在留資格「特定技能1号(飲食料品製造業)」における試験の概要や雇用までの流れ

在留資格「特定技能1号(飲食料品製造業)」における試験の概要や雇用までの流れ

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飲食料品製造業は特定技能の12産業分野の中でも特に人気のある分野です。求職者も多く、2022年には受け入れ人数が大幅に増加されるなど政府の動きも目立ちます。

一方で人手不足が深刻化している飲食料品製造業では熾烈な人材獲得競争が繰り広げられているのも事実です。給与を高く設定できるかどうかだけでなく、その他の待遇内容でどれだけ他社と差別化できるかが重要になってきます。

この記事では在留資格「特定技能1号(飲食料品製造業)」における試験の概要や雇用に際してのポイントを解説します。

飲食料品製造業における特定技能外国人

飲食料品製造業における特定技能外国人

特定技能の「飲食料品製造業」は酒類を除いた飲食料品の製造に従事する外国人のために設けられた在留資格です。

現在日本国内では少子高齢化に伴う労働力不足が叫ばれており、飲食料品製造業も将来深刻な労働力不足に陥るのではないかと危惧されている業界です。

こうした問題を解決するために飲食料品製造業も特定技能外国人を雇用することが可能になりました。

また、飲食料品製造業を外食業と混同してしまう人もいますが、この二つは異なる在留資格であるため注意が必要です。

ただし、飲食料品製造業と外食業は試験内容が似ている点も多いため対策がしやすく、双方への転向がしやすいという特徴があります。

技能実習生との違い

現在飲食料品製造業界で働いている外国人の中には技能実習生として雇用されている人も多いです。

飲食料品製造業界における技能実習と特定技能の違いとしては、第一に業務範囲の広さの違いがあげられます。

技能実習生の場合は業務範囲が狭く、繁忙期などに別の業務を任せられないこともあるのに対し、特定技能外国人は在留資格で認められた範囲内であればさまざまな業務を任せることができます。

また、両者には制度の主旨の違いもあります。特定技能は人手不足解消を目的として設けられた制度であるのに対し、技能実習は国際貢献を目的として設けられた制度です。

そのため人手不足を解消したい場合に技能実習制度を利用することは本来認められていません。

特定技能外国人が飲食料品製造業で行える業務

特定技能外国人が飲食料品製造業で行える業務

飲食料品製造業で特定技能として外国人が従事できる業務は以下の7つに分類されます。

  1. 食料品製造業
  2. 清涼飲料製造業
  3. 茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く)
  4. 製氷業
  5. 菓子小売業(製造小売)
  6. パン小売業(製造小売)
  7. 豆腐・かまぼこ等加工食品売業

また、1の食料品製造業はさらに以下のように細分化されています。

  • 畜産食料品製造業
  • 水産食料品製造業
  • 野菜缶詰
  • 果実缶詰
  • 農産保存食料品製造業
  • 調味料製造業
  • 糖類製造業
  • 精穀・製粉業
  • パン・菓子製造業
  • 動植物油脂製造業
  • その他の食料品製造業(デンプン、めん類、豆腐・油揚げ、あん類、冷凍調理食品、惣菜、すし・弁当・調理パン、レトルト食品等)

上記の業務の他、清掃や事務所の管理など同じ業務に従事する日本人が行うような関連業務を行うことも可能です。

試験の目的

試験の目的

飲食料品製造業はたくさんの人の生活や健康に影響を及ぼす業界であるため、製造に従事する人材には食品等の取扱について適切な知識と技術を身につけていることが求められます。

そのため特定技能の在留資格を取得するための試験では、飲食料品の製造工程でHACCPに沿った衛生管理ができること、つまり、

  • 主な食中毒菌や異物混入に関する基本的な知識・技能
  • 食品等を衛生的に取り扱う基本的な知識・技能
  • 施設設備の整備と衛生管理に関する基本的な知識・技能

を有するかどうかがチェックされます。

試験の概要

試験の概要

外国人が特定技能として飲食料品製造業で働くためには、飲食料品の製造、加工、安全衛生に関する相応の知識・技術および日本語力が求められます。

以下では外国人が飲食料品製造業で特定技能として働くために合格しなければならない技能試験の概要を解説します。

試験の実施団体

一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)

日程

試験の日程は試験の実施団体である一般社団法人外国人食品産業技能評価機構OTAFFのホームページで公開されます。

試験内容

飲食料品製造業で特定技能の在留資格を取得するためには、以下の技能試験と日本語試験で業務にあたる上で必要な知識・技術・能力があることを示す必要があります。

飲食料品製造業分野 特定技能1号技能測定試験

学科試験(30問100点満点)
実技試験(10問50点満点)
全150点満点

問題形式:三者択一問題

出題範囲

  • 食品安全・品質管理の基本的な知識(食中毒に関する知識等)
  • 一般衛生管理の基礎(5S活動の取組の徹底等)
  • 製造工程管理の基礎(製造工程の管理と注意事項等)
  • HACCPによる製造工程の衛生管理に関する知識(HACCPとは等)
  • 労働安全衛生に関する知識(労働災害に関する知識等)

試験場所

国内 札幌、東京、金沢、名古屋、神戸、福岡など国内主要都市。
国外 インドネシアやフィリピンなどの主要都市。

試験場所について詳しくは一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)のホームページをチェックしましょう。

試験時間

学科・実技試験合わせて80分

受験費用

国内試験:8,000円
国外試験:約3,500円

受験資格

国内 すでに在留資格を取得している者で、以下のア及びイを満たしている。
ア.試験日において満17歳以上であること
イ.退去強制令書の円滑な執行に協力するとして法務大臣が告示で定める外国政府又は地域の権限ある機関の発行した旅券を所持していること(=イラン・イスラム国以外の国
国外 試験日において満17歳以上であること
但し、試験の実施国政府等との合意に基づき引き上げることがある。
(例︓インドネシアについては、満18歳以上)

合格点

正答率65%以上

合格率

何年度の第何回目のどこで開催された試験にもよりますが、合格率は60%程度となっています。

在留資格取得のためには技能試験とは別に日本語能力水準が求められる

特定技能の在留資格を取得するためには、上記の技能試験の他に一定水準以上の日本語能力があることを示す必要があります。

日本語能力を判定するために使われる試験には、

  • 日本語能力試験
  • 国際交流基金日本語基礎テスト

があり、特定技能の在留資格の取得には「日本語能力試験」の場合はN4レベル以上、「国際交流基金日本語基礎テスト」の場合はA2レベル以上の日本語能力が求められます。

飲食料品製造業で特定技能外国人を雇用する方法

飲食料品製造業で特定技能外国人を雇用する方法

以下では特定技能外国人を雇用する方法として代表的なものを紹介します。

現地から外国人を特定技能として雇用する

特定技能の外国人を雇用する方法としては、現地にいる外国人材に特定技能の在留資格を取得させた上で日本に呼び寄せ、雇用するというものが代表的なものとして挙げられます。

日本語試験および技能試験に合格した外国人と雇用契約を締結し、事前ガイダンスや健康診断などの実施や支援計画の策定、出入国在留管理庁での手続き等を行うことで特定技能として外国人材を雇用することができます。

飲食料品製造業界の受け入れ企業には食品産業特定技能協議会に入会し、協議会の調査等に対し必要な協力を行うことが義務付けられています。

また、特に特定技能1号の外国人材は日本での生活に慣れていない人も多いため受け入れ企業には事前ガイダンスだけでなく出入国時の送迎、日本語学習、生活する中でのサポートも行わなければなりません。

外部の登録支援機関に受け入れに際しての手続き等を委託することも可能です。過去2年間での外国人材の受け入れ実績がない企業や、独自に支援体制を整えることが難しい企業は登録支援機関に委託するようにしましょう。

技能実習生から移行させる

技能実習2号を修了した外国人の在留資格を特定技能1号へ移行させることで雇用する方法もあります。すでに技能実習2号で実習中の外国人材がおり、実習期間の終了後も雇用を継続したい場合などには有効な手段です。

また、技能実習2号の修了後帰国した外国人であれば試験を免除した上で特定技能として再び入国することが認められます。

技能実習2号から移行させる場合は、技能実習生として従事している業務と飲食料品製造業との関連性が認められる必要があります。

例えば技能実習2号として缶詰巻締や、食鳥処理加工業、パン製造、そう菜製造業に従事していた場合は無試験で特定技能1号に移行することが可能です。

雇用の流れとしては、技能実習2号を修了している外国人材と雇用契約を締結した後、「受入れ機関等による事前ガイダンス」や「健康診断」の実施や支援計画の策定を行い、地方出入国在留管理局で在留資格変更許可申請を行います。

現在飲食料品製造業では技能実習生からの移行が増えている

技能実習から特定技能への在留資格の移行が進まない業界も少なくない中で、飲食料品製造業界は近年在留資格の移行事例が増えている業界です。

原因の一つとしてはコロナ禍による影響があげられます。

飲食料品製造業界で働いていた技能実習生の中にはコロナ禍のために帰国が難しくなった人も多く、そうした技能実習生が日本で働き続けるために在留資格を特定技能に切り替える動きが活発になりました。

6次産業化している農林漁業での雇用にも対応

6次産業化している農林漁業での雇用にも対応

現在1次産業である農林漁業、2次産業である工業、そして3次産業である商業の3つの産業が融合した業態である「6次産業化」を進めている農林漁業者が増えています。

しかし6次産業化には農林漁業者の所得の向上や地域活性化などの効果が得られるといったメリットがある反面、一人当たりの業務の負担が増えるといったデメリットもあり、こうしたデメリットを解決する方法の一つとして、特定技能外国人材の活用が進められています。

これまでも技能実習制度を活用する農林漁業者は少なくありませんでしたが、技能実習生には行える業務範囲が狭いというデメリットがありました。さらに季節によって忙しさが大きく変動する農林漁業界で技能実習生を雇用することにはコスパが悪くなるリスクもあります。

一方で特定技能外国人であればより幅広い業務に対応できる上に季節によって生じる繁忙期などにも柔軟に対応できます。

こうした特徴があるため、特定技能外国人は今後も国内の労働力不足の深刻化や産業形態の変化を受けて雇用が広がることが予想されます。

飲食料品製造業界で特定技能を雇用する場合意識するべきポイント

飲食料品製造業界で特定技能を雇用する場合意識するべきポイント

特定技能の中の12産業の中でも飲食料品製造業は受け入れ人数が最も多い分野であり、取得者数も増加している分野です。

そのため雇用する場合は以下のポイントを意識する必要があります。

人材の獲得競争が比較的激しい

飲食料品製造業での在留資格は特定技能の12産業の中でも外国人からの人気が特に高い産業であり、求職者も多いです。

一方現在飲食料品製造業界では深刻な人手不足が叫ばれており、外国人材の活用によってこのような問題を解決したいと考えている企業も少なくありません。

そのため飲食料品製造業では激しい人材の獲得競争が繰り広げられており、他社との人材獲得競争に打ち勝つ力がなければ外国人材を雇用することは難しいのが現状です。

人材確保のためには他社よりも魅力的な条件を整えることができるかどうかが重要になってきます。特に外国人は給与面での待遇を日本人よりも重視する傾向があるため、意識した上で求人活動を行うようにしましょう。

住環境が整っていることもアピールポイントになる

外国人を雇用する場合、給与の次に重要になってくるのが住環境です。

日本で働き、生活することに対し、誰もが多かれ少なかれ不安を抱いているものです。そうした不安を事前にどれだけ払拭できるかは、雇用につながるかどうかに大きく影響を及ぼします。

また、日本では外国人にアパートやマンションを貸すことに抵抗を覚えている大家も少なくありません。そのため働くことが明確に決まっており、安定した収入が得られる見込みがあっても外国人だからという理由で住居を用意するのに苦労する外国人労働者も多いです。

こうした事情から、

  • 自社に寮や社宅がある。
  • 賃貸契約の際に保証人になるなどのサポートができる。

といった要素は、人材獲得競争の中で他社と差別化し、優位に立てる要素になります。

飲食料品製造業界で外国人材の獲得競争に勝つためには、給与面に加えて住環境を整備することをおすすめします。

まとめ

コロナ禍の影響もあり技能実習2号から移行する人も少なくないなど、特定技能の中でも特に人気のある飲食料品製造業は、注目度が高い反面人材獲得競争が激しい分野でもあります。

また、外食業と試験内容が似ているため、外食業との人材獲得競争になる可能性もあります。

技能実習生に比べて幅広い業務を任せられる特定技能外国人は、即戦力になる人材も少なくありません。

特定技能外国人によって人手不足を解消したいと考える場合は、給与など待遇を整備するようにしましょう。

この記事を書いたライター
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カナエル運営事務局

外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。