- 特定技能を雇入れる際に登録支援機関の利用は必要なのか?
- 特定技能制度における登録支援機関の役割って何?
- 登録支援機関っていっぱいあるけど何を基準に選べばいいの?
技能実習制度と違い、特定技能制度において『登録支援機関』の利用は任意となっています。そのため、高額な費用を負担してまで利用すべきなのか、と疑問が出るところです。
そこでこの記事では、過去に7名の特定技能外国人を採用した経験から、特定技能制度における『登録支援機関』の役割と選び方から、取得条件や注意点まで徹底解説します。
最後までお読みいただくと、『登録支援機関』の主な役割が分かるだけでなく、選び方のポイントや注意点をご理解いただけます。
ぜひ最後までお読みください。
目次
特定技能における登録支援機関とは?
はじめに、登録支援機関を利用する際のメリットについて見ていきます。
特定技能制度を活用しての外国人労働者の雇用には、以下の義務的支援が必須です。
- 事前ガイダンス
- 出入国時の送迎
- 生活確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続き等の支援
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(受け入れ先企業の都合による解雇の場合)
- 定期的な面談・行政機関への通報
ご覧の通り、多岐にわたります。
本業と並行して上記の業務を負うとなると、相当の時間と労力が必要になり、場合によっては専門の人員を追加する必要が出てくる可能性もあります。また、細かい業務が多く手間が掛かりますので、慣れたものが対応することが望ましいところです。
そこで、受け入れ先企業に代わって、これらの支援を実施してくれるのが『登録支援機関』です。登録支援機関と契約する際、初期費用と月間管理費の負担が必要になりますが、受け入れ先企業はスムーズに業務をこなし円滑に雇用を継続できます。
自社で上記の支援業務に慣れ、かつ専属で対応できる人員が配置できれば、登録支援機関の利用は不要です。しかし、現実的にはそのような人材がいるケースは少なく、特定技能制度を活用する際は『登録支援機関』を利用することが一般的となっているのが現状です。
登録支援機関に要する費用と、自社で対応する際の労力と時間を費用換算して比較すると、前者の利用のメリットが明確になります。
登録支援機関の役割
つぎにこの章では、登録支援機関の主な役割について解説します。登録支援機関の主な役割は、大きく分けて以下の2つです。
- 特定技能外国人を受け入れるまでの『仲介』
- 特定技能外国人を受け入れた後の『生活サポート』
ここでのキーワードは『仲介』と『生活サポート』です。特定技能外国人を受け入れるまでの業務と、その後の業務に分けて解説していきますので、順番に見ていきましょう。
特定技能外国人を受け入れる際の仲介人
まず、登録支援機関の『仲介人』としての役割について解説します。
特定技能外国人を雇用する際のルートとして、自社の技能実習生を特定技能へ移行することがもっとも効率的です。しかし、自社に該当する人材がいない場合や、技能実習生に継続就労の意志がない場合は外部から雇入れるほか方法がありません。
その時に主に活用されるのが、特定技能に特化した『人材派遣業者』もしくは『登録支援機関』です。どちらも自社に代わって候補者を発掘する点に関して同じではありますが、個人的にオススメしたいのは『登録支援機関』です。
登録支援機関に一括して候補者の発掘を依頼するメリットは、1度のオーダーで採用から入社までの手間が少ない点にあります。2業者に分散して候補者を発掘する際は、どうしても派遣業者と登録支援機関の間でのやりとりが発生するため、余分に手間が発生します。
また、2業者へ分散する場合に比べ費用面でも、登録支援機関への一括依頼の方がコストも抑えられ、受け入れ先企業の利益の向上に繋がる点も魅力の一つです。
特定技能制度が開始された当初に比べ、現在は人材斡旋を兼ねた登録支援機関も増加傾向にあり、自社の希望に合致するところを見つけることは困難ではありません。登録支援機関を検討される際は、是非とも人材斡旋も同時に依頼できるところを選びましょう。
在職期間中の生活サポーター
次に、登録支援機関の『生活サポーター』としての役割について解説します。
冒頭でも述べたように、特定技能外国人に対する義務的支援は多岐にわたります。これらの業務を受け入れ先企業に代わって対応してくれるのが『登録支援機関』になります。実際にどのような事に対応してくれるのか、以下で主なものを順番に見ていきます。
- 事前ガイダンス|入社に際しての重要事項説明を、特定技能外国人の『母国語』にて説明
- 出入国時の送迎|現地から入国の際や前雇入れ先から、新たな受け入れ先への移動全般
- 生活確保・生活に必要な契約支援|ポケットWi-Fiなどの通信設備の確保など
- 生活オリエンテーション|特定技能としての勤務態度や私生活の過ごし方について指導
- 公的手続き等の支援|住民票などの届出、税金・公的保障関連の手続き
- 日本語学習の機会の提供|対象者には就労に支障が出ないレベルまで日本語の教育を実施
- 相談・苦情への対応|私生活や職場でのトラブル対応など
- 日本人との交流促進|会食などを通じて職場の日本人従業員との交流会をセッティング
- 転職支援(受け入れ先企業の都合による解雇の場合)|次の受け入れ先企業を発掘
- 定期的な面談・行政機関への通報|定期面談による心のケア、違反者を発見した場合の通報
以上のように、非常に細やかなサービスを提供してくれるのが『登録支援機関』になります。これらの業務を本業と平行して行うとなると、相当な時間と労力が必要になることが容易に想像できます。
そして、特定技能外国人を雇入れている受け入れ先企業のほとんどが、『登録支援機関』を利用する理由が一目瞭然です。
登録支援機関の選び方
次にこの章では、登録支援機関を選ぶ際のポイントについて解説します。登録支援機関の良し悪しが、その後の特定技能外国人の雇用に大きく影響する部分にもなりますので、特に注意が必要です。
登録支援機関を選ぶ際のポイントは大きく分けて、以下の3つです。
- 登録支援機関の所在地
- 登録支援機関で対応できる言語
- 委託の際の初期費用と月間管理費
特に最初に上げた2つは非常に重要な項目となりますので、コストパフォーマンスは気になる部分ではありますが、こだわりをもって選ばれることを強くオススメします。
以下より、詳細を解説しますので順番に見ていきましょう。
【重要】登録支援機関の所在地
登録支援機関の所在地は最重要項目です。前述の通り、雇入れた特定技能外国人に対する義務的支援は多岐にわたるため、登録支援機関の担当者は定期的に自社(または宿舎など)を訪問することが多くなります。
この際の交通費は、受け入れ先企業の負担となっているのが一般的です。一回の交通費でみると負担に感じないものでも、長期にわたる雇用を前提とした特定技能制度においては、総額で相当な負担になります。
登録支援機関の本社が遠くても、自社の近くに支社が存在するなど、地理的に有利な状況であれば前向きに検討しても良いのですが、そうでない場合は他の条件が良くても避けるのが無難といえます。
また、私情のもつれなどの緊急トラブルでのフットワークの軽さも考慮すると、やはり近いに越したことはありません。ZOOMなどのネット環境が普及し、直接会わなくても話ができる世の中になりましたが、私情の絡むシーンにおいて『直接会う』の原則は不変です。
特定技能外国人は故郷を離れ、一人で異国の地に来ています。そのため、サポートしてくれる人の存在は大きく、相談に乗る際にすぐに駆けつけてくれると、安心感はその分大きくなるものです。
以上の点を考慮して、登録支援機関を選ぶ際のポイントは『所在地』を判断基準の重要部分として認識すると良いと言えます。
対応できる言語
登録支援機関が、自ら取り扱う国の人材の言語に対応できる事は必須条件になっています。しかし、なかにはその言語レベルが、十分とは言えないところもあるのが現状です。その場合は外部から通訳者を雇うなど、相応の措置が必要です。
これを検討する際のポイントとして、その登録支援機関に日本語能力に長けた現地出身のスタッフがいるかを見るとよいと言えます。
技能実習制度が始まってから、数年の月日が流れ『実習生上がり』の人材が登録支援機関のスタッフとして、就労しているケースが多くなっています。このような人材がいる登録支援機関であれば、業務委託するときには無難です。
そのようなスタッフを抱える登録支援機関は、最大のメリットとして先方からセールスポイントとして、前面に打ちだして来ますので、比較的容易に見つける事ができます。
委託の際の初期費用と月間管理費
業務委託する際にかかる費用は、登録支援機関によって大きな差が生まれます。大体の相場はあるものの、委託する先によって大きく左右されるところです。以下に、大体の相場を記載しましたので、あわせて見ていきましょう。
- 初期費用|一人あたり30万円~50万円
- 登録支援機関への委託料|一人あたり月額3~4万円
特定技能外国人を受け入れる際に登録支援機関へ支払う費用として、大きく分けて『初期費用』と『月間管理費』の2つが必要になります。
まず、初期費用に関しては特定技能外国人を雇入れる際に、手続きを代行してもらう費用になります。ここに人材紹介料が含まれると、追加で料金が発生することになります。各機関への届出など、交通費なども加味されるため費用の負担は高額です。
次に、月間管理費は先述した通り、義務的支援の代行料と捉えると分かりやすいでしょう。定期的に特定技能外国人をサポートし、快適な特定技能ライフを過ごしていただくことで、円滑な雇用関係を継続するための必要経費となります。
これらを検討する際のキーワードは『相見積もり』になります。大体の相場は存在するものの、実際のところは登録支援機関の裁量によるところが大きいのも事実です。
一社に限らず、複数社から見積もりを取り、自社にとって納得のいく業者と契約を交わすことが最良の選択と言えます。
受け入れ先企業の注意点は?
近年、前述したように人材斡旋を兼ねる『登録支援機関』が、多く存在するようになりました。しかし、全ての登録支援機関が法に則って、それらを実施しているかは定かではありません。
人材の斡旋を兼ねる登録支援機関は労働局の許可を得て、はじめて候補者の募集や受け入れ先企業への紹介ができます。しかし、その必要とされている許可を得ずに、これらの業務を実施している登録支援機関がいるのが現状です。
具体的には、特定技能の人材派遣業界の中で『闇ブローカー』のようなものが存在しており、そこから人材を紹介してもらう登録支援機関があるようです。国家プロジェクトにおいて、国の法律に従わない業者の辿る結末は一つと言えるでしょう。
一般的な相場よりも低い値段で候補者を斡旋するなど、登録支援機関の甘い誘惑に惑わされることなく、冷静な判断で対応していきたいところです。
人材斡旋を兼ねる登録支援機関と付き合う際は、必ず必要な許可を得ているかを確認した上で、取引するようにしましょう。
まとめ
以上、ここまで特定技能制度における『登録支援機関』の役割や選び方、注意点について解説して参りました。
特定技能制度が開始された当初に比べ、登録支援機関の数は増加傾向にあり、どの会社と契約すべきかと迷うところです。しかし、ここに解説した内容に沿って検討いただくことで、自社に合致した条件を見つけられることを信じております。
苦労の末、やっとの想いで発掘した特定技能外国人も、雇入れ後の滞在環境等で退社されては、元も子もありません。そのような事にならないよう『登録支援機関』を選ぶ際は細心の注意を払い、間違いのないところを選びましょう。
みなさまの特定技能制度利用が、より円満で安心できるものになる事を、心から祈っています。