外国人が日本で働くためには在留資格が必要になります。
在留資格の申請は、これまで様々な書類を出入国在留管理庁へ提出しなければなりませんでした。
提出をする書類の準備には、かなり時間がかかることもあり、外国人を受け入れる団体や企業にとって準備が難しいという面がありました。
しかし、近年出入国在留管理庁は、在留資格申請のオンライン化を推進しています。申請のオンライン化は手間とコストを抑えることができるため、さまざまなメリットがあります。
在留資格のオンライン申請について、外国人材や企業にとってのメリットや注意点を詳しく解説していきます。
目次
出入国在留管理庁とは
出入国在留管理庁(入管庁)は、出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づいて設置された機関です。入管庁は、日本への入国や日本から出国する人の出入国と日本に在留する外国人の在留の管理を行っており、難民の認定手続きもしています。
出入国在留管理庁は出入国管理行政を所管しており、地方出入国在留管理局(8局)、同支局(7局)、出張所(61か所)及び入国管理センター(2か所)が設置されています。
出入国在留管理庁の概要
出入国在留管理庁の役割
出入国在留管理庁は日本人や外国人が出入国する際の手続きや審査などをおこなう機関です。
出入国在留管理庁の役割は次のとおりです。
- 犯罪やテロの危険性がある者を排除して日本の安全保障や社会の秩序を守る役割
- 不法入国・不法滞在を防止、外国人の犯罪を捜査するなど社会の秩序を維持する役割
- 外国人の在留を管理、外国人の在留資格や在留期間を適切に管理
- 外国人の相談・支援
- 国際社会との交流を促進
- 外国人材の受け入れ、難民認定などで国際社会との交流を促進する役割
- 外国人の法整備や政策の企画・実施などの仕事
具体的には、日本に在留する外国人の在留資格や在留期間を管理するため、在留資格の許可・更新・取消しなどをしています。
日本に亡命してきた外国人に対して難民の認定手続きも行っています。
日本経済に必要な外国人材の受け入れを推進するために、外国人労働者の受入れ制度の整備や、外国人労働者の特定技能制度の運営をしています。
在留申請のオンライン化
入管庁の在留申請オンライン化は、2014年に開始されました。当初は、在留資格認定証明書交付申請のみがオンライン申請可能でしたが、その後順次対象の在留申請が拡大されています。
在留資格申請がオンライン化することで、これまで煩雑であった申請が簡素化したことにより、外国人を受け入れる団体や企業にとってさまざまなメリットがうまれました。
在留申請オンライン化のメリット
在留申請オンライン化のメリットは次のとおりです。
- 利便性の向上:申請者が自宅や職場からオンラインで申請できるので出入国在留管理局への来庁が不要となるので時間や手間の節約につながります
- 外国人は地方出入国在留管理局に行く必要がなくなってオンラインで申請できます
- 審査の効率化:オンライン申請による申請書類の受理や審査の効率化
- 申請の電子化や審査システムの自動化を進めることができます
- 交通費・郵送料などの経費削減
- 申請書類の電子化によって審査の精度が向上します
- 外国人の申請をデータベース化して外国人の行政サービスの向上
これまでは申請をおこなうために、地方出入国在留管理局へ行き、窓口で様々な書類を提出する必要がありました。
しかし、在留資格申請のオンラインシステムの利用には費用が必要なく、窓口へ行く交通費や時間の削減につながります。
また、過去に提出をした書類をデータベースへ登録をしているため、申請者のこれまでの情報や履歴を管理することが可能になります。
オンライン利用可能な在留申請手続き
申請の際に非常に便利なオンライン申請ですが、申請可能な対象が決まっており、対象外の在留資格については従来通り窓口へ行き、申請をおこなう必要があります。
オンライン申請のできる在留資格
現在オンラインで申請可能な在留資格は次のとおりです。
- 教授
- 芸術
- 宗教
- 報道
- 法律・会計業務
- 医療
- 教育
- 介護
- 文化活動
- 公用
- 興行
- 特定技能
- 研修
- 経営・管理
- 研究技術・人文知識・国際業務
- 技能
- 高度専門職
- 企業内転勤
- 技能実習
- 留学
- 家族滞在
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
- 特定活動
オンラインで申請可能な在留資格は外交や短期滞在を除き、25種類が対象になります。
オンライン申請の手続き
オンラインで利用可能な在留申請手続きは次のとおりです。
- 在留資格認定証明書交付申請
- 在留資格変更許可申請
- 在留期間更新許可申請
- 在留資格取得許可申請
- 就労資格証明書交付申請
- 再入国許可申請
- 資格外活動許可申請
在留資格認定証明書交付申請
在留資格のない外国人が、日本へ入国をする前に活動内容に応じていずれかの在留資格を証明するために行う申請です。外国人労働者を日本へ呼ぶ際に必要になります。
在留資格変更許可申請
日本に在留している外国人が、すでに取得をしている在留資格から別の在留資格が必要となる活動を行う際に、在留資格を変更するために行う申請です。
在留期間更新許可申請
すでに日本へ在留している外国人が、同じ在留資格を継続して取得し、日本へ在留するために行う申請です。
在留資格取得許可申請
日本国籍から離脱した方、日本で出生したなどの理由で、上陸の手続きを受けず日本へ在留することになる外国人が、当該理由が発生した日から60日を超えて日本に在留する際に行う申請です。
就労資格証明書交付申請
外国人の方が、自らの在留資格で行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を証明する文書の交付を受けるための申請です。
再入国許可申請
一時的に日本から出国をする外国人が再度入国する際の手続きを簡略化するために行う申請です。
資格外活動許可申請
就労や留学等の在留資格で在留する外国人の方が、許可された在留資格に応じた活動以外に、アルバイトなど、収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行おうとする場合に行う申請です。
オンライン申請ができる人
在留申請オンラインシステムを利用できる方は次のとおりです。
-
所属機関の職員の方
※ 技能実習(団体監理型)の場合は、監理団体の職員の方(実習実施者の職員の方は利用対象者に含まれません。) - 弁護士又は行政書士の方
- 外国人の円滑な受入れを図ることを目的とする公益法人の職員の方
- 登録支援機関の職員の方
- 外国人本人
- 法定代理人
- 親族(配偶者、子、父又は母)
申請人(外国人)本人はオンライン申請をおこなうことができないため注意が必要になります。※マイナンバーをお持ちの外国人本人除く
また、所属機関は外国人の方を受け入れている(受け入れようとする)公私の機関等(企業、学校等の教育機関、監理団体等)のことを指します。
所属機関の職員は申請等取次者として承認要件を満たしていることが必要です。
法定代理人が申請者に代わり在留資格のオンライン申請を行う際、マイナンバーカードが必要になります。
また、オンライン申請は日本国内でのみ申請が可能なため、日本国外に住んでいる外国人や法定代理人は申請をすることができません。
また、マイナンバーカードがない場合は申請者および法定代理人による在留資格の申請はできません。
弁護士や行政書士による在留申請ではマイナンバーカードが必要ないため、マイナンバーカードがない申請者は弁護士や行政書士に相談することも手段の一つです。
申請等取次制度
在留資格申請や在留期間更新許可申請等の手続きについては、地方出入国在留管理局長が認めた方について、外国人の申請等の取次ぎを行うことができます。
弁護士や行政書士の方、所属機関の職員は申請等取次者として届け出をおこなうことで、外国人本人に代わり、在留資格の申請を行うことが可能になります。
事前に準備するもの
在留資格のオンライン申請で事前に準備するものは次のとおりです。
- 申請書
- 申請に必要な書類
- 申請手数料
- マイナンバーカードとマイナンバーカードのICカードリーダライター(申請取次者の場合は、申請等取次者証明書)
- 申請書
オンライン申請の流れ
オンライン申請は出入国在留管理庁のサイトから申請が可能です。
実際の流れは次のようになります。
- 出入国在留管理庁のサイトから申請書をダウンロード
- 申請書に必要事項を入力
- 申請に必要な書類をPDFで作成
- 必要な書類のアップロード
- 申請手数料の納付 ※申請手数料は、在留資格ごとに異なる
申請が完了し、提出した書類に不備がなければ、約3か月で審査が終了します。審査結果は、電子メールで通知されます。
在留資格のオンライン申請で必要な費用
在留資格のオンライン申請の利用料はかかりません。
しかし、申請が許可された場合には、申請内容によってそれぞれの手数料が必要になりますので、納付をおこなわなければなりません。
在留カードの受け取り
在留カードの受け取りは、オンラインでの申請時に窓口もしくは郵送での受け取りを選択できます。
郵送を選択すると窓口へいく手間を短縮できるため、交通費など余計な費用を抑えることができます。
オンライン申請のデメリット
オンライン申請は便利ですが、注意すべき点もあります。
- 注意点として、在留期限の最終日(在留期間満了日の当日)に在留申請オンラインシステムで申請できない
- 申請は日本国内から在留申請システムを利用する必要がある
- 申請時点で有効な在留資格の取得が必要
- 申請にはマイナンバーカードを読み込むカードリーダーが必要
課題(セキュリティ)
オンラインの申請は、個人情報や機密情報などがインターネットでやり取りされるために情報セキュリティが課題としてあげられます。
外部から個人情報や機密情報を守るためには、在留申請システムのセキュリティ対策を強化して不正アクセスや情報漏洩などを防止する必要があります。
また、申請内容の誤りや不備を検出するシステムの導入も検討する必要があります。
申請についてのメリットがある一方で、情報を正しく管理する必要があり、より一層情報の扱いについて大切にしなければいけません。
まとめ
在留資格を申請する際、オンラインで申請を行えるため窓口へ行かず申請ができるようになりました。
ほとんどの在留資格がオンラインで申請可能になっており、申請がこれまで以上にしやすくなっていますが、一方で注意すべき点もあります。
受入企業や団体にとって、メリットの多い在留資格のオンライン申請ですが、申請を円滑におこなうために、あらかじめオンライン申請の注意点を理解しておく必要があります。
オンライン申請を活用することで、これまで以上に効率的に外国人の受入が可能となりますので、オンライン申請について理解を深め上手く活用することが必要です。