能外国人に住居を提供する場合には、間取りなどについて厳密にルールが定められています。
特定技能外国人に住居を提供する場合のルールについて説明します。
広さ
居室の広さは最低でも、1人当たり7.5㎡以上でなければなりません。
例外として、ルームシェアをする場合は1人当たり7.5㎡以下でも良いとされています。
またもう1点例外があります。
すでに働いている技能実習生が、在留資格を特定技能に変更する場合にも、7.5㎡以下でも良いです。ただしこの場合には、もともと使用していた部屋が7.5㎡以下でありそれを使用し続ける場合に限ります。
住居を貸して利益を得ることは禁止
前述のとおり企業が所有している寮や社宅を提供する場合、利益を得ることは禁止されています。
また企業が契約をして、外国人にその部屋を提供する場合は、賃料を徴収しても問題ありませんが、手数料などを賃料に上乗せして利益を得ることはできません。
この点は日本人に貸す場合と異なりますので気をつける必要があります。
初期費用は企業負担
受け入れ先企業が賃貸契約をして、住居を提供する場合、敷金や礼金、保証料は企業が負担しなければなりません。特定技能外国人に負担させることはルールで禁止されています。
自治体への届出
無事、外国人の住居を確保できても、それで終わりではありません。
住居確保後、必ず自治体への住所登録の届出が必要です。
万が一自治体への届けを忘れてしまった場合、不正行為をしたとみなされ処分を受ける可能性があります。
自治体への住所登録の届出には期限が定められています。
外国人の住居が確定してから、90日以内です。
90日以内にできなかった場合、企業が不正を行なったと判断されてしまいます。
最悪の場合には今後の外国人人材の受け入れができなくなってしまうことがあります。
注意点
特定技能外国人に住居を提供する際の注意点について、改めて解説します。
部屋の広さは1人当たり7.5㎡以上なければならないと説明しましたが、これは「外国人の要望があったとしても」、守らなければなりません。
たとえば固定費を安く抑えたいなどの理由で、外国人がこれより狭い部屋を望んだとします。その場合にも、規定より狭い部屋には住むことはできません。
部屋の広さのルールは、外国人人材の人権保護のために存在しています。
本人が「家族への送金金額を増やしたい」などの強い希望を持っていたとしても、不可ですので気を付けましょう。
全て委託することができる
外国人労働者のために住居を用意する手続きには、時間がかかります。
また1号特定技能外国人の場合には、住居の用意だけではなく、事前ガイダンスや生活オリエンテーション、日本語学習の機会の提供、日本人との交流促進など様々な義務的支援が必須です。
ですが住居の確保を含む様々な支援をすべて受け入れ先企業が行うことは、人手やノウハウの点から難しい場合が多いです。
その場合には委託をすることができます。
どんな業者にも委託できるわけではなく、出入国在留管理庁長官の登録を受けた「登録支援機関」のみです。「登録支援機関」は耳慣れない言葉かと思いますが、民間法人や業界団体、また行政書士や社労士が「登録支援機関」として活動しています。
また直近2年以内に外国人労働者を受け入れておらず、生活相談に従事した職員などがいない場合には、自社で支援業務を行うことはそもそも禁止されています。
ですのでこの場合には必ず登録支援機関に委託しなければなりません。
まとめ
今回説明した内容を簡単にまとめます。
まず外国人が、独力で住居を確保する場合、以下4つの問題があります。
①オーナーの貸し渋りがある。
外国人差別になるため、外国人であることを理由に貸し渋ることは本来許されません。
ですが「不動産に損害を与えられるのではないか」という思いから、残念ながら貸し渋りがあります。
②保証人が用意できない
日本でアパートを借りる場合には、保証人が必須である場合が多いです。
ですが日本人の配偶者がいるなどという場合をのぞいては、保証人が用意できず、契約を先に進めることができないという場合があります
③収入面で審査に通らない
契約時に、源泉徴収票や3か月分の給料明細の提出が必須なことがあります。
これらを用意できない・また用意できても収入が規定に達しておらず、審査に落ちてしまう場合があります。
④契約書でつまずく
日本語の能力がまだ乏しい場合には、契約書を読んだり、記載したりすることが困難であるうえ、敷金や礼金、更新料という独自の制度がわからず契約を進められないケースもあります。
義務的支援として、受け入れ企業が住居を用意する
①~④の理由により独力での住居の確保は、大変困難です。
そのため受け入れ先企業がサポートするほうがよいでしょう。
支援として住居を用意する方法
①寮、②受け入れ先企業が借りる、③契約をサポートする、以上3つの方法があります。
寮
社宅・寮を従業員のために所有しているようであれば、社宅・寮を提供することが簡単です。
ただ1号特定技能外国人を寮などに住まわせる場合には、外国人から利益を得ることはできません。
受け入れ先企業が借りる
受け入れ先企業が契約を行って、外国人にその住居を提供する方法です。
トラブルを避けるため、居住する外国人と話し合い、外国人・企業の双方が合意の上で契約することが必須です。
会社が借りて提供するこの場合には、特定技能外国人に賃料を負担してもらうことができます。
契約サポート(保証人となる)
外国人にアパートなどを契約をしてもらい、企業が保証人になるなどしてサポートを密に行う方法です。
具体的なサポートとして、外国人がつまずきやすい以下の3点について行うと良いでしょう。
- 物件情報の提供
- 内見や日本語での契約サポート
- 保証人となる
自治体への届出
住居確保後、必ず、自治体への住所登録の届出が必要です。
この自治体への届けを忘れてしまった場合、不正行為をしたとみなされて処分を受ける可能性があります。
全て委託することができる
出入国在留管理庁長官の登録を受けた「登録支援機関」に、住居の確保を含む1号特定技能外国人の義務的支援を委託することができます。
また、直近2年以内に外国人労働者を受け入れておらず、生活相談に従事した職員などがいない場合には、登録支援機関への委託が必須となっています。