飲食料品製造業の人手不足の現状と、その打開策

飲食料品製造業の人手不足の現状と、その打開策

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飲食品製造業は、国民の食生活を支える重要な産業です。しかし近年、同業種は深刻な人手不足に直面しており、早急な対策が必要とされています。
この記事では飲食料品製造業の人手不足の現状や、課題、対策などについて説明します。

飲食品製造業の人手不足ってどうなってるの?

飲食品製造業の人手不足ってどうなってるの?

飲食品製造業は人手不足が深刻

農林水産省の有効求人倍率の増減によれば、同分野の有効求人倍率は大変低いことがわかります。
飲食品製造業の有効求人倍率は、全国平均で2021年度は2.19倍です。
地域差が大きく、特に人手不足が深刻な福井県では、5.61倍であることがわかっています。全国的には一人の飲食品製造業での求職者に対し、2件以上求人があり、地域によっては5件もの求人があるということです。
2倍以上でも人を探すことが難しいため、4倍5倍となってくると、対策を打たないと人手不足解消はほとんど絶望的とさえ言えます。

少子高齢化が原因

ではどうして、飲食品製造業では、ここまで人手不足が深刻なのでしょうか?
理由は様々ありますが、まず少子高齢化が原因としてあげられます。

日本は急速な少子高齢化の影響を受け、若い人口の減少が始まり、今後もますます減少していくと予測されています。具体的には、厚生労働省の調査によると、2023年の日本の総人口は1億2471万人であり、2010年のピーク時(1億2805万人)から減少しています。高齢化の進行により人口減少はどんどん進み、2050年には1億人を下回ると予測されています。

そして15歳から64歳までの労働力人口は、2023年には約7200万人、2050年には約6000万人まで減少すると予測されています。

業種による需要のギャップ

また、業種による需要のギャップが大きく、人気がある仕事に人材が集まるのも人手不足を加速させる原因です。
一部の業種に人材が集まる一方、飲食品製造は求人を行ってもなかなか人が集まらない業種のひとつとなっています。食品業界は、アルバイトなどの非正規雇用が多く短期間で離職するケースも見受けられ、採用した人材が企業に根付かない点が課題です。
加えて、賃金が比較的低く廃業率が高い傾向のため、業界を避ける求職者も多いと考えられます。

外国人労働者は増加している

コロナの影響により、一時的には外国人労働者は大幅に減りました。2020年には182万人も外国人労働者がいましたが、2021年には156万人にまで減少しました。

ですがこれは一時的なものでした。
2023年には、なんと過去最多を更新して外国人労働者数が200万人を超えました。12.4%増で、この増加率も過去最大となっています。それに比例して外国人労働者を雇用する事業所数も過去最高を更新しました。

外国人労働者の国籍別の割合は、変わらずベトナムが最も多く約52万人、続いて中国が約40万人、フィリピンが22万人となっています。

飲食料品製造業でも、これに伴い外国人労働者は増えており、令和4年には約15万人となっており、令和3年と比較すると1万人増加しています。10年前と比較すると8.6万人の増加で増加率は約240%です。

飲食品製造業の人手不足で起こる問題

飲食品製造業の人手不足で起こる問題

飲食品製造業においては人手不足が深刻ですが、それはどのような問題を引き起こすのでしょうか。2つの視点から見ていきます。

食品の生産量や品質が下がる

飲食品製造業の仕事の多くは、人手を必要とする工程が多いです。
IT化が進んでいるとはいえ、2021年の同業界の労働力構成比は約40%です。製造業全体が約27%であるため、ほかの業界に比べて人手が必要であることが数字からもわかります。
そのため人手不足が続くと、主に以下のリスクが発生します。

生産量の低下

人手不足が起こると、生産ラインの稼働率が低下します。すると当然生産量が減少します。実際にこの生産量の低下は起きており、2021年の食品製造業の生産量は前年比0.5%減少という結果になっています。

品質の低下

人手不足のために作業工程を簡略化せざるを得ない場合が出てきます。
この簡略化により、品質管理が甘くなったり、製品の品質が低下したりするリスクがあります。
実際、食品製造業における品質事故の件数は近年増加傾向にあり、人手不足がその一因であると指摘する声もあります。

ほかにも、人手不足によって生産スケジュールが遅延したり、人手不足を補うために人材派遣や機械設備への投資が必要となって、コストが増加したりというデメリットもあります。

事業縮小や倒産のリスクが高まる

人手不足がもたらす負のスパイラルの結果、事業縮小などが余儀なくされる場合があります。

顧客満足度低下と収益への悪影響

人手不足によって品質が落ちると、顧客満足度の低下につながります。
また当然、人手不足によって生産量が減少すれば、その分得られる純利益も減少します。
品質の低下で評判を落とし、さらにそもそもの生産量が減少することにより、企業経営に深刻な影響を与えるケースが実際にあります。

人件費の増加

さらに人手不足は求人広告にかける金額を増加させたり、給与を増やさねばならなかったりということにつながります。
人件費などに想定外の金額がかかり、設備投資などに資金を割けず、事業の維持・拡大が困難になり、事業規模の縮小を余儀なくされる場合があります。

実際に人手不足による納期遅延が顧客離れを招き、事業縮小を決断した企業があります。また品質クレームの増加に対応するため人材育成の投資をしたにもかかわらず、人件費の増加が経営を圧迫して、倒産した企業も出てきています。

飲食品製造業の人手不足を解消するには

飲食品製造業の人手不足を解消するには

飲食品製造業における人手不足の影響について見てきました。
では同分野の人手不足を解消するためには、どうすればよいのでしょうか。

労働環境改善

人手不足を解決するためには、働き方や労働環境を改善することが必要です。
そのことが飲食品製造業のマイナスイメージの払拭や、離職率の低下につながります。
労働環境改善については、以下5つの観点から説明していきます。

長時間労働の削減

過重労働は、すでに働いているスタッフにとっても、求職者にとっても大きなマイナスポイントです。
長時間労働が常態化している職場は、人材が早期に退職してしまう可能性も高くなり、なおかつ採用活動においても不利になります。
厚生労働省の調査によると、過重労働が原因で離職した人は全体の約2割に上っており、早急な対策が必要です。

休暇取得の促進

休暇取得の促進も重要です。
現在は、ワークライフバランスを重視する若者が非常に増えています。
そのためワークライフバランスの向上に貢献して、モチベーションを向上させることは、離職防止につながります。実際に政府が働き方改革を推進しており、年次有給休暇の取得義務化など、休暇取得を促進する政策が次々に打ち出されています。

自動化・省力化

飲食料品製造業にはどうしても、3K(きつい、汚い、危険)のイメージがあるようです。
そのため3Kに該当する作業は、ロボットやAIなどの先進的な技術を活用し、自動化を進めるとよいでしょう。
人手不足の解消と労働環境の改善、双方に効果があります。

賃金の向上

働き方を改善することができたら、可能であれば、賃金をあげると良いでしょう。
いうまでもなく、求職者にとっても、現在働いているスタッフにとっても、最も重視するポイントとなるからです。
しかし残念ながら、食品製造業は他の産業と比較して賃金水準が低い傾向があります。
その傾向こそが、人材確保の大きな課題となっています。
最低賃金の引き上げや、労働に見合った賃金体系を構築することが重要です。

働き方の多様化

続いて、人手不足解消のために「働き方の多様化」について、考えていきます。
現状、週3日テレワークでOKだったり、フルリモートだったりという職場が増えています。
中でもIT企業の場合には、パソコンとオンライン環境があれば業務が成立することが多いため、特に多様な働き方が許されていると言えるでしょう。
飲食料品製造業の場合には、難しい場合も多いと思われます。
ですが会議がメインの日にはテレワーク可能などを打ち出すと有効です。

また介護や子育てをするスタッフのため、時短勤務や時差出勤などの制度を積極的に取り入れていくことも有効です。

外国人労働者の受け入れ拡大

また人手不足解消には、外国人労働者の積極的な受け入れが重要であると考えられています。
実際に現在、多くの産業分野において、外国人労働者は重要な役割を担っています。
今日本で働いている外国人労働者の数について、まず見ていきます。
令和5年10月末時点で、外国人労働者数は204万人を超えました。過去最高を更新しており、前年増加率は12.4%となっています。

ここまで外国人労働者が増えた理由として、まず特定技能制度の導入が強く影響していると考えられています。
特定技能は、国内人材の確保が困難な産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とした在留資格です。
実際、技術的な分野の外国人労働者数は前年に比べて21.7%増加しており、特定技能制度の導入は、食品製造業をはじめとする多くの産業分野の人手不足問題解決に、貢献してきました。

ロボットの導入

ロボットの導入も、人手不足に苦しむ同業界にとって、有効な方法だと考えられています。
ですがロボットの導入には現状、課題が多いと言わざるを得ません。
飲食料品製造業では、何より衛生面を重視しなければなりません。
ですがロボットを多く導入した環境で、衛生管理や品質管理を徹底することは簡単ではありません。
また食材や生産規模が日々変化する環境が多く、完全な自動化が難しいという課題がありました。
そのためロボットに作業全体を行ってもらうのではなく、人とロボットのそれぞれの強みを活かすことで、作業効率と安全性を向上できるように協働で働くスタイルが取り入れられています。
ロボットが単純作業を担い、作業員は付加価値の高い作業に集中するというスタイルです。

人手不足を解消する方法として、以上のような労働環境の改善や、外国人労働者の積極的な受け入れ、さらにロボットとの協働などがありますので、これら解決策を複数取り入れていくことができれば、環境が変わっていくと思われます。

まとめ

飲食品製造業は人手不足が深刻

飲食品製造業の有効求人倍率は、全国平均で2021年度で2.19倍です。
地域差が大きく、特に人手不足が深刻な福井県では、5.61倍であることがわかっています。

少子高齢化が原因

人手不足が深刻な理由として、まず少子高齢化が原因としてあげられます。
高齢化の進行により人口減少はどんどん進み、2050年には1億人を下回ると予測されています。15歳から64歳までの労働力人口は、2023年には約7200万人ですが、2050年には約6000万人まで減少すると予測されています。

生産量の低下

人手不足が起こると、生産ラインの稼働率が低下して生産量が減少します。

品質の低下

人手不足のために作業工程を簡略化せざるを得ない場合が出てきます。
この簡略化により、品質管理が甘くなったり、製品の品質が低下するリスクがあります。

顧客満足度低下と収益への悪影響

人手不足によって、品質が落ちると、顧客満足度を低下させる事態につながります。
また当然、人手不足によって生産量が減少すれば、その分得られる純利益も減少します。

人件費の増加

さらに人手不足は求人広告にかける金額を増加させたり、給与を増やさねばならなかったりということにつながります。

長時間労働の削減

人手不足を解決するためには、働き方や労働環境を改善することが必要です。
過重労働は、すでに働いているスタッフにとっても、求職者にとっても大きなマイナスポイントです。
長時間労働が常態化している職場は、人材が早期に退職してしまう可能性も高くなり、なおかつ採用活動においても不利になります。

休暇取得の促進

ワークライフバランスの向上に貢献して、モチベーションを向上させることにより、離職防止につながります。

自動化・省力化

3Kに該当する作業は、ロボットやAIなどの先進的な技術を活用し、自動化を進めるとよいでしょう。

賃金の向上

残念ながら、食品製造業は他の産業と比較して賃金水準が低い傾向があります。
その傾向こそが、人材確保の大きな課題となっています。
最低賃金の引き上げや、労働に見合った賃金体系を構築することが重要です。

外国人労働者の受け入れ拡大

技術的な分野の外国人労働者数は前年に比べて21.7%増加しており、特定技能制度の導入は、食品製造業をはじめとする多くの産業分野の人手不足問題解決に貢献してきました。

ロボットの導入

現在はロボットに作業全体を行ってもらうのではなく、人とロボットのそれぞれの強みを活かすことで、作業効率と安全性を向上できるように協働で働くスタイルが取り入れられています。

飲食料品製造業の人手不足は品質の低下につながり、労働環境に対しても悪影響になります。特定技能外国人の雇用は人手不足の解消につながります。企業は品質や顧客満足度をあげるため、特定技能外国人の雇用を検討すると良いでしょう。

この記事を書いたライター
カナエル運営事務局

カナエル運営事務局

外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。