在留資格変更許可申請書とは、在留資格を変更するための申請です。
日本に在留している外国人が在留資格を変更しなければならないケースとして、留学生が日本の企業に採用され、就職する場合などがあげられます。
在留資格を変更するときは、現在所持している在留資格の有効期限内に申請手続きを行わなければならないので、余裕をもった準備が必要です。
また、新しい在留資格を得るためには資格試験の受験・資格の取得が必須となる場合がありますので、注意が必要です。
在留資格変更許可申請書について、申請方法や注意点を詳しく解説していきます。
目次
在留資格変更許可申請書とは
在留資格変更許可申請書とは、日本に在留している外国人が、現在所持している在留資格から別の在留資格に変更したいときに申請手続きを行うための書類です。
在留資格変更の申請をして、許可がおりると、新しい在留カードが交付されます。
在留資格とは、日本に在留する外国人の在留目的を定めたものです。日本に滞在する外国人は必ず必要な資格です。在留資格の種類には、留学ビザといわれる学ぶための在留資格、就労ビザといわれる働くための在留資格、在留資格をもつ外国人の家族に与えられる「家族滞在」などがあります。
たとえば、日本に滞在している外国人留学生は、日本の大学や専門学校に通うために「留学」という在留資格で日本に入国しています。この外国人留学生が日本で就職活動を行い、企業から内定をもらった場合はどうでしょうか。
もちろん、在留資格「留学」のままでは、日本の企業から内定をもらっていたとしても、卒業後そのまま就職することができません。就労ビザといわれる、日本で就労することができる在留資格に変更する必要があります。
在留資格変更許可申請書は、在留資格法の第20条第2項に基づいて、在留資格の変更を希望する外国人が管轄の出入国在留管理庁に申請書を提出する必要があります。
在留資格を「留学」から就労関連の在留資格に変更する場合は、就労先の会社で発行された雇用契約書や在職証明書などの書類も提出する必要があります。
また、在留資格変更申請許可書を申請した外国人は、在留カードの裏面に申請中であることが記載されます。
法務省出入国在留管理庁の審査について
在留資格変更審査を希望する外国人は、管轄の地方出入国在留管理局に申請書を提出します。
在留資格変更審査では次のことに注意が必要です。
- 変更後の在留資格に該当する活動を行うための資格や条件を満たしていることを証明する書類を準備する
- 変更後の在留資格に該当する活動を行うための資金や生活基盤があることを証明する書類を準備する
法務省出入国在留管理庁の在留資格変更審査とは、日本に在留している外国人が所持している在留資格を別の在留資格に変更するために行う審査になりますので、出入国在留管理庁で行われます。
在留資格変更審査の審査期間は、申請書の提出から約2か月程度です。申請の認可後には、変更後の在留資格の在留カードが交付されます。
出入国在留管理庁の審査は次のような事項を審査します。
- 変更後の在留資格に該当する活動の資格や条件を満たしているか
- 変更後の在留資格に該当する活動の資金や生活基盤が整っているか
- 日本に滞在する理由が正当か
- 日本への滞在が国益に適しているか
在留資格変更許可申請
在留目的が当初のものと変わってしまった場合には、新しい在留資格への変更申請を行う必要があります。在留資格変更許可申請は、在留資格法の第20条第2項に基づいて在留資格の変更を希望する外国人は、管轄の出入国在留管理局に申請書を提出します。
申請書には、氏名、生年月日、国籍、現在留資格、変更後の在留資格、変更の理由、変更後の在留期間などを記載する必要があります。留学から就労に変更する場合は、就労先の企業から発行された雇用契約書や在職証明書などの書類も提出します。
申請が許可されると、変更後の在留資格の在留カードが交付されます。
在留資格変更許可申請の手続きは次のとおりです。
- 申請書をダウンロードして必要事項を記載する
- 変更後の在留資格に応じて必要な書類を準備する
- 申請書と提出書類を管轄の地方出入国在留管理局に提出する
申請の流れ
この申請は、原則として本人が行う必要があります。
在留資格変更許可申請の流れは次のとおりです。
- 法務省のホームページから在留資格変更申請書をダウンロードして、必要事項を記載します
-
変更後の在留資格に応じて、必要な書類を準備します
- パスポートおよび在留カード
- 履歴書
- 申請理由書(任意提出)
- 雇用契約書のコピーなど就職する会社からの書類
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申請書と提出書類を、管轄の出入国在留管理局に提出します
- 申請する外国人本人が必要書類を提出します
申請が許可されると、地方出入国在留管理局から許可通知書が交付されます。許可通知書には、変更後の在留資格の在留カードの交付日などが記載されています。この後、在留カードの交付を受けることで、在留資格が変更されます。
不許可の場合
在留資格変更許可申請が不許可となった場合には、申請者は不許可決定通知書を受け取ります。不許可決定通知書には、不許可の理由などが記載されています。
不許可の理由としては、次のようなものがあります。
- 変更後の在留資格に該当する活動を行うための資格や条件を満たしていない
- 変更後の在留資格に該当する活動を行うための資金や生活基盤が整っていない
- 日本に滞在する理由が正当ではない
- 日本への滞在が国益に適さない
不許可決定通知書を受け取った申請者は、不許可決定に対して不服申立てを行うことができます。不服申立ては、不許可決定通知書を受け取った日から60日以内に、出入国在留管理庁長官に対して行う必要があります。
不服申立ては、入国審査官が行った審査のやり直しではありません。不服申立てを行うと、入国審査官の上級者である審査官が、再び審査を行います。
不服申立ての結果、不許可決定が取り消され、申請が許可されることもあります。
就労の「在留資格」の活動内容と許可基準
日本で就労することができる在留資格を取得することができれば、就労先との雇用契約に基づく就労活動を行うことができます。また、就労活動の内容に沿った在留資格を保有していなければならないので、就職をきっかけに在留資格を変更するときは就職先の採用担当の方などと協力して書類の作成・準備をして、申請を行っていきます。
就労の在留資格を取得すれば次の活動を行うことができます。
- 雇用契約に基づく就労
- 特定活動に基づく就労
- 経営・管理に基づく就労
- 投資・経営に基づく就労
- 技能実習に基づく就労
- 特定技能に基づく就労
就労の在留資格の許可基準は、次のとおりです。
- 就労先の企業や事業所から雇用契約または労働許可の書類を取得していること
- 就労に必要な資格や技能を有していること
- 就労に必要な資金や生活基盤があること
- 日本に滞在する理由が正当であること
- 日本への滞在が国益に適すること
許可基準は、在留資格の種類によって異なります。
雇用契約に基づく就労の許可基準は次のとおりです。
- 雇用契約が、日本で就労する資格を有する外国人に対して、適正な労働条件で締結されていること
- 雇用先の企業や事業所が、適正な経営を行っていること
特定活動に基づく就労の許可基準は次のとおりです。
- 特定活動に基づく就労を行うための活動内容が、在留資格法に定められている特定活動に該当すること
- 特定活動に基づく就労を行うための活動内容が、日本国と外国の間の文化交流の促進、国際協力の推進、または日本国民の生活の向上に寄与すること
経営・管理に基づく就労の許可基準は次のとおりです。
- 経営・管理を行うための資格や経験を有していること
- 経営・管理を行うための資金や生活基盤があること
投資・経営に基づく就労の許可基準は次のとおりです。
- 投資・経営を行うための資格や経験を有していること
- 投資・経営を行うための資金や生活基盤があること
技能実習に基づく就労の許可基準は次のとおりです。
- 技能実習を実施する企業や事業所が、適正な技能実習を実施する体制を整えていること
- 技能実習生が、技能実習の目的を達成するために必要な技能や知識を習得する能力を有していること
特定技能に基づく就労の許可基準は次のとおりです。
- 特定技能の対象となる業務に就くことが可能であること
- 特定技能の対象となる業務に必要な技能や知識を習得する能力を有していること
在留資格該当性
在留資格の該当性とは、外国人が日本で行う活動が、在留資格法に定められた在留資格に該当するかどうかの判断基準で、活動の性質・活動を行うための資格に条件があります。
活動の性質とは、外国人が日本で行う活動の具体的な内容を指します。在留資格法では、日本に在留する外国人の在留目的を次の種類の在留資格に分類しています。
就労目的での在留が認められる資格(19種)
- 技術・人文知識・国際業務
- 企業内転勤
- 技能
- 外交
- 公用
- 教授
- 芸術
- 宗教
- 報道
- 経営・管理
- 法律・会計業務
- 医療
- 研究
- 教育
- 興行
- 技能実習
- 特定活動
- 高度専門職
- 介護
原則として就労が認められない在留資格(5種)
- 家族滞在
- 短期滞在
- 留学
- 研修
- 文化活動
就労活動に制限がない在留資格(4種)
- 永住者
- 日本人等の配偶者
- 永住者の配偶者
- 定住者
上陸許可基準
上陸許可基準とは、日本に上陸するための条件のことで、在留資格に設定されている条件です。
就労の在留資格を取得するためには、就労先の企業や事業所から雇用契約または労働許可の書類を取得していること、就労に必要な資格や技能を有していること、就労に必要な資金や生活基盤があることなどが要求されます。
日本に滞在する理由が正当であることとは、日本に滞在する目的が、在留資格法に定められた在留資格に該当する活動を行うためのものであること、または日本国と外国の間の文化交流の促進、国際協力の推進、または日本国民の生活の向上に寄与することであることなどがあります。
つまり、日本に上陸するためには在留資格の取得が必須であり、日本での活動内容は在留資格の種類に準じていなければなりません。
在留資格の上陸許可基準は次のとおりです。
- 在留資格の該当性
- 上陸のための資格や条件
- 日本に滞在する理由が正当であること
- 日本への滞在が国益に適すること
相当性
在留資格の相当性とは、外国人が日本で行う活動内容が、その在留資格に該当する活動として適切であるかどうかを判断する基準で、在留資格を変更するときに出入国在留管理局で行われる審査の判断材料となっています。
在留資格の相当性は次の3つの要素によって判断されます。
- 活動の安定性
- 活動の継続性
- 活動の必要性
活動の安定性とは、外国人が日本で行う活動が、長期的に継続して行われる可能性が高いかどうかを判断する基準になります。
活動の継続性とは、外国人が日本で行う活動が、中断することなく継続して行われる可能性が高いかどうかを判断する基準です。
活動の必要性とは、外国人が日本で行う活動が、日本に滞在する理由として正当であるかどうかを判断する基準です。
在留資格の相当性は、出入国在留管理庁が、申請者の在留資格の種類や活動内容、提出書類などに基づいて、総合的に判断します。
外国人本人と勤務先の会社が作成と準備する書類
在留資格変更許可申請に必要な書類は、申請人である外国人本人が作成するものと、雇用側である企業が作成するものがあります。
申請時点で適法に在留しているか、学歴や職歴を証明できるか、変更する在留資格が認めている活動内容に該当する業務内容が企業にあるのかなどを地方出入国在留管理局で審査します。
留学の在留資格から就労ビザへの変更手続き
留学生を採用する場合は、内定を出した後にすみやかに在留資格変更申請の手続きを進め、入社日までに就労ビザを取得している状態にできるようにしなければなりません。在留資格変更申請の審査期間は2週間から1か月程度ですので、書類の準備に要する時間も考慮して手続きを行います。
変更時期
留学から就労への在留資格申請時期は、原則として、卒業前年の12月から申請可能となります。留学の在留資格から就労ビザへの変更は、留学の在留期間中に行うことができます。
就労先の企業や事業所から雇用契約または労働許可の書類を取得できるのは、原則として、卒業前年からとなります。
変更方法
変更後の在留資格に該当する活動を行うための資格や条件を満たしているかを確認します。
留学の在留資格から就労ビザへの変更は、次の条件を満たす必要があります。
- 大学や専門学校の専攻と職務内容に関連性があること
- 雇用契約書があること
- 日本人と同等以上の報酬で雇用すること
- 本人の素行が不良でないこと
留学生を雇用するときの契約書には、ビザが取得できない場合は雇用しないという条項を設けることが一般的です。
地方出入国在留管理局に申請する
必要な書類を揃えたら、地方出入国在留管理局に申請します。申請は、原則として、住居地を管轄する地方出入国在留管理局で行います。
申請から約2週間程度で、審査結果の通知が届きます。審査の結果、変更許可となった場合は、在留カードの在留資格の欄が変更され、就労ビザとなります。
専攻分野とキャリアの関係
大学や大学院で専攻した分野が、就職先の企業や事業所の業務内容と関連している場合には、その専攻分野はキャリアの基礎分野となります。在留資格変更の申請を行う際には、学業や研究で培った知識や技能などをアピールします。
在留資格変更の必要書類
外国人本人が作成と準備する書類は、次のとおりです。
- 在留資格変更許可申請書(申請人が作成)
- 証明写真
- パスポート
- 在留カード
- 学歴や職歴を証明する書類
- 健康診断書
雇用側である企業が作成と準備する書類は次のとおりです。
- 在留資格変更許可申請(所属機関などが作成)
- 法人登記簿謄本など、法的な存在を証明する書類
- 雇用契約書または労働許可書など、企業側はカテゴリーに応じた提出書類が必要です
在留資格変更許可申請書の書き方
事実を正確に記入することが重要です。
在留資格変更許可申請書の書き方は次のとおりです。
- 氏名、生年月日、性別、国籍、現住所
- 変更後の在留資格の種類を記載します
- 在留資格を変更する理由を記載します
- 在留期間
- 在留カードの番号
- 署名
- 日付
留学から特定技能へ移行する場合
留学から特定技能へ移行する場合の在留資格変更は次の要件を満たす必要があります。
- 特定技能の受入れ基準を満たす職種に就職すること
- 特定技能1号の場合は、日本語能力試験N4以上を取得していること
- 特定技能の受入れ基準を満たす職種の技能試験に合格していること
試験の種類
特定技能の在留資格を取得するための試験は次の2つです。
- 特定技能の受入れ基準を満たす職種の技能試験
- 日本語能力試験(ただし日本語能力試験「JLPT」N4などに合格している場合は免除)
特定技能の受入れ基準を満たす職種の技能試験
特定技能の受入れ基準を満たす職種には、それぞれの分野の技能試験が実施されています。技能試験は、その職種に必要な技能や知識を有していることを証明するためのものです。
特定技能の分野は、次の12種です。
- 介護
- ビルクリーニング業
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野(2022年に統合)
- 建設業
- 造船・舶用工業
- 自動車整備業
- 航空業
- 宿泊業
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
日本語能力試験
特定技能を取得するためには、日本語能力が「基本的な日本語を理解することが出来る」「日常的な範囲でならコミュニケーションが出来る」状態であることの証明が必要です。また、介護分野は業務に介護用語が必要になるため、介護日本評価試験の合格も求められます。
- 日本語能力試験(JLPT)N4レベル以上
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)A2レベル以上
留学から技術・人文知識・国際業務へ移行する場合
技術・人文知識・国際業務の具体的な職務例として、通訳・デザイナー・語学教師・マーケティング業務などがあげられますが、これらの職務に関連する学歴を有していることが在留資格を取得するための要件となります。つまり、日本での就労を希望する職種に関連する学位を取得していることが必要です。
技術・人文知識・国際業務の在留資格では日本語能力不問のため、試験結果の証明は必要ではありません。しかし、通訳や語学教師などの職種はある程度の日本語能力が必要だと判断される場合がありますので、その場合は職種に応じた日本語能力の取得が求められます。
申請の流れ
留学から技術・人文知識・国際業務へ移行する申請の手続きは次のとおりです。
- 就職活動を行う
- 日本での就労を希望する職種に関連する学位を取得する
- 内定先と雇用契約を行う
- 必要書類を準備する
- 地方出入国在留管理局に申請する
変更手続き
4月から入社して業務を開始する場合は、3月には技術・人文知識・国際業務の在留資格に変更が完了しているようにスケジュールを組んだ方がよいでしょう。雇用側である企業も、それを見越して内定を出している傾向があるようです。審査に2週間から1か月程度かかることを考えると、内定が出たらすぐに書類の準備を行って、なるべくはやく申請書類を提出し余裕をもって審査結果を待つことをおすすめします。
まとめ
留学生が日本の企業へ就職することが当たり前になっているといっても過言ではありません。日本で就労することを最終目標として、留学生として日本に入国する人も多いのではないでしょうか。
しかし、就労を目的とした在留資格は申請すれば必ず許可がおりるものではありません。留学生として真面目に学び、卒業見込みであっても、申請する在留資格の分野と専攻している分野が大きく異なっていたら在留資格変更申請の結果は不許可となってしまいます。
必要となる書類を確実に集めること、申請書類を正確に記載すること、在留期間内に手続きが完了できるよう、また入社予定日に間に合うよう、余裕をもって申請することが重要です。
また、雇用側である企業が作成する申請書類もあり、申請者である外国人本人が作成する書類と合わせて提出する必要があるため、双方の書類に整合性があるか注意が必要ですし、企業側が準備しなければいけない書類を外国人本人がうまく伝えられなくて困ってしまうことや、またその逆もあるかと思います。スムーズな手続きを行いたいと考える場合は、こういった手続きを申請取次行政書士などの専門家に相談することもおすすめします。