2019年に華々しく登場した特定技能は、一定の技能を持つ外国人の受け入れを認めた在留資格です。令和4年12月末時点で、130,915人もの特定技能外国人がいます。
人手不足に悩んでいる企業にとっては、外国人を雇用しやすくなったのでありがたい制度ではないでしょうか。
ただ、検討を始めると「どこの国籍なら取得可能なのだろう」などという疑問が出てくるかと思います。
そこでこの記事では、採用可能な国籍の外国人や、採用までの流れなどについて説明していきます。
目次
特定技能とは?
まず特定技能制度について確認します。
特定技能制度とは、国内人材の確保が困難な産業分野、具体的には人手不足が深刻な介護やビルクリーニング、建設などの12分野で、2019年4月から、外国人の受け入れができるようになった制度です。
特定技能が取得可能な国とは?
特定技能は基本的には、どの国の外国人でも取得可能です。
「二国間協定が締結されていない国では、特定技能が取得できないのではないか」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
ですがそうではありません。
二国間協定とは、詳細は後述させていただきますが、特定技能制度をスムーズに進めるための取り交わしに過ぎません。
もちろん、二国間協定締結国でないとできないことはあります。
特定技能を取得するには試験に合格する必要がありますが、この試験を海外で、つまり来日せずに受験できる国は二国間協定締結国のみです。
ですが二国間協定締結国でなくても、日本にすでにいるのであれば、日本で特定技能試験に合格すれば取得できます。
実際、二国間協定締結国でない中国の方も、特定技能外国人として国内で働いています。
どこの国でも取得可能ではありますが、実際には、取得をする国は限られています。特定技能は、出稼ぎにメリットを感じる外国人が基本的には取得するからです。
日本に来て試験に合格すれば原則、誰でも取得できる
先ほど「二国間協定締結国でなくても、日本在留者なら日本で試験に合格すれば取得可能」と申し上げました。
これは文字通りの意味に捉えていただいて問題ありません。
例えば日本で受験するため、「短期滞在」の在留資格で入国して、特定技能試験を受験したとしても問題なく、特定技能取得者として日本で働くことができます。
(2020年4月1日から、日本国内試験の運用ルール変更されたためです)
例えば台湾や韓国の方が、短期滞在ビザで日本に入国して特定技能試験を受けて合格し、その後日本で働くという流れをとっても、問題ありません。
実際は2国間協定を結んだ国が多い
とはいえ、実際には2国間協定を結んだ国の外国人が多いのが実情です。
日本と2国間協定を結び、協力覚書を作成している国は、フィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、モンゴル、スリランカ、インド、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、ウズベキスタン、タイの12か国です。
海外での試験合格者数は、インドネシアやフィリピンが多いです。
ですが、分野別に試験の実施状況が偏っており、介護・農業・外食業は進んでいますが、試験がほとんど実施されていない分野もあります。
また海外での試験合格者は増えているにもかかわらず、実際の入国・在留数はそれを大きく下回っています。たとえばインドネシアは合格者数がトップですが、実際に来日する人数は低調なままです。
海外での試験合格者が順調に増えているにもかかわらず、合格者の採用が十分に進んでいない現状が明らかになっています。
ベトナム人の割合が過半数
日本在留者であれば、在留資格を問わず、特定技能試験を受験できます。ですが高度人材、具体的に例をあげれば在留資格「技術・人文知識・国際業務」などの取得者が、特定技能試験を受けることはほとんどありません。
日本在留者を採用する場合、技能実習生か、日本語学校や専門学校の留学生が中心となります。
特に技能実習生の場合、ベトナム人が過半数を占めています。令和4年12月末時点で、130,915人の特定機能取得者のうち、過半数の77,135人がベトナム人です。
また特定技能を取得するためには試験を受ける必要がありますが、在留資格「技能実習」の場合には、インドやインドネシア、フィリピン、ベトナムなど15国籍からは試験無しで移行できます。
条件として、技能実習を3年間良好に修了しており、特定技能1号の業務と現在の業務に関連性がある場合に限ります。
この試験なしで移行できる制度があるために、特定技能取得者のベトナム人の割合が多くなっています。
ベトナムの現状
前述のとおり、ベトナム人は、特定技能外国人の過半数を占めています。
確かに技能実習生や日本語学校の中からは、多くの合格者が出てきていますが、ベトナム現地での試験実施はあまり進んでいません。日本は、技能実習生の借金を排除したい思惑がありますが、ベトナムは、借金排除でトレーニングができないと、ベトナム企業の利益が増えないのではないかと危惧して、両者の考えがぶつかり合い、調整などがうまくいかないためではないかと推測されています。
2国間協定とは?
ここで2国間協定について、簡単にまとめます。
2国間協定は、特定技能外国人のスムーズな送出しと受入れ、また保護ができるようにするため取り交わすものです。そのため「2国間協定を締結している=特定技能制度の活用に積極的である」という解釈で問題ありません。
また出入国在留管理庁のページには、協力覚書を結んでいる国に関しては、その国の外国人を雇い入れる際、どんな手続きをすればいいのかわかりやすく掲載されています。
特定技能が取得ができない場合
強制退去の経験あり
特定技能制度で、在留資格を取得できないケースがあります。
代表的なケースが過去に「出入国管理及び難民認定法」により、強制退去を命じられている場合です。
強制退去の原因は、不法就労、オーバーステイ、窃盗などの犯罪行為などがあげられます。
そのような場合には、取得が不可となる場合がありますので、雇い入れの際には注意が必要です。
病気を患っている
そのほかのケースでは、重い病気を抱えている場合があげられます。
もちろん、病気であることは悪いことではなく、だから働けないというわけでもないかと思います。現在は特定技能外国人向けの保険があったり、保険費用や入院費用を援助してくれる受け入れ企業も存在しています。
ですが、すでに重い病気にかかっている場合にはそれらへの加入は当然難しくなってしまいます。
また重い病気ではなくても、日本では通訳が常駐している病院ばかりではありません。
日本に来たばかりでは病院が利用しづらいため、病が軽い場合でも、特定技能制度を利用しての技能実習は難しいでしょう。
特定技能除外国
イランとトルコ国籍の方
特定技能は、基本的にはどの国からも受け入れています。
ですがイラン・トルコのみは除外されています。
なぜなら、帰国命令を出しても、受け入れないからです。
イランとトルコは、帰国命令・退去命令がくだった自国民にたいして、入国不可の対応をとります。
実際に現在、日本で不法滞在しているイラン人やトルコ人に、強制退去を命じたにもかかわらず、帰国しないことが問題になっています。
本来であれば法務省が大使館に要請し、大使館は旅券の発給手続きを行わないといけません。ですがイランとトルコの場合には、大使館が要請に応じず、旅券が発給できない状態です。
このままでは不法滞在者のイラン人、トルコ人が増え続けてしまうため、特定技能の対象から除外されています。
治安が悪い国
イランやトルコ国籍の外国人でなくても、治安が悪い国の場合には、特定技能制度を利用できなくなる可能性があります。日本が特定技能の対象国として除外している国はイランとトルコのみです。ですが世界情勢によっては、ほかの国も外される可能性があります。
特定技能制度の活用を考えている場合には、対象国の治安などにも気を配っておく必要があります。
特定技能の申請方法
技能実習を修了して申請する
技能実習制度とは、主に発展途上国の外国人に、日本企業で技術や知識を学んでもらおうという国際的な人材育成です。
この技能実習を良好に修了した後には、在留資格変更許可申請書など、複数の書類の作成を行えば、試験無しで、特定技能に移行可能です。
ちなみに「良好に修了」とは、技能実習を2年10ヵ月以上で修了し、技能検定3級に合格していることを指します。もしくは、技能検定3級に相当する、技能実習評価試験の実技試験に合格している場合も、同じく「良好に修了」と認められます。
また、実技試験に合格していなくても、技能実習生に関する評価調書の書面がある場合にも、「良好に修了」と認められます。
特定技能評価試験
技能実習生でない場合、また技能実習1号実習生(技能実習1年目)の場合には、特定技能評価試験を受けて合格することで、特定技能を取得できます。
特定技能評価試験は、特定技能を利用できる14分野でそれぞれ行われ、実施場所、実施方法、試験内容が異なります。
試験は「日本語能力を測る試験」と「技能を測る試験」に大きく分けられます。
日本語能力を測る試験には、①国際交流基金日本語基礎テスト②日本語能力試験③介護日本語評価試験(介護分野のみ)の3つがあります。
国際交流基金日本語基礎テストでは、生活に支障がない程度の日本語能力があるか、判定します。
日本語能力試験では、N1~N5の5つのレベルがあり、数字が小さいほど日本語力が高いという評価になります。特定技能では、基本的にはN4レベル以上必要です。
介護日本語評価試験の問題では、「介護のことば」「介護の会話・声かけ」「介護の文書」がそれぞれ5問ずつあります。
ただこれは、誤解されやすいのですが、介護分野に従事する上での必須試験ではありません。
国際交流基金日本語基礎テスト、日本語能力試験N4以上、本試験のいずれかに合格すれば、介護業の特定技能は取得できます。
技能を測る試験では、例えば介護分野であれば、2022年には、学科試験に、介護の基本(10問)、こころとからだのしくみ(6問)、コミュニケーション技術(4問)、生活支援技術(20問)が出題されました。
実技試験では、写真等を提示して、正しい介護の手順等についての判別、判断等を行わせる試験が、出題されました。
詳細や、ビルクリーニング分野や製造分野などその他技能の試験については、出入国管理庁のこちらのページにPDFで掲載がありますので、ご参照ください。
まとめ
今回の記事の内容を、簡単にまとめます。
まず特定技能は、基本的には、どこの国籍でも取得可能です。ですがイランとトルコは、帰国命令を出しても受け入れないため、除外されています。
外国で試験の実施がされている国は限られていますが、短期ビザで試験のために日本に入国して、日本で試験の受験をすることが可能です。
そのためどこの国籍でも取得可能ではありますが、特定技能外国人を、スムーズに送り出せるようにする二国間協定を結んでいる国の外国人が、習得するケースが多いです。
海外での試験合格者数はインドネシアが最も多く、また年々増加していますが、合格者に比べて採用者はまだまだ少ないのが実情です。
現状、ベトナム人が過半数を占めています
国内在留者については、技能実習生と、日本語学校、専門学校の留学生が中心で、技能実習生においてはベトナム人の比率が非常に高いためです。
基本的にはイランとトルコ以外の国籍であれば、特定技能を取得することができます。ですが過去に強制退去の経験がある場合や、重い病気を持っている場合には、取得できないことがあります。
最後に申請の方法をまとめます。
技能実習を修了して申請する場合には、試験が免除されます。
技能実習生でない場合、また技能実習1号の実習生の場合には、特定技能評価試験を受けて合格する必要があります。
以上になります。
本記事が、特定技能受け入れの一助となれば幸いです。