ビルクリーニング業界の人手不足の解消方法

ビルクリーニング業界の人手不足の解消方法

ニュース・特集外国人雇用特定技能

近年、ビルクリーニング業界では人手不足が深刻化しています。その背景には、少子高齢化による労働力不足や女性の社会進出、労働環境の悪化などがあげられます。
またビルクリーニング業の需要自体が高まっていることも、深刻な人手不足の要因であると考えられています。
本記事では、ビルクリーニング業界の人手不足の現状や、解決するためにはどのような取り組みが必要なのかを説明します。

ビルクリーニング業界の人手不足の現状

ビルクリーニング業界の人手不足の現状

まずビルクリーニング業界の人手不足の現状について、簡単に見ていきます。
ビルクリーニング業界では人材が需要に比べて著しく足りておらず、また高齢化が進んでいます。
厚生労働省によると、ビル・建物清掃員の労働者数は約16万人、平均年齢は54.7歳でした。ほかの産業に比べて、平均年齢が極めて高いことがわかります。
また平均月給金額は、約21万5千円と、ほかの産業に比べて低調であることがわかっています。
需要に比べて従事者が少ないこと、平均年齢が高いこと、また賃金がIT関連業などに比べて低調で若者人気がないこと、これらを鑑みて外国人労働者の積極雇用が始まりました。
ですがビルクリーニング業界の外国人労働者の数は非常に少ないです。技能実習生の受け入れ人数は全体で約36万人ですが、ビルクリーニング職種の技能実習生は1.5%ほど、わずか5000人程度にとどまっています。特定技能外国人の場合には、全体のわずか1%程度となっています。
日本の若者の人気があまりないため高齢化が進み、外国人人材の受け入れにも苦戦していることがデータなどから明らかとなっています。
ちなみに人手不足を如実に表す有効求人倍率ですが、2020年6月時点で、全産業の平均より1.5倍高いとビルクリーニング分野における外国人材受入れ体制適正化調査事業報告書から明らかとなりました。

人手不足の原因

人手不足の原因

人手不足の原因として、以下の3つがあげられます。

少子高齢化による労働力不足

ビルクリーニング業界の従事者の多くは、前述のとおり、50代以上になっています。労働時間が長いイメージだったり、きつい・汚いなどのネガティブなイメージを持たれてしまっていることもあり、ただでさえ減っている若者の人気を集められていません。

女性の社会進出

以前はビルクリーニング業界は女性の就業者比率が高い業界の1つでした。
しかし近年は女性の社会進出が進み、他の業界への流出が進んでいます。
それ自体は社会にとって決してマイナスなことではありませんが、それが実際、ビルクリーニング業界の人手が不足した一因であることは間違いないようです。
ちなみにですが、女性スタッフがほかの業界に流れたとはいえ、ビルクリーニング業界ではいまも女性比率が高いです。最近の調査では、従業員の約70%が女性であることがわかっています。ビルクリーニングに限らず、一般清掃業務でも、従業員の約71%が女性となっています。
女性従業員が多い理由として、3時間程度の短時間の業務から始められる職種であること、また女性用トイレなどの掃除があるためビル側も女性スタッフを求めていることなどがあげられます。

労働環境

不規則な勤務になりがちなこと、長時間労働が発生しがちなことも、人手不足の要因の一つといえるでしょう。
ビルクリーニング業自体は、非常に意義のある仕事です。その名前の通りオフィスビルなどの清掃に従事します。具体的な業務内容としては、オフィスビルの廊下や階段、トイレ、エレベーターやエスカレーター、そして地下や屋外にある駐車場の清掃などを行います。
日中に働くこともできますが、早朝や深夜の勤務が発生する場合があります。
日中には当然、これらのオフィスビルでビジネスマンが働いています。そのためビルで働いている人たちに配慮をして、勤務時間が早朝や夜間になるケースがあるわけです。やむを得ないことではありますが、日中に働くことができる仕事に比べて、早朝勤務や夜間の勤務が発生するタイプのこのような仕事は、それだけで避けられがちです。
また人手が不足しているため、一人で複数の現場を回らなければならず、労働時間が長くなってしまうというケースが多々あります。

ビルクリーニング業界の人手不足による影響

ビルクリーニング業界の人手不足による影響

ビルクリーニング業界の人手不足が、今後も解消されないと以下の問題を引き起こしています。

衛生状態の悪化と、質の低下

人手不足により、仕事の質が低下する恐れがあります。
人手不足でスタッフの負担が大きくなり、従業員が一つ一つに割ける時間が短くなります。すると当然、仕事の質が低下するというリスクが出てきます。またこれ以上、人手不足が深刻化すると、さらに仕事の質が落ちることにつながり、ビルの衛生状態が悪化して、ビルの利用者の健康を損なう事態に発展する可能性もあります。

コスト増

ビルクリーニング従事者が減少すると、ビルの衛生状態を良好に保つための資金が上がり、その上昇分が賃貸料に反映され、賃料が上昇するなどします。
実際、ビルクリーニング業界の人手不足が深刻化しているために、一部のオフィスビルでは、トイレやエレベーターホールの掃除などは、そのフロアに入っている企業が行うというルールを敷く対策を取り始めました。

安全性の低下

こちらも深刻な問題となっています。
人手不足により、従業員の負担が増加すると、当然疲労や集中力の欠如などにつながっていきます。ビルクリーニング業には、様々な仕事がありますが、なかには高所での作業なども存在しています。これら高所での作業には、危険がつきものですが、これらの作業の安全性が、疲労や異常な業務量などで低下する可能性があります。

ビルクリーニング業界の人手不足を解決するための取り組み

ビルクリーニング業界の人手不足を解決するための取り組み

ビルクリーニング業界の人手不足を解決するためには、外国人労働者の積極的な受け入れや、業務の効率化などの対策が必要だと考えられています。
以下で詳細に解説をしていきます。

外国人労働者の受け入れ拡大

外国人労働者の受け入れ拡大は、ビルクリーニング業界の人手不足を解決する有効な手段として期待されています。
なかでも2019年に始まった特定技能制度が注目されています。
在留資格「特定技能」は、技能実習と違い、ビルクリーニング業の最低限の基礎知識と、最低限の日本語能力をチェックするテストにパスしないと取得ができません。
そのため技能実習生と違い、即戦力としての活躍が期待できます。
そして在留資格「技術・人文知識・国際業務」のように、大学を卒業していないと取得が困難などというわけではなく、試験にパスすれば基本的には誰でも取得することができます。
ルールの改正で、短期滞在のビザで日本に来て試験を受けて、特定技能を取得するということも可能になったので、ますます取得のハードルが下がりました。

業務の効率化

また人を積極的に雇うだけではなく、業務の効率化も重要となります。
具体的には、ロボットやAIなどの活用、業務の標準化・マニュアル化などが考えられます。
特に外国人労働者を積極的に雇用するのであれば、最低限の日本語知識はありますが、決して堪能とは言えないので、母国語の業務マニュアルを用意するなどするとよいでしょう。
一人一人の仕事の質を上げ、なおかつ効率的に業務が行えるようにすることがポイントとなります。

労働環境の改善

労働環境の改善もまた重要です。
いうまでもなく、ビルクリーニング業界の労働環境が改善に向かうことは、若者の就職意欲を高めることにつながります。簡単ではありませんが、具体的には、長時間労働を是正したり、賃金アップを試みたりすることなどが、重要であると考えられています。

外国人労働者の活用に向けた取り組み

最後に、ビルクリーニング業界の人手不足解消の一手である、外国人労働者の活用に向けた取り組みについて、簡単に説明します。

特定技能制度の導入

2019年に特定技能制度が導入されました。
特定技能制度は、ビルクリーニング業界だけではなく、人手不足が深刻な12業種で、外国人労働者を受け入れることができる制度です。
特定技能制度では、外国人労働者に能力をいかんなく発揮してもらうため、受け入れ先企業に支援を義務付けています。
具体的には、住居の確保をはじめ、ごみの分別や捨て方、銀行口座の開設方法、切符の買い方や電車の乗り方など、日本で問題なく生活できるような支援です。
これら支援をしっかり行うことができないと受け入れることができないため、まずは外国人労働者を受け入れるための環境の整備が必要となります。

まとめ

最後に、全体の内容を簡単にまとめます。

ビルクリーニング業界の人手不足の現状

ビルクリーニング業界では、技能実習生の受け入れ人数も非常に少なく、全体の約36万人のうち、ビルクリーニング職種の技能実習生は1.5%ほど、わずか5,000人程度です。特定技能外国人の場合には、全体のわずか1%程度となっています。

少子高齢化による労働力不足

人手不足の理由についてみていきます。
まず労働時間が長いイメージだったり、きつい・汚いなどのネガティブなイメージを持たれてしまっていることもあり、IT業界などに比べて、ただでさえ減っている若者の人気を集められていません。

女性の社会進出

以前はビルクリーニング業界は女性の就業者比率が高い業界の1つでした。
しかし近年は女性の社会進出が進み、他の業界への流出が進んでいます。
ちなみにですが、女性スタッフがほかの業界に流れたとはいえ、ビルクリーニング業界ではいまも女性比率が高い業界になっています。最近の調査では、従業員の約70%が女性であることがわかっています。
ビルクリーニング業界の人手不足が今後も解消されないと、以下の問題を引き起こしています。

労働環境

ビルクリーニング業界では、長時間労働や低賃金などの課題もあります。そのため若者の就職意欲が低下して、人が集まりにくくなっています。

衛生状態の悪化と、質の低下

ビルクリーニング業に従事するスタッフの負担が、人手不足で大きくなり、従業員が一つ一つに割ける時間が短くなります。すると当然、仕事の質が低下するというリスクが出てきます。またこれ以上人手不足が深刻化すると、さらに仕事の質が落ち、衛生状態が悪化して、利用者の健康を損なう事態に発展する可能性もあります。

コスト増

従事者が減少すると、ビルの衛生状態を良好に保つための資金が上がり、その上昇分が賃貸料に反映され、賃料が上昇するなどします。

安全性の低下

高所での作業などもありますが、これら危険がつきものの作業の安全性が、疲労や異常な業務量などで、低下する可能性があります。

外国人労働者の受け入れ拡大

2019年に始まった特定技能制度が注目されています。
在留資格「特定技能」は、技能実習と違い、ビルクリーニング業の最低限の基礎知識と、最低限の日本語能力をチェックするテストにパスしないと取得ができません。
そのため技能実習生と違い、研修などに割く時間は当然必要ですが、少なくて済みますし、また即戦力としての活躍が期待できます。

業務の効率化

ロボットやAIなどの活用、業務の標準化・マニュアル化などが有効です。
特に外国人労働者を積極的に雇用するのであれば、最低限の日本語知識はありますが、決して堪能とは言えないので、英語の業務マニュアルを用意するなどするとよいでしょう。

労働環境の改善

長時間労働を是正したり、賃金アップを試みたりすることなどが、重要であると考えられています。

特定技能制度の導入

2019年に特定技能制度が導入されました。
特定技能制度は、ビルクリーニング業界だけではなく、人手不足が深刻な12業種で、外国人労働者を受け入れることができる制度です。ですが支援をしっかり行うことができないと受け入れることができないため、まずは受け入れるための環境の整備が必要となります。
ビルクリーニング業界の人手不足は、深刻な問題となっています。
解決するためには、外国人労働者の活用、業務の効率化、労働環境の改善など、さまざまな取り組みが必要となります。

この記事を書いたライター
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外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。