特定技能外国人制度における協議会は制度の健全な運用を目指して設置された機関です。所管省庁を中心に受け入れ企業や登録支援機関などが構成員となっています。
特定技能外国人を雇用する場合、受け入れ企業は産業ごとに設けられた協議会に加入しなければなりません。
受け入れ企業に対しては加入が義務である反面加入費用等は無料であることも多いため、必ず定められた登録期間内に手続きをするようにしましょう。
この記事では特定技能を雇用する上で加入する協議会について解説します。
特定技能協議会とは
協議会は構成員間で連携を取り合いながら外国人人材を安定的に雇用・供給することを目的として、14の業種ごとに設置されています。
制度や特定技能外国人に関する情報の周知・共有、法令遵守意識の啓発だけでなく、地域の人手不足状況の把握及び課題に対応することが主な目的となっています。
協議会の目的
外国人を雇用することにはさまざまなリスクが伴うと同時に、受け入れ企業には高い倫理観が求められます。
また、特定技能外国人は国内での労働力不足による問題を解消するために設けられた制度です。従って外国人人材の供給に際して地域差が生じないよう工夫する必要があります。
同業種間で連携をとることでこのような外国人の就労に関する問題を解決し、産業内で適正な量の人材を供給するために協議会は設置されました。
協議会は外国人労働者を保護するために受け入れ企業に対し調査や指導を行うと同時に、労働力不足の解消を目指すために適正な人材の供給に必要な情報収集や調査、対策等を行っています。
現在特定技能外国人の受け入れ分野は14業種存在しますが、協議会はその14業種ごとに設置されています。
協議会の構成員
協議会は分野所管省庁が中心となり、受け入れ機関や業界団体、登録支援機関、法務省や警察庁、外務省、厚生労働省などの関係省庁等が構成員となっています。
受け入れ機関については加入が義務となっていますが、登録支援機関については分野によっては加入が任意となっています。また、任意で学識経験者等が加入することもあります。
協議会への入会は義務?
受け入れ企業の加入は義務
特定技能外国人の受け入れ企業は自社の産業分野に対応した協議会に加入することが義務付けられています。
協議会は各産業の分野所管省庁が設置しているため、加入手続き等は該当する分野所管省庁のホームページからチェックすることができます。
業種分野 | 所管省庁 |
---|---|
介護 ビルクリーニング |
厚生労働省 |
素形材産業 産業機械製造業 電気・電子情報関連産業 |
経済産業省 |
建設 造船・舶用工業 自動車整備 航空 宿泊 |
国土交通省 |
農業 漁業 飲食料品製造業 外食業 |
農林水産省 |
協議会は各産業ごとに設けられている
協議会は14業種にそれぞれ設置されており、受け入れ企業は業種に対応した協議会に加入することになります。
例えば外食業として特定技能外国人を雇用する場合は農林水産省所管の食品産業特定技能協議会に加入するということです。
登録支援機関については任意加入の産業分野も存在する
登録支援機関の場合は必ずしも加入が義務付けられているというわけではありません。加入が任意のものも存在します。
例えば介護分野の場合、受け入れ企業は厚生労働省所管の協議会に加入しなければならないのに対し、登録支援機関については加入が任意となっています。
ただし、現在登録支援機関は任意加入とされている分野であっても今後義務化される可能性はあるため、制度の変更には柔軟に対応するようにしましょう。
協議会加入のタイミング
協議会への加入は基本的には特定技能外国人を採用し、ビザを取得してから4ヵ月以内に行わなければなりません。
事前申請はできないため、外国人労働者のビザの取得後に忘れずに手続きを行いましょう。
ただし、建設業と製造業についてはビザの申請前に加入することになっています。
加入費について
基本的には協議会への加入費用は無料となっています。
ただし、建設業だけは年会費など費用がかかるため、加入する際に費用をチェックする必要があります。
協議会が行う主な活動
協議会は主に以下の活動を行います。
制度の趣旨や優良事例の周知
協議会は構成員である受け入れ企業などに特定技能外国人制度の趣旨や優良事例を周知することを通して健全な制度の運用を目指しています。
優良事例としては、
- 充実した研修によって優良人材を確保することができた。
- 労働条件を工夫することによる信頼関係の構築。
- 外国人労働者間だけでなく日本人労働者との交流を促進することで職場に切磋琢磨する空気が生まれ、生産力が向上した。
などが挙げられます。
受け入れ企業のコンプライアンス意識の向上
日本人とは異なる価値観を持つ外国人を雇用する企業には高い倫理観が求められます。
そのため協議会は受け入れ企業に対し、コンプライアンス意識の向上を目的とした啓発活動を行っています。
人権問題等への対応策の検討
差別意識をなくし、誰もが安心して働ける職場環境を作るには、人権問題に対する適切な知識を身につけ、関連する情報を把握する必要があります。
受け入れ企業での差別や人権侵害のない労働環境の実現をサポートするため、職場などで発生する人権問題への対応策について検討する機能も協議会には存在します。
地域別人手不足および大都市圏等への集中への対策
特定技能外国人は労働力不足を補うことを目的として作られた制度です。そのため人材の供給に地域差が生まれないよう防止策を講じる必要があります。
大都市圏はどうしても人材が集中してしまうものであり、外国人人材も例外ではありません。
協議会は外国人人材が大都市圏に集中することを防ぎ、地域の人手不足を解消するための活動も行っています。
就業状況および経済情勢の変化に関する情報の把握・分析
労働力不足の解消を目的とした制度であるため、外国人人材は日本国内や地域、各産業の経済状況に見合った適切な量が供給される必要があります。
外国人人材の適切な供給を実現させるために協議会では就業状況および経済情勢の変化に関する情報の把握・分析を行っています。
その他制度を円滑かつ適正に実施する上で必要な情報の収集・共有
その他特定技能外国人の制度を実施するにあたって必要な情報を収集・供給することも協議会の活動内容の一つです。
特に受け入れ企業が倒産した時などの転職支援なども協議会は行っています。
加入手続き
加入手続きの流れは業種によって異なります。
一般的な流れとしては加入申請を行った後に必要書類を郵送やメールなどで送付することで手続きを進めていきます。ほとんどの産業分野がオンライン上での加入申請に対応しています。
ただし、建設業だけは特殊であり、協議会に加入する代わりに一般社団法人建設技能人材機構(JAC)に加入することになります。
加入の流れは一般社団法人建設技能人材機構(JAC)のホームページをチェックしてください。
建設技能人材機構(JAC)入会のご案内|一般社団法人建設技能人材機構
特定技能・技能実習生関連の業務をスムーズに行う方法
外国人を雇用する場合、日本人を雇用する場合よりも手続きが複雑になります。
担当者の業務を圧迫し、特定技能外国人を雇用したにもかかわらず本来の目的である労働力の確保が達成できないという事態を防ぐためにも、手続きや管理をスムーズに行えるよう工夫する必要があります。
以下では特定技能・技能実習生関連の業務を簡略化する方法やツールを紹介します。
オンラインクラウドツール「dekisugi」
「dekisugi」は、特定技能や技能実習生など外国人人材を雇用する上で必要な業務の簡略化をサポートするオンラインクラウドツールです。
dekisugiは各種手続きに必要な書類の作成をサポートしてくれるだけでなく、業務フローをシステム化することが可能なため、業務の引き継ぎやマニュアル作成の手間を省くことができます。
さらにスケジュールやタスク、データの管理を一元化できるので複数人で業務に当たる場合もスムーズに情報共有ができます。
政府・行政が設けているツールの活用
特定技能外国人関連の手続きをオンライン上で行えるよう、政府や行政が専用のツールやポータルサイトを設けている場合もあります。
政府や行政によるオンラインツールを使うことで、自社のオフィスなどからも申請や手続きが可能になります。わざわざ関連施設に赴く必要がなくなるため時間や交通費などの節約も可能です。
さらに手続き内容によってはオンライン上であれば24時間対応になるものも少なくありません。
ただし、利用に際しての登録手続きは郵送での書類の送付などが必要な場合もあります。
行政書士などのサービスの利用
官公庁への書類の作成や提出を業務としている行政書士などのサービスを利用することで、特定技能・技能実習生関連の業務を簡略化することも可能です。
行政書士が行っている業務にはさまざまなものがあるため、利用する場合は外国人の雇用や生活に精通した行政書士を選ぶようにしましょう。
まとめ
特定技能の業種ごとに設けられた協議会は、健全な制度の運用を目的として設置された機関です。
受け入れ企業の加入は必須となっているため、特定技能外国人を雇用する場合は定められた期間内に加入手続きをするようにしましょう。
協議会への加入は、異なる価値観を持ち、日本での生活・労働に慣れていない外国人労働者関連のトラブルを未然に防ぐことにもつながります。さらに優良事例を積極的に取り入れることで職場環境を改善し、外国人だけでなく日本人にとっても働きやすい職場を実現できます。