在留資格「特定技能(建築)」の概要と雇用までの流れやポイントを徹底解説

在留資格「特定技能(建築)」の概要と雇用までの流れやポイントを徹底解説

ニュース・特集特定技能外国人雇用

建設業は特定技能制度の対象産業となっています。そのため制度を活用することで現場での労働力不足の問題を解消できる可能性があります。

一方で建設業には他の産業にはない産業ならではの特色があり、こうした特色が外国人を雇用する際のトラブルや従業員の失踪の原因となるケースも少なくありません。

この記事では建設業での特定技能制度の概要や雇用におけるポイントを解説します。

在留資格「特定技能(建築)」とは

在留資格「特定技能(建築)」とは

まずは日本国内での建築産業の現状及び特定技能制度について解説します。

建築業界の現状

進行する少子高齢化の影響を受け、現在日本のあらゆる産業で労働力が年々減少しつつあります。

その中でも建築業界は、

  • 過酷な作業環境
  • 昔ながらの労働スタイルが根強いというイメージ

といった業界ならではの特徴が原因で、若者の建設業離れが進み、若い働き手の確保が難しくなっています。

同時に産業内での高齢化も進んでおり、建設業は65歳以上の働き手が占める割合も非常に高い産業です。高いところでの作業など危険な現場も少なくないため、建設業での働き手の高齢化は重大事故の原因となる恐れがあります。

建設業界での特定技能制度

国内で進む人手不足の問題を海外の労働力によって解決するために、2019年に特定技能制度が設けられました。この制度によって人手不足の課題の解決が急務であるとみなされた産業では特定技能外国人として外国人を雇用することが認められます。

建設産業は制度の創設当初の2019年から対象産業とされており、毎年特定技能外国人が増えている産業です。

建設産業で受け入れ可能な職種

在留資格にはそれぞれ取得目的に応じた活動制限が設けられています。制限に適合しない業務に従事させると不法就労とみなされる恐れもあるため注意が必要です。

特定技能(建設)の在留資格はさらに、

  1. 土木区分
  2. 建築区分
  3. ライフライン・設備区分

の3区分に分類されます。

1.土木区分

コンクリート圧送、とび、建設機械施工、塗装など。

2.建築区分

建築大工、鉄筋施工、とび、屋根ふき、左官、内装仕上げ、塗装、防水施工など。

3.ライフライン・設備区分

配管、保温保冷、電気通信、電気工事など。

技能実習との違い

技能実習は日本国内で培った知識・技能を母国の発展に活用してもらうことを目的として作られた制度です。そのため本来は人手不足の解消を目的として使うことは認められていません。

また、技能実習生を受け入れる場合と特定技能外国人を受け入れる場合とでは、受け入れ機関が満たさなければならない要件が異なります。在留資格を技能実習から移行させる場合にも該当するため注意が必要です。

在留資格「特定技能(建築)」の概要

在留資格「特定技能(建築)」の概要

以下では建設分野における特定技能の概要を解説します。

在留資格取得に際して必要な日本語能力試験と技能試験

特定技能の在留資格は取得に際して日本語能力試験と、産業ごとに設けられた技能試験に合格しなければなりません。

求められる日本語能力水準

日本語能力を測るためのものとして、「日本語能力試験」と「国際交流基金日本語基礎テスト」が利用されます。

特定技能の在留資格を取得するためには「日本語能力試験」でN4以上、「国際交流基金日本語基礎テスト」でA2レベル以上を取得しなければなりません。

技能試験

建設分野で特定技能の在留資格を取得するためには、一般社団法人建設技能人材機構が実施する技能試験に合格する必要があります。

試験は区分ごとに設けられているため、日本で従事する業務に対応する試験を受験しなければなりません。

試験は学科と実技が実施され、両方で65%以上を正解することで合格できます。

1号と2号の違い

1号と2号では取得に際して求められる技能水準が異なり、1号は監督者の指示に従い業務が行えることが重視されるのに対し、2号は監督業務等に対応できる技能水準が求められます。

さらに2号は家族帯同が認められる上に永住権の要件を満たせる可能性がある在留資格です。

技能実習2号からの移行について

現在さまざまな産業分野で特定技能制度の活用が進められており、海外現地での人材確保が進んでいる産業もいくつか存在しますが、建設業においてはすでに日本で技能実習として働いている人が在留資格を移行させるケースが一般的となっています。

技能実習から移行させる場合、実習内容との関連性が認められれば特定技能の在留資格取得のための技能試験が免除されます。

対応性が認められていない場合でも、技能実習2号を良好に修了していれば日本語試験は免除されるため、技能試験で合格できれば在留資格の移行が認められます。

ただし、建設業の技能試験は他の産業のものと比べて難易度が高いことから、他職種から受験する人が少ない傾向があります。

また、2024年現在、建設分野での特定技能の在留資格取得に必要な技能試験は海外では実施されていません。そのため特定技能(建設)の在留資格を取得するためには日本で技能試験を受験するしかないということになります。

一人親方でも活用できる

特定技能制度は一人親方でも活用できる制度です。

受け入れ事業者として満たすべき要件を満たせば一人親方であっても特定技能を雇用することはできます。

建設業界に設けられた上乗せ規制について

建設業界に設けられた上乗せ規制について

受け入れ企業になるためには満たさなければならない要件が全ての産業において設けられています。

さらに建設業界は外国人の雇用の現状を鑑みた上で設定された、建設業界ならではの上乗せ要件が存在します。

全産業が対象となる要件

全ての特定技能の受け入れ企業は以下の要件を満たす必要があります。

  1. 労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
  2. 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
  3. 1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
  4. 1年以内に行方不明者を発生させていないこと
  5. 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
  6. 特定技能外国人の活動内容に係る文書を作成し,雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと
  7. 外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと
  8. 受入れ機関が違約金を定める契約等を締結していないこと
  9. 支援に要する費用を,直接又は間接に外国人に負担させないこと
  10. 労働者派遣の場合は,派遣元が当該分野に係る業務を行っている者などで,適当と認められる者であるほか,派遣先が①~④の基準に適合すること
  11. 労災保険関係の成立の届出等の措置を講じていること
  12. 雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること
  13. 報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと
  14. 分野に特有の基準に適合すること(※分野所管省庁の定める告示で規定)

つまり特定技能外国人の受け入れ企業になるためには適切な労働環境を整え、労働契約内容等に問題がなく、コンプライアンスを遵守しているかどうかが重視されるということになります。

建設業の特性を踏まえた上で設けられた要件

さらに建設業には上記の要件に加えて以下の4つの要件を満たす必要があります。

1.建設業許可の取得

建設業許可は請け負った建設工事が軽微なものであれば不要ですが、特定技能に限らず外国人を雇用する場合は取得が必須となります。

ただし、許可を受ける建設業の種類と外国人が従事する業務が一致している必要はありません。

2.建設キャリアアップシステム(CCUS)への加入

建設キャリアアップシステムは一般財団法人建設業振興基金が運営しているクラウドシステムです。

特定技能外国人を雇用する場合は事業者だけでなく、労働者である外国人本人もシステムに登録する必要があります。

3.JAC(一般社団法人建設技能人材機構)への加入

特定技能外国人を雇用する事業者はJAC(一般社団法人建設技能人材機構)に、正会員団体・賛助会員のいずれかとして加入することが義務付けられています。

4.国土交通省による建設特定技能受入計画の認定

特定技能外国人の受け入れ企業は支援計画書の作成が義務付けられていますが、建設分野はそれとは別に「国土交通省による建設特定技能受入計画」を作成し、認定を受ける必要があります。

「国土交通省による建設特定技能受入計画」の認定は外国人労働者の特定技能の在留資格の取得手続きの前に行いましょう。

一般社団法人 建設技能人材機構のホームページでは作成のポイント等が解説されています。

建設業界で特定技能外国人を雇用するメリット

建設業界で特定技能外国人を雇用するメリット

即戦力を確保し労働力不足を解消できる

外国人に目を向けると日本国内だけでは確保することが難しい若い人材を見つけやすくなります。

特定技能の在留資格は試験によって相応の日本語能力と技術を持っていることを示さなければ取得できない在留資格です。そのため雇用した直後から他の日本人労働者ともコミュニケーションをとることができ、業務にあたらせることができます。

幅広い業務を任せられる

特定技能は技能実習よりも活動制限が広い在留資格であるため、特定技能であれば技能実習生には任せられない業務を任せることができます。

技能実習生の場合は単純労働に従事させることは認められていない上に、在留資格で定められた範囲内の業務しかあたらせることができません。

一方で特定技能の場合はメインとなる業務に対して付随的であれば単純業務に従事することができます。

一般建設業の場合条件を満たせば専任技術者になることができる

特に技能実習、特定技能1号を経て特定技能2号まで業務を継続した人材であれば専任技術者になることが可能になります。

一般建設業で専任技術者になるためには、

  • 許可を受けようとする建設業の種類で定められた国家資格を取得している
  • 許可を受けようとする建設業での実務経験が10年以上ある
  • 許可を受けようとする建設業の種類で定められた学歴+学歴に応じた実務経験が3年以上または5年以上ある

の3つのうちどれか1つを満たしている必要があります。

在留資格を技能実習から特定技能2号まで移行した場合、上記の「許可を受けようとする建設業での実務経験が10年以上ある」に該当するため一般建設業での専任技術者になることが認められます。

建設業界で特定技能外国人を雇用する場合の注意点

建設業界で特定技能外国人を雇用する場合の注意点

以下では特定技能をはじめとする外国人を雇用する場合の注意点について解説します。

待遇内容は日本人と同等のものに

「外国人だから」という理由で日本人労働者と異なる労働条件・給与等で雇用することは認められていません。特定技能外国人を雇用する場合は同様の業務に従事する日本人と同様の待遇であることが求められます。

適切な支援体制の整備

特定技能外国人の受け入れ企業には、実際の現場だけでなく外国人が日本で働く上で必要な支援を実施することが義務付けられています。

具体的には事前ガイダンスの実施、住居確保・生活に必要な契約支援、公的手続等への同行などが義務となっているため支援体制を整える必要があります。それぞれの支援内容を具体的に記した支援計画書の提出も義務となっているため必ず行いましょう。

また、建設業は国土交通省から建設特定技能受入計画の認定を受ける必要もあります。他の産業分野にはない義務であるため、忘れないよう注意しましょう。

在留資格で認められた範囲内の業務にのみ対応させる

それぞれの在留資格には活動制限が設けられており、事業主は外国人労働者を制限を越えた業務に従事させることは認められていません。

制限を越えた業務に従事させた場合罰則の対象となる恐れもあるため注意が必要です。

転職が可能

技能実習とは異なり、特定技能は転職が可能な在留資格であることを忘れないようにしましょう。

建設業における外国人労働者の現状

近年日本では特定技能・技能実習など外国人労働者に対する職場での差別的扱いやハラスメント、犯罪への関与などが問題視されています。こうした原因から外国人を雇用するさまざまな業種でトラブル・犯罪や失踪者も相次いでいます。

その中でも建設業は問題件数や失踪者人数が突出して多いのが現状です。

業界ならではの課題を解決し、日本での生活や労働に慣れていない外国人を健全に雇用できる環境を整えましょう。

特定技能外国人を雇用する際に便利なオンラインクラウドツール「dekisugi」

外国人を雇用する場合、日本人を雇用する場合とは異なる手続きが必要になります。作成しなければならない書類も多く、人手不足を解消するために外国人を雇用したにもかかわらずかえって業務が増えてしまう恐れもあります。

そうした問題を解決できるのがオンラインクラウドツール「dekisugi」です。

データの一括管理や書類の作成などの機能だけでなく、スケジュール機能や在留期間アラートなどサポート機能が充実しており、複数人の担当者間での情報共有もスムーズに行うことができます。

まとめ

他の産業分野と異なる特徴を持つ建設業は、受け入れ企業が満たさなければならない要件も多いです。

日本人とは異なる価値観・労働観を持つ外国人を雇用することにはリスクもあります。メリットを最大限に享受するために、外国人を雇用する上でのポイントをおさえた上で制度を活用しましょう。

この記事を書いたライター
カナエル運営事務局

カナエル運営事務局

外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。