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特定技能「自動車整備」とは
自動車業界には、外国人の在留資格が3種類あります。
なかでも、「特定技能」(2019年4月に新設)の関心が大変高まっています。
特定技能外国人は、人手不足で苦しむ14の業種で即戦力として活躍してくれ、自動車業界では、「自動車整備」、製造3分野「産業機械製造業」「素形材産業」「電気・電子情報関連産業」の業務に従事できます。
特定技能には1号と2号がありますが、自動車整備、製造3分野ともに、特定技能1号のみで在留期間は通算5年です。
自動車整備分野の現状
自動車整備分野は少子高齢化や、若者の車離れなどの影響により、深刻な人手不足に陥っています。
まずどれほどの人手不足に陥っているのか、データを用いて簡単に説明します。
厚生労働省発表の職業安定業務統計によれば、令和4年度の平均の有効求人倍率は1.31倍です。
ですが、自動車整備の有効求人倍率は、それを大きく上回り4倍以上という異常値をつけています。
4件の自動車整備分野の仕事に対して、1人しか応募がない状態です。
ここまで人手不足が深刻になってしまった背景には、少子化のほか、若者の車離れがあります。
それをよく表している例として、自動車整備学校への入学者数がありますので、以下で簡単に説明いたします。
日本自動車会議所のページによると、自動車大学校・自動車専門学校の入学者数は減少を続けており、19年度には、学校全体の入学者定員1万2147人に対して、入学者数は8079人でした。
定員の6割後半です。
ここまで若者に人気がない理由として、労働環境の悪さがあげられることが多いです。
そのために自動車整備業界の働き方改革などが、国土交通省が中心となり進められました。
ですがなかなか志望者の減少には歯止めがかからない状況です。
高齢者が退職していくにしたがって、ますます人手不足は深刻となるでしょう。
自動車整備分野での特定技能採用のメリット
特定技能人材を雇用するメリットを解説いたします。
即戦力
特定技能外国人は、即戦力として活躍が見込めます。
技能実習生とは違い、自動車整備分野での一定の技術・知識をすでに備えているためです。
そのため1から研修・講習を実施する手間が省け、雇用後すぐ戦力として稼働してくれます。
取得が簡単
国内にいる技能実習生からの移行であれば、手続きなどにかかる時間も、採用に関する費用も抑えることができます。試験を受けて特定技能を取得する場合でも、技能実習生に比べて申請手続きや在留資格取得の難易度は低めになっています。
そのため人手不足を解消したいが、そのための時間・費用を抑えたい場合には、特定技能外国人はベストな解決策になるでしょう。
特定技能「自動車整備」で従事できる業務
「自動車整備」と、製造3分野の以下3つの業務に従事することができます。
- 「産業機械製造業」
- 「素形材産業」
- 「電気・電子情報関連産業」
以下でそれぞれの分野における詳細な内容を紹介いたします。
自動車整備業
自動車整備分野では、日常点検整備と定期点検整備に従事できます。
具体的には、ステアリングやブレーキ、走行装置、またエンジンやサスペンションなどの点検が可能です。
産業機械製造業
産業機械製造業では、鋳造や鍛造、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、まためっきや機械検査、機械保全、電子機器組立て、そして塗装や溶接、工業包装にも従事できます。
素形材産業
素形材産業では、アルミニウム陽極酸化処理などのほか、鋳造や鍛造、機械加工、金属プレス加工、工場板金、まためっきや機械検査、機械保全、塗装や溶接などに従事できます。
電気・電子情報関連産業
電気・電子情報関連産業では、機械加工、金属プレス加工、工場板金、まためっきや部品の仕上げ、機械保全、電子機器組立て、プラスチック成形などの業務に従事できます。
そのほか、以上の業務に従事する上で、通常行うような関連業務も行うことができます。
例えば整備内容の説明と、関連部品の販売、また下廻り塗装作業、洗車、車内清掃などです。
そのほか部品番号検索や部内発注、さらにナビ・ETC等の電装品の取付けなども可能です。
ですがこれらがメイン業務となってはルール違反になります。
ちなみにですが、「自動車整備」と、製造3分野の業務を行っているのであれば、自動車整備工場以外も特定技能外国人を採用できます。カーグッズショップ、整備ピットのあるガソリンスタンドなども、手続きを踏めば特定技能外国人の雇用が可能です。
雇用形態・報酬※
フルタイムの直接雇用のみ許可されています。
農業などの一部業種では派遣雇用が認められていますが(農閑期があるため)、自動車整備業界では直接雇用以外認められていません。
また報酬は日本人と同額を支払う必要があります。
能力で差をつけることは問題ありません。ですが「外国人である」ことを理由に低賃金にすることは許されません。
雇用期間※
在留期間は通算5年です。
「通算」ですので2年働き、1年間帰国するなら、日本に再入国後3年働くことができます。
受け入れ人数※
技能実習の場合と違って、特定技能では介護と建築以外では、会社ごとの受け入れ人数は決まっていません。
雇用するためにかかる費用※
特定技能外国人の雇用のためには、雇用前・雇用後でそれぞれ費用がかかります。
雇用前にかかる費用
-
送り出し機関への手数料:20~40万円
海外から呼び寄せる場合にはこれくらいかかり、呼び寄せる国によって金額が前後します。 -
人材紹介会社への手数料:30〜90万円
年収の10〜30%がかかります。上記金額は年収300万円の場合の金額です。 - 在留資格申請の委託費:10~20万円
雇用後にかかる費用
-
登録支援機関への支援委託費:年間24~36万円
一人当たり月2~3万円の計算です。 - 在留資格更新申請に関する委託費:5万円〜15万円
特定技能1号「自動車整備」の取得方法
特定技能1号「自動車整備」の取得方法を解説します。
特定技能には1号、2号の2種類があり、基本的には1号からはじまり技能に習熟した場合には特定技能2号に移ることができます。ですが現在、特定技能2号に移ることができる職種は「建設」と「造船・舶用工業」の2職種のみなため、特定技能「自動車整備」1号の取得方法のみ解説いたします。
「特定技能評価試験」に合格する
「特定技能評価試験」と「日本語試験」に合格する必要があります。
自動車整備士技能検定試験3級に合格
自動車整備分野特定技能評価試験3級にパスする必要があります。
もしくは同じ難易度である「自動車整備士技能検定試験」3級にパスしなければなりません。後者は国土交通省が主催しています。
エンジンオイルやギアオイルの交換、タイヤ交換、点検整備など各装置の基本的な整備を一人で行える力があるかがチェックされます。
具体的な試験内容は、以下の通りです。
①学科試験の科目
- 構造、機能及び取扱法に関する初等知識
- 点検、修理及び調整に関する初等知識
- 整備用の試験機、計量器及び工具の構造、機能及び取扱法に関する初等知識
- 材料及び燃料油脂の性質及び用法に関する初等知識
②実技試験の科目
- 簡単な基本工作
- 分解、組立て、簡単な点検及び調整
- 簡単な修理
- 簡単な整備用の試験機、計量器及び工具の取扱い
試験の形式はCBT方式で、出題形式は真偽法、問題数は30問、試験時間は60分です。
課題を行う形式の作業試験、図やイラスト等で説明されている状況設定で、どのような判断を行えばいいかなどの判断試験です。
特定技能評価試験の参考問題はこちらのページに掲載されています。
例えば真偽法の試験では、以下のような問題が出されます。
〇か×かで答え、上記問は×になります。
基本的にフリガナがあるため、高度な日本語能力がなくとも解けるつくりになっています。
学科試験は正解数が出題数の65%以上、実技試験は合計点が60%以上となっています。
日本語試験※
日本語能力を測る試験には以下の2種類あります。
- 国際交流基金日本語基礎テスト
- 日本語能力試験
難易度はほぼ同じでどちらかに合格すれば大丈夫です。
国際交流基金日本語基礎テストでは、日本語での日常会話の力を測定します。日本で日常生活を送るうえで問題ないレベルの日本語が話せるかをチェックされます。
日本語能力試験には、レベルは5段階あります。最も易しいN5は日本語の基礎、N1では高いレベルの日本語力が問われます。この日本語能力試験を選んだ場合には、N4に合格が必要です。N4では、日本語で日常会話がある程度できること、簡単な日本語の文章だったら読めることができるかをチェックされます。
これらの試験は年2回のペースで開催されています。
技能実習2号を良好に修了※
2つ目の方法は、技能実習2号からの移行です。
技能実習とは日本の技術を海外の人材に教える研修制度で、もし技能実習生であるなら無試験で移行が可能です。
「良好に修了」について、ちょっとだけ解説します。
これは技能実習を2年10ヵ月以上で修了し、技能検定3級に合格していることを指します。もしくは、技能検定3級相当の技能実習評価試験の実技試験に合格している場合も「良好に修了」扱いになります。
また技能実習生に関する評価調書の書面がある場合にも「良好に修了」扱いになります。
特定技能外国人を受け入れるには※
自動車整備分野で、特定技能外国人を受け入れる方法を解説いたします。
以下3つの条件を満たす必要があります。
受け入れ体制を整える※
まず、受け入れ態勢を整える必要があります。
具体的には、日本での生活に困らないように、入国前の事前ガイダンスをはじめ、出入国送迎、住居の確保、生活オリエンテーション、日本語学習、日本人との交流促進、相談苦情対応などの支援です。
これらの義務的支援は、過去2年間、外国人材の受け入れ実績がない場合には登録支援機関に委託する必要があります。
地方運輸局長の認証を受けている
地方運輸局長から、認証を受けた事業場がなければなりません。
特定技能協議会への加入
自動車整備分野特定技能協議会へ加入しなければなりません。
この協議会は特定技能「自動車整備」制度を、適切かつスムーズに運用するための組織です。
構成メンバーは受入機関や登録支援機関、有識者、自動車整備事業者団体、関係省庁などです。
また加入後は、必要な協力を同協会に行う必要があります。
雇用時の注意点
自動車整備業界で、特定技能外国人を雇用する際の注意点について解説します。
審査がある
同じ仕事をしているにもかかわらず日本人より給料を低く設定したり、日本での生活を行う上での義務的支援を怠ったりなどをすることは許されません。
そのため、外国人人材に対して、適切な対応や支援をしっかり行えるかどうかの審査が入ります。
直接雇用のみ
農業などの一部業種では、農閑期などがあるために派遣雇用が認められていますが、自動車整備業界ではフルタイムでの直接雇用のみとなっています。派遣・パートタイム雇用はできませんので、注意が必要です。
まとめ
最後に、今回の記事の振り返りを簡単にします。
まず自動車整備分野は深刻な人手不足に陥っています。
そのため、即戦力である特定技能外国人の需要が非常に高まっています。
特定技能外国人は、自動車整備業、産業機械製造業、素形材産業、電気・電子情報関連産業などに従事できます。
雇用形態は直接雇用のみで派遣は許されていません。
特定技能「自動車整備」取得のためには、技能実習生からの移行、もしくは自動車整備士技能検定試験3級に合格する必要があり、また雇用のためには受け入れ態勢を整える必要があります。
大体の概要は以上になります。
本記事が特定技能雇用のための一助になれば幸いです。