目次
特定技能制度について
まず特定技能制度について、説明します。
特定技能制度とは、人手不足が深刻な産業で、即戦力の外国人を受け入れる制度です。
もともと外国人を受け入れる制度には、技能実習制度がありました。
ですが特定技能の場合には、技能実習制度とは違い、技能試験と日本語試験をパスしなければなりません。ですので特定技能制度で受け入れる外国人は、その分野における一定以上のスキル・日本語能力がある即戦力として活躍してくれます。
この即戦力の外国人を受け入れる特定技能制度は2019年4月に新設され、漁業をはじめとする12の産業分野で受け入れることになりました。
またこの特定技能は1号と2号に分かれています。
特定技能1号は、即戦力の外国人です。
特定技能2号は、1号よりもより習熟した技能・技術をもつ外国人労働者が取得できます。
特定技能1号評価試験とは
技能実習の場合と違い、「特定技能」取得のためには、特定技能評価試験と日本語試験にパスする必要があります。
技能試験は名前の通り、その産業分野において、即戦力として動けるか最低限のスキルがあるかをチェックされます。
以前は特定技能試験を受けるには、中長期在留者である必要がありました。
ですが現在は在留資格を持つ方全員に、受験資格が与えられています。
ですので短期滞在のビザで入国して、特定技能試験を受験するということが可能になっています。
日本語試験
また現場で「即戦力となる」ことが特定技能の条件ですので、一定レベル以上の日本語力が必要となります。
日本語能力を示すために日本語試験の受験が必要です。
日本語試験は「日本語能力試験」か「国際交流基金日本語基礎テスト」のどちらかで、基準点以上の取得が必要です。
日本語能力試験（JLPT）
日本語能力試験は、国際交流基金と日本国際教育協会（現日本国際教育支援協会）が開始しました。
初めは受験者が7000人ほどでしたが、2011年になると61万人、2023年には148万人もの外国人が受験する現在世界最大規模の日本語試験です。
こちらの日本語能力試験はN1、N2、N3、N4、N5の5段階のレベルに分けられています。
それぞれのレベルですが、N1が最も難しく、N5が最も易しいです。
N1になると、ほとんどの場面で自然なスピードで話される日本語が理解できるレベルとなります。具体的にはテレビのニュースなどを聞いて、大体の内容が理解できるレベルです。
中間のN3となると、少しゆっくりであれば、ある程度ボリュームある会話も理解できるレベルです。
特定技能を取得するためには、日本語能力試験ではN4の取得が必要です。
N4の取得には、180点満点中90点取得が必要です。
得点の配分ですが、言語知識が60点満点、読解が60点満点、聴解が60点満点となっています。それぞれ19点が基準点となっており、1科目でも19点を下回ると取得ができません。
国際交流基金日本語基礎テスト
国際交流基金日本語基礎テストと、日本語能力試験とには大きな違いはありません。こちらも日本語能力を測定する試験です。
CBT方式のため、各国のテスト会場でコンピューターで問題を受けて回答します。
コンピューター画面に表示される問題を解いたり、ヘッドフォンを繋いでそこから流れる音声を聞いて回答したりします。
国際交流基金日本語基礎テストの場合には、6段階のレベルに分かれています。
A1、A2、B1、B2、C1、C2の6段階で、A1が最も簡単でC2が最も難度が高いです。
特定技能を取得するにはA2の取得が必要です。
このA2は、自分の周りの物事や状況について簡単な言葉で説明できて、簡単な日常会話が問題なくできるレベルであれば、取得ができます。
国際交流基金日本語基礎テストの場合には、「文字と語彙」「会話と表現」「聴解」「読解」の4つの分野で構成されており、それぞれ約12問となっています。
全部で約50問であり、受験時間は60分です。
例えば「文字と語彙」から「会話と表現」のように別のセクションに移る場合には、やり直し見直しなどができませんので注意が必要です。
日本語能力試験のN3も、国際交流基金基礎テストのA2も、難易度はほぼ同等になっています。またどちらも受験する必要はなく、どちらかでN3かA2を取得すれば問題ありません。
造船・舶用業の試験問題について解説
造船・舶用業の試験問題について説明します。
学科試験と実技試験がありますので、順番に説明していきます。
ちなみに受験資格は、試験日に17歳以上であり、なおかつ日本で受験する場合には在留資格があれば問題ありません。
特別な学歴などは不要で、17歳以上であれば、ほとんどすべての外国人に門戸は開かれています。
造船・舶用工業分野の特定技能1号試験は、溶接、塗装、鉄工、機械加工、仕上げ、電気機器組立ての6つの技能に分かれています。ちなみに特定技能2号試験は溶接でのみ行われています。
学科試験
まず学科試験から説明をします。
問題は30問で、試験時間は60分となっています。
技能試験全体がそうですが、筆記試験では文章で解答する問題などはなく、正解か誤りかで答える真偽法での出題となります。
ペーパーテストで行われ、60%以上取得で合格となります。
実際の問題形式を日本海事協会（NK）のページ掲載のサンプル問題を利用して説明します。
学科試験の問題構成
溶接の問題に限らず、造船・舶用工業分野の特定技能試験は、構成が大きく二つに分かれています。
まず「安全衛生一般」の学科試験を解く必要があります。この「安全衛生一般」はどの技能を選択した場合にも共通となります。
実際の問題を溶接の日本海事協会のHP掲載のサンプル問題から引用します。
- 体調が悪いが我慢して作業した。
- クレーンが近づいてきたのでその場を離れた。
「安全衛生一般」では、ケガや事故などなく安全に作業をする最低限の知識があるかを問われます。
続いて「溶接に関する知識・技能」を問う文章問題と、図表問題となります。
ここからは技能によってかわります。例えば溶接は溶接に関して、塗装や鉄鋼ではそれぞれに関する問題が出題されます。
溶接
溶接の文章問題のサンプルをまず紹介します。
以下、日本海事協会のHP掲載のサンプル問題から引用します。
- 半自動アーク溶接はワイヤが自動で送られる。
- ヒュームは溶接欠陥ではない。
以上のような専門性を求められる問題が出題されます。
正しいか、誤っているかで解答するいわゆる正誤式です。
続いて図表問題ですが、こちらでは写真や図を見て解答します。
例えば溶接分野では、図を見て、すみ肉溶接がどれに該当するかなどを選択します。
基本的な知識が問われる問題となっていますので、基本がしっかり身についている状態であれば、なんなくクリアーできる難易度となっています。
塗装
続いて塗装の文章問題のサンプル問題をまず紹介します。
以下、日本海事協会のHP掲載のサンプル問題から引用します。
- 塗装作業をする時は、防毒マスクをする。
- 刷毛やスプレーガンを洗浄する時は、水を使う
以上のような内容となっています。
そして図表問題については、こちらも同じように写真を見て、スプレーガンや防毒マスクがどれであるかを選択するなどの問題が、出題されます。
鉄鋼
続いて鉄鋼の文章問題のサンプル問題をまず紹介します。
こちらも以下、日本海事協会のHP掲載のサンプル問題から引用します。
- グラインダーの砥石を交換しなければ、使う前に試運転をしなくてよい。
- 溶接前に溶接機を点検する。
図表問題については、写真を見て、ガス切断トーチや、やすりがどれであるかを選択するなどの問題が出題されます。
実技試験
実技試験については、技能によって内容が異なります。
こちらも日本海事協会のHPから引用しながら、溶接についてのみ説明していきます。
溶接
溶接の実技試験には、いくつか条件があります。
造船・舶用工業分野特定技能 1 号試験 溶接 実技試験実施要領から引用します。
- 溶接方法は、「手溶接（MW）」、「半自動溶接（SW）」、「ティグ溶接（TW）」のいずれかとする。
- 製品の種類は、「板材（P）」とする。
- 継手の種類は、「突合せ溶接（B）」とする。
- 母材の種類は、「普通鋼（CS）」、「ステンレス鋼（SU）」、「アルミニウム合金（AL）」のいずれかとする。
- 母材の厚さは、「9mm 以上」とする。
- 溶接姿勢は、「下向（PA）」とする。
- 継手の詳細は、「片面溶接 裏当てあり（ss mb）」とする。
そのほか、以下のルールもあります。また引用して紹介します。
実技試験における試験項目は、「外観検査」及び「曲げ試験」とする。なお、ソリッドワイヤ又はメタルコアードワイヤを用いた半自動溶接の場合を除き、「曲げ試験」を「放射線透過試験」としてもよい。
詳細は造船・舶用工業分野特定技能 1 号試験 溶接 実技試験実施要領でご確認ください。
合格証明書の交付申請
無事、技能試験と日本語試験にパスした後は、合格証明書の交付申請が必要です。
なぜなら特定技能ビザを申請するには、特定技能の合格証明書が必要だからです。
難しい手続きではないのですが、交付申請をしてから、1〜2週間くらいかかることが多いため、交付申請は早めに行うように心がけましょう。
試験の注意点
日本国内での試験の注意点について、簡単に説明します。
持ち物
当日は、本人確認書類と、印刷した確認書が必要です。
本人確認書類は、パスポートか在留カードです。コピーは無効なため、必ず原本が必要です。また確認書も、印刷されたものがない場合には受験ができません。
携帯電話・時計はロッカーに
本人確認書類以外のもの、例えば携帯電話・筆記用具・腕時計などは、全てロッカーに預けなければいけません。
例え腕時計であったとしても、持ち込みをした場合には不正行為として認定されます。
時間厳守
受付は試験開始の30分前から15分前までに、済ませる必要があります。
万が一、試験開始の15分前までに受付ができていない場合には、そもそも受験をすることができませんので注意しましょう。
そのほか、特定技能試験についての注意点はPROMETRICにて確認できます。
あわせてご参照ください。
試験の対策
最後に試験の対策について説明します。
基本的に実技試験の対策をしっかり行っていれば、学科試験の知識は身についていく分野になっていきます。
そのため実技試験の対策をメインにしっかり立てていき、学科試験についてはテキストなどで簡単に確認する程度でよいでしょう。
実技の対策をメインに据えて、実技試験の対策を万全とし、基本的な安全衛生、使用する道具の日本語の名前などをしっかり理解しておけば問題ありません。
まとめ
最後に今回の記事を簡単に振り返ります。
特定技能制度について
特定技能制度とは、人手不足が深刻な産業で、即戦力の外国人を受け入れる制度です。
特定技能制度で受け入れる外国人は、その分野における一定以上の技能スキル・日本語能力があるため、即戦力として活躍してくれます。
日本語試験
日本語試験は「日本語能力試験」か「国際交流基金日本語基礎テスト」のどちらかで、基準点以上の取得が必要です。
日本語能力試験（JLPT）
特定技能を取得するためには、日本語能力試験ではこのN4の取得が必要です。
N4の取得には、180点満点中90点取得が必要です。
得点の配分ですが、言語知識が60点満点、読解が60点満点、聴解が60点満点となっています。それぞれ19点が基準点となっており、1科目でも19点を下回ると取得ができません。
国際交流基金日本語基礎テスト
国際交流基金日本語基礎テストの場合には、6段階のレベルに分かれています。
A1、A2、B1、B2、C1、C2の6段階で、A1が最も簡単でC2が最も難度が高いです。
特定技能を取得するにはA2の取得が必要です。
造船・舶用工業分野の特定技能1号試験は、溶接、塗装、鉄工、機械加工、仕上げ、電気機器組立ての6つの技能に分かれています。ちなみに特定技能2号試験は溶接でのみ行われています。
技能試験
学科試験の場合、問題は30問で、試験時間は60分となっています。
真偽法での出題で、60%以上取得で合格となります。
造船・舶用工業分野の特定技能試験は、構成が大きく二つに分かれており、まず「安全衛生一般」の学科試験が共通問題となっています。
続いて例えば溶接は溶接に関して、塗装や鉄鋼ではそれぞれに関する、より専門性を問う問題が出題される構成になっています。
試験の対策
基本的に実技試験の対策をしっかり行っていれば、学科試験の知識は身についていく分野になっていきます。
実技の対策をメインに据えて、実技試験の対策を万全とし、基本的な安全衛生、使用する道具の日本語の名前などをしっかり理解しておけば問題ありません。
