「特定技能外国人の雇用には全部でいくらかかる」
「費用の項目が多くて把握しにくい」
「委託先によって金額が違って目安が分からない」
このような悩みや不安にお応えします。
一般的な従業員雇用に比べ、特定技能制度は関係する機関や費用が多岐にわたり、そのため全体像や金額の目安を把握することは難しいものです。
そこでこの記事では、過去に2カ国より7名の特定技能外国人を担当した経験と、隈なくリサーチした内容から徹底解説します。
最後までお読みいただくと、制度に関する費用の全体を把握し、一定の目安を持つことができます。
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目次
特定技能外国人の雇用にかかる【初期費用】
はじめに、主な初期費用について解説します。内容は以下の8項目です。
- 登録支援機関または行政書士への委託費用
- 人材紹介費用
- 在留資格更新・変更費用
- 健康診断の受診費用
- 交通費または渡航費用
- 賃貸住宅の契約に関する初期費用
- 日本語教育費用(必要な場合)
- 送出機関に支払う費用
費用の目安としては、一人あたり80〜130万円になります。
初期費用は地域によって目安金額に大きな違いがあり、一概に定めることは出来ないものですが、上記の金額を一つの目安として持っていただければ結構です。
また、国内から採用する場合と国外から採用する場合で、費用に多少の違いがありますので、ケース別に解説します。
国内から採用する場合
送出機関への費用がないことと移動費負担が軽いことから、特定技能外国人の採用を検討する企業からの需要がもっとも高いのは、国内の人材を採用するケースです。
以下で、それぞれの項目と目安金額を記載します。
登録支援機関または行政書士への委託費用|目安:20万円~50万円
特定技能制度を利用しての人材確保に際して、全ての手続きを自社で行うことも可能ですが、それには相当の労力と知識が必要となります。故に、登録支援機関や行政書士へ依頼されるケースが一般的です。
人材紹介費用|目安:30~50万円・採用人材の年収の30~35%
特定技能の資格を有する人材を採用するには、特定技能に特化した人材派遣業者へ依頼することが多い現状です。しかし、依頼する派遣業者によって料金に差があり、目安として1人あたり30〜50万円と金額の幅が大きくなっています。 また、最近では成果報酬制の人材派遣業者が増加傾向にあり、こちらを利用する場合は採用する人材の年収に対して30〜35%が相場です。
在留資格更新・変更費用|目安:5~10万円
在留資格の更新・変更には印紙代として4,000円の負担が必要です。自社で手続きも可能ですが、行政書士に委託した場合5〜10万円の費用が発生します。登録支援機関へ委託する場合は初期支援費用などの名目に組み込まれているのが一般的です。
健康診断の受診費用|目安:1万円
一般的な従業員雇用と同じく、雇入時の健康診断が必要となります。日本人従業員と同様、こちらの費用は受入れ企業の負担となります。
交通費|目安:1~3万円
自社への移動にかかる交通費も受入れ先企業の負担です。近年は格安航空券もあり、遠方からの移動でも比較的リーズナブルな価格に抑えることが可能です。
賃貸住宅の契約に関する初期費用|目安:10~30万円
日本で働く特定技能外国人の多くは技能実習2・3号の修了者で、過去に狭い相部屋生活を強いられた経験を持っています。そのため、就職先を選ぶ際の基準のひとつに、個室であることを重視する人材も多いのが現状です。 アパート等を住居として提供する企業が増加傾向にあり、これらの礼金や敷金を負担しているケースが多くなっています。
日本語教育費用(必要な場合)|目安:短期コース15万円(日本語学校)
実際に仕事へ出るにあたって日本語能力が重要な場合は、教育費用が発生するケースもあります。 受入れ企業に義務付けされている生活支援項目の一つに、日本語教育の機会提供があるためです。 求める日本語レベルによって大きく変わりますが、場合によっては数十万円になることもあります。
国外から採用する場合
国外から人材を採用する場合は、先述の費用に加え以下の項目が必要です。
国内人材と比較すると、負担が大きく魅力は少ないように感じる方もいますが、国外人材を採用するメリットとしては、優秀な人材を発掘しやすい点が挙げられます。
近年、国内の特定技能外国人に対する需要は増加傾向にあり、人材獲得競争は年々激化しています。
国内で意向に合う人材と巡り合えない場合は、こちらのケースを検討するのも打開策として必要です。
主な費用は以下の2つです。
送出機関に支払う費用|目安:10万円~30万円
二国間での協力覚書(MOC)により、海外居住の特定技能人材を採用する場合、送出機関を通じて採用することとなります。この費用には現地での健康診断や、在留資格の取得費用等も含まれていることが一般的です。 国や委託する送出機関により金額に違いがあり、事前に各々の費用を確認した上で人材選定されることが得策と言えます。
渡航費用|目安:10万円
居住地域によって差はありますが、片道10万円が一つの目安になります。渡航費は受入れ企業に負担の義務はなく、採用人材と事前に話し合って承諾を得られれば、本人に負担してもらうことも可能です。 しかし、特定技能外国人には大きな出費となるため、そのことが原因で内定辞退に至るケースもあり、魅力的な求人にするために渡航費は受入れ企業負担としているケースも多いのが現状です。
【初期費用】ここがネック!人材紹介料
特定技能人材の雇用費用として、人材紹介料がネックとなることが多くなっています。
現在、人材確保の手段は人材派遣会社への依頼が主となっていますが、依頼先によって費用に差があり、予算が立てにくいものです。
一人当たりの費用は30〜50万円と高額になっており、ここをいかに抑えるか否かで全体的な費用が大きく変わる項目になります。
そのため、自社で人材を開拓する企業も多くなっており、主な手段としては、自社サイトでの募集とSNSの活用、そして既存の特定技能外国人への紹介依頼です。
自社サイトで募集をかける際に、新たなシステム構築に費用を費やすことになりますが、一度作成すればその後の費用発生が少なく、費用対効果は良いと言えます。
また、FacebookなどのSNSサイトの活用も有効な手段です。「SSW JAPAN」などと検索すると複数のコミュニティーが立てられており、最近ではここへ求人を投稿する企業をよく目にします。
そして、既存の特定技能外国人から紹介してもらう方法も有効です。
特定技能外国人の多くは技能実習生時代の同僚と絆が強く、別の職場に移っても連絡を取り合い情報交換しています。
自社や付き合いのある企業に既存の特定技能人材がいれば、紹介依頼を検討してみるのも費用削減に有効です。
以上のように、多少の労力がかかりますが、自社でも人材を確保する手段はあります。
成果が出るまで時間を要するため、長期的な視点で継続して取り組むことを前提に実践されることをオススメします。
雇用後にかかる主な費用【ランニングコスト】
次に、雇入れ後の主な費用について解説します。主な費用は以下5項目です。
- 登録支援機関への委託料
- 家賃・生活費の補助
- 在留資格更新費用
- 給与
- 健康診断費用(年に1回以上)
こちらも、以下でそれぞれの項目と目安金額を順番に解説します。
登録支援機関への委託料|目安:月額3~4万円
特定技能外国人を雇用する企業の多くは、登録支援機関を利用します。その理由は、受入れ企業に義務付けされている、特定技能外国人への生活支援の内容です。
以下、義務付けされている生活支援の内容です。
- 入国事前ガイダンス
- 就業後生活オリエンテーション
- 日本語教育の機会提供
- 日本人との交流促進支援
- 医療機関情報の提供
- 銀行口座開設の支援
- 携帯電話契約の支援
- 出入国時の送迎
- 定期的な面談の実施(年に4回)
- 解雇される場合の転職支援
- 関係機関への同行
- 相談や苦情の受付対応
- 防犯や防災に関する情報提供
- お部屋探しの支援
- 生活に必要な契約に関わる支援
- 地方公共団体に関する情報提供
これらの業務を本業以外で実施するとなると、莫大な労力が必要になります。さらに、コミュニケーションを取る上で必ず言葉の壁に直面しますので、誤解防止への配慮も必要になります。
そのため、多くの受入れ企業は生活支援を登録支援機関へ委託しているのが現状です。
家賃・生活費の補助|目安:特定技能外国人が月額2万円程度を負担
家賃・水道光熱費などの生活費を、受け入れ企業が負担するケースが一般的です。負担割合に正式な決まりはありませんが、切り詰めた生活を送る特定技能外国人にこれらの負担を大きく負わせると、退職希望へと繋がるケースも見受けられます。 目安として、特定技能人材に月額2万円を負担させ、差額を受入れ企業が負担する割合が妥当と言えます。受入れ企業側で最大限に補助し少しでも長い期間働いてもらうことで、初期費用の回収につながりますので、十分に検討が必要です。
在留資格更新費用|目安:年1回4,000円(印紙代)
基本的には印紙代のみの負担ですが、申請業務を委託する場合にはその費用が発生することもあります。登録支援機関の中には、月間管理費の中に含めているところもあるので、事前に確認が必要です。
給与|目安:日本人従業員と同水準
特定技能の給与は、日本人の正社員と同額以上と定められています。特に賞与や各種手当も、日本人同様に付与する必要があり、決してランニングコストが安いとは言えません。
健康診断費用|目安:1万円
給与と同じく、健康診断費用に関しても日本人と同様に行うことが必要です。この項目は、在留資格更新の際にチェックされますので実施が必要です。
以上のように、日本人従業員を雇用する場合に比べ、追加で発生する費用があります。
費用の面ではコストパフォーマンスが良いとは言えませんが、優良な人材を確保する目的であれば、深刻化している人手不足を補うための手段として、有効であることは間違いありません。
独自の費用にご注意!
業種や雇入先国の制度によって、追加で費用が発生するケースがありますので、雇用の前には確認が必要です。
建設業のJACとフィリピンのPOLOにかかる費用は、負担が大きいため必ず事前に確認を要します。
【JAC】建設業で人材を受け入れる|目安:年会費24万円+月額1.25~2万円
JACの正式名称は『一般財団法人建設技能人材機構』です。
建設業は以前より劣悪な労働環境や低賃金など、労働環境が問題視されています。そんな中で、特に外国人労働者に対する扱いが懸念され、主にそれらを監視・排除するためにJACが設立されました。
建設業で特定技能外国人を受け入れるには、このJACへの加入もしくはJAC会員の建設事業団体に所属することが必要です。いずれの場合においても、他の業種にない費用が発生しますので、注意が必要です。
JACの費用は年会費24万円と月額1.25〜2万円の負担金になります。月額負担金は特定技能外国人ひとりあたりの金額になりますので、例えば3名だと3.75〜6万円の負担です。
月額負担金は採用される人材により金額が変わりますので、事前に確認が必要です。
建設業での採用を検討している企業には、技能実習2・3号修了者をオススメします。
技能実習2・3号を修得していれば、JACへの月額費用は1.25万円になりますので、検討の際はこの在留資格を有する人材を選ぶことが、最も費用を抑えられる為です。
【POLO】フィリピンより人材を受け入れる|目安:一人あたり15万円
POLOの正式名称は『駐日フィリピン共和国大使館海外労働事務所』です。その名前からも想像できる通り、フィリピン大使館に拠点を構え、日本で働く自国の労働者を管理する事務所になります。
また、現地にはフィリピン海外雇用庁(POEA)があり、厳密にはこのPOEAとPOLOの2機関から採用許可を得ない限り、フィリピン人の特定技能外国人を受け入れできません。
本来は国内人材に関してこの手続きは不要なのですが、フィリピン人の人材を採用する際は国の内外を問わず必須です。そのため、これらの書類を登録支援機関などに委託することになり、追加費用が発生します。
POLOへの書類作成費用だけでも負担が大きいのですが、さらにフィリピンには独自のルールとして、送出機関の管理費として一人あたり1万円の負担が必要です。
つまり、他国の場合と比較すると初期費用で15万円、月額管理費で1万円余分に費用が発生します。
ここまでの内容で、フィリピン人を雇うメリットがないように感じる方もいるかと思います。
しかし、実際には特定技能として就労している人材の中で、ベトナム・インドネシアに続き、3番目に多いのがフィリピンです。
その理由は国民性にあり、勤勉で真面目、そして明るい性格の人間が多いためです。非常に人懐っこく上司や同僚とコミュニケーションを取り、職場で愛されるキャラクターでもあります。
故に、チームワークを重視する職種には、好んで選ばれる傾向にあるのも事実です。
まとめ
以上ここまで、特定技能外国人の雇用にかかる費用について解説してきました。
技能実習制度と密接な関係にあり、様々な面で比較されることの多い両制度ですが、その費用には大きな差があり、特定技能制度は費用対効果が少ないように感じられることもあります。
それでも特定技能外国人の数は年々上昇傾向にあり、選ばれる主な理由は各業種における技能の高さと日本語能力の高さです。
深刻化する人手不足の打開策として、特定技能外国人は即戦力として期待値が高く、今後も制度利用が増加することが予想されます。
2019年4月の制度開始からまだ日も浅く制度改定も予想されますが、人材確保が深刻な課題となっている業種が多い日本社会にとって、希望の光となる可能性を大いに秘めています。
この記事が、皆さまの人材選定の一助となれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。