特定技能のベトナム人を雇用する方法・メリットについて解説

特定技能のベトナム人を雇用する方法・メリットについて解説

ニュース・特集技能実習特定技能外国人雇用

近年、日本では「特定技能」の在留資格を持つベトナム人が増加傾向にあります。なぜ、他の国籍の外国人労働者よりも、ベトナム人の労働者が多いのでしょうか。本記事では、「特定技能」で働くベトナム人が増えている理由や、ベトナム人の労働者を雇用するメリットについて解説します。

現在「特定技能」で働くベトナム人が増加傾向にある

現在「特定技能」で働くベトナム人が増加傾向にある

人手不足の業界・分野を多くかかえている日本では、外国人労働者の受け入れを積極的に行っています。「特定技能」の在留資格を持ち、日本で働く外国人労働者の中で、特にベトナム人が多いことが調査で明らかとなりました。令和5年10月と同年12月に厚生労働省と出入国在留管理庁が行った調査結果をもとに、日本で働くベトナム人の人数をご紹介します。

外国人労働者の出身国 日本で雇用されている
外国人労働者の人数
「特定技能」を持って
日本で雇用されている
外国人労働者の人数
ベトナム人 518,364人
全体の25.3%
110,628人
全体の53.1%
中国
(香港・マカオを含む)
397,918人
全体の19.4%
13,456人
全体の6.5%
フィリピン 226,846人
全体の11.1%
21,364人
全体の10.3%
ネパール 145,587人
全体の7.1%
4,430人
全体の2.1%
ブラジル 137,132人
全体の6.7%
該当なし
インドネシア 121,507人
全体の5.9%
34,253人
全体の16.4%
韓国 71,454人
全体の3.5%
該当なし
ミャンマー 71,188人
全体の3.5%
11,873人
全体の5.7%
カンボジア 該当なし 4,664人
全体の2.2%
タイ 36,543人
全体の1.8%
4,359人
全体の2.1%
ペルー 31,584人
全体の1.5%
該当なし
G7等 83,882人
全体の4.1%
該当なし
その他 206,670人
全体の10.1%
3,398人
全体の1.6%

令和5年12月末時点の調査では、「特定技能」を持って働いているベトナム人の人数は、全体人数のうち、半数以上をしめています。

特定技能で働くベトナム人が多い理由

なぜ、特定技能で働く他国の外国人労働者よりも、ベトナム人労働者が多いのでしょうか。その主な理由として、「技能実習生」や「留学生」として日本に来るベトナム人が他国に比べて多いことが挙げられます。日本はベトナムに比べ、給与水準が高いことや、電化製品・自動車・バイクなどの性能が高いこと、治安が良いことが特徴です。そのため、日本が気に入って、「技能実習生」や「留学生」から、そのまま日本で働くために「特定技能」の取得を目指すベトナム人が多い傾向にあるのです。

「特定技能」のベトナム人を雇用する方法・手順

「特定技能」のベトナム人を雇用する方法・手順

「特定技能」のベトナム人を雇用するためには、「雇用する企業側」と「雇用されるベトナム人側」、それぞれが要件を満たす必要があります。雇用する側・される側、それぞれの要件や雇用までの手順についてご紹介します。

雇用する「会社側」の要件を満たすこと

特定技能のベトナム人を雇用する会社・企業が満たすべき条件は、主に以下の4つです。

①日本人と同等または同等以上の給与を支払うこと
「ベトナム人だから」「日本語がうまく話せないから」といった不当な理由で、給与を減給したり、天引きしたりしてはいけません。ベトナム人労働者に支給する給与に関しては、「日本人労働者と同等または同等以上」であるか、出入国在留管理局が厳しく確認しているため、不正があるとすぐに発覚します。

②過去1年以内に会社都合の退職者や、行方不明者がいないこと
労働者の国籍を問わず、「過去1年以内に会社都合の退職者を出した」「労働条件の悪さなどで行方不明者・失踪者を出した」という会社・企業は対象外です。特定技能のベトナム人及び、特定技能の外国人労働者を雇用することができません。

③過去2年以内の外国人労働者の雇用実績がある、または登録支援機関に委託していること
ベトナム人のみならず、「特定技能」を取得した外国人労働者を雇うためには、以下の2つの条件のいずれかを満たす必要があります。

・過去2年以内に、外国人労働者を雇用・指導した実績があること
・登録支援機関に委託し、外国人労働者の雇用やサポートを行っていること

「特定技能」を取得した外国人労働者を雇用するには、「技能実習生」を含み、日本の在留資格を持つ外国人労働者を雇用した実績を2年以内に持っていることが必要です。また、外国人労働者の雇用を一切したことがない場合は、「登録支援機関」に外国人労働者の雇用やサポートを委託することで、条件を満たしたことになります。

④該当する「協議会」に加入すること
特定技能のベトナム人や、他国の外国人労働者を雇用するには、自身の会社・企業の分野に該当する「協議会」に加入する必要があります。

例えば、
・介護分野 → 「介護分野における特定技能協議会」
・建設分野 → 「一般社団法人 建設技能人材機構(JAC)」
・農業分野 → 「農業特定技能協議会」 など

多くの分野では、特定技能の外国人労働者を雇用後、4ヶ月以内に加入します。しかし、建設業や製造業などは、特定技能の外国人労働者を雇用する前に加入する必要があります。加入の時期は分野によって異なるため、必ずご自身の分野の加入時期をご確認ください。
※なお、24年2月15日の運用要領変更で、全ての分野で6/15以降の申請においては協議会への事前加入が必要となりました。

雇用する「ベトナム人」の要件を確認すること

雇用される側であるベトナム人にも満たすべき要件があり、雇用する会社・企業は、雇用するベトナム人が要件を満たしているか、確認する必要があります。日本で特定技能のベトナム人労働者として働くには、以下の2つの条件のいずれかを満たさなければなりません。

①日本で「技能実習2号」を良好に修了している
「特定技能1号」を取得する場合、以下のいずれかの方法で試験を受けるか、試験免除で取得します。

技能実習1号 ・日本での在留期間1年
・基礎レベルの試験に合格で、技能実習2号に移行できる
技能実習2号 ・日本での在留期間2年(通算3年)
・実習修了後、「特定技能1号」を試験免除で取得できる
技能実習3号 ・日本での在留期間2年(通算5年)
・実習修了後、「特定技能1号」を試験免除で取得できる
別の在留資格 試験合格で、「特定技能1号」を取得できる
海外から 試験合格で、「特定技能1号」を取得できる

また、「技能実習2号」または「技能実習3号」を修了している場合、試験免除で
「特定技能1号」を取得できます。しかし、「特定技能1号」は、在留期間が最長5年と限られています。在留期間なしで日本で働き続けたいベトナム人労働者は、「特定技能1号」の取得後、試験を受け、「特定技能2号」に合格することがおすすめです。

②「就労予定分野の技能試験」および「日本語能力試験」に合格していること
日本での労働を希望しているベトナム人の方が、「技能実習2号」を修了していない場合は、以下の試験のいずれかに合格しているか、確認が必要です。

・就労予定分野の技能試験
・国際交流基金日本語基礎テスト
・日本語能力試験N4以上

分野によって必要な日本語能力や、技能試験は異なります。しかし、いずれの分野でも、その分野に必要な専門知識・専門技術を有しているか、その分野で使われている専門用語を知っているかなど、ベトナム人労働者を雇用するうえで大事な部分を見極めるようにしてください。

特定技能のベトナム人の雇用に必要な費用を用意しておくこと

特定技能のベトナム人労働者を雇用するにあたって、会社・企業側は必要な資金を用意しなければなりません。各分野によって多少金額はことなりますが、一般的な準備費用を以下でご紹介します。

・「登録支援機関への委託料」:毎月2~3万円
 ※「登録支援機関」に委託していない場合は不要です
 ※詳しい金額に関しては、「登録支援機関」にお問い合わせください

・「JACへの加入費」:数十万程度
 ※この費用は、建築分野にのみ発生する費用です
 ※既にJACに加入している場合、「全国団体・賛助会員」にお問い合わせください

・「出入国在留管理局」への収入印紙代:4,000円

・「特定技能への在留資格変更許可申請の申請代行手数料」:数万円~
 ※行政書士に「特定技能への在留資格変更許可申請」を依頼する場合のみ発生します
 ※詳しい金額は、依頼した行政書士にお問い合わせください

・その他初期費用として、職業紹介事業者(送出し機関・登録支援機関など)に人材紹介 
 費・あっ旋手数料として約30万円掛かると言われています。

特定技能のベトナム人を雇用するメリット

特定技能のベトナム人を雇用するメリット

他国の外国人労働者を雇用するよりも、特定技能のベトナム人労働者を雇用する方が、会社・企業側にとってメリットがあるのでしょうか。特定技能のベトナム人を雇用することのメリットを3つご紹介します。

ベトナム人の第一印象が良い

ベトナム人は、朗らかで明るく、気さくな人が多いイメージがあります。入社後、緊張しているはずでも、他の従業員に積極的に声をかけたり、挨拶をしたりするため、第一印象が良いと言われています。ベトナム人は第一印象が良いため、接客業務を任せる企業も多いようです。

ベトナム人は勤勉で手先が器用

ベトナム人は日本人に似ている部分があり、「勤勉」「手先が器用」などを特技とする方が多いようです。勤勉なことから、専門知識や接遇マナーが必要な介護分野・宿泊業に従事する方もいます。また、手先が器用な方は、建設業界や自動車整備業界など、細かい作業が必要な仕事を任せられることも多いようです。

ベトナム人は日本で働きたいという意思が強い

ベトナム人は「勤勉で真面目」「意思が強い」という方が多いことが特徴です。そのため、「日本で専門スキルや技術を学びたい」「母国の家族のために稼ぎたい」など、強い意思を持って働くことができます。そのため、短期間で退職する方が比較的少なく、ベテランになれば大きな戦力となります。

ベトナム現地からベトナム人を雇用する方法

ベトナム現地から、日本の会社・企業がベトナム人を雇用することができます。しかし、それにはいくつかの方法や注意点があるため、確認が必要です。ベトナム現地からベトナム人労働者を雇用する方法・注意点についてご紹介します。

二国間交間協定による「DOLAB認定」の送出機関を利用する

日本とベトナムは「二国間交換協定」を結んでおり、「二国間の協力覚書(MOS)」を交換しています。そのため、ベトナム現地から新たに日本へ入国するベトナム人労働者を採用する際は、「ベトナム現地での手続きが必要」という決まりがあるのです。「DOLAB認定」を受けている送出機関にて、労働者提供契約が承認された後、日本の会社・企業はベトナム人労働者を雇用することができます。

DOLABの「推薦者表交付申請」を行う

日本の会社・企業がベトナム人労働者との雇用契約を結んだら、それで完結というわけではありません。ベトナムの送出機関を通じて、「DOLAB申請」を行い、推薦者表を取得する必要があります。推薦者表がなければ、日本での在留に必要な「在留資格認定証明書交付申請」ができないため、忘れずに取得することが大切です。

日本国内からベトナム人を雇用する方法

日本国内に在住しているベトナム人労働者を雇用するにも、いくつかの方法や注意点があります。日本国内からベトナム人労働者を雇用する方法・注意点についてご紹介します。

駐日ベトナム大使館の「推薦者表交付申請」を行う

すでに日本国内に在留しているベトナム人を雇用する際も、駐日ベトナム大使館の「推薦者表交付申請」が必要になります。例えば、技能実習生や留学の在留資格を持つ方など。そのような方を雇用する際には、駐日ベトナム大使館への問い合わせが必要です。しかし、問い合わせは基本的にベトナム語で行う必要があるため、ベトナム人本人に対応してもらうようにしましょう。

特定技能の在留資格で転職する場合、手続きが必要

ベトナム人労働者が特定技能の在留資格で転職する場合も、手続きが必要です。特定技能では、働く分野と会社、従事する業務が指定されています。そのため、同じ分野の別会社に転職する場合、指定されている「会社」や「従事する業務」が変わることになるため、手続きが必要なのです。ベトナム人労働者が転職を希望する際は、出入国在留管理局への「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。

日本人労働者と同様にオーバーワークは厳禁

ベトナム人労働者を雇用する際、日本人労働者も含めて、従業員全員がオーバーワークをしていないか、注意を払う必要があります。「特定技能」の在留資格を取得していない場合、1週間で28時間以内のアルバイトをすることが可能です。しかし、残業や時間外労働などで、週28時間を超えていることがよくあります。「特定技能」の在留資格を取得した場合、以下の資料を提出します。

・住民税の課税証明書
・納税証明書
・源泉徴収票 など

前年度の給与が分かる資料を出入国在留管理局に提出するため、給与額が明らかに高いことで、「オーバーワーク」と判断されてしまいます。オーバーワークと判断されてしまった場合、ベトナム人労働者の雇用が不許可になる可能性が高いです。そのため、残業や時間外労働をすべての従業員にさせることがないよう、勤務調整を行う必要があります。

まとめ

数ある国の中でも、「特定技能」で働くベトナム人は、全体の半数以上をしめています。ベトナム人の人間性や性格、人柄が良いことと、日本がベトナム人にとって住みやすい環境であることが関係していると考えられています。是非、人手不足に悩む会社・企業の方は、ベトナム人労働者の雇用を検討してみてください。

この記事を書いたライター
カナエル運営事務局

カナエル運営事務局

外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。