特定技能外国人を雇用する企業は四半期に1度、自社の所在地を管轄する地方出入国在留管理局に雇用状況などを報告しなければなりません。
記入しなければならない書類が多い上に、万が一怠った場合は罰則の対象となる恐れもあるため必ず行うようにしましょう。
この記事では特定技能外国人の受け入れ機関に義務付けられている定期報告について、報告の内容や届出期間、提出方法等を解説します。
目次
特定技能外国人の受け入れ機関に義務付けられている「定期報告」とは
特定技能外国人の受け入れ企業には四半期に一度、雇用している特定技能外国人の受け入れ状況や給与の支払い状況などについて出入国在留管理庁に報告することが義務付けられています。
定期報告の内容
定期報告では、
- 届出の対象期間に在籍していた特定技能外国人の情報
- 支援計画に基づいた支援の実施状況
- 報酬や退職、新規での特定技能外国人の雇用などに関する情報
などについての書類を作成し、提出します。
こうした報告は出入国管理及び難民認定法で受け入れ企業が果たすべき義務と定められていることから、報告を怠った場合や内容に虚偽があった場合は罰則の対象となるため注意しましょう。
定期報告の届出は何枚もの書類を作成しなければならず、記入しなければならない内容も複雑であるという意見もたびたびあがっていたことを受け、近年は作成書類の簡略化が進められています。
まだまだ煩雑な部分は残っていますが、今後も制度の整備が進められていくことが予想されます。
定期報告の目的
国によって労働観や生活習慣が異なるため、ほとんどの外国人が日本で働くことに対し相応の不安を抱えているものです。
彼らの不安を放置しておくことは同じ外国人労働者同士や日本人との間でのさまざまなトラブルの原因になる恐れがあります。
また日本の法令を遵守している適切な労働環境かどうかも外国人が安心して働けるかどうかを決める重要なポイントです。
特定技能外国人関連のトラブルを未然に防ぎ、受け入れ企業の労働環境等が適切なものかどうかを確認するために、定期報告は受け入れ企業に義務付けられています。
届出期間
定期報告の届出は四半期に1度行わなければなりません。
四半期は出入国管理及び難民認定法により以下のように定められています。
第1四半期:1月1日から3月31日まで
第2四半期:4月1日から6月30日まで
第3四半期:7月1日から9月30日まで
第4四半期:10月1日から12月31日まで
上記に定められた期間の、当該四半期の翌四半期の初日から14日以内が届出期間となっています。
定期報告で実際に行う2種類の届出
定期報告では大きく分けて、
- 特定技能外国人の受入れ・活動状況について
- 支援の実施状況について
の2つについて届出を行います。
以下ではそれぞれの具体的な内容を紹介します。
受入れ・活動状況に係る届出書
「受入れ・活動状況に係る届出書」では雇用している各特定技能外国人の実際の業務や受け入れ状況について報告を行います。
届出事項
- 届出の対象となる期間内に受け入れていた特定技能外国人の総数
- 届出に係る特定技能外国人の氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地及び在留カードの番号
- 届出に係る特定技能外国人が特定技能の活動を行った日数、活動の場所及び従事した業務の内容
- 届出に係る特定技能外国人が派遣労働者等である場合、派遣先の氏名又は名称及び住所
- 特定技能外国人及び当該特定技能外国人の報酬を決定するに当たって比較対象者とした従業員に対する報酬の支払状況
- 所属する従業員の数、特定技能外国人と同一の業務に従事する者の新規雇用者数、離職者数、行方不明者数及びそれらの日本人及び外国人の別
- 健康保険、厚生年金保険及び雇用保険に係る適用の状況並びに労働者災害補償保険の適用の手続に係る状況
- 特定技能外国人の安全衛生に関する状況
- 特定技能外国人の受入れに要した費用の額及びその内訳
支援実施状況に係る届出書
1号特定技能外国人を雇用する受入れ機関は支援の実施状況についても定期的に届出なければなりません。
先に提出した1号特定技能外国人支援計画書で、当該四半期中に実施予定とした支援を全て実施したかどうかを確認します。
そして実施した場合はそれぞれ別紙の書類に内容等を記入し、提出します。
定期報告で確認される支援内容は以下の通りです。
- 生活オリエンテーション
- 相談・苦情への対応
- 定期面談
- 非自発的離職時の転職支援
ただし、届出の対象期間より以前に実施した支援や当該四半期期間中に実施する予定のない支援、対象期間内に相談や苦情が寄せられなかった場合の「相談・苦情への対応」、対象期間内に非自発的離職が発生しなかった場合の「非自発的離職時の転職支援」については「全て実施した」として扱います。
また、計画書では実施予定としていたものの実際には実施していない支援があった場は「支援未実施に係る理由書」に対象特定技能外国人の氏名等、未実施となった支援内容及びその理由を記入し提出します。
支援を外部の登録支援機関に委託している場合
雇用している特定技能外国人の支援の実施を登録支援機関に全て委託している場合、受け入れ企業による届出は不要です。
ただし、委託先の登録支援機関から自身の住所を管轄する地方出入国在留管理局に支援実施状況に関する届出書が提出される必要があります。
提出方法
提出方法には以下の方法があります。
出入国在留管理庁電子届出システム
窓口に出向く手間や郵送する手間を省き、オンラインで届出を行いたい場合は出入国在留管理庁電子届出システムを利用することをおすすめします。
事前に自社の所在地を管轄する地方出入国在留管理局の窓口に出向くか、郵送で利用者情報登録届出書を提出することでシステムが利用できるようになります。
出入国在留管理庁電子届出システムを使えば24時間365日いつでも自宅や自社オフィスから届出を完了させることができるため非常に便利です。定期報告の他にも特定技能外国人関連の届出の際にももちろん利用できます。
定期報告にかかるコストを少しでも軽減させたいという人は、事前に出入国在留管理庁電子届出システムに登録しておくことをおすすめします。
窓口に持参
自社の所在地を管轄する地方出入国在留管理局に書類を提出することもできます。
窓口では基本的には平日午前9時から午前12時と、午後1時から午後4時に受け付けています。
ただし、局によっては対応時間や曜日が設定されている場合があるため、窓口に持参する際には事前に確認するようにしましょう。
郵送
自社の所在地を管轄する地方出入国在留管理局に書類を郵送することも可能です。
提出先
届出書の提出先は、雇用する特定技能外国人の指定書に記載されている受け入れ機関の本店所在地を管轄する地方出入国在留管理局となっています。
もし届出を怠った場合の罰則
定期報告は特定技能外国人を雇用する企業に対して義務付けられているものであるため、届出を怠った場合は罰則の対象となります。
さらに罰金の対象となるだけでなく、「欠格事項」に該当することから今後特定技能外国人の受け入れができなくなる恐れもあるため、定期報告は必ず期間内に行わなければなりません。
支援計画の全てを登録支援機関に委託している場合であっても、受け入れ企業が行わなければならないものもあるため忘れないようにしましょう。
期限をすぎてしまった場合の対処法
万が一届出が遅れてしまった場合は、その理由を記載した理由書を提出することで対処できます。
他の書類とはことなりこの場合の理由書は決まった書式が用意されているわけではありません。管轄の地方出入国在留管理局に問い合わせた上で、自身で作成し、提出してください。
特定技能外国人・技能実習生関連の手続きをスムーズに行う方法
提出しなければならない書類が多く、作業が煩雑になりやすい定期報告は、作成する上での負担を軽減させる工夫が必要になってきます。
毎年4回必ずあると分かっている業務だからこそ、ツールやサービスの活用を検討することも重要です。
以下では特定技能外国人を雇用する企業に義務付けられている定期報告を、スムーズに進めるためのツールや方法を紹介します。
オンラインクラウドツール「dekisugi」
「dekisugi」は特定技能外国人・技能実習生の雇用関連の監理業務をスムーズに行うためのオンラインクラウドツールです。
定期報告をはじめとする届出の書類作成だけでなく、在留カードなどの期限管理をサポートする機能、担当者間でのデータの管理・共有機能が備わっています。
従来はExcelなどで管理されていたデータを整理し作成しなければならないため、書類作成者の他の業務を圧迫していた定期報告業務も、「dekisugi」であればスムーズに必要事項が記入された書類を作成できます。
また、「dekisugi」は法改正等にも対応しているため、法改正により手続き内容が変わった場合でも必要書類を簡単に作成できます。法改正があった場合は担当者の教育等それに対応するためのコストがかかるものですが、こうした対応コスト削減も実現できます。
社内の人的資源をより効率的に使いたい、特定技能外国人関連の業務コストを削減したいという人におすすめです。
行政書士などのサービスの活用
特定技能外国人や技能実習生など、外国人の雇用関連の分野を得意とする行政書士も少なくありません。そうした行政書士などのサービスを利用することで、定期報告に関する書類作成等のコストを削減できる可能性もあります。
まとめ
定期報告は特定技能外国人の受け入れ企業に義務付けられているものです。怠った場合や虚偽の報告をした場合は罰則の対象となる恐れがあるため、必ず期限を守った上で届出を行うようにしましょう。
義務付けられているものであるものの、作成しなければならない書類が多く作成者への負担となる定期報告は、業務にかかるあらゆるコストを削減させるための工夫をする必要があります。