自動車整備士不足の解消へ 特定技能・技能実習の受け入れ方法を紹介

自動車整備士不足の解消へ 特定技能・技能実習の受け入れ方法を紹介

ニュース・特集外国人雇用技能実習特定技能

人手不足が社会問題となって久しいなか、自動車整備業界は、特に深刻な影響を受けている業界の一つです。

人手不足は解決の難しい問題ですが、自動車整備業界で注目されているのが、特定技能・技能実習制度を利用した外国人の受け入れです。

今回は、日本と東南アジアの自動車整備業界の現状を解説しつつ、特定技能・技能実習の違いや外国人を受け入れるメリット・デメリットについても紹介していきます。

人手不足に悩んでいる経営者の方々は、ぜひとも制度による外国人受け入れを検討してみてください。

日本の自動車整備業の現在

日本の自動車整備業の現在

まずは、日本の自動車整備業を取り巻く環境を見ていきます。

少子化と車離れによる人材不足

現在、日本は少子化による労働力不足が問題となっていて、特に自動車整備業界への影響は深刻になっています。

国土交通省によると、2023年の有効求人倍率は全職種の平均が1.05倍なのに対して、自動車整備士は4.55倍となっています。加えて、自動車整備学校の入学者は、年々減少傾向にあり、厳しい状況はこれからも続くことが予想されます。

若者たちに目を向ければ、消費の多様化により、都心では車を持たない人が増えています。地方ではまだまだ生活必需品としての需要がありますが、どちらにせよ車に特別な価値を見出す人が少なくなっています。

このような現状を踏まえると、日本人だけで自動車整備業界を支えていくのは、非常に難しいといえます。

東南アジアの自動車産業

そんな日本とは対照的なのが東南アジアの国々です。

なぜ特定技能・技能実習の制度を利用するのかを解説していきます。

拡大する自動車需要

2022年のASEAN主要5ヶ国(タイ・インドネシア・マレーシア・ベトナム・フィリピン)の自動車販売台数は、339万台に到達し、コロナ禍により需要が落ち込む前の2018年の水準に戻っています。

人口増加が続く東南アジアの国々では、今後も経済発展が続き、それに合わせる形で自動車需要が増えていくと考えられています。

自動車整備士を目指す若者が増加中

自動車需要増加の中で、問題となっているのが整備士の不足です。そのため、東南アジアの国々では、多くの若者が整備士を目指しています。

そんな若者たちが、技術習得や日本での仕事を求めて、特定技能・技能実習制度を利用するケースが増えているのです。

外国人受け入れは双方にメリット

制度の利用は、双方にメリットがあります。

まず日本側にとって、人材不足解消の大きな鍵となります。

これからの自動車整備業界は、日本人だけで運営していくのは難しくなり、外国人労働者の存在が欠かせないものになっていくと予想されます。

訪日する外国人にとってもメリットはあります。日本で働きながらより高度な技術を学ぶことができ、給与面も好待遇なのが理由です。

2023年の6月時点で、特定技能「自動車整備」として働いている外国人は2,210人で、2022年の12月では、1,738人でしたから、6ヶ月で472人増えたことになります。今後も増加すると考えられています。

特定技能と技能実習の違い

外国人受け入れ制度として、同じものとして語られがちな特定技能と技能実習ですが、実は両者大きく違っています。

ここでは、二つの制度の目的とその違いについて解説します。

特定技能は人材不足解消が目的

特定技能は、日本の人手不足解消を目的とした外国人受け入れの制度です。

即戦力レベルの人材採用が想定されているので、一定以上の知識と日本語の能力が求められ、特定技能者になるには試験に合格する必要があります。

特定技能では、単純労働を含む仕事も割り当てることができるため、雇用側の都合に合わせて柔軟に仕事をさせることができます。

技能実習は国際貢献のため

人材不足解消の特定技能と違い、技能実習制度は、日本の国際貢献のための制度として作られました。

発展途上国の若者が、日本の先進的な技術を学ぶことで、母国の発展に活かしてもらうための制度となっています。

特定技能に比べ、母数は多いため採用はしやすくなっていますが、単純労働をさせることができないなどの制約があります。

特定技能制度を詳しく解説

特定技能制度を詳しく解説

ここからは、特定技能について更に詳しく解説していきましょう。

採用するための企業要件や特定技能1号と2号の違い、1号から2号になるための試験などを紹介していきます。

採用のための5つの企業要件

特定技能の外国人を受け入れるためには、次の5つの企業要件を満たす必要があります。

・国土交通省が設置する「自動車整備分野特定技能協議会」の構成員であること(初めて外国人を受け入れる場合には、外国人の入国後4か月以内に加入すること)

・同協議会に対し必要な協力を行うこと

・国土交通省またはその委託を受けた者が行う調査・指導に対し必要な協力を行うこと

・認定工場(道路運送車両法78 条第1項に基づく認証を受けた事業場)があること

・1号特定技能外国人支援計画の実施を外部に委託する場合、一定の要件を満たす登録支援機関に委託すること

ここで重要となってくるのは、「自動車整備分野特定技能協議会」へ入会することになります。

入会には、各地域の運輸局へ入会届を提出する必要があります。お住まいの地域に該当する運輸局に確認が必要です。

特定技能1号から2号への試験

特定技能には1号と2号があり、2号になることで、在留期間が無制限で、家族の呼び寄せが可能になるなどのメリットがあります。

特定技能者は最初は1号として登録され、分野ごとの技能試験に合格することで、2号へと昇格することができます。

自動車整備の場合は、「自動車整備分野特定技能2号評価試験」もしくは「自動車整備士技能検定試験2級」の合格が必須となっています。

しかし、2023年6月現在で特定技能2号者は11人しか日本に在籍しておらず、あまり機能していないとの声があります。対象分野の拡大にともない、制度も変化があると考えられています。

技能実習制度を詳しく解説

技能実習制度を詳しく解説

特定技能とセットにされがちな技能実習制度ですが、異なる部分がいくつもあります。ここではそれらを紹介していきます。

雇用には監理団体へ加入が必要

技能実習生を雇用するには、非営利団体である「監理団体」に受け入れ申し込みを行う必要があります。

監理団体とは、技能実習生を受け入れるための入国手続や語学研修などをサポートする団体で、商工会議所や職業訓練法人などが担っています。

現在は全国で4,000近くの監理団体が存在していますので、自社の条件に合った団体を選ぶようにしてください。

在留期間は最長で5年

技能実習には、1号、2号、3号、という区分があります。在留期間は、1号が1年、2号と3号が2年で、合わせて最長の5年となります。

来日した技能実習生1号が在留期間の1年を経過したあとも実習を続けたい場合に、試験合格の上延長手続きを行い2号となり、さらに延長を希望する場合はより上級の試験に合格することで3号になることができます。

特定技能と技能実習どちらがおすすめ?

特定技能と技能実習、それぞれの違いをこれまで解説してきました。では、雇用するのはどちらがおすすめなのか、それぞれの特徴から解説していきます。

即戦力なら特定技能

特定技能は、日本語、技術力ともに一定のレベルが必要になるため、認定を受けた者は即戦力としての活躍が期待できます。

特定技能者は、日本語能力試験(JLPT)のN4相当の日本語能力が求められ、これは基本的な文章を読み、日常的な場面ではゆっくりと話すことで、意思疎通が可能になるレベルとされています。

技術面は、技能試験「自動車整備分野特定技能評価試験」か、日本の国家資格「自動車整備技能検定試験3級」に合格する必要があるため、一定以上の技能を持っている人材であることが保証されています。

雇用して、短期間で仕事を任せたいなら、特定技能者を採用するのがおすすめです。

技能実習は門戸が広いが指導員が必要

即戦力として期待できる特定技能ですが、2023年時点で日本で働いているのは2,210人で、2019年に5年間で7,000人を受け入れるとした試算に比べて少なく、人材不足解消に及んでいません。

レベルは問わないから人手がほしい、という場合は技能実習生の雇用もあります。

現在、自動車整備業に就いている技能実習生は2,909人で、うち2,000人以上が技能実習1号と2号の外国人です。

技能実習1号から2号への移行は比較的簡単なので、「3年間だけでも働いてほしい」と考えた場合は、技能実習生の雇用も十分に有効となります。

しかし、技能実習生は単純労働に付かせることができず、雇用する人数に合わせて社員の中から指導員を配置する必要もあります。

日本語、技術レベルともにバラバラの人材がやってきますので、教育にも力をいれる必要があります。

採用のメリット・デメリット

特定技能・技能実習について解説しましたが、実際の採用に対してどのようなメリットとデメリットがあるのかを紹介します。

双方に思わぬ部分もあるので、しっかりと把握しておくことで外国人を雇用する際に役立ちます。

メリット①「人手不足解消」

最大のメリットは、人材不足が解消されることです。

日本の労働人口が減少している中で、日本人だけで会社を運営していくのは、難しくなっていくのは明白です。

ここで外国人受け入れのノウハウと経験があれば、人材不足の問題に対して取れる手段が増えることになります。

これからの日本では労働者の確保が大きな問題となってくるので、海外からも人材を確保できるのは、同業他社と比べて有利な点となります。

メリット②「海外進出への足がかり」

外国人を受け入れることで、その人物の母国に進出するという道筋も見えてきます。

外国人の採用で、ビジネス対応できる言語が増えれば、海外進出のハードルはかなり下がってきます。

これまで想定していなかった国外への進出により、販路の拡大や新たなビジネスチャンスに繋がる可能性も出てきます。

デメリット①「コミュニケーションや文化の違い」

外国人を雇うデメリットとして、真っ先に思い浮かぶのが言葉の問題や文化の違いがあります。

実際に、東南アジアの人々は陽気な人が多く、それが仕事ぶりに反映されることから、真面目な日本人から「不真面目に働いている」と見られてしまうことも少なくありません。

異文化コミュニケーションに正解はありませんので、経営者自身のそれぞれにあったやり方を模索する必要があります。

デメリット②「ビザや労務管理の知識が必要」

外国人採用で、ビザや労務管理の問題があります。

実際に、外国人を採用する際は、就労ビザを取得する必要があり、申請にもよりますが、1ヶ月〜3ヶ月程度の期間が必要になります。

ビザや労務管理の問題は複雑ですので、独自に学ぶのと同時に、適切な相談場所を知っておくことが大切です。

外国人の募集方法

ここからは、各種の募集方法を紹介します。

求人媒体

通常の日系の新聞以外にも、外国語の新聞や外国人ポータルサイトから募集をする方法です。外国人採用で、最も一般的な方法となっています。

最近では、SNSを活用した求人も増加しており、LinkedInやwantedlyなど海外展開しているSNS求人サービスを利用している企業も多くなっています。

国によって流行しているSNSに違いもあるので、採用を考えている国でどのようなSNSが流行っているのか、あらかじめチェックしておくことをおすすめします。

ハローワークなどの公的機関

ハローワークや外国人雇用サービスセンターの利用なども、採用方法として有効です。

このような機関では、日本での就職を希望する外国人に向けたジョブフェア(就職説明会)を行っている所も数多く存在します。

人材派遣会社を利用

日本で働きたい外国人とのマッチングをサポートしてくれる人材派遣会社は、お金がかかる反面、有力な採用方法です。

人材派遣会社を利用すれば、より希望に沿う相手を探してくれたり、採用業務を代行して行ってもらえるため、手間を削減することもできます。

外国人採用方法として、ぜひとも利用してみてください。

おすすめの人材派遣会社紹介

ここからは、おすすめの人材派遣会社を紹介します。
それぞれに特色がありますので、雇用したい人材に合わせて利用してみてください。

ウィルオブ

ウィルオブは、全国に拠点展開していて、直近3年間で外国人稼働数が1,200%とアップしている今急成長している人材派遣会社です。

法務局の外局である入管庁から、特定技能外国人の登録支援機関として認定を受けており、登録者は2023年6月時点で3万人を超えています。

在留資格を管理するサービスも行っているので、書類提出が面倒と感じる方にもおすすめできる人材派遣会社です。

タレントアジア

タレントアジアは総合支援サービスを称する人材派遣会社で、これまでは申し込む相手がバラバラだった申請書の届け出や社員の研修を、一括で依頼することができます。

日本語のオンラインレッスンのほかに、受け入れる側の日本人社員向けの研修も行われていて、採用のみならず、その後のサポート体制が整っているのも魅力です。

HITONOMA

専門の「整備士人材紹介サービス」が設置されているのが、HITONOMA株式会社です。

中小企業への人材派遣をメインとした経営スタイルで、整備士に関しては専門性が高く、即戦力になりやすい外国人が400人以上登録しています。

またトラブル時に、会社側へのサポートと共に、外国人の母国語対応できるスタッフや定期的な訪問によるメンタリングも存在しているので、困ったときに相談できる頼もしさがあります。

まとめ

今回の記事では、日本の自動車整備士業界の問題と、その解決策として外国人を活用する方法について紹介してきました。

これから日本は少子高齢化による労働者不足がより深刻になり、外国人労働者の受け入れが重要な意味を持つようになります。

特定技能、技能実習双方の制度の違いを理解した上で、自社の整備工場にピッタリの外国人労働者を迎えられるかが、これからの自動車整備業界で成長する大きなポイントになってきます。

この記事を書いたライター
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カナエル運営事務局

外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。